※この話は「酔って一夜を共にしてしまった2人」「自分が被害者だと思っていたら相手も被害者だった」の続きとなります。

少し長いですが、そちらをお読みになってからお進み下さい↓

 

 

酔って本性を曝け出す2人

 

 

「早ェな」

「たまたまこの近くで依頼があったからよ…」

 

約束の五分前に居酒屋の店先に着いた土方は、既に銀時が待っていたことに驚いた。

だが、銀時の言うように「依頼」などではない。

土方への想いを自覚した銀時は、居ても立っても居られず早めに家を出たのである。

 

「じゃ、入るか…」

「おう…」

 

銀時の後に続いて土方もなかに入った。

居酒屋に入った二人はカウンター席に並んで座ると、思い思いのものを注文する。

今夜は味覚が合わないことも気にすることなく、穏やかに時を過ごしている。

 

「そういやぁ…テメーとサシで飲むなんざ、初めてのことだよな」

「そうだよなァ…オメーいっつもお仲間と一緒だもんな。ゴリラとかドS王子とか…。こないだだってよー…」

「こないだって…一週間前のことか?」

「ん?ああ、そうだけど?(やべェ…触れちゃいかなかったか?)」

 

一瞬、土方が顔を顰めたような気がして、銀時は話題を間違えたかと焦る。

 

「万事屋、そのことなんだけどよ…」

「お、おう…(なかったことにしよう、とか?)」

「昼間は、その…この件はこれで終わりに、とか言ったけどよ…」

「うん(あれっ?もしかしてコイツも俺との関係を続けたいとか思ってる?)」

「やっぱ…このまま有耶無耶にして終わりっつーのも何だか…」

「あー、うん。俺もそう思ってた」

「そうか!」

「気付いたのは昼間だけど、多分かなり前から俺…」

「一週間前に何があったかハッキリさせとこうぜ!」

 

ガタンと音を立てて銀時はイスから転げ落ちた。

 

「何だ?もう酔ったのか?」

「違ェよ!はっ?ナニ?一週間前のことハッキリって…」

「だから、あの日何があったのかをちゃんと思い出してだな…」

「酔って忘れちまってるモンを思い出せるわけねェだろ…(何だよ…舞い上がって告白しようとした俺がバカみてェじゃねーか)」

「覚えてはいねェが、互いの記憶を突き合わせりゃ何かが見えてくるかもしれねェだろ?」

「あー、まあ、そうかもな…。で、オメーはどこまで覚えてんだ?」

「実は…あの日…」

 

神妙な顔つきになり、ゆっくりと土方が話し出す。

銀時はゴクリと唾を飲み込んで土方の言葉を待った。

 

「近藤さん達とココへ来てからの記憶がねェ」

「はあ!?そんだけ?俺が後から来て飲み比べしたのは?」

 

あまりの記憶のなさに銀時は拍子抜けした。

 

「それがサッパリ…次の日山崎から、万事屋と飲み比べして『もう一軒行くぞ』とか言って二人で店を出たと聞いたんだが…」

「その通りだよ。そんなトコから覚えてねェって…オメー大丈夫か?」

「るせェ。そういうテメーはどうなんだよ…」

「俺は…ココに来たらオメーらがいて、オメーと飲み比べして『もう一軒!』ってなって…」

「…それで?」

「それで……気付いたら、朝だった」

「ンだよ…オメーだって肝心な記憶はねェんじゃねーか」

 

土方はハァッと明らかに落胆の色を見せる。

 

「何だよ…オメーよりはマシだろーが」

「どっちにしろ重要なトコは分からずじまいだな…よしっ、出るか!」

 

そう言うと土方は徐に立ち上がった。

 

「へっ?出るって?」

「だから、こないだと同じ行動をとってみんだよ。あの日もココから始まったんだ。

同じ道筋辿ってみたら思い出すかもしれねェだろ?」

「それは、まあ…」

「だったら早く行くぞ」

「あっ、おい、待てよ!」

 

土方は勘定を済ませ、一人で居酒屋を出ようとする。

それを慌てて銀時が追いかけた。

 

「待てよ土方!カネ!オメー、奢らねェんじゃなかったのかよ!」

「ああ、奢らねェよ…半分払え」

 

入口近くで土方は立ち止まり、銀時に向かって右手を出した。

 

「ったくよー…せっかちなんだよ、テメーは」

「るせェ!」

 

文句を言いながら銀時は懐から財布を取り出す。

土方に代金の半分を渡すと二人揃って店を出た。

 

「…で、この後どっちに行くんだ?」

「さあな…」

「さあなって…オメーが出ようっつったんじゃねェか!」

「俺は全く覚えてねェっつっただろーが!」

「偉そうに言うんじゃねェよ!」

「ンだとコラ…」

「銀さん達…ケンカなら他所でやってくんな!」

「「あっ…すいません」」

 

店先で争い始めた二人を店主が窘めた。

 

「とりあえず…コッチ行くか?」

 

銀時が右手に向かって歩を進め、土方もそれに続いた。

 

「…思い出したのか?」

「いんや…」

「じゃあ何でコッチって…」

「だってよー…ホテル街コッチじゃねェか」

「あっ、そうか…」

 

歩き始めて数分後、二人が一週間前に一夜を過ごしたホテルの前まで来た。

銀時は土方に尋ねる。

 

「どうよ…何か思い出したか?」

「いや、サッパリだ…。万事屋、オメーはどうだ?」

「俺も全く…」

「…入ってみるか」

「はぁ!?」

 

言うや否や土方はホテルの入口をくぐろうとする。それを慌てて銀時が止めた。

 

「ちょっと待てって!オメー、もう酔ってんのか?」

「酔ってねェよ!一番思い出さなきゃなんねェのはココでの出来事だろーが。だったら入ってみりゃ…」

「…オメー、そう言ってここまで来たけど何も思い出してねェだろ?だったらこれ以上やったって無駄…」

「ンなもん、やってみなきゃ分かんねェだろーが!…もう、いい。テメーが嫌なら俺一人で入る!」

「あっ、ちょっと待てよ!別に嫌とは…」

 

結局、あの日と同じように二人でホテルに入っていった。

 

ホテルに入った二人は、たまたま空室だったのであの日と同じ部屋に入った。

あの日の翌朝からの記憶はハッキリしているので部屋番号は二人とも覚えていたのだ。

入室すると、土方はまるで家宅捜索でもしているかのように部屋の隅々まで調べ始めた。

銀時はベッドに腰掛けてその様子をボンヤリと眺めている。

 

気が済むまで「捜索」したのか、十分後、土方は冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを取り出した。

その様子を見て、銀時は前にも同じようなことがあったと思った。

 

「あっ…」

「ん?お前も飲むのか?…って…あれっ?」

 

ボトルを差し出した土方も同じような既視感を覚えていた。

 

「何か…前にも同じようなことがあったような?」

「万事屋、お前もか…」

「って…土方もか?」

「ああ。確か、前もこうやってオメーに水を渡そうとして…」

「そうそう。んで、俺がなかなか取れなくて、それで…」

「それで…確か…」

「……」

「……」

 

「「あぁぁぁぁぁ!!」」

 

銀時は立ち上がり、顔を見合わせた二人はほぼ同時に叫んだ。

 

「おおお思い出したぞ…。それで、俺が口移しで水を…」

「ああ、そうだったな…。で、その後キス合戦になって…」

「結局、最後まで…」

「そうだな…」

 

「「ハァーッ」」

 

真相を思い出した二人は、急な疲労感に襲われベッドに倒れこんだ。

特に、好きな人との一夜を思い出すことになった銀時は猛烈な羞恥心に見舞われ、

枕に突っ伏したまま顔を上げられない状態だった。

そんな銀時の状況など気にする様子もなく、「よしっ」と気合を入れ直した土方は

部屋に備え付けてある電話からフロントにかけると「泊まります」と伝えた。

 

「えぇぇぇぇ!泊まりって、ちょっ…はぁぁぁ!?」

「ああ…オメーは帰ってもいいぞ」

「はっ?」

「なんか疲れたからな…屯所に戻んのも面倒だし、俺ァここに泊まることにする。…オメーはオメーの好きにすればいい」

「俺も疲れた、けど…カネがねェ」

「…払ってやるよ。どうせ一人でも二人でも一室の料金は変わらねェんだ」

「あっ、そう?じゃあお言葉に甘えて…」

 

色々思い出して恥ずかしいのは確かだが、それでも土方とお近付きになれるチャンスを逃したくはなかった。

 

「あっ、あのよー土方…」

「何だ?」

「携帯の番号、とか…教えてくれねェか?」

「携帯?」

「いっ、いやその…えーっと…そう!待ち合わせ!今日みてェに待ち合わせする時、知っといた方が便利かなァと…。

ほらっ!オメーも俺も不規則な勤務だし?」

 

しどろもどろになりながらも銀時は、自分の想いがバレないようにと何気ない風を装った。

 

「それもそうだな……ほらよ」

「お、おう…サンキュ」

 

土方は懐から名刺を取り出すと、裏に自身の携帯電話番号とメールアドレスを書きいて銀時に手渡した。

 

「武装警察にも名刺ってあんだな…。つーか、私服の時も持ち歩いてんだ」

「警察手帳に挟んであんだよ。使う機会はほとんどねェが、お偉方はこういう形式に拘るんで一応な…」

「なるほどね…。組織の一員ってのも大変なんだな」

「まあな…。で、テメーのは?」

「あっ、俺?俺もあるよ…ほらっ」

 

銀時も懐から名刺を取り出し土方に渡す。

 

「…携帯は?」

 

名刺をそのまま渡されたことに土方は若干面白くなさそうである。

 

「あっ…俺、携帯持ってねェから。だから電話って、ソコに書いてある万事屋のしかねェんだ」

「何で持ってねェんだよ…」

「何でって…カネがねェとか色々…」

「色々って…一つだけじゃねェか」

「るせェよ。とにかく、俺の電話はソレだからな!何かあったらソコにかけろよ!」

「分かった、分かった…」

 

 

さり気なく、今後も二人で会う関係になれたと銀時は内心喜んでいた。

 

(09.11.29)


久々のリバ小説です。この後二人は懲りずにまた…。中編は18禁です 中編は読まなくても話は分かります。18歳未満の方と、エロ苦手な方は後編へどうぞ