2009年ハロウィン記念小説(銀土版)後編
「いらっしゃい」
「おう」
昼間の約束通り、仕事を終えた土方は夜になって万事屋を訪れた。
事務所兼居間のテーブルに銀時が夕飯を用意し、二人は並んで座ってそれを食べる。
「ガキ共は…もういねェのか?」
「ああ。何か志村家でハロウィンパーティーやるとかで、屯所から直接そっちに行ったらしい」
「お前は行かなくて良かったのか?」
「志村家のパーティーってゴリラ女の作った料理が出んだぞ?行くわけねーだろーが」
「ははは…」
ハロウィンパーティーというのは神楽が志村家へ行く口実にしただけで、実際には行われない。
客商売のお妙にとってこういったイベントは稼ぎ時であるため、今日は遅くまで―というか明日の朝早くまで仕事なのだ。
銀時もそれに気付いていたが、子どもたちの気遣いを思い気付かないふりをしている。
「じゃあコレ…明日にでもチャイナに渡してくれるか?」
食事が済んだ土方は、そう言って銀時に酢こんぶを一箱手渡した。
「ホント、おめーって律儀だよな」
「それからコレはテメーにだ…」
「この箱は、もしや…ケーキ?」
「ああ」
「うわぁ、マジで買ってきてくれたんだな!サンキュー、土方!」
銀時は嬉々として土方からケーキの箱を受け取り、中を確認した。
「すげェェ!!これ、駅前のくそ高ェケーキ屋のハロウィン限定かぼちゃのタルトじゃねーか!」
「…よく知ってるな」
「そりゃ知ってるって!店の前はよく通るんだけどよー…とにかく高ェから、いつも見るだけだったんだよなぁ」
「高いっつったって…買えない程じゃねーだろ?」
「そりゃ、何万もするわけじゃねーけどよ…これ一つの値段でコンビニケーキなら三つは買えんだぞ?
そうなると考えちまうだろ?たっかいケーキ一個食うか、それとも安いのを腹いっぱい食うか…」
「そういうもんか?」
「そういうもんだろ?お前だって、高級マヨネーズ一口といつものマヨネーズ好きなだけ、とかだったら考えるだろ?」
「まあ、そうだな…」
「だけどいつかは高級な方も食べてみたいよな?だからホントに嬉しい。ありがとな、土方!」
「おう」
満面の笑みを浮かべてケーキを箱から取り出して口に運ぶ銀時を、土方は煙草を吸いながら眺めていた。
まるで子どものようにはしゃぐ銀時を見ていると、土方も嬉しくなってくる。
甘い物のことはよく分からないので、見回りの最中に見付けた店でハロウィン限定と書かれたものを買っただけなのだが
このケーキにして本当に良かったと思っていた。
* * * * *
「ところで、銀時…」
「ん?なぁに?」
夕飯もデザート(銀時のみ)も食べ終え、後片付けも入浴も済ませた二人は、再び居間のソファに並んで座り
お茶を飲みながらテレビを見ていた。テレビからは各地のハロウィンの模様が伝えられている。
視線はテレビ画面に向かったまま、土方は銀時に話しかけた。
「俺の菓子は?」
「……へっ?」
「だから俺の菓子はどうした?」
「えっ…あの…」
「用意してねーのか?」
「あ…いや、その…」
「…イタズラ決定」
「はい?…んんっ!」
土方は昼間よりも瞳に艶を滲ませて銀時の方を向くと、徐に銀時の首に腕を回して口付けた。
突然のことでパニックに陥った銀時は、土方の唇が離れていっても状況が理解できないでいた。
「う…えっ?な…あれ?」
意味不明な言葉を発するしかできない銀時を置いて、土方の「イタズラ」はどんどん進んでいく。
銀時をソファに押し倒すと、寝間着のズボンと下着を一気に抜きとった。
「ちょちょちょちょっと待て!タイトル見たか?これ銀土だからっ…うひょわぁっ!」
「………」
答える代わりにニッと艶やかに笑って、土方は銀時のモノを咥えこんだ。
「ああああの…ひじかた?」
「……んー、あんら(なんだ)?」
「ちょっ…くわえたまま、しゃべんないで…」
「りゃあ、はなひかけんな(じゃあ、話しかけんな)」
「わわっ…だからしゃべるとヤバいって……くっ!」
土方は手と口を使って的確に銀時の性感帯を刺激していく。未だに自分の状況が理解できない銀時も
土方の妙技に翻弄されて、息子の成長を止められそうになかった。
「そ、そこ…ヤバっ!」
「んっ、んっ…」
「はっ…き、きもちー…」
何だかよく分からないけど気持ちいいからいいや…銀時はそんなことを思いながら土方の口淫を受け入れていた。
だが、激しさを増していく土方の動きに、銀時は徐々に我慢できなくなってくる。
「ひ、ひじかた…もうっ」
「…入れてェか?」
「あ、ハイ」
「仕方ねーな…」
土方は何処からか潤滑剤を取り出すと、完全に裏返っている銀時のモノにそれを塗っていく。
「土方…」
「勝手に起きんじゃねーよ。まだイタズラの途中なんだからな」
「は、はい…」
漸く土方に触れると思い銀時が体を起こそうとすると、土方がそれを咎める。
今日の土方には何故か逆らえる気がせず、銀時は素直に従った。
銀時がおとなしく横になったのを見届けてから、土方は銀時を跨ぐと
潤滑剤でヌルヌルになった銀時のモノを自身の後孔に宛がい、深呼吸を一つしてからゆっくりと腰を下ろしていった。
いつの間にか下着は脱いでいたらしい。
「お、おいっ!まだ解してな…えっ?」
「はっ…あ…」
何の準備もせずに挿入しようとする土方の腰を掴み、銀時は慌てて止めた。
だが既に自身の先端部分が埋め込まれ、土方は甘い息を吐いていた。
「あ、あの…」
「手…離せ。入んねェだろーが」
「で、でも…」
「この体勢はキツいんだよ…」
「あ…ゴメン」
「よしっ…んっ!」
確かに中腰のままでいるのは辛いだろうと銀時は手を離す。すると土方は挿入を再開した。
ここへ来て銀時は、更に状況把握ができなくなっていた。
土方と「そういう関係」になってから随分経つし、身体を繋げたこともたくさんある。
けれど、本来受け入れる器官ではないソコへ準備なしに挿入するのは不可能で…
以前、久しぶりの逢瀬に我慢できなくなって、潤滑剤を塗っただけで挿入しようとしたことがあった。
だが入口は硬く閉じていたし、それでも無理に入れようとしたら、激痛を感じた土方が本気で怒り
危うく大事な息子を斬り落とされそうになったのだ。
それなのに今日の土方ときたら痛がるどころか、恍惚の表情を浮かべながら進んで銀時を迎え入れている。
「な、なあ、土方…なんで?」
「あ?何のことだ?」
最奥まで銀時を咥え込み、一息吐いた土方に銀時は疑問を投げかけた。
「だから…なんで、入ってんの?」
「ああ?テメーが入れたいっつったんだろーが」
「そうじゃなくて…。解してもいねーのにさァ…」
「…自分でヤった」
「はぁ!?いつ!?」
「風呂入った時…」
「な、なんのために?」
「てめーにイタズラするために」
「えっ?イタズラって…あっ!…ううっ!」
「あっ!はぁ…んんっ!」
土方が腰を動かし始めたことで、会話は途中で打ち切りになった。
「ひじかたっ!」
「あぁっ…はあん!…あぁっ!」
銀時の腹に手を置き、自身の快楽点が銀時の先端で擦れるように土方は腰を動かす。
土方が感じる度にナカがキュウキュウと締まり、銀時を追い詰めていく。
「あぁん!…あぁっ!」
「す、すげっ…」
「…んぁっ!はあっ!」
「はぁ…くっ!」
「…………」
「えっ?…ひじかた?」
銀時が達する直前、土方はピタリと動きを止めた。
「あ、あの…銀さん、もうイキそうなんですけど…」
「知ってる」
「じゃあ、動いて?」
「ダメだ」
「じゃあ、俺が動いて…」
「それもダメだ」
「じゃあどうすれば…」
「我慢しろよ」
「い、いや…もう、無r…」
「一緒にイこうぜ?なあ、銀時ィ…」
「うっ…」
妖しい笑みの土方が上半身を倒して次第に銀時へ近付き、チュッと軽く口付ける。
官能的な土方の姿に、もともと早かった銀時の鼓動は更に早くなる。
「すげェ…お前のがナカで脈打ってんの、分かる…」
「あうぅっ…」
「なぁ…一緒にイッてくれるだろ?」
「…が、がんばりマス」
「じゃあ、動くからな?」
「は、はい…」
「んっ、んっ!…あぁ!」
「うわっ…くぅっ!」
土方が動くと再び銀時を快楽の波が襲う。このままじゃマズい…銀時は土方の前に手を伸ばした。
だが、銀時の手は土方によって遮られてしまう。
土方の動きに堪えられない銀時は、土方に懇願する。
「ひじかた…触らせてっ!」
「だ、めっ!…あんっ!」
「はっく…こ、このままじゃ、無理だって!」
「お、れの…前、さわったら…いっしょに、イケる?」
「…た、たぶん」
「わかった…」
「じゃあって…えええっ!」
銀時が再び手を伸ばそうとすると、それより早く土方は自分で自分のモノを扱きだした。
「ひひひひじかた?わわっ…しまるっ!」
「はあんっ!ああっ!!」
「うぁっ!…っくぅ!」
「ああっ…ぎんとき、ぎんときっ!」
土方はダラダラと雫を零す自身を弄りながらも腰の動きを止めようとしない。
「…じかたっ、もっ…限界っ!」
「ああっ!ぎっ…とき、おれもっ!」
「あっ……くぅっ!!」
「っあああ!!!」
銀時が土方のナカに放つとほぼ同時に、土方の手の中のモノも弾けた。
* * * * *
「なあ土方、今日は…どうしたんだ?」
「何が?」
呼吸が整ったところで浴室に行って後始末を終えた二人は、和室に敷いてあった布団に入った。
布団の中で銀時は土方を後ろから抱き締めている。
「何がって…やたらと積極的っつーか、エロいっつーか…」
「ああ…ハロウィンだからな」
「…イタズラ?」
「ああ。たまには俺主導でヤってみたかったんだ」
「そっか…で、感想は?」
「疲れる。いつもの方がいい…」
「はははっ。おめーMだからな…」
「誰がMだ、誰が」
「はいはい…じゃっ、おやすみー」
「おう…」
こうして、恋人たちのハロウィンは更けていった。
(09.10.31)
photo by 素材屋angelo
ハロウィン銀土後編、いかがでしたでしょうか?無駄に長いですね; たまにはイタズラされる銀さんを書いてみたかったんです(笑)。土方さんは、夜に会う約束をしてからずっと、銀さんにどう「イタズラ」するか
考えてたんだと思います。基本Mの土方さんですが(?)、わたわたしてる銀さんを見るとちょっとSになります。普段ドSで余裕たっぷりの銀さんが慌ててると、楽しくてしょうがないんですよ(笑)。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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