土方さんと神楽ちゃん
非番の日、土方が万事屋を訪れると、そこに愛しい恋人の姿はなかった。代わりに出迎えたのは神楽。
「ニコ中マヨラーが何の用ネ」
「用っつーか、銀時に会いに来たんだが…」
「銀ちゃんなら出かけてるアル」
「どこに?」
「部外者には教えられないアル」
「部外者って何だよ…。俺と銀時は付き合ってるんだぞ」
「付き合ってても万事屋以外のヤツは皆部外者ネ」
「そうかよ…。じゃあ、いつ帰ってくるんだ?」
「それも部外者には教えられないネ」
「じゃあ、中で待たせてもらってもいいか?」
どうせパチンコか何かだろうと踏んだ土方は、銀時の帰りを待とうと思った。
だが、そう簡単にはいかない。
「ダメネ。女一人でいる家に上がろうとするなんて、何考えてるアルか」
「何も考えてねーよ。ただ銀時が帰るまで待たせてもらうだけだ」
「そんなの信じられないネ。男は皆オオカミだから信用するなって銀ちゃんが言ってたアル」
「その銀時も男だと思うんだが…」
「銀ちゃんは女のコの気持ちが分かる男アル」
「ああそうかい…じゃあ、せっかく土産を買ってきたんだが出直してくるとするか」
土産と聞いて神楽の瞳が輝きだす。
「土産って何アルか?」
「いちご大福」
「…何個?」
「二十個」
「………」
土産に食いついてきた神楽を見て、土方は最後の一押しをする。
「銀時がいつ帰ってくんのか分からねェんじゃ、一旦帰って、これは部下にでもやるかな…」
「しっ仕方ないアルな。そこまで言うなら家で待っててもいいアル」
「いや、やはり女一人の所に邪魔するのはマズイ。男は皆オオカミだからな…」
「おっお前は銀ちゃん萌えだから安全ネ。銀ちゃん以外に興味ないんだろ?」
「まあな」
「じゃあ上がって待ってろヨ。銀ちゃんもうじき帰ってくるアル」
「分かった」
土方から大福の袋を受け取ると、神楽は居間へ駆けていった。
その背中に「銀時の分も残しておけよ」と言って、土方も万事屋の中へ入る。
* * * * *
「おいマヨラー、お茶を淹れるネ」
土方が居間まで辿り着くと、既に大福を頬張っている神楽がお茶を要求する。
「…俺は客だぜ?」
「仕方なく家に上げてもらってる身で偉そうにするんじゃないネ」
「…分かった、分かった。淹れてくればいいんだろ…」
「分かればよろしい」
「チッ…」
舌打ちひとつして土方は台所へ向かい、二人分のお茶と灰皿を持って居間へ戻った。
銀時とはそれなりに長い付き合いである。万事屋のどこに何があるかは、だいたい把握しているのだ。
「…さっきも言ったが、銀時の分も残しておけよ」
あっという間に半分以上の大福を平らげた神楽に、土方はもう一度釘を刺す。
「分かってるネ。これが銀ちゃんの分で、こっちが新八の分アル」
「…ヤツらは一個ずつなのか?」
「それで充分ヨ。アイツら少食アルからな」
「…まあ、オメーと比べりゃ少食かもな」
神楽は食べる手を止めて、タバコに火を点けている土方をじっと見つめる。
「…もう食わねェのか?」
「お前も一個食べていいアルヨ」
「どうしたんだ急に?」
「…お前が買ってきたんだから、お前だって食べたいだろ?」
「俺が買った土産は、いつもお前ら三人で食ってるだろ?」
「たまには甘い物も食べた方がいいアル。マヨネーズだけじゃ栄養偏るネ」
「別にマヨネーズだけ食って生きてるワケじゃねェよ」
「…じゃあコレをあげるネ」
そういって神楽は、テーブルの端に置いてあった酢こんぶの箱を土方の前に置いた。
「コレはお前の好物じゃねーか…」
「いちご大福のお礼アル。まだ一枚しか食べてないけど、特別に残りは全部お前にやるヨ」
「礼なんざいらねェよ。銀時の家族は俺の家族みてェなもんだからな」
「…家族だって、感謝の気持ちが大切アル」
「本当にどうしたんだ?大福に何か変なモンでも入ってたか?」
「失礼アルな!私がお前にありがとうって言っちゃいけないアルか!?」
椅子から立ち上がり、土方を指差して神楽は叫んだ。土方はぽかんと口を開けてそれを見ている。
神楽は更に早口でしゃべり続ける。
「銀ちゃんはいつも世話になってるのに、ちゃんとお礼を言ってないの知ってるヨ!
それでもお前は私や新八にも優しくしてくれるアル!だから、たまにはお前だって
優しくされたいんじゃないかと思っただけネ!いらないなら酢こんぶ返すアル!」
ハァハァと肩で息をする神楽に、土方はフッと微笑みかけた。
「お前がそんな風に思ってたなんてな…ありがとな。コレはありがたく頂戴する」
「別に、無理してもらってくれなくてもいいネ」
「いや、ちょうどすっぱいモンが食いてェと思ってたところだ…」
「そうアルか?それなら食べてもいいアル」
「…いただきます」
「おうネ」
土方は神楽からもらった酢こんぶを食べ、神楽は満足そうにそれを眺めながら、土方からもらった大福を食べた。
* * * * *
「なに、これ…」
一時間後。帰ってきた銀時が目にしたのは、土方にピッタリくっついて筆を手にした神楽の姿。
「だーかーら、『郎』はそうじゃねェって言ってんだろ!」
「お前の名前が難しすぎるネ!もう土方マヨラーでいいアルヨ!」
「よくねェよ!だいたい、『万事屋銀ちゃん』が書けるなら『土方十四郎』も書けるはずだろーが!
むしろ俺の名前の方が画数少なくて簡単だろ?」
「銀ちゃんと同列に並ぼうなんておこがましいアル!お前の名前を書いてやるだけありがたいと思うヨロシ!」
「どうせ書くなら正確に書けた方がいいだろーが。ほらっ、もう一回書いてみろ」
「マヨラーのくせに命令するんじゃないネ」
「はいはい。お願いします書いて下さい」
「そこまで言うなら書いてやるヨ」
神楽が土方の書いた手本を見ながら「土方十四郎」と書くと、「さっきより上手くなったじゃねェか」と
土方に頭を撫でられ、ほんのり頬を染めて嬉しそうに笑う。
二人は文字の練習に集中していて銀時の存在に気付いていないようだ。
「ロリコン警官」
銀時はボソッとつぶやいて、テーブルの上にあるいちご大福を口に入れた。
(10.02.23)
えー…誰が何と言おうと土銀です!土方さんと万事屋の子ども達の組み合わせが好きです。以前土方さんと新八の話を書いたので、今回は神楽にしました。
それと、最近18禁話が多かったのでほのぼのした感じの話が書きたくなったんです。神楽ちゃんはどの程度日本語の読み書きができるのでしょうか。
随分長いこと万事屋で働いているので、困らない程度にはできそうですね。まあ、土方さんの名前は今まで覚える気がなかったので書けなかったってことでお願いします^^;
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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