後編

 

あー、やっと屯所に着いた。とりあえず、隊服に着替えて、朝メシ食って…

 

「土方さん、お帰りなせェ」

「うおっ!な、何だ総悟か…い、いきなり声かけんじゃねーよ」

「上司に挨拶するのは当然だろィ。死ねよ、土方コノヤロー」

「ふざけるなァ!前半と後半に何の脈絡もねーだろ!」

 

うっ…大声出すと腰に響く…が、コイツに悟られるわけにはいかねー。

 

「昨夜は万事屋の旦那とお楽しみだったようで」

 

えっ…何でコイツが知ってんの?コイツは昨日夜勤で一緒に飲みに行ってねーはず。

お、落ち着け俺!どーせコイツは朝帰りした俺をからかおうとしてるだけだろ…

 

「ああ!?何で万事屋が出てくんだよ。昨日は近藤さんたちと飲みに行ったんだぞ」

「その近藤さんが『トシは万事屋と一緒だ』って言ってやした」

「ほ、本当か?いつ、万事屋に会ったんだ?」

「アンタ、何も覚えてないんですかィ?」

「あ、ああ…かなり飲んだらしい」

「それでフラフラ朝帰りってわけですかィ。途中で攘夷浪士にでも襲われて死ねばよかったのに」

「おいィィィ!ふざけた事ぬかしてんじゃねー!!」

「で、万事屋の旦那とどこに行ってたんですかィ?」

「あ!?知らねーよ、あんなヤツ」

「一緒じゃなかったんですかィ?」

「だ、だから知らねーって言ってんだろ!分かったら、さっさと道を開けろ!俺は着替えて朝メシ食うんだよ!」

「へいへい」

 

 

ふー、どうにか誤魔化せたか…。危ねー、危ねー。

 

 

 

 

「あ、副長おはようございます」

「おう、山崎か…」

「昨日はあの後どこに行ったんですか?近藤さん、大変だったんですよ」

「んっ?あの後ってどの後だ?」

「副長、覚えてないんですか?昨日、局長たちと飲みに行って…」

「ああ、それは覚えてるんだが…その後、何かあったのか?」

「飲んでる途中であの店に万事屋の旦那が来て、副長と飲み比べ始めちゃったんですよ」

「…そう、だったか?」

「大丈夫ですか?それで『もう一軒行くぞ』とか言って2人で出て行っちゃったんじゃないですか」

「…そう言われれば、そんなことがあったよーな…いやダメだ、思い出せん」

「副長がいなくなったから、『トシが行っちゃったー』とか言って局長が泣き出して、

宥めて屯所まで連れて帰るの、大変だったんですよ」

「そうだったのか…で、近藤さんは今どうしてる?」

「もういつも通りですよ」

「そうか…」

 

 

 

 

 

そうか…やっぱり万事屋とは会ってたのか。これで宿のアイツは何かの見間違いって線は消えたか…。

あー、考えてても仕方ねー!この痛みが消えれば今日のことなんか忘れるだろ。

だいたい、何があったかは覚えてねーんだからな。よし!忘れよう!

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

あれから一週間…何だかんだと理由をつけてかぶき町巡廻を避けてきたが

「かぶき町に行けない理由でもあるんですかィ」とか総悟がうるせーから、仕方なく今日は総悟とかぶき町巡廻だ。

まあ、かぶき町に行くからって、アイツに会うとは限らねーからな。

…だいたい、あの日のことは痛みと共に忘れたんだ!そう、忘れたんだからな!!

 

 

 

 

「あっ、万事屋の旦那ー」

「おー」

 

 

げっ…会っちまった…!いや、待てよ。俺はアイツが起きる前に宿を出たんだから、アイツも覚えてねーんじゃね?

そうだ!そうに決まってる!

 

 

「おいおい、そっちの人は無視ですかー?」

「あん?何でテメーなんぞに話しかけなきゃなんねーんだ?」

「…い、いやいや、先にお宅んとこの沖田くんが話しかけてきたんだよ?」

「じゃあ、総悟としゃべってりゃーいいだろ」

「……」

「な、何だよ」

 

 

な、何でコイツこっち見て黙ってんだよ!いつも無駄にペラペラしゃべるじゃねーか!

…ま、まさか、一週間前のコト覚えてんのか!?

…そういえば、俺が、痛かったってことは、アイツはその…ナニしたってことだよな?

つーことは、そこまで酔ってなかったってことか!?女好きだと思っていたが、もしやソッチの人間だったのか!?

 

 

「沖田くん」

「何ですかィ?」

「ちょっと、お宅の副長さん借りるから」

「なっ!」

「あー、どうぞどうぞ。永久に返さなくていいですぜ」

「総悟テメッふざけんな!…うわっ、万事屋テメー、引っ張るんじゃねー!俺は仕事中だ!」

 

 

クソッ、なんて馬鹿力だ…。

 

  

結局、俺はアイツに手首を掴まれたまま、万事屋へと連れて行かれた。

(09.07.24)


セリフのみ…すごく書きやすかったです。この後、これの銀さん視点を書いて、それから万事屋に行った2人の続きを書きます。銀さん視点の話を読むと、ようやくリバっぽくなります。ここまでお読み下さり、ありがとうございました

銀さん視点

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