後編
「あっ!うぅ……あぁ!」
胸の上を這う黒髪に指を絡ませて、銀時はびくびくと身体を跳ねさせる。土方の浴衣は銀時の
先走りで染みができていた。
「ハッ……じかた、もっ……」
いよいよ限界が見えてきて、土方の後ろ衿を引き顔を上げさせる。
両手で乳首を捏ねながらイキそうかと尋ねる土方に、銀時はこくこくと幾度も頷いた。
「あ……早く、入れ……」
「分かってる」
土方は銀時を跨いだ状態で膝立ちになる。
重しを失った銀時は、身体が浮かび上がるような錯覚に陥った。いつもと変わらぬはずの己一人の
重みを、酷く頼りなげに思えてしまう。その中にあって、じんわりと余韻の残る胸と、浴衣の裾が
掠める下半身だけは特異な重量を感じさせてくれた。
故意に時間をかけて帯を解く土方。露わになる肌から目を離せなくなり銀時は息を詰めた。
「勃ってる……」
「テメーにゃ敵わねェがな」
「あっ!」
上を向いた土方のモノにほぅと息を吐けば、後ろ手に裏筋を辿られてまた喘がされる。どうせ俺の
方が切羽詰まってますよ――唇を尖らせていたところ、だらだらと涎を零し続ける先端が何かに
触れた。
「ハァッ……」
何か、などこの場合一つしかない。
土方がゆっくりと腰を下ろせば、一物はそこへ飲み込まれていった。
「あ……んんっ!」
この瞬間が堪らない……いやいや最初から最後まで、土方とのセックスは留まることなく気持ち
良いのだけれど、この瞬間は特に力の入るところ。
いよいよ本番と逸る感情を、入りきる前に発射してはならないと戒めるのだ。
「ハッ、あ、あぁ……」
「もう少しだからな」
「う、んっ!」
ローションを使うのだったと土方はやや後悔していた。
何もせずに挿入するのは初めてで常より進みが遅い。自分側の準備は今宵も怠っていないけれど、
いつもなら銀時のモノに潤滑剤を塗るか舐めて濡らすか――竿全体がてらてらと光るほど先走りは
出ていたし、下手に触れればイカせてしまいそうなため敢えて省略した。
銀時が「早い」ことを気に病んでいるのは知っていたから。
土方自身、自分とのセックスで恋人が気持ち良いと感じてもらえるのなら、いつ達してくれても
構わないと思っている。だが長持ちさせたい願望も分からないではない。
「あっ!うくっ……」
過敏になったモノを土方の内壁に擦られて、銀時は枕の端を力一杯握った。
その手に土方のそれが重ねられる。焦点のぼやけた瞳で正面を向けば、慈しむような眼差しと
交わった。下半身にぴたりと張り付く肌。愛しい人の中に全て納まれたのだと判る。
「ふっ……ああっ!!」
役目は果たしたとばかりに脱力した銀時。
その直後、堰き止めていたものが噴出し、身体を強張らせることになった。
それから漸く訪れた僅かの休息時間。ぐったり四肢を投げ出して呼吸を整えていく。
「あっ!」
胸を上下させること数回。そこへ土方の両手が乗せられて一瞬、息を止めた。ニッと横へ広がる
唇は、ここからが本番だとでも言っているかのよう。
胸の上を這う手に誘われて、萎みかけていた銀時のモノはみるみる回復を遂げた。
「あ、あ、あ……」
「ハァッ……」
己の体内で膨らんでいく一物の感触に甘い息を吐き、土方はきゅっと入口を締める。
「うぅっ!」
後孔を締めたり緩めたりを繰り返されて、堪らず苦しげな声をあげた銀時。
またしても上り詰めてしまいそうだ。キスをして、触れられただけでも充分な刺激であるのに、
その中の心地好さは更に反則級。これ以上みっともなく乱れてなるものかという「攻め」の矜持など
粉々に砕いて海に撒き散らしても構わない――そう思わせる魔性の名器。
けれども時の経過に伴って、捨てたはずのプライドが再び宿り、土方を己のモノで悶えさせたい
欲求が募るっていくのだ。
不感症ではない。土方だってきちんと感じている。それは一物の変化を見れば明白。
今夜はしなかったけれど、布団の上に転がして、舐めて吸って揉んで摘んで指を入れれば、とても
気持ち良さそうにイッてくれる。
問題はその後。
土方が上に乗るのが悪いのだと、正常位での挿入を試みたことだって何度もあるが、
――あっ……ちょっ、そんな……ああっ!!
――気持ち、良くしてくれた、礼っ。
――う……あぁっ!
その体勢で前立腺を刺激しまくる作戦は、うねる内部に堪らず発射して失敗に終わる。
しかも銀時が一息吐いた隙を突き、土方は大抵ここで身体を起こす。
結果、二回戦は対面座位か騎乗位。
そうなると、上に乗った土方の圧勝。今宵と同じく全くもって受け身でない「受け」に翻弄されて
しまうのだった。
「ハァ……お前のモノ、俺の中で膨らんでるな」
「キモチイイデスカラネー」
自らの下腹部に手を当て、恍惚とした表情で「事実」を述べる土方。せめてもの抵抗に抑揚なく
応えてやれば、可愛くないヤツだと笑われた。
その余裕の笑みを、股間のバズーカで崩したいと思うのに、
「もっと気持ち良くしてやるよ」
「や、あっ!ああっ!」
銀さんのバズーカ、武器じゃなくて寧ろ弱点でした。
土方が膝を付いて腰を浮かせ揺れだせば、銀時は身を委ね喘ぐのみ。もうどうにでもしてくれと
いった気分にさせられる。
「あ、うっ……はぁんっ!」
「銀時……」
腰を振り続けたまま土方は、愛しげに目を細め銀時の頬を撫でた。その手に己の手を合わせ、
銀時は震える足を叱咤して膝を立てる。
自然と前のめりになった土方と両手の平を重ねて指を絡ませる。枕へ押し付けられた手の重み。
そこからも恋人の熱を感じてぞくりと総毛立つよう。
「う、ぐっ、あぁっ!」
「あっ、ぎ、ときっ……」
腰を沈ませながら途切れ途切れに紡ぐ愛する人の名。その度に、己の下の潤む瞳に見上げられ、
中のモノが反応し、土方は血液が一気に全身を巡る思いだった。
「はあぅっ!」
「んっ!」
性感を覚え無意識に跳ねる銀時の腰。その際、一物に内壁を擦られて、土方のモノは歓喜の露を
滴らせる。
それを霞む視界でどうにか捉えて銀時は、間もなく恋人が達するであろうことを悟った。最後の
力を振り絞り、先に果ててしまわぬよう歯を食い縛る。
「うぐんっ!」
「あ、はあっ!」
銀時を感じさせる動きから、己の快楽を優先させるそれに切り替えた土方。けれど限界まで高め
られた銀時にとってはそれでも充分過ぎる刺激となる。
「ひじ、かたっ!」
「あっ!」
絡んだ手を解き、ふらふらと彷徨う右手で土方のモノを握り、扱いていった。
「ハッ……あ、あぁ!」
銀時の左手に土方の爪が食い込む。強く繋がれた手が物語る土方の快感――銀時は痛みよりも
喜びを感じていた。
「あぁぅ!」
ぐりぐりと低い位置で腰を振られて銀時は現実に引き戻される。
土方の感じる様を呑気に堪能するゆとりなど持ち合わせてはいなかったのだ。早くイカせなければ
こちらが参ってしまう。
右手に意識を集中させて、土方のモノを擦り上げる。
先走りに濡れて滑りのよくなったそれは、銀時の動きに合わせて卑猥な水音を鳴らした。
「あ、あぁ……ぎん、ときっ……」
「んんんんっ!」
気持ちいい……譫言のように言って、うっとりとした表情で腰を揺らす土方。だが銀時の気持ち
良さはその比ではなかった。
右手は止まりがちになり、歯の奥がガチガチと震える。
「もう、むりっ……!!」
「銀時っ!」
土方の左手が銀時の手ごと一物を握り込み、上下に激しく動き出した。直に達してくれるのだと
安堵して銀時は我慢を止めた。
「土方っ!あっ、イク!イッちゃうっっっ!!」
「ああ。一緒に……」
「くっ……ああぁっ!!」
左手で土方の手に爪を立て、びくんびくんと痙攣しながら銀時は全てを恋人の体内に吐き出して
いく。右手は未だ、張り詰めた一物を往復させられていた。
「銀時ィ!!」
「ん……」
頬に降り注ぐ生暖かい粘液。銀時はそれを左の指で拭い取り、口に咥えた。
「んっ、ふ……」
酷く眠たくて瞼も殆ど開けられない。けれど愛する人が己と繋がり達した証だけは味わいたい――
精液の絡まる指を三本口に含んでちゅうちゅうと吸いながら、銀時は意識を手放した。
坂田銀時は悩んでいた。
恋人・土方十四郎とのセックスで主導権を握れないことに。
坂田銀時は悩んでいた。
「攻め」なのは形だけで、実態は寧ろ受け身であることに。
坂田銀時は悩んでいた。
その悩みを恋人に打ち明けられないことに。
坂田銀時は悩んでいた。
こんなセックスを今や望んでしまうことに。
今更普通のセックスなんかじゃ満足できない自信がある。
横になっているだけで気持ち良くなれて、そんな俺を見て土方くんも興奮してくれる。
俺達が良ければいいんじゃねぇの。ヨソはヨソ、ウチはウチって言うだろ。
このままで何の問題もなかったんだよ。そのうち今のヤり方に飽きたら、土方くんが疲れた時は、
俺が頑張るってことで。
こうして、坂田銀時は悩むのをやめた。
(14.11.20)
こんなに攻めを喘 がせたのは初めてですが、とても楽しく書けました^^ 読む方はどうでしたでしょうか?
素敵なリクエストを下さったりさ様、ありがとうございます!こんなものでよろしければ、りさ様のみ お持ち帰り可です。
もしもサイトをお持ちで、載せてやってもいいよという時は拍手からでもお知らせください。
それでは、ここまでお読み下さった全ての皆様ありがとうございました!