突然の別れと告白
「銀時、俺と別れてくれ」
「………は?」
銀時は一瞬、何を言われたのか分からなかった。
恋人の土方がいつものように仕事帰りに万事屋を訪れ、いつものように甘い夜を過ごすのだとばかり思っていた
。
けれど銀時が玄関を開けた瞬間、土方が頭を下げて冒頭のセリフを発したのだ。
「お前、ナニ言ってんの?」
「だから…俺と別れてくれ」
「いやいやいや…言ってる意味が分かんねェ。えっ、俺、なんかした?」
「お前は何も悪くねェ。全部俺の都合だ…すまん銀時」
土方はもう一度深々と頭を下げた。
イマイチ状況が飲み込めない銀時であったが、立ち話で済ませていい内容ではないことだけは分かった。
「…とりあえず入れ。話はそれからだ」
「あ、ああ」
土方を家の中に招き入れ、二人は事務所のソファに向かい合って座った。
「…で、別れるってどういうこと?」
「言葉の通りだ。…別れてくれ」
「…何で?」
「俺の都合だ。…すまん」
「それはさっき聞いた。都合って何だよ」
「すまない銀時…」
「謝ってねェで理由を言え。理由を」
「…それは言えねェ」
「何で?」
「…それも言えねェ。本当にすまない」
謝罪の言葉以外口にしない土方に銀時は溜息を吐く。
「あのさァ…俺ら、それなりに長く続いてんじゃん。それを『別れてくれ』の一言で解消する気?」
「…すまない」
「だからー、謝ってねェで理由を言えっつーの」
「それは…」
「『言えねェ』か?そんなんで納得できるかよ…」
銀時は腕を組んでソファの背凭れにドサリと背中を預けた。
「お前は…別れたくないのか?」
「はぁ?そもそもオメーが『付き合ってくれ』っつったから付き合ってやってんじゃねーか」
「それなら…俺が別れたくなったら別れてくれんのか?」
「…別に、別れるのはいいけどよ…ただ…理由も聞かせてもらえねェのは納得いかねェ」
本当は別れたくないのだが、生来からの天邪鬼な性格が災いして素直に「イヤだ」とは言えない。
その代わりに「理由を聞かせろ」と言っているのだ。
だが土方は相変わらず謝るばかりで理由を言おうとはしなかった。
「本当にすまない。…こんな俺と、今日まで付き合ってくれてありがとな」
「ちょっ…ナニ勝手に話終わらせようとしてんだよ。こっちは何も分からねェって…」
「すまん。もう俺のことは…忘れてくれ!」
「お、おいっ待てよ!土方っ!」
銀時が呼び止めるのも聞かず、土方は逃げるように万事屋を去っていった。
後には呆然と立ち尽くす銀時だけが残された。
「なん、だよ…」
ワケも分からぬまま一方的に別れを告げられ、それから土方と一切連絡が取れなくなった。
といっても、銀時から電話をかけたり屯所に行ったりしたわけではない。
自分だけが土方との関係に固執していると思われるのが嫌で、何の行動も起こさなかったのだ。
当然のことながら別れを切り出した土方から連絡が入るわけもなく、二人の関係は終わりを告げた。
* * * * *
「あっ、沖田くん…」
銀時が土方に別れを告げられてから十日ほど経ったある日のこと。
馴染みの甘味処に入ると、真選組の一番隊隊長の姿があった。
元恋人と同じ制服にドクリと脈打つ心臓を忌々しいと思いながら、平静を装って銀時は沖田の向かいに座った。
「これはこれはフリーの旦那、お元気そうでなによりでさァ」
「何それ、嫌味?ていうか、アイツ、わざわざ別れたこと報告してんの?」
「真選組の全員が知ってますぜ。何せ『今から別れてくる』っつって屯所を出たんですからねィ」
「…あっそ」
「俺ァ旦那ほどの人だったら大丈夫だと言ったんですがねィ」
「…何のこと?」
何やら事情を知っているらしい沖田の物言いに、銀時の鼓動は自然と早くなる。
けれど、なるべくそれを悟られないように振舞おうと努めた。
「旦那が本気を出したら土方さんなんか足元にも及ばないくらい強いんだ。だから別れる必要はねェって…」
「全く話が見えないんだけど…」
「土方さん、見合いするんでさァ」
「…見合い?」
「ええ。何でもどこぞの星のお姫様が土方さんを見初めたとかで…モテる野郎は違うねィ」
「それで、そのお姫様と見合い?」
「へェ。まあ、幕府としては、これを機会に星同士の親交を深める狙いがあるようで…」
「なるほどね…政略結婚に邪魔だから別れたってワケか」
漸く銀時も突然の別れの理由が掴めてきた。だが事の真相は少し違っていた。
「土方さんはこの話、断るつもりですぜ」
「はぁ?何で?」
「あの人が惚れてもねェ相手と一緒にいられる程、器用に見えますかィ?」
「で、でもよー…」
最初から見合いを断るつもりなら、何故銀時と別れなければならなかったのかが分からない。
「そのお姫様ってのが一人娘でしてねィ…」
「はぁ…」
「大事な一人娘が家柄も学もねェチンピラみたいな男にフラれたとしたら、きっとタダでは済みません。
いくらなんでもフラれた腹いせに戦争しかけるなんて真似はしねェと思いやすが、恐らく土方さんは
そのまま今の仕事を続けるってのは厳しいでしょうねィ」
「………」
「そして、そんな憎いアンチキショーに長年連れ添った恋人がいると知れたら、どうなると思います?」
「………」
「失恋が理由で国を滅ぼすことはしなくても、恋敵一人消すことくらいならするかもしれない」
「それが、理由?」
「ええ。バカな野郎でィ」
「…本当だな」
銀時は本当に土方らしいと思った。
「見合いは三日後、十三時から○△って料亭で行いやす」
「…俺ァ行かねェぞ。わざわざ命を危険に晒すような真似は…」
「単なる世間話でさァ。俺達真選組は、三日後の十三時から○△って料亭で行われる見合いの警備をするんです。
その日は関係者以外料亭には入れないんですが、旦那は俺達と顔見知りだから関係者と間違われるかもしれませんねィ」
「沖田くん、あのさァ…」
「そういえば、今日は偶然にも土方さんの制服を持ってるんですよねィ。置き忘れないようにしねェと…
あっ、もし俺が制服を何処かに忘れていたら、三日後に○△って料亭に届けて下せェ」
「だから俺は行かねェって…」
「間違っても着て来ないで下せェよ?制服着てたらどう見ても俺達の仲間にしか見えないんで。
じゃあ、俺は三日後の○△って料亭の警備の準備があるんで帰りやす」
「おっ、おい、制服!」
案の定、沖田は土方の制服が入った紙袋を「置き忘れて」行った。
銀時はもう一度「行かねェからな」と呟いて、けれどそのままにしておくワケにもいかず制服を持ち帰った。
* * * * *
三日後、銀時は沖田の言っていた料亭の近くまで来ていた。
「いや、違うって。…俺はただ、忘れ物を届けに来ただけだから」
誰も聞いていないのに一人で言い訳をして、銀時は一歩一歩料亭に近付いていく。
すると、いち早く銀時に気付いた沖田が笑顔で駆け寄ってくる。
「お待ちしてやした、坂田副長」
「いや、俺はただ忘れ物を…はい?」
「まだ制服に着替えてなかったんですかィ、坂田副長」
「いやいやいや…ナニその坂田副長って」
「今日めでたく土方の野郎がクビになるんで、次の副長はアンタに決まりやした」
「あのなァ…まだアイツがクビと決まったワケじゃねーし、だいたい、もしそうなったとしても次は沖田くんだろ?」
「俺ァ、色恋沙汰なんて不名誉な理由でクビになった野郎の後を継ぐのはごめんでさァ。
旦那ならきっと、名誉の殉職でもして俺に副長の座を譲ってくれると信じてますぜ」
「勝手に人を殺すなよ…。つーか俺は真選組とは無関係だから!」
じゃあなと言って銀時は沖田に制服入り紙袋を押し付けて踵を返すと、首元に真剣が突きつけられた。
「沖田くん?何の真似かな?」
「今この場で公開ストリップショーをしたくなけりゃ、とっととコレに着替えなせェ」
「何の冗談?」
「本気ですぜ。アンタがコレを着ないってんなら、今着てる服を切り刻むまででさァ」
沖田は銀時の体に沿って刃の峰を滑らせる。
「…わーったよ。着ればいいんだろ!その代わり、副長とか何とかはナシだからな!」
銀時は先程押し付けたばかりの紙袋を奪い取り、物陰に隠れて服を着替えた。
「…これで満足か?」
「おー、よく似合ってますねィ坂田副長」
「だからその呼び方はやめろって…」
「木刀ってのが些か迫力に欠ける気もしやすが、一応まだヤツが本当の副長なんでその辺は目を瞑りやしょう」
「…一応も何も、アイツが副長じゃなくなったとしても、俺は真選組じゃねェから」
「はいはい…じゃあ坂田次期副長、料亭の中へ行きますぜ」
「ったくよー…」
結局は沖田の計画通り、銀時は真選組の一員として土方が見合いをするという料亭に入っていった。
* * * * *
「隊長、こっちです」
料亭に入るとすぐに沖田(と銀時)は山崎に呼び止められた。
「山崎どうしたんでィ。見合い会場は奥の部屋じゃなかったのか?」
「それが…副長と二人きりで話がしたいとか言って中庭に行っちゃったんです」
「…案内しろィ」
「はい。…あっ、旦那はただでさえ目立つんだから気をつけて付いて来て下さいよ」
「ちょっ…」
当たり前のように山崎は銀時も一緒に来るのだと思っている。
今日、銀時をここに呼ぶのは沖田一人で決めたことではないらしい。
拒んでもどうせ先程のように脅されるだけだと思い、銀時は二人の後を付いていった。
「あっ、いました」
中庭に出るとすぐにターゲット二人を発見する。三人は植え込みに隠れて様子を伺った。
滅多に見ない袴姿の土方。その隣には、この国にはない真っ青の、けれど艶やかな長い髪の美しい女性。
美男美女。銀時には二人がお似合いのカップルに見えた。
「…何か話しているようだが、聞こえねェな」
「仕方ないですよ。これ以上近くに隠れるところなんかないんですから」
「…俺、もう帰っていい?」
「何言ってるんですか旦那。副長が結婚してもいいんですか?」
「アイツは断るつもりなんだろ?…でもよー、あんな美人なお姫様なら結婚した方がいいんじゃね?」
「旦那、それ本気で言ってるんですか?」
「もっちろーん」
銀時は遠目から二人を見て、これがあるべき姿なのだと思っていた。
土方と同じ体格の自分と並んでいるより、頭一つ小さい女性と並んでいた方が絵になっている。
この人と一緒になれば幕府も喜ぶし、相手の女性も喜ぶし、土方だって幸せになれるんじゃないかと思えてきた
。
その時、銀時にも聞こえるような大声で土方が叫んだ。
「結婚するつもりがないだとォォォ!?」
「「「!?」」」
三人は思わず顔を見合わせた。
その後も土方と女性は何か話しているが全く聞こえない。
「結婚するつもりがないって…お姫様がかィ?」
「そうみたいですけど…」
「えっ、あっちから見合いを申し出てきたんじゃねェの?」
「そうなんですけど…」
「一体どうなってるんでィ」
「俺に聞かれても分かりませんよ」
「…行くか」
「えっ、ちょっと隊長!」
相談するより早く、沖田は植え込みを飛び出して二人の元へ駆け寄った。慌てて山崎も後を追う。
「一体全体どういうことですかィ」
「総悟!?」
「隊長、待って下さいよ!」
「山崎まで…テメーら盗み聞きか?」
「警備中に不穏な会話が聞こえたんで駆け付けやした。ねっ、坂田副長?」
「坂…はぁ?総悟お前、何言って…」
沖田が植え込みに向かって大声で呼びかけると、観念したように銀時は立ち上がった。
「ぎ、銀時!?」
「よう…」
「…何だ、その格好は」
「沖田くんに無理矢…」
「アンタに代わって新しい副長になる坂田さんでさァ」
銀時の言葉を遮って沖田が「新しい副長」だと告げる。
「いやいや、コイツは真選組じゃねェし」
「今の副長と服のサイズが一緒なんでちょうどいいと思って、入隊を許可しやした」
「いや、コイツの方がちょっと太って…」
「ねェよ!全っ然、変わらないから!ベルトがちょっとキツいとか思ってねェから!」
「思ってんじゃねェか。ったく、糖分ばっか摂ってっからそういうことに…」
「だから違うって言ってんだろ?仮にお前よりほんのちょっと重かったとしても筋肉だから!
お前よりもずっと鍛えてる証拠だから!」
実は密かに気にしていた所を突かれ、銀時はついいつものように言い返してしまった。
黙って成り行きを見守っていた山崎だったが、どんどん話が逸れていく気がして本題に戻す。
「あの…姫様に結婚の意思がないと聞こえてしまったのですが…」
「そうだった。バカップルのケンカで危うく本題を見失うところだったぜィ。で、どうなんですかィ?」
沖田は女性に向かって話しかけた。
女性はゆっくりと口を開く。
「申し訳ありません。まさか、本当にこんな方がいるとは思わなくて…」
「どういうことですか?」
要領を得ない話し振りに山崎が先を促す。
すると女性は持っていた小さなバッグから一枚の紙を取り出した。
「これを、見て下さい」
「これは…」
そこには鉛筆らしきもので一人の男性の顔が書かれていた。その顔とは…
「土方さんじゃねーか」
「実は、違うんです」
「副長じゃないって…もしかして姫様の星の方ですか?」
「いいえ。これは…全くの想像で私が描いたものなんです」
「「はぁっ!?」」
彼女の言葉にその場にいる全員が驚きを隠し切れなかった。彼女が適当に描いた絵がたまたま土方に
似ていたと言いたいらしい。だがそれが見合いに繋がる理由が分からない。
山崎は再び尋ねた。
「あの…この絵と、今回の見合いと何の関係があるんですか?」
「お恥ずかしい話なのですが、私はこの歳まで恋というものをしたことがありません」
「はぁ」
「両親は年頃になったのだからと結婚を勧めます。けれど私は恋をして、愛する人と結婚したいのです」
「はぁ」
「それなのに次々と来る見合い話にうんざりして、それで、この絵の方となら結婚すると…」
「なるほどねィ」
「更に、顔だけなら似せることも可能だと思い、歳は私より五つ上の二十×歳
身長は私より二十センチ高い百七十七センチの方でなければダメだと…」
「…副長とピッタリ一致してますね」
「私もまさか、そのような方がこの世に存在するなんて思ってもいませんでした。
条件に合う人なら結婚すると言ってしまった手前、私から見合いを断わることはできません。
ですから土方さんにご理解いただいて、断っていただこうかと…」
「なるほど…姫様が結婚したくても、相手に断られたんじゃ仕方無いですもんね」
「はい。土方さんにはお手数をお掛けしてしまいますが、どうかよろしくお願いいたします」
彼女は土方に向かって深々と頭を下げた。
土方も元々見合いを断るつもりだったのだから、互いの望みが合致して万事解決となるはずだった。
だが、当の土方から意外な発言が飛び出した。
「俺ァ断るつもりはねェ。…嫌ならアンタが自分でそう言うんだな」
「えっ!」
「土方さん?」
「副長、何言ってるんですか!例え王様に恨まれようとも断るって言ってココに来たんじゃないですか!」
「それは見合いを申し込まれたからだ。そもそも見合いする気がないってんならアンタが親にそう言えばいい」
「そんなことしたら姫様とご両親の関係が…」
「俺には関係ねェ。俺が断ったら幕府と真選組の関係や、アンタの星とこの星の関係にもヒビが入る。
それが回避できるってんなら回避した方がいいだろ?」
「確かに…土方さんの首ひとつで済めば問題ねェが、真選組自体が存続の危機に晒されるのは避けたいですねィ
」
「だろ?だから、結婚するつもりがねェならアンタが言えばいい。だいたい、俺が断ったとしても
アンタの両親はアンタの本心を知らねェんだから、また別の見合い相手を見付けてくるだけだぞ?」
「あっ…」
土方の言葉に彼女は漸く自分のすべきことが分かったようだ。
「土方さんの言う通りですね。私は両親が諦めてくれるのを待っていただけでした。
ちゃんと、自分の口で自分の考えを伝えなくては何も変わりませんね。…両親と、話してみます」
「そうしてくれ」
「土方さんの立場も考えず、無理なお願いをしてしまって申し訳ありませんでした」
彼女は何度も頭を下げながら、両親のいる建物の中に入っていった。
「これにて一件落着ですね。…じゃあ隊長、俺達は席を外しましょう」
「そうだな。…じゃあお二人さん、ごゆっくり」
女性が建物に入ってすぐ、沖田と山崎もその場を後にした。
残されたのは袴姿の土方と土方の制服を着た銀時だけ。
「ぎ、銀時、その…」
「気安く名前で呼ばないでくれる?俺達もう他人同士なんだから」
「なっ!」
恐る恐る様子を窺うようにして土方が話しかけたのを、銀時がピシャリと一蹴する。
「何?まさか見合いがなくなったから別れ話もなくなったとか、都合のいいこと考えてたワケ?」
「うっ…」
「そんなワケないよなァ?俺、見合いがあるから別れるなんて聞いてないし…」
「………」
「何か言うことは?」
土下座して泣いて謝ったら許してやろう―銀時はそんなドSなことを考えていた。
けれど土方は銀時とは全く別の答えを導き出す。
「銀時好きだ。俺と付き合ってくれ!」
「………はぁ?」
「お前のことが好きだ。誰よりも愛している。だから俺と付き合ってくれ!」
「ちょっ…」
銀時の両肩をしっかりと掴み、真っ直ぐに銀時の目を見て土方は言った。
言われた銀時は真っ赤になって視線を斜め下に逸らした。
「お前…何言ってんの?バカじゃねーの」
「お前の言う通り俺達は今、赤の他人だ。だが俺はお前と恋人同士になりたいと思っている。だから告白した」
「そういうところが、アホなんだよ…」
バカだアホだと言ってはいるが、存外銀時は嬉しそうである。
「なァ銀時…返事を聞かせてくれ。俺と、付き合ってくれるか?」
「…今日、昼メシまだなんだよね…」
「何でも好きなモンを食わせてやる」
「新八と神楽にも別れたって言っちまったし…」
「じゃあガキも一緒にメシ食いに行こう。俺がちゃんと説明する」
「俺の服、沖田くんに取られたままなんだよね…」
「すぐに持って来てやる」
「お前は…袴より、いつもの着流しか制服の方がいいと…」
「じゃあ、お前が着替えたらその制服は俺が着る」
「この後…仕事?」
「いや。朝まで一緒にいようぜ」
「それから…」
「まだあんのかよ!」
なかなか「うん」と言わない銀時に気の短い土方はつい声を張り上げてしまう。
「これが一番大事だ。…今度別れるって言ったら、絶対ェ許さねーからな」
「ああ…二度と言わねェよ。悪かった」
「それなら…恋人(仮)にしてやってもいいよ」
「何だよ(仮)って…」
「今俺が言った条件全部クリアできたら(仮)を取ってやる」
「上等だ。…とりあえず、総悟から服を返してもらってくるな」
「おう」
土方は先程沖田が歩いていった方向へ駆けていく。銀時はそれを穏やかな笑顔で見送った。
二人が二度目の交際を正式にスタートさせるのは明日の朝から。
(10.03.27)
逆はともかく(笑)土方さんが銀さんをフるなんて有り得ない!とは思うのですが、まあ今回は土方さんなりに銀さんを護ろうとした結果ということでご勘弁を^^;
銀さんのために身を引く土方さんが書きたかっただけなのですが、思いの外その説明が長くなってしまいました。本当は、姫様に土方さんの恋人が銀さんだということがバレて
姫様が銀さんに謝るという話も書くつもりだったのですが、無駄に長くなるのでカットしました。このシーンは形を変えて別の話に出来たらと思っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ブラウザを閉じてお戻りください