<後編>


繁華街のとある宿のベッドの上。生まれたままの姿で土方と銀時は、頭を逆にして横になり相手の
窄まりへ舌を這わせていた。

「ん……」
「ふっ……」

二人がこうして体を重ねるのは初めてで、何故いきなり「そこ」なのかと問われたら明確な返答は
できない。シャワーを浴び、口付けを交わして抱き合って、それからしたいようにしたら、させたら
自然とこうなった。
屹立し、雫を垂らすモノを無視してそこへ舌を這わせ続けていく。唾液をたっぷり纏わせて、皺の
一本一本をふやかすように、外側から中心に向かい舐められて、じわじわと広がる快感に頭の中まで
溶けていくようだった。

「ハァ……」
「んっ……」

膨れ上がり血管の浮き出た一物が放出を求め、くぷりくぷりと透明な体液を零している。時折、
先端が相手の肌を掠めれば、その微弱な刺激も余すことなく拾い上げ、どくりと脈打ちながら
更なる成長を遂げた。
けれどまだまだ「こちら」に欲しい、与えたい。舌先で僅かに入口を広げて唾液を送り、また
筋目に添って舌を運んだ。

「あ、ん……」
「はっ、ぁ……」

互いのそこは微かに擦れて赤くなっており、初めて見たはずなのにどういうわけか見たことがある
ような気がした。ヤスリでケツでも拭いたのか? からかうように言った銀時には、お前のが赤い
のはそういう訳かと返ってきて、自分も同じなのだと判明。身に覚えはないけれど、何かざらざら
したものでそこを撫でられた経験があるらしい。

「この程度なら舐めときゃ治るな」
「お前のもな」

何やかやと理屈を付けては相手の尻に顔を埋める。ぬめった刺激が心地好いし、何より、こんな
ところを一所懸命舐め回す相手の顔を想像するだけでイケそうだった。


自分の気持ちを伝えてもいなければ、相手の気持ちを確認したわけでもない。色んな順序を
すっ飛ばしてここまで来てしまった気もする反面、きちんと手順を踏んでこの日を迎えた気も
するから不思議だ。

「んっ……んんっ!」
「一回イク?」

返事を聞く前に銀時は、自身の顎の向こうで揺れるモノをそっと握った。

「んうっ!!」

銀時の腰に指先を食い込ませて土方は達する。俄かに訪れた絶頂で乱れる吐息に晒されて、銀時の
窄まりはきゅうと収縮した。
土方はそこへ再び舌を這わせ、仕返しとばかりに銀時のモノを握る。

「あぁっ!!」

左手に精液の感触。満足げに口角を上げて土方が身体を起こせば、銀時の手から一物がぬるりと
抜けた。ふぅと息を吐きながら同じ向きに寝転んだ土方の意図に気付き、銀時は目を閉じる。
予想は見事に的中し、間もなく唇と唇が重なった。

「ん……」
「ん……」

この感覚――先程までも仄かに感じていたが今はっきりと分かった――コイツとは以前にも
こうしたことがある。
不確かな記憶の原因が遥か昔のことでないのなら可能性は一つだけ。獣になってまで男同士で
何やってんだ俺達…………最高の相性じゃねーか。

「んんっ!」
「あっ!」

土方の精に塗れた銀時の指が土方の内部に侵入し、次いで土方の指も銀時に埋まる。入口を二本の
指でくちゅくちゅ広げられると快感で身体が不随意運動を起こし、唇が離れてしまった。下の手を
相手の肩に、上の足で相手の身体を引き寄せて、指を半ばまで挿入する。すっかり回復したモノ
同士が擦れ、内からも外からも、そして上からもぐずぐずに融けてしまいそう。
甘い吐息を漏らしつつ舌先で舌先を擽った。


病院を抜け出して来たとか、バレたら仲間に叱られるとか、そんな理性はきれいさっぱり消え
失せて、本能の赴くままに快楽を享受する。目の前の相手と熱を分かち合えたらそれでいい。
それがいい。
唇を合わせ内部の快楽点を抉れば、ふるりと震えて出さずにイッた。

「とし……」
「ぎん……」

自ずと出てきた呼称を気に留める暇もなく、更に強く抱き締めて体重を乗せ、銀時は土方の上に
なる。唇から首筋を通り左の鎖骨へ、ちろちろと舌で辿り、終着点をきつめに吸い上げれば、
刹那の痛みとともに紅く小さな内出血痕が残った。
顔を上げ、へへっと照れ臭そうに笑う銀時の背に腕を回し、土方はその首筋に吸い付く。

「そういうことするんだ……」
「あ?」

土方のためを思い服で隠れる場所を選んでやったというのに――やられたらやり返す! 左右の
首筋に一つずつ己の印を付けてしたり顔。それがどうしたと土方も下から負けじと鎖骨や胸元に
紅を散らしていく。その結果、

「うわっ……ヤバイ病気みてぇ」
「仕掛けたのはテメーだろ」

気付けば首から胸まで斑模様になっていた。銀時に責任を押し付ける土方へ、先に目立つ痕を
残したのはそちらだと反論。けれど銀時は土方の上から下りようとはしないし、土方もそれを
阻むかのように確りと抱き寄せている。
顔の横に銀時の頭を押さえ付け、耳朶を舌先でつつきながら土方が囁く。

「テメーが先に付けたからこうなったんだ」
「んっ……お前が付けて欲しそうにしてたからだろ」

銀時の手が肩、上腕を通過して腰の下へ到達すると土方の舌が瞬間的に止まった。

「もう耳はおしまい?」
「っ……」

その隙を逃さずふっと耳の中へ銀時の呼気を吹き込まれ、土方は総毛立つような感覚に襲われる。
強引に上下を入れ替え、倒れ込む勢いで口付けた。身体に身体を押し付けて、両手で天然パーマを
まさぐりつつ銀時の唇を何度も何度も舐めていく。薄く開いた隙間には目もくれず、土方の舌は
銀時の唇を往復していた。
その間に、銀時の手が土方の背骨を辿り下へ下へ……

「んんっ!!」

尾てい骨の辺りで、二人に挟まれていた土方のモノは弾けた。だが手は止まらずに再び中へ侵入
していく。

「んんんんんっ……」
「としィ、俺も気持ち良くなりたい」
「あ……」

シーツと腰の隙間へ右腕を通して身体を倒せば、また横向きで抱き合う体勢に戻った。刺激し合う
にはこちらの方が楽。土方の指が銀時へ三本挿入される。

「ハッ、あぁ……」
「うぁっ!」

入れただけになっていた指を動かされ、土方の身体がびくんと跳ねた。もうすっかり感じる箇所は
心得ていて、銀時の指に操られてでもいるかのごとく土方は震え喘ぐ。

「あ、んんっ……あっ!」
「あぁんっ!!」

けれど相手の身体を熟知しているのは土方も同じ。中の指が蠢きだせば銀時もぶるりと身体を
震わせた。身体の中の、最も気持ちの良い所に触れながら、己の刻んだ紅い印に舌を伸ばす。
二人の間で硬く張り詰めたモノは、くぷくぷと体液を零し続けていた。

*  *  *  *  *

翌朝、けたたましく響く扉を叩く音で二人は目を覚ました。時計は九時過ぎを指している。何時に
寝たのか記憶にないが、それは天人の薬の副作用ではなさそうだ。
無駄な抵抗はやめて出て来なせェ――外から聞こえた沖田の声に、最悪の第一発見者だと土方は
頭を抱えた。次いで、

「わんわん!」

この場所を発見した功労者であろう愛犬の声を聞いて銀時も。他にも何名かの気配があって、声は
しないが誰がいるのか想像は容易い。
あまり気の長い連中ではないから、ものの数分で強行突入を決めるだろう。場所が場所だけに
自分達の関係を偽るのは諦めた。行為そのものがなかった振りをするのも不自然過ぎる。だから
せめて、後先考えずに睦み合ってしまった痕跡くらいは隠したいのだが――
顔や髪にまで飛び散り固まった体液、浴衣を羽織る程度では覆えない紅痕の数々、部屋中に漂う
饐えた匂い――

全てを忘れて猫になりたいと、かなり本気で願う恋人達であった。

(14.07.15)


銀猫は最萌えキャラだと思っています。
四期に渡って参加してきたウェブ企画、今回のサークルカットと表紙はこちら←
一〜三期のサークルカットには「銀猫は出て来ません」と書いて、今回は左記の
ようにして密かに(?)銀猫の登場をほのめかしてみました。
ここまでお読み下さりありがとうございました!




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