第二百七十九訓を元にしたネタです。
また、この話は「土方さんの片想い?」の続きとなります。まだの方は、そちらを読んでからお進みください。
何やかんやで俺は元の姿に戻った。猫を経験したからといって今後の生活が特に変わるわけでもなく、ちょっとダチが増えた程度だ。
俺は何も変わっちゃいねェ…そう思っていた。アイツを見るまでは。
無自覚のまま銀さんが告白
「よ、よう。土方くんじゃねーの。久しぶりー」
いつも通りかぶき町をブラついてたら前から土方が歩いてきた。制服姿ってことは巡回か?…それにしても、何で俺はこんなに焦ってんだ?
ちょっとドモっちまったじゃねーか。そりゃまあ、猫としてコイツんとこで世話になった時、知っちゃいけねーコト知っちまったけどよ…
でも、黙ってりゃ俺だってバレないだろ。むしろ焦ってたら勘付かれるって!落ち着け、俺ー。
「旦那ァ、俺もいますぜィ」
「あ、あれっ沖田くん…いつ来たの?」
「最初からいますぜ、旦那。…土方さんしか目に入ってなかったんですかィ?」
「い、いやー、別にー…ほら、沖田くんってちょっと小さいからさァー」
「小さいって…大して違わないでしょう?」
「いやいやー、銀さんからしたらキミなんか、まだまだひよっこだからね?」
やっべー、土方に気を取られてて沖田くんのこと全く見えなかった。マジで最初っからいたの!?うわぁ〜。
コイツは土方より鋭そうだから気を付けねーとな。平常心、平常心。
「そうですかィ。じゃあ土方さんはひよっこじゃないんで?」
「えっ?あ、ああー、まあ…それなりに頑張ってんじゃないかな。銀さんほどじゃないけど」
「…随分と土方さんを評価してるんですねィ」
「ひょっ評価っつーか…まあ、何つーの?そ、そんな感じだよ」
「旦那ァ…ひょっとして土方さんと何かありやしたか?」
「なっ何かって!?べ、別にィー。今日だってすっごく久しぶりに会ったんだし…なぁ?」
うわわ…早速カマかけてきたよ沖田くん。何にもない!俺は何も知らないぞー!
「…久しぶりってほどじゃねェだろ」
「そそそうだっけ?」
えっ、ナニ?コイツ気付いてんの!?そうか、ゴリラか!ゴリラに聞いたのか!いやいやいや、落ち着け!まだごまかせる。
俺が猫になってたからってコイツといた猫が俺であることは証明できねェはずだ!あの猫は俺じゃねー。
ただの銀色のもこもこした目が死んでる猫だ!そうだ、それでいこう!
「桂と一緒に埋まってたじゃねーか。…相変わらずワケの分かんねェ野郎だな、テメーは」
「あっ、ああ!あれね!あれは色々と深い事情があってああなったんだよ」
「そうかよ…今更テメーのめちゃくちゃな事情なんざ聞く気もしねーよ」
「あはははは…」
何だよー。脅かすんじゃねーよ。ていうかあの時、ゴリラと話してて俺のコトなんか気付いてねーと思ってたけど気付いてたんだな。
…あっ、そうか。コイツ、俺のこと好きなんだもんな。見てねーようでちゃんと見てくれてんだな。…やべっ!じゃあ今日の俺が焦ってることも
お見通しか?
「どうも旦那の態度が変ですねィ…やっぱり何かありやしたね?」
「だだだから何にもねーって!」
「本当ですかィ?どうなんですか、土方さん?」
「ああ?別に何もねーよ。コイツはいつも通りの不審人物だろーが」
「そ、そうそう。何にもねーよ…」
「…いや、やっぱ変だなコイツ」
「へへ変って何が?銀さんはいつもの銀さんだよー」
「さっき俺はテメーのことを不審人物って言ったんだぞ?それなのに何の反論もなしか?」
「いい今から突っ込もうと思ってたんだよ!…善良な市民をつかまえて不審人物ってなんだ!」
「「………」」
二人は明らかに「変だ」って顔して俺のことを見てる。マズい!どうしよう……あ、あれっ?ななな何で土方の顔がこんな近くに!?
ええええっ!おおお俺に触っ…ええええっ!ななな何で急に積極的に!?ちょちょっ、こんな往来で…そそそそんな、ほっぺをペチペチって…
んっ?ペチペチ?
「え、なっナニ?」
「ナニじゃねーよ。様子が変だと思ったら、顔赤くしてボーッとしやがって…熱でもあんのか?」
「あっ、ああ、そうかもしんねーな!じゃあ俺さっさと帰って寝るわ!」
「待ちなせェ。土方さん、旦那を送ってさしあげたらどうです?」
「ああ?何で俺が…」
「いいじゃねーですかィ。旦那とお近付きになれるチャンスですぜ?」
「だっ誰がコイツとお近付きになんか!」
「へーへー。このまま道端で倒れられたら面倒なんで、送ってってやれよ土方コノヤロー」
「チッ…そういうことなら仕方ねーな。…総悟、テメーは残りの巡回サボるんじゃねーぞ!」
「はいはい」
ふーん、沖田くんは気付いてんだ。つーか、コイツと二人っきり?いや…外だけどさ。何か、気まずいよなー。
あれっ?コイツ、さっきより表情が柔らかくなってねーか?えっ、ナニ?俺といられんのがそんなに嬉しいのかよ…へー、可愛いとこあんじゃん。
…って、野郎相手に可愛いってなんだよ!
「…行くぞ」
「お、おう…」
こうして俺と土方は並んで万事屋までの道のりを歩いていった。
* * * * *
「あ、あのよー…せっかくだからウチ上がってかねェか?」
万事屋に着いた俺は何故だか土方をウチに誘った。い、いや…別に変なこと考えてねーって。ていうか、変なことって何だよ!
そうじゃなくて、ここまで送ってくれたお礼的な…?そう!俺は律儀だからね!お礼がしたいんだよ!うん!
「あ?何でだよ…」
「あーだから、ここまで送ってくれたお礼のような…」
「気ィ遣うんじゃねーよ」
「べ、別に気なんか遣ってねーよ。いいから来いよ!」
「お、おう…」
ったく、コイツ意外と消極的だな。惚れた相手がウチに来いっつってんだから素直に乗れよな。沖田くんも言ってただろ?
俺とお近付きになれるチャンスなんだぜ?
…つーか何で俺はこんな必死になってんだ?コイツとお近付きになりたいのか?いやいや、深く考えるのはやめよう。
ただコイツを家に入れるだけだ。他には何もねェ!
「ただいまーっと……ほら、遠慮すんなって」
「お、おう…」
家には誰もいなかった。そういえば新八はコンサートツアーだとかで今日は休みだったな。神楽は…近所のガキと遊んでんだろ。
あれっ?つーことはコイツと二人っきり?い、いや何の問題もねェ!ちょっと茶でも飲むだけだ。
「適当に座ってろよ。今、茶ァいれるからよ…」
「そんなことより…ガキ共はどうした?」
「ああ、ヒマだから遊びに行ってんだろ…」
「じゃあ今は誰もいねーのか?」
「そ、そうだけど…ナニ?」
「…布団はどこだ?」
「へっ!布団!?」
「…こっちか?」
「ちょっ…えぇっ!?」
いいいいきなり布団って…ナニ、そういうことォ!?確かにもう少し積極的になった方が…とか思ったけど、いくらなんでもこれはないだろー!
えっ、まさか…家に上げたってことはそういうことだろ?とか思ってんのか!?違うって!男同士なんだし…まずはお友だちからだろ!
ああああ、勝手に襖開けんじゃねー!ヤバイ、和室に布団敷きっぱなし…
「何だ…布団敷いてあんじゃねーか」
「そそそれは朝からずっと敷きっぱなしだっただけで…」
「万年床か?オメーらしいな。まあいい…寝ろよ」
「ねねね寝るって!?」
えっ、俺が下?…いや、そういうことじゃなくて!下でも上でもまだダメだからァ!
「熱あんだろ?茶なんていいから寝てろよ」
「へっ?あ、なんだ…そういうこと?」
「テメーが具合悪ィっつーからココまで送ってきたんじゃねーか…」
「あっ、うん。なんか悪いね…」
「構わねーよ…ったく、こんな格好してっから熱出るんじゃねーのか?ちゃんと袖通せよ」
そう言って土方は、片方脱げてる俺の着物の袖を通してくれた。
「わ、悪ィな…」
「秋とはいえ、朝晩はかなり冷えるんだからちゃんと着てなきゃダメじゃねーか。何だってこんな面倒臭ェ着方してんだよ…」
「ジャンプの主人公も色々大変なのよ。普通の和服じゃ地味すぎるとかよ…」
「ワケの分かんねーこと言ってんじゃねェよ。ほら…とっとと横になれ」
「お、おう…」
あーなんかいいな、こういうの。でもちょっと恥ずかしいから、もう寝たフリしてよう。そろそろ神楽も帰ってくんだろ。
そしたらコイツも仕事戻るんだろうし…ちょっと残念な気もするな。もう少しコイツと話したかった、かも。
「……銀時」
ななななんだ!いいいい今、銀時っつったか?銀時?何で急に名前で呼ぶんだよ!俺、寝てんのに!?
…あっ、寝てるから呼んだのか?そういやぁ、こないだ名前で呼んだら…みたいなこと言ってたな。俺が寝てる間に練習か?
…いやぁー、普段と違う呼ばれ方すっと照れるな。
あ、あれっ?帰っちまうのか?名前呼んで恥ずかしくなった…とか?……あっ、違ェな戻ってきた。
ええええっ!?ひ、額に土方の手がァァァ!ななな何かさっきより近づいてる気配もするぅ!もももももしかして、寝てる隙にチュウとか!?
ねねねね寝込みを襲うなんて士道不覚悟だぞ!……うおっ、冷てェ!なななな何だ!?
「あれっ、タオル?」
「す、すまねェ…起こしちまったか?」
「あ、いや、別に…」
「また急に赤くなって汗もかいてるみてーだから、冷やした方がいいかと思って…」
「ああ、ありがとな」
何だ、そういうことかよ…。一人で焦って、あー恥ずかしっ。…コイツは本当に俺が病気だと思って心配してくれてんだな。
意外といいヤツなんだよな…よしっ!看病のお礼だ。俺のこと名前で呼ばせてやっか。…ちょっと、いや、かなり照れるけど、
コイツに名前で呼ばれるのは悪くない気がする。
「なあ…俺が寝てる時に何か言った?」
「い、いや…言ってねェ」
「ふーん…じゃあ、あれは夢かなぁ?」
「夢?」
「そっ。お前が俺のこと呼んだような気がしたんだけど…」
「よ、呼んでねー…」
「…ホントに?」
「あ、ああ…」
「ホントかなぁ?まあ、いいや…じゃあ、ちょっと呼んでみてよ」
「よ、万事屋…」
「違ェよ。名前で呼んでみて?」
「ななな名前って…」
「さっきは名前で呼ばれた気がするんだって。一回だけ、な?」
「………ぎ、ぎんとき」
「土方……好きだよ」
「なっ!?」
「えっ?」
な、何ィィィィ!?何言ってんの俺ェェェェェ!!つーか何で土方に抱きついてんのォォォォ!?土方、固まってんじゃん!どーすんのコレ?
つーか、俺コイツに好きって言ったよ!逆だろ?コイツが俺のことを…い、いや、俺だって嫌いじゃないし、今日はコイツのいいところ
沢山知れたし…で、でもあくまでそれは「いいヤツだな」ってことで……そそそそういう意味で好きとかでは…。
でも抱きついて「好き」っつったら、そういう意味にとられるだろ!?どどどどーしよー…。
「ぎ、ぎんと…」
「銀ちゃーん、寝てるアルか……あっ」
「「あっ…」」
とんでもないタイミングで神楽が帰ってきて襖を開けた。咄嗟に土方は俺から離れたが…見られただろうな。
「か、神楽…あのな…」
「銀ちゃんとマヨラー警官がそんな関係なんて知らなかったヨ」
「ちち違うんだって!」
「ガキだからってなめんなヨ。いい年した大人が布団の上で抱き合ってたらそういう関係に決まってるネ」
「あ、あの、神楽ちゃん?ちょっと銀さんの話を聞いて…」
「邪魔して悪かったアル。…でもそういうコトするなら鍵くらい閉めるネ」
「あっ、だからそうじゃなくて…」
「…今日は下に泊めてもらうアル。じゃあな」
「あっ、ちょっ!…あー、行っちまった」
「追わなくていいのかよ。誤解されたままで…」
「あー、いいよ。誤解ってほどじゃねーし…なぁ?」
「…っ!…ま、マジかよ」
「冗談で好きとか言うかよ…しかも、お前相手に」
「ほ、本気なのか?」
「だからそう言ってんだろ?…お前は?」
「お、おれも…」
「そっか、えへへ…」
もう一度俺は土方を抱き締めた。今度は土方も俺の背中に腕を回してくれた。うん、やっぱり神楽は誤解なんかしちゃいねェ…。
俺と土方は「そういう関係」になった。
(09.10.10)
本誌での銀さん復活記念(?)に猫銀さんに萌えて書いた土方さんの片想いを成就させてみました。これだけ読むと、銀さんの片想い話っぽいですね(^^;
猫銀さんは本当に可愛かったので、またいつか書きたいです。単行本出たら、とか…。 ここまでお読み下さりありがとうございました。
追記:続き書きました。初キス話です→★
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