おまけ(銀土版)
心なしか江戸より涼しく感じられる山間の町。駅には旅館の車が迎えに来ており、その車体に
印字された宿の名を読み銀時は感嘆する。
「温泉ってここだったのかァ」
「えっ?」
何年振りかと指折り数える銀時に土方は目を丸くした。
運転手に名前を告げて中へ入ればすぐに出発。この時間の客は自分達だけらしい。新八と神楽が、
通常より一時間早くチェックインできるよう計らったと言っていたが……
「知らなかったのか?」
「だってお前、温泉としか言ってなかったじゃん」
「あ……」
新八も神楽も銀時には内緒で宿を予約したのだ。実際に行くことが決まっても自分達から話す
はずがないではないか。
かといってこのまま自分の手柄にするのは本意でない。旅館を決めたのも滞在時間を長くしたのも
二人がしたことと教えてやった。
車は緑に囲まれた山道を上っていく。銀時はちらりと運転手の様子を伺うと、土方の手に自分の
それを重ねた。視線は木々に向けたままで。
* * * * *
「すげぇ……」
旅館に到着し、部屋に案内された銀時はその豪華さに息を飲んだ。
二間続きの和室。その横にもう一つ扉があり、洋間も一室。大きい窓の下に見えるのは谷川。以前に
ここへ来た時とは全く異なる特別室。
茶菓子の用意をしている仲居に気取られぬよう土方に耳打ちする。
「俺、土産代くらいしか持ってないんだけど」
「誕生日のヤツに払わせやしねぇよ」
いいから座れと沈められた座布団はふんわりし過ぎて落ち着かない。座椅子を除けて畳の上で
胡座をかき、出てきた温泉饅頭を一口で平らげた。
「さてと、風呂に行くか?」
二人になって一息吐いて、土方は浴衣の棚を開いた。浅緑色の浴衣は衿の裏に旅館の名が刺繍して
ある。表に堂々と宿名がプリントされた一般客室用とは異なるもの。
「大浴場はまだ開いてねーよ?」
上等そうだからと着替えてはみたものの早入り宿泊の二人。通常営業の大浴場が利用できるまで
まだ時間があると銀時は言う。
「部屋風呂なら入れるだろ」
「げっ……」
部屋風呂の全貌が明らかになり、銀時は思わず身震いした。小さめのシャワー室のその奥に、
男二人でもゆったり浸かれるであろう檜の湯舟。三方は木の壁で囲われているものの前面には
転落防止の柵のみで、ざあざあと川の流れが聞こえる。
ここは、露天風呂付きスイートルーム。
「宿代、少し出すよ」
いくら何でも奮発し過ぎ。自宅で料理を振る舞っただけの五月とは比較にならない。
だが土方は土方で、費用がかかるだけの今回は手間隙かけてくれた五月と比較にならないと
思っていた。
恐縮し続ける銀時を、とりあえず入れと浴場へ押しやるのだった。
「あ〜、癒されるぅ……」
浴槽の縁の上で腕を枕に俯せて、湯中の足を時折ばたつかせながら露天風呂を満喫する銀時。
反対側の縁を背凭れにして浸かりつつ、土方の口元は自然に緩む。
谷川の流れに沿うように響く、樋を伝って湯舟に注ぐ温泉水の音。二人は目を閉じその旋律に
耳を傾けていた。
「ぐっ……」
「あ、悪ィ」
遊ばせていた銀時の爪先が土方の股間を直撃。咄嗟に出た謝罪から故意ではないと分かったけれど
その後、こちらを向いたしたり顔に土方は漸く本調子になったと悟る。
「部屋風呂だと制限時間なくていいよなァ」
「前の時はテメーのせいで散々だった」
以前この宿を訪れた時には時間貸しの家族風呂を二人で利用した。その際「誕生祝い」の名目で
事に及んだのであるが、焦らしに焦らしたせいで規定時間をオーバーし、清掃員に最中の声を
聞かれてしまうということがあった。
だが張本人は何処吹く風。
土方を引き寄せて後ろから抱き締める。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけど……土方くんのエッチ」
「なら俺は上がる。もう充分温まったからな」
「えっ!」
腹に回る腕を難なく解いて立ち上がれば、慌てた様子で手首を掴まれた。
「折角だから温泉エッチしようよー」
「だったら……」
最初から素直にそう言いやがれ――くるりと向きを変えて土方は、銀時の足を跨いで座る。湿気を
多分に含みうねりの取れた銀髪に唇で触れ、見上げる瞳へ挑戦的な視線をくれて「何処をどうして
欲しい?」と問うた。
「えっと……触らせて?」
「好きにしろ」
背後の手がちゃぽんと沈み、双丘へと辿り着きそこを揉み拉いていく。
短く息を詰めて土方は、日の光を反射する銀色に縋った。
「はっ……」
浮力を借りて尻を押し上げられ、膝立ちになった土方。背を丸めて銀時は、目の前の小さな突起に
吸い付いた。吸いながら舌先で転がして、腰が引けた瞬間、割れ目をなぞる。柔らかい泉質の
おかげで滑らかに進む指。土方の後孔は更なる刺激を求めてきゅうと収縮した。
「もう欲しい?」
「……何を?」
辱めつつ強請らせようと思ったのに、反対に言わせられようとは……湯の中で硬く反り返るモノを
握ってみても、妖艶な笑みは崩れない。だが我慢勝負を挑んだところで焦らされ慣れた土方には
勝てる気がしない。
「チ〇コを入れてもいいですか?」
「好きにしろ、つっただろ」
けれど諦めてこちらから伺いを立てれば、あとは誕生日の名の元に、お風呂でヤりたい放題。
「じゃあ自分で入れて」
両腕を湯から出し、浴槽の縁に上げて空を仰ぎ、よろしくお願いしまーすとその身を委ねる。
「はいはい」
そう来ると思っていたとばかりの態度で土方は、右手を前から回して一物を握り、先端を自身の
入口に押し当てた。
そこから先は手も不要。銀時の肩に置いてゆっくり腰を下ろしていく。
「ハァッ……」
「今更だけど、ローションなくて平気?」
解してもいないしと銀時が言えば、本当に今更だなと鼻で笑われた。
「平気じゃないように見えるか?」
「いや」
掴んだ土方のモノは相も変わらず硬いまま。ぬるついているのは温泉の成分のせいかそれとも――
「んっ……」
試しに鈴口を人差し指で撫でれば、明らかに温泉とは異なる感触。気を良くした銀時は手の中の
モノを扱き上げていった。
「ハッ、あ……んんっ!」
本格的に刺激が与えられたのを合図に土方は腰の浮沈を繰り返す。ざばざばと波立つ水面に
たゆたいながらも動いていくと、新たに波が生まれてぶつかった。
「はっ、あぁっ!」
「そんなに大きい声出したら、他の部屋にも聞こえちゃうよー」
「っ……うあっ!」
はっとして動きを止めた土方のナカ、銀時は下からぐいと突き上げる。それと同時に一物をきつく
戒め、強制的に放出を止めた。
過ぎた快感が体内で蠢き、土方を苛んでいく。
「ひあっ……あっ、ああっ!」
こうなると声を抑えるどころではなくなってしまう。銀時に身体を預け、揺すぶられるままに
嬌声を上げた。
「キス、しよ」
「うんんんっ!!」
「っ!!」
ぶつかるように口付けて、土方は出さずに達する。その直後、銀時も土方の内に精を放ち、戒めの
手を緩めた。
「あ、あ、あ、あ……」
びくびくと震えながら白濁液を吐き出す土方を抱き締め、銀時はその首筋に紅い印を刻む。
木々が揺れ、川が流れ、遥か上空で鳥が鳴く――雄大な自然の情景も今の二人には届かなかった。
* * * * *
「一発で終わっちまったなァ」
浴衣一枚を肩に引っ掛け、グラスの冷水を一気に飲み干す銀時。保冷ポットに氷水完備だなんて
流石は豪華客室だと感心する一方で、専用露天風呂を使いきれなかったと悔しがる。
「あの後、背面座位からバックにもってく予定だったのに……」
「のぼせて死ぬわ」
冷静にツッコミを入れる土方は、辛うじて帯も締めていた。
風呂で二人とも果てた後、熱いから出ようと言ったのは銀時である。外気に晒されているとはいえ
湯に浸かりながら激しく動けば血流過多になるのは明白。支え合いながら浴室を後にしたのだった。
空いたグラスを再び冷水で満たす銀時の手に、そっと土方の手が添えられる。
「冷てぇもん飲み過ぎると腹壊すぞ」
「じゃあお湯と混ぜて……」
湯沸かしポットに向かう銀時を、そんな面倒なことをする必要はないと引き止め、ニッと笑う。
銀時のグラスの水を半分口に含んで。
「んー」
銀時の膝に乗り上げ、唇を重ねて水を送り込む。土方の熱で程よく温くなった水が渇いた体に
浸透していった。
「お前も飲むだろ?」
「ああ」
残りの水が銀時から土方へ送られて、その帯がしゅるりと解かれる。
「元気になった?」
「お前がな」
元より露出していた下半身はすっかり回復していた。その様子に土方もすっかり元気になる。
「もう一回、風呂入らねぇ?」
「いいぜ」
その場に浴衣を脱ぎ捨てて、二人は湯気の立ち上る空間へと戻って行った。
(14.10.10)
長くなったので一旦切ります。続きはこちら→★