※「純情な二人の初めてのお泊り」の続きです。そちらをお読みになってからお進み下さい

 

 

純情な二人の交際宣言(?)

 

 

「おはようございまーす」

 

土方が万事屋へ泊まった翌朝、土方が屯所に戻るために万事屋を出てから一時間ほどして新八が出勤してきた。

前日に大好きなアイドル・寺門通のコンサートへ行ってきたためか声が弾んでいるようだ。

 

「おーう、おはよう新八」

「あっ銀さんおはようございます。今日は早起きなんですね」

「そりゃあたまには銀さんだって早起きくらいするさ」

 

銀時が早起きしたのは土方を見送るためだが、そんなことは新八に言えなかった。

 

「…あれっ、神楽ちゃんがいない」

「あっ…」

 

いつものように神楽を起こそうと押入れを開けた新八は、そこで眠っているはずの少女がいないことに気付く。

 

「銀さん…神楽ちゃん、もう何処かに出かけたんですか?」

「いやー、昨日は下に泊まって…」

「下ってお登勢さんの所ですか?何でまた…」

「銀ちゃんとマヨラーがエロいことしてたから避難したアル」

「かっ神楽ァァ!?おまっ、何言ってんの!?」

 

絶妙のタイミングで帰ってきた神楽が、新八にあることないこと吹き込むのを銀時は慌てて止める。

 

「本当のことを言ったまでネ。

昨日、私が外から帰ってきたら銀ちゃんとマヨラーが布団の上で抱き合ってたアル」

「えっ…銀さんと土方さんが?」

 

新八は神楽の隣に立ち、銀時とやや距離を置いた。

 

「だからオメーが見たあれは違うんだって!」

「何が違うアルか。結局マヨラーはここに泊まったんだろ?」

「確かに土方は泊まったけどよ…でも、仕事があるからあの後はすぐに帰ったんだぜ?」

「ちょっ、ちょっと待って下さい!土方さんがここに泊まったって、一体どうして…」

「そんなの、銀ちゃんとマヨラーがデキてるからに決まってるアル」

「ええっ!!い、いつから…?」

「それは私も知らないネ。銀ちゃん、いつからマヨラーと付き合ってるアルか?」

「きっ昨日、から…」

 

新八と神楽に見つめられ、銀時はバツが悪そうに応えた。

 

「昨日から!?それでいきなり、泊まったんですか!?」

「さすが銀ちゃんアル…爛れた大人の関係ネ」

 

さすがと言いながら神楽と新八は更に銀時と距離を開けた。

 

「だから誤解だって!土方は確かにここに泊まったし、俺たちは、その…

つ、付き合ってるけど…でも、お前らが考えてるような、爛れた関係じゃねーから!」

「銀さん…もういいですよ。いくら僕らが子どもでも、かぶき町で暮らしてるんだし

そういう関係があるってことは理解してますから…」

「それに銀ちゃんとマヨラーなら子どももデキないんだし、付き合ってすぐ合体もありネ」

「いや、だから昨日は看病っつーか…」

「「看病?」」

「そう!看病!昨日、俺ちょっと具合悪くてよー…外でたまたま会った土方に送ってもらったんだよ。

で、夜も様子見に来てくれたってわけだ」

「銀さん…ごまかすならもっとマシな嘘を吐いて下さい」

「嘘じゃねェって!」

「具合が悪くて布団の上にいました?それで何もしてません?そんな言い訳が通用すると思ってるアルか?」

「するも何も、真実なんだからしょーがねェだろ!?俺と土方は爛れた関係じゃありません!」

 

ったく、何でガキ相手にンなこと言わなきゃなんねェんだよ…最後の方は独り言のように聞こえた。

必死に弁解する銀時を見て、二人は銀時の言葉を信じる気になったようだ。

漸く三人の距離が縮まり、いつもの万事屋に戻る。

 

 

「分かったアル。銀ちゃんの言葉を信じるネ」

「神楽…」

「具合が悪かったって…今日は大丈夫なんですか?」

「お、おう…」

「「それにしても…」」

「えっ?」

「いい歳した大人が一晩一緒にいて何もしないって…それはそれでキモイアルな」

「キモイですね」

「えっ…な、何だよ!別にいいだろ?俺たちは昨日から、つ、付き合い始めたんだし…」

「さっきも思ったアルが、『付き合う』って言うくらいで引っかかる所もキモイアル」

「銀さんの顔がずっと赤い所もキモイと思わない?自分から泊めておいて恥ずかしがるなんて…」

「ああ、それもキモイと思ってたヨ」

「そうだよね…」

「ちょっ、オメーら酷くねェ?寄ってたかって銀さんのことキモイキモイってよー」

「じゃあもっと普通に『マヨラーと付き合ってる』って言ってみるアル」

「おっ、俺は…土方と、その…つつ、付き合って…ます

 

耳まで赤くした銀時は俯きながら、最後の方は消え入りそうな声で「交際宣言」した。

そんな銀時に子ども二人は冷ややかな視線を投げる。

 

「オッサンがもじもじしてても可愛くないアル」

「銀さん…やっぱり今日も具合悪いみたいですね」

「じゃあ、またマヨラーに看病してもらえばいいネ!」

「そうだね。恋人の土方さんに看てもらえばよくなるかもしれないね」

「テメーら大人をからかうんじゃねェェェェ!!」

 

 

*  *  *  *  *

 

 

一方、屯所では、朝帰りした土方が沖田から質問責めにあっていた。

 

「土方さん…昨晩はどちらへ?」

「…万事屋」

「朝帰りってこたァ、旦那と上手くいったんですかィ?」

「ま、まあ…それなりに…」

「真っ赤になっちゃって…キモイですぜィ」

「っるせェ!」

「はいはい…良かったですねィ。長年の想いが報われて…」

「ま、まあ…」

「土方さんから告白したんで?」

「い、いや…」

「ヘェ〜旦那から?旦那も土方さんのこと好きだったんですねィ。で、何て言われたんですかィ?」

「すすっすき、だ、って…

「それで?土方さんは何て応えたんですかィ?」

「おっ、俺もって…」

 

土方は俯きつつも沖田の質問に全て答えている。

何だかんだ言って、片想い中の沈んでいる土方を沖田は励ましてくれていた。

そんな沖田だからこそ、土方も聞かれたことは全て答えようと思っていた。

 

「ヘェ〜。それにしても…告白の場面を思い出すだけでキモイくらいに赤面してるアンタが

よくぞまあ、付き合い出したその日に一発決められましたねィ」

「いいい一発って…」

「ああ!アンタはマグロで、旦那に全部お任せだったんですか?

それなら分からないでもありやせんが…マグロで済むのは最初のうちだけですぜ?

徐々に土方さんからも動かなきゃ飽きられちまうでさァ」

「あ、飽きるも何も、おっ俺とアイツは、まだ…」

「…まさか泊まっておいてヤってないなんて言わないですよねィ?」

「うぅっ……」

「…ヤってないんで?」

「………」

 

コクリと土方は頷く。それを見た沖田はハァ〜っと大袈裟な溜息を吐いて見せた。

 

「土方さん…いい歳した大人が、付き合ってる相手の家に泊まってヤらずに帰ってくるってアンタね…」

「で、でも、アイツ具合悪くて…それに、俺も、仕事で疲れてるだろうから、寝ていいって…」

「そんなの…アンタがビビってたから安心させようとして言ったんでしょう?」

「で、でも、俺たち…その、つつ付き合い始めたばっかだし…」

「付き合い始めたばかりでも、例えまだ付き合ってなかったとしても、家に泊まるってことは

そういうコトをするってことでしょうが!」

「つ、付き合ってなければ…シないと思うぞ。男同士だし…」

「でもアンタらは付き合ってんでしょーが!」

「あ、ああ…」

 

真っ赤になってしどろもどろに答える土方を見て、沖田は遂にキレた。

 

「あー、もうっ!付き合ってるって言われる度に赤くなんのやめろィ!キモイから!」

「な、なりたくてなってるワケじゃ…」

「とにかく!次に泊まる時は旦那に抱かれる時でィ!」

「なんで俺が抱かれる側って決まってんだよ…」

「泊まりに行っといて何もしないことに疑問も持たねェ野郎に、抱く側が務まるとでも思ってんですかィ?

だいたいアンタ、旦那を抱きたいんですかィ?」

「そんなこと、考えたことも…」

「だろィ?だったら大人しく旦那に任せてりゃいいから…」

「ででででも…」

「旦那に抱かれんのが嫌なんですかィ?」

「い、嫌ってワケじゃ…」

 

ここまで言っても覚悟が決まらぬ土方に、沖田が諭すように言う。

 

「考えてもみなせェ土方さん…確かに二人が恋人同士になったのは昨日かもしれやせん」

「こっ恋人…」

「あー、いちいち赤くなるな!…俺が言いたいのは、恋人としての付き合いは始ったばかりだが

そもそもお二人は知り合ってからかなりの年月経ってるってことでさァ」

「それは、まあ、確かに…」

「でしょう?付き合い始めたばかりでも、お互い良く知った仲なんだ…身体の関係があったっていいと思いやせんか?」

「あ、アイツが…シたい、なら…」

「きっとシたいと思いやすぜ。次こそは、頑張ってくだせェ」

「わ、分かった…」

 

 

 

これから暫くの後に沖田は、銀時と土方が似た者同士だということを失念していたと気付かされるのであった。

 

(09.11.21)


子どもたちの方が大人ですね(笑)。沖田はまだ銀さんの本当の姿(?)を知りません。新八と神楽も「土方さんが純情な銀さんに合わせてくれてるんだ」とか思ってます。

多分この次の回くらいで、この二人には自分たちの常識が当てはまらないのだということを子どもたちは学びます(笑)。ここまで読んでいただきありがとうございました。

追記:続き書きました。初デート話です

 

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