※土銀←新です。大丈夫だと思われた方のみお進み下さい↓



銀さんは土方さんと付き合っている。
銀さんがいいなら僕がとやかく言うことではないけれど、でもやっぱり心配だ。
土方さんは本当に銀さんを大切にしてくれているんだろうか?

付き合っているわりに、銀さんと土方さんはそう頻繁に会っているわけではない。
一ヶ月に二度会えばいい方だ。二、三ヶ月ロクに会えないことも珍しくない。
理由は土方さんの仕事が忙しいから。
…確かに、真選組の副長なんて大変そうで忙しそうではある。
でも、本当にそこまで忙しいんだろうか?銀さんの家は真選組の屯所からそう遠くない。
出張とかならともかく、江戸にいるなら仕事の合間に会うことだってできるはずだ。

だいたい、近藤さんは週に二度は姉上の店に通っている。…付き合ってるわけでもないのに。
近藤さんがこんなに頻繁に姉上に会いに来れるのに、土方さんは何で…
前にそのことを銀さんに聞いたら「近藤がフラフラしてっから土方の仕事が増えるんだ」って言ってた。
まあ、それで筋は通ってるけど…それって、土方さんが近藤さんに仕事させればいい話なんじゃないのかな?
近藤さんのことを優先して、銀さんを後回しにしてるんじゃ…

考えれば考えるほど、土方さんは銀さんを大事にしていないんじゃないかと思えてくる。
これは一度、土方さんに直接聞いてみる必要があるかもしれない。



土方十四郎VS志村新八



「土方さん、ちょっといいですか?」
「あ?」

巡回中なのか、山崎さんと二人で歩いている土方さんを見かけ、僕は思い切って声を掛けてみた。

「新八君…副長に何か用かい?」
「こんにちは、山崎さん。ちょっと、土方さんにお話ししたいことがありまして…」
「仕事中だ。後にしてくれ」
「銀さんのことで、大事な話なんです!」

土方さんはすぐに背を向けて行こうとしたが、銀さんの名前を出した途端ピタリと足を止めた。
…このまま帰るようなら、銀さんとは速やかに別れてもらおうと思ってたけど…第一段階は合格だな。

「大事な話?…何だ?」
「ここではちょっと…」

ちらりと山崎さんを見ると、山崎さんは察してくれたようだ。

「副長、俺は先に行ってますから、新八君とゆっくり話して来てください」
「すみません、山崎さん」
「気にしないでいいよ。…副長、せっかくだからそこのファミレスにでも行ったらどうですか?」
「えっ!」
「あ?何でテメーが決めんだよ」
「だって副長、朝から休みなしで働いてるじゃないですか。ついでにご飯食べてきてくださいよ」

今は四時前なのに、土方さんは昼ご飯も食べずに仕事してたんだ…本当に忙しいんだな。
でもまいったな…僕、余分なお金は持ってないんだよね。買い出しに行く途中だったから財布は持ってるけど
これは万事屋の夕食と日用品を買うお金で、僕が自由に使っていいお金じゃないし…どうしよう。

「仕方ねェな…。おいメガネ、行くぞ」
「あ、はい」

僕は土方さんの後に続いてファミレスに入った。



「オメーは何にする?」
「あ、僕はいいです。…もうすぐ夕飯ですし」
「…支払いなら気にすんな。ここは俺が持つ」
「で、でも…」
「いいから」
「す、すみません」

僕はジュースを注文した。
…銀さんのことを問い詰めるつもりだったのに、ご馳走になるなんて…

「…で?銀時のことって何だ?」
「あ、えっと…その…」
「どうした?遠慮せずに言ってみろ」
「そ、その…土方さんのお仕事って…何でそんなに忙しいんですか?」
「あ?テメーの雇い主みてェにダラけてんのが普通だとでも言いてェのか?」
「銀さんだってそれなりに真面目に働いてます!」
「………」

土方さんは驚いたように目を見開く。
マズイ…銀さんをバカにされて、つい大きな声を出してしまった。

「す、すみません…」
「いや…従業員に慕われて、アイツは幸せだな」
「えっ…」
「俺の仕事が何で忙しいかって?そりゃ、俺の仕事を増やすヤツらがいるからだ。
総悟は気付いたら昼寝してるし、山崎は隙あらばミントンやりやがるし…」
「その人達を注意するのって、土方さんの役目なんですか?」
「当たり前だろ。特に総悟はNo.3だから、部下じゃ注意しにくいだろ?
それに…近藤さんだって人のこと言えねェ立場だしな」
「あの…近藤さんにも、注意とかしないんですか?」
「してる。ただ…こういう仕事だから、会える時に会っておきたいって気持ちも分かる」
「じゃあ土方さんは…銀さんに会いたくないんですか?」

いよいよ本題に突入だ。
近藤さんの気持ちが分かるってことは、土方さんだって好きな人とは頻繁に会いたいはずだ。

「…会いたくねェような野郎と付き合うわけねェだろ」
「それにしては、あまり会っていないんじゃないですか?」
「お前…銀時に何か言われたのか?」
「別に。ただ…そんなに会わなくて平気なら、これからもずっと会わなくていいんじゃないかと思って」
「メガネ、てめェ…」

土方さんは青筋浮かべて睨んできた。
恐い…けど、負けるわけにはいかない。銀さんの幸せのためだ!

「睨んだってダメですよ。…銀さんのことを一番に考えられない人に、銀さんは渡せません」
「…いつから銀時がテメーのモンになった?あ!?」
「銀さんは僕のモノじゃありません。でも、土方さんの所有物でもありません!」
「俺の所有物ではねェが…俺の恋人だ」
「それも今のところは、ですよね。この先どうなるかなんて、分かりませんから。
…そういう意味でも、会える時に会っていた方がいいんじゃないですか?」
「ガキのくせに言うじゃねェか…」
「今は子どもでも、そのうち大人になります。そしたら…土方さんなんかには負けません!」
「ほう…やれるもんならやってみろや」
「首を洗って待っててください。…ジュース、ご馳走様でした」

手を付けていなかったジュースを一気に飲み干し、僕は先にファミレスを出た。

今日話してハッキリした。銀さんへの想いなら僕の方が勝ってる。
ただ、今はまだ僕が子どもだから、銀さんも僕のことをそういう目で見てくれないのも事実だ。
焦ることはない。今のままだって充分に銀さんと仲良くできるんだ。
今は弟みたいな存在でもいい。けれどいつかきっと…

僕は急いで買い物を済ませて万事屋へ帰った。



*  *  *  *  *



その夜、土方は書類仕事を一時中断して万事屋へ電話を掛けた。

(別にメガネに言われたからじゃねェ…。あんなガキ、敵にもなりゃしねェよ。
ただ、まあ、一ヶ月近く会ってねェから元気かなーと思っただけだ。断じてメガネのせいでは…)

誰も聞いていないのに心の中で言い訳をして、銀時が出るのを待つ。

『はーい、万事屋銀ちゃん…』
「銀時か?俺だ。土方だ」
『おー…なんか今日、新八にジュースご馳走してくれたんだってな。どーも』
「い、いや、そんな大したことじゃねェよ(むしろ俺の株が上がってねェか?やはりメガネは敵じゃねェ…)」
『土方くんとはそれなりに長い付き合いだけどよー…銀さん、知らなかったわ』
「何のことだ?」
『お前がショタコンだったなんて』
「ショタ…はぁ!?ナニ言ってやがる!」
『そうじゃなきゃメガネフェチか?それともやっぱり黒髪ストレートがいいのか?あ!?』
「お、おい銀時…お前、何か勘違いを…」
『勘違いじゃねーだろ!お前、新八にジュース奢ったんだろ?』
「それはメガネが金持ってなさそうだったから…」
『俺とは一ヶ月近く会ってねェのに、新八とファミレス行く時間はあるんだー』
「違っ…それはアイツが…」
『なに?新八のせいにするわけ?新八は遠慮したのにお前が奢るって言ったんだろ?』
「それはそうだが…」
『オメーが仕事忙しいのは知ってるし、頻繁に会えないことは承知の上で付き合ったっつーか
一切手を抜かずに仕事するのがテメーのいいところだとか思ってたのによー…まさか新八狙いだったとはな』
「だから違うって!」
『新八とお近付きになりたくて俺と付き合ったのかコノヤロー』
「違う!誤解だ!信じてくれ!」
『じゃあ新八が嘘吐いてるとでも言うのかよ。アイツはそんなヤツじゃねーぞ!』
「そうは言ってない。嘘ではないが…」
『言い訳なんか聞きたくねェ。じゃあな』
「待っ………」

銀時の方から電話が切れ、土方は声の聞こえなくなった携帯電話を呆然と握りしめていた。


その後、我に返った土方は猛スピードで仕事を終わらせて万事屋へと走った。

(あのガキ…ふざけたことぬかしやがって。…絶対ェに銀時は渡さねェぞ!!)


万事屋へ着いた土方は玄関先で土下座を繰り返し、何とか許してもらえたのだった。


(10.06.21)


銀さんを巡って、土方さんが誰かと対決する話はずっと書きたかったのですが、漸く書けました!新八は敵に回したらかなり手強いと思います。

銀さんとの絆が強いので、土方さんも下手なことができません。土方さんが新八に何かしようものなら「ウチの新八に何をした!」と銀さんに怒られそうです^^;

それ以前に、土方さんは子ども相手に酷いことはできなそうです。でも案外子どもは「子どもの立場」を利用する方法を知ってるんですよね(笑)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 

ブラウザを閉じてお戻りください