2012年バレンタイン記念作品:おまけ
神楽に直接銀時と話すよう言われた夜、約束の十時を少し過ぎて土方は万事屋を訪れた。
思えばこれが、付き合ってから初めての自宅訪問である。呼び鈴を押す手が若干ぎこちないのは
仕方のないことだろう。
「いらっしゃい……」
「おう……」
出迎えた銀時の表情も普段より強張っていて、二人の間に妙な緊張感が漂い始める。
「ひ、昼間は神楽のヤツが邪魔して悪かったな。俺はちらっと『どーしよーかなー』みたいな
感じで、軽〜い気持ちでね、言っただけだったんだけど……」
「そうか……」
「お前、仕事忙しかったんだろ?いや、まさか神楽が行くとは思わなくて……その辺の説明も
したんだけど、ガキは待つってことを知らねェからよ……」
「そうか……」
緊張のあまり饒舌になる銀時と口数が極端に少なくなる土方……二人は一度も目を合わせること
なく廊下を進み、ソファに腰を下ろした。
「そ、それで……どうする?」
「なっ何が?」
「バレンタインに決まってんだろ。……お前、何しに来たわけ?」
銀時の言い方に土方はムッとした表情を見せたが、その小さな怒りで緊張は解れていた。
「ちょっとド忘れしただけだ。……バレンタインは俺がチョコやるよ」
「だからそれだと、お前が受けっぽく見えるって……」
「周りからどう見えようと関係ねェだろ……。テメーの方がチョコ好きなんだからもらっとけ」
「まぁそうなんだけど……」
「つーか、お前は受けたいのか?」
「え?そういう土方は受けたいの?」
「俺が聞いてんだよ。受けたいのか?」
「土方は?受けたいの?それとも、俺が受けてくれると思ってホッとしてんの?」
「……ホッとしてる?」
土方は銀時に鋭い視線を向ける。
「何でテメーが受けたらホッとしなきゃなんねぇんだよ」
「だって土方くん、突っ込まれるの怖いんでしょ?」
銀時はからかうような口調で応戦する。
「あ?テメーの粗末なモンの一本や二本、どうってことねぇよ。怖いのはテメーだろ」
「何言ってんの?そうか……お前の粗末なモンで銀さんを満足させる自信がねェんだな?」
「それはテメーだろ……。ナニにもテクにも自信がねぇから受けたいんだろ?」
「受けたいなんて言ってませんー。やっぱ受けてほしいんだろ?……自分は受けるのが怖いから」
「あ?そうまで言うならヤってみやがれ!格の違いを見せてやらァ!」
「それはこっちの台詞だ!銀さんのナカで天国見せてやる!」
「俺が先に受ける!」
「いいや、俺が先だ!」
二人は着物を脱ぎながら和室へ向かい、敷かれていた布団へなだれ込んだ。
* * * * *
話し合い―というより言い合い―では一向に決まらないため、二人はジャンケンで受け攻めの
順序を決めることにした。
けれど今度は勝った方がどちらを選ぶかで一悶着あり、最終的にあみだくじで決着した。
結果――銀時が暫定受け。
仰向けに寝た裸の銀時に土方が口付けを落とす。嫌だったら止めろと言う土方の瞳に先程までの
挑戦的な色ではなく気遣いが感じられて、銀時は居た堪れない心地がしてくる。
「なに急に優しくしてんの?気持ち悪ぃんだよ……」
悪態を吐き視線を横に逸らした銀時の頬は薄紅色に染まっていて、土方はくすりと笑って
その頬にまた口付けた。
* * * * *
「んっ……ぁ……」
潤滑剤に濡れる後孔に土方の指を三本受け入れて、銀時から切なげな声が漏れる。
「……大丈夫か?」
「うん……もう、入れていーよ」
「そうじゃなくて……」
これ以上は無理なのではないかと思った土方であったが、銀時は先に進んで構わないと言う。
更に銀時は、か細いけれど熱の篭る声で大丈夫だからと言って、土方の一物をそっと握った。
「これ、入れてよ。一つになろーぜ、土方くん」
「あんまり煽るな……優しくできなくなる」
土方は指を抜き、銀時の腰を抱えた。
「お手柔らかにね〜」
「……多分、無理」
「プッ……正直すぎ」
「るせぇよ……エロ過ぎるテメーが悪い」
「……銀さんのハダカに興奮する?」
「まあな」
「そっか……」
銀時はふっと表情を緩ませて身体の力を抜き、土方にその身を委ねた。
「んっ……ハァッ……」
土方の鈴口が銀時の菊座に押し当てられ、異物の侵入を拒む孔に逆らいながら、奥へ奥へと
慎重に進んでいく。
半分ほど挿入したところで土方が訊ねる。
「……キツくねぇか?」
「まあ、なんとか……」
本当はキツイし苦しいし辛い……けれど銀時は額に汗を滲ませながら健気に笑顔を作る。
どうしてそこまでするのか、銀時自身よく分かっていなかった。いつになく自分を労わる土方に
絆されたのか、上手く受けてやるという意地か……一つだけ確実なのは、このまま最後まで
イキたいという気持ち。それは土方も同じであった。
汗で張り付いた銀時の前髪を掻き上げて額に口付け、土方はできる限りそっと挿入を続けた。
「……全部、入ったぞ」
「うん……入ったな」
「あの……大丈夫、か?」
「大丈夫じゃねぇ」
「え……」
「すんげぇキツくて、全っ然大丈夫じゃねぇよ」
挿入という目的は達成されたと、銀時はここぞとばかりに本音を漏らす。
「す、すまない……」
「でもな……不思議と嫌じゃねェんだ」
「万事屋……」
「お前は?俺のナカ、気持ちいい?」
「勿論だ!」
「……動けばもっと気持ちいいだろ?」
妖艶な笑みを湛えて言う銀時に、土方は込み上げる欲をぐっと堪えて頭を横に振った。
しかし銀時は、そんな気遣いなど無用だからと急かす。
「いや、しかし……」
「俺が動いて欲しいんだよ。……もっとオメーを感じてぇの」
「――っ!……キツかったら言えよ?」
「はいはーい」
銀時の唇に口付けてから、土方はゆっくり自身を引き抜いていった。
「ハァ、ハァ、ハァ……あっ、そこ……」
一物が抜ける際、張り出した部分に内壁が擦られて銀時の身体がぴくりと反応を見せた。
土方はその辺りを狙って再び自身を埋めていく。
「ここ、か……?」
「んっ……そこ。気持ちいい……」
それから土方は、銀時の感じる箇所を通るようにして腰を動かしていった。
「それっ、いい!あっ、あっ……」
声を上げて感じ入る銀時に、土方も安心して動きを大胆にしていく。
「あぁ!……ひ、じかたっ……」
「万事屋っ……」
さ迷うように上がった銀時の両腕が土方の肩を引き寄せ、それに応えて土方は銀時に覆い被さり
熱く口付ける。
「んっ、んっ……ぷはっ!ひじかた、もっ、イキたい……」
「ああ……」
土方は銀時のモノを扱きながら自分のモノで激しくナカを突いた。
「あ、あぁっ!それ……いいっ!イク!イクイクイクイク……」
「万事屋っ……!」
「イクイクイっ…………ああぁっ!!」
「っ……くっ!!」
銀時は達し、その直後に土方は自身のモノを抜いて銀時の腹の上に吐精した。
「あ〜……マジで最高だった」
満足そうに息を吐きながら銀時は身体を起こし、腹にかかった二人分の精液を指に絡めていく。
「お前もヤってやるよ。四つん這いになってー……」
「……おう」
銀時の求める体勢に一瞬、躊躇いが生じた土方であったが、どんな体位にしろヤるからには
恥ずかしい部分も全て見られてしまうのだと諦め、両手両膝を布団に付いた。
「じゃあ、いっくよ〜」
「ああ」
「えいっ!」
「うあ!」
銀時は精液に塗れた指を二本いっぺんに土方のナカへ捩じ込んだ。
予想外の衝撃に土方は振り返って銀時を睨み付ける。
「てんめっ……痛ぇじゃねーか!」
「土方くんハジメテ?まあ、そのうち慣れるって……」
「そういう問題じゃねぇ!テメーが優しくヤれば万事解決すんだよ!」
「はいはい、優しく優しく……」
「う、あ……てめっ……」
口では優しくと言いながら、銀時は遠慮なしに中の指をぐにぐにと動かして快楽点を探る。
土方は下を向き、両手でシーツを掴んで異物感に耐えていた。
「……ここ?」
「あっ!」
間もなく、銀時の指先が前立腺を発見した。すると銀時はそこばかりを攻め立てる。
「あぁっ!くっ…………ああっ!」
自分の声とは思えぬ淫らな声を土方は必死に抑えようとしていたが、そこを刺激され続けると
つい声を上げてしまう。
それと同時に、悔しそうに喘ぐ土方の姿は銀時の加虐性を大いに煽っていた。
「……もう入れていい?」
「は?」
「つーか、入れるね」
「待……ああぁっ!!」
決して充分に解れたとはいえない土方の後孔に、銀時の肉棒が押し入ってくる。
土方は強い痛みと共に、メリメリと自身の裂ける音が聞こえた気がした。
「きっつ……。土方くん、息吐いて〜。はい、リラ〜ックス……」
「無、理だっ……抜けっ……」
「切れてはないから大丈夫だって。……あ、ローション塗ってあげる」
銀時は布団の上に転がっていた潤滑剤のボトルを取って、接合部に垂らしていった。
何で塗ってあげるなどと上から目線なんだ。一旦抜いて中にも棒にもそれをちゃんと塗れ。
ていうか、さっき自分は銀時にもっと時間を掛けたではないか……言ってやりたいことは
山ほどあれど、今の土方は痛みに耐えるので精一杯であった。
「う、くっ……あっ!」
「ハァ〜……お前のナカ、狭くて最高……」
銀時は激しく腰を打ち付け、互いの身体がぶつかって乾いた音を立てた。
「んんんっ……」
「あー、やべっ……もうイキそう……」
「ああっ!」
締め付けの心地好さに堪らず、銀時は腰を動したまま前へ手を伸ばして土方のモノを扱き始める。
「あ、あ、くっ……ああぁっ!!」
「んっ!!」
土方は銀時の手の中に、銀時は土方の中に精を放った。
「あー……突っ込むのも気持ちいいな」
「ハァ、ハァ……」
繋がった体勢のまま銀時は率直な感想を述べるけれど、忙しない呼吸を繰り返す土方に返事を
する余裕はまだなかった。
「もっかいヤっていい?」
「あ?ちょっと待……くっ、あぁ!」
土方の息が整う前に銀時は律動を再開させた。
「あああぁぁ〜……!」
* * * * *
「いや〜、気持ち良かったな。どっちが受けとか決めないで、交代でヤらねェ?」
二連戦の後で漸く繋がりを解いた銀時は、満足そうにごろりと横になり天井を見上げながら言う。
けれど、交代云々の前に土方には言っておかなければならないことがあった。
「遠慮なしにガンガン突きまくった揚句に中出ししやがって……このドS野郎!」
「え〜……だって土方くん、嫌がってなかったからいいのかなァって……」
「何処がだ!?痛ぇって何度も言ったじゃねーか!」
「けど、痛いの好きなんだろ?」
「あ?テメーと一緒にすんな、変態が!」
「いやいやだって……土方くんのチ○コ、ビンビンだったよ」
「は?」
「あ、自覚なかった?まあ確かに辛そうな顔してたけど……でも、チ○コは萎えないどころか
ビンビンになってたぜ。気持ち良かったんだろ?」
「…………」
嘘だと言いたかった。だが、否定できる材料が土方には見当たらなかった。
銀時の言うような性癖が自分にあるとは到底思えない。できれば優しく抱いてほしかったと
今でも思っている。けれど先の交わりで、きちんと吐精できるほどに感じたのは事実である。
枕を見詰めて黙ってしまった土方の背中を、銀時は笑顔でバシバシと叩いた。
「別にMなのは恥ずかしいことじゃないって。俺はドSだから、相性バッチリだぜ!」
「…………」
お門違いな慰めを受けた土方は無言のまま銀時を睨み上げた。
「何だよ……お前がMだからって引いたりしねぇよ?むしろ興奮したから!何ならもう一回……」
「っざけんな!」
「おわ!」
再び覆い被さろうとする銀時の手を払い除け、土方は逆に銀時を布団に縫い付けた。
仰向けに転がされた銀時の両手首を掴み、力の限りシーツへ押し付ける。
「あの……痛いんですけど……」
無言で睨まれた銀時は、委縮して思わず敬語になる。
「俺ァもっと痛かったんだよ」
「すいませーん」
手首を掴む力は僅かながら弱まったものの、土方は相変わらず銀時を睨み付けたまま。
「ナカからヌルヌルが出てきて気持ち悪ィしよ……」
「本当にすいませーん」
「……テメーも同じ目に遭わせてやる」
「えっ、ちょ……ああっ!」
銀時の手首を離し、土方は自身のモノを素早く扱いて勃たせると一気に根元まで挿入した。
既に一度土方を受け入れていたため、実際に大きな痛みを感じることはなかったけれども、
急な挿入の衝撃に銀時は声を上げた。
「あのっ……本当にごめん!次から優しくするから!おい……何とか言え!あ、言って下さい。
待っ……まだ動くな!や……あっ、あぁっ!」
* * * * *
「フ〜……」
寝転がったまま煙草を吸う土方の横で銀時は枕に顔を埋めていた。
枕元の灰皿に吸い殻を押し付けて消しながら土方がぶっきらぼうに問う。
「何処か痛ぇかよ」
「……全然」
始まりこそ突然であったものの、挿入後は初回以上に丁寧に銀時を抱いた土方であった。
「むしろ、とっても気持ち良かったデス」
「よし。次からはそうやってヤれよ」
「はーい」
それから二人は浴室で身体を洗い、一つの布団で眠りに就いた。
当初の目的をすっかり忘れて抱き合っていたことに気付くのは、半日先のこと。
(12.02.15)
誰が何と言おうとこれはバレンタイン話です!チョコレートを渡す話は何度も書いたので、偶にはこんなバレンタイン話もいいかなと思いまして^^;
去年のバレンタイン話は銀土版と土銀版でしたから、今年はリバ好きな方々に楽しんでいただけたらいいな。初めてのバレンタインでどっちが
渡す方か悩む、というネタは去年の土銀とかぶってますね。この二人はバレンタインであげると受け取る両方経験しますから、今年のホワイトデーは
何も書かないか、書いたとしてもこれとは別の話になると思います。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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