銀猫と黒猫


理由は分からねェが、俺はもこもこのブサイクな猫になっちまった。
そんでイキナリ凶暴なボス猫に襲われ、反撃したら他の猫どもに「お前ならボスになれる」とか言われた。

だが一匹だけ、その輪に入らねェ黒猫がいた。
風に揺れる真っ黒の毛並みはツヤツヤサラサラで、とても野良とは思えない。
ソイツは猫のくせに二本足で立って木に寄りかかり、腕を組んでジッと俺を見ていた。
目が合うと手招きされたのでとりあえずソイツに付いていくことにした。

黒猫は俺を藪の中へと連れて来た。

「ここで何かしたか?」
「………何かしたら何だっつーんだよ」

ここは俺が人間の姿だった時に立ちションした場所だ。

「これは…猫の墓だ」
「!!」
「もう一度聞く。ここで何かしたか?」
「……立ちションした」
「ハァー」
「い…いや、知らなかったんだよ。ワザとじゃねーんだ。…つーか待てよ。
じゃあまさか……祟りだとでもいうのかよ。ありえねェ。そんなの…そんな事ありえねェよ」
「自分の身に起きたことを見てみろ。既にありえないことが俺達の身に起きてんじゃねェか」
「…俺達?まさか…お前もここで立ちションした人…間?」
「テメーと一緒にすんじゃねェよ!俺ァちょっと躓いてコケたところが墓の上だっただけだ!」

今までクールにキメてた黒猫が急に柄悪くなった。
なんだコイツ…今までカッコつけてたのか?つーかコケたって、アホだなコイツ。

「はぁ〜?そんくらいで呪われるかねェ?コケた拍子にちびったんじゃねェの?」
「だからテメーと一緒にすんじゃねェって!!
そういやぁ、コケた拍子に懐のマヨネーズをぶちまけちまったが…あれがいけなかったのか?」
「……お前っ、土方かァァァァ?墓にマヨぶっかけるって、それが原因に決まってんだろ!」
「そうだな…供え物にすんならきちんと盛り付けなきゃいけねェからな」
「供え方の問題じゃねェよ!墓とマヨネーズをコラボさせた時点で墓荒らし決定だよ!」

何てこった…ツヤサラアホ猫は土方だったのか!
猫になってもサラサラヘアー(?)なんてずるいじゃねーか!

「お前は猫になってもふわっふわしてんな…」
「何だとー!…あっ、あれ?俺、声に出てた?」
「ああ全部な。誰がアホ猫だ」
「ゴメンゴメン。でも同じ境遇のヤツがいて少し安心した」
「…そうだな。こんな姿でも、愛するお前と一緒なら嬉しいぜ」
「お前…猫になっても恥ずかしい野郎だな」
「何だ、照れてんのか?可愛いヤツだな」
「照れてねェよ!…それにしても、土方ばっかずりィよな…。毛並みサラッサラじゃん。
俺なんかこんなブッサイクな毛玉なのによー」

試しにちょっと土方の体を撫でてみると、本当にスベスベしてて触り心地が良い。

「そんなにブサイクか?オメーは大して変ってねェだろ…」
「どこがだよ!めっちゃブサイクになってんじゃん!めっちゃもこもこじゃん!」
「…オメーは元からもこもこじゃねーか。それに…顔だってそんな顔だったじゃねーか」
「ええええ!銀さんもっと男前だったでしょ?それに、ここまで毛玉じゃねーよ!」
「いや、オメーは猫になってもすげェ可愛いぞ」
「えっ…どこが?」

猫になっても恥ずかしい台詞を吐きまくる土方に少し引いていると、後方の藪の中からぐすぐす鳴き声が聞こえた。

「なんで…なんでこんな事になっちまったんだ。こんな姿じゃ、お妙さんも…トシも総悟も
誰も気付いてくれない。俺は一体どうすればいいんだ…」

嫌な予感がして藪の中を覗き込むと、そこには泣き叫ぶゴリラがいた。
ゴリラっつってもあれだ、近藤じゃねェ。いや、近藤なんだけど本物のゴリラの姿だ。
土方も目を丸くして驚いてる。

「こっ近藤さん…」
「…何!?俺が分かるのか!!その声は、トシ?」
「近藤さんこそ、俺の言ってることが分かるのか?猫になっちまったのに…やっぱ近藤さんはすげェよ」
「もしかしてトシも謎のゴリラに噛まれて…」
「何を言ってるんだ?それより近藤さん…どうして裸なんだ?また脱いじまったのか?仕方ねェな…」
「い、いや、それを言ったらトシだって裸じゃん」
「俺は猫だからだろ?…近藤さん、服はどうしたんだ?」
「だ、だからトシ、俺、ゴリラに…」
「近藤さん…他のヤツが何と言おうと、近藤さんはゴリラじゃねェよ」
「えっ、いや…あれェ?」

猫になっても自分より近藤の心配をする土方にちょっとだけ、ほんのちょ〜っとだけムッときたが、
二人の会話が噛み合ってねェのを見てたら、流石にゴリラが可哀相に思えてきた。
土方、ゴリラが本物になったこと気付いてねェよ。何だ?猫になって目が悪くなったのか?

「おい土方、よく見てみろよ。ソイツ、いつものゴリラじゃねェだろ?」
「だから近藤さんはゴリラじゃ…ん?なんか違和感あんな…あっ、ひょっとして髪切った?」
「…ト、トシぃ〜」

おいおいおい…マジで気付かねェよ。ゴリラの奴、ちょっと涙目になってんじゃん。
なんだ…散々否定してたけど、土方だって近藤=ゴリラだと思ってたんだな。
というかアイツ、近藤の顔どうやって認識してんだよ。本物のゴリラと見分けがつかないって…

「どうした、近藤さん。何で泣いてるんだ?…俺がこんな姿になっちまったからか?」
「………トシ、フィリピン産バナナと台湾バナナ、どっちがいい?」
「はぁ?」
「とって来るから、それまでに決めといてくれ!」
「あっ、近藤さん!」

最後まで土方に分かってもらえなかった近藤ゴリラは、目に涙を浮かべて逃げるように去っていった。



*  *  *  *  *



「…近藤さん、戻って来ねェな。まさか、近藤さんの身に何かあったんじゃ…」
「いや…オメーに分かってもらえなかったのがショックで逃げたんだろ?」

俺のツッコミなんざ耳に入ってない土方は、まだ近藤近藤言ってる。
ったく…ここにいねェヤツのことよりまずは俺達だろ?どうやったら人間に戻れるのか…
…んっ?何で土方がこっちを見てんだ?

「なんだよ土方…」
「銀時、お前…いい匂いがするな」
「へっ?」

何言ってんだコイツ?いい匂いって、俺は食いモンなんか持ってねーぞ。
つーか、何で目が血走ってんだ?息も荒いし…つーか二足歩行のせいで丸見えの×××が上向いてる!!
まさか…コイツ、発情期!?もしかして俺を食う気か!?いやいやいや、おかしいだろ!
何で獣になってまでオスに発情すんだよ!…だからってその辺のメス猫とヤられても嫌だけど、でも…
俺の葛藤なんか無視して、土方はどんどん距離を詰めていく。

「おっおい、無言で近寄るんじゃねェよ!」
「銀時…」
「ちょっ、落ち着け!こんな体でヤるなんてシャレになんねェって!」
「…んなコト言ったって我慢できねーよ。お前の匂い嗅いだらムラムラしてきた…」
「はぁ!?それじゃあ俺が誘ってるみたいじゃねーか!俺は全くそんな気はナイからァァァ!!」
「いや、オメーが誘った。…俺が近藤さんのことばかり気にしてんのが面白くなかったんだろ?」
「…えっ、うそ。…まさか、それで?」
たっ確かに「近藤より俺達を先に…」とか思ったけど、それは別にそういうことじゃなくて…

どう説明しようか考えているうちに、土方は俺を後ろから押さえつけてケツを舐め始めた!

「ひっ!ままま待て!オス同士じゃムリだって!」
「心配するな。いつもヤってるから大丈夫だ」
「いつもは猫じゃねー…うぁっ!やめ…ろ」


土方の舌がナカに入ってきた。や、ばい…いつの間にか、俺も興奮してる…。


「うっ…は、あ…」
「…感じてんのか?」
「っるせェ…て、めーのせい、だかんな…あっ」
「ああ。ちゃんとヨくしてやるからな」
「んっ、あっ…はっ、はっ…」


オス同士とか、どうやったら元に戻れるかとか、そんなのはもうどうだって良くなった。
とにかく今は土方と合体したい。…俺も発情期の猫になっちまったんだな。


「あっ!ひ、ひじかた、早く…」
「もう、大丈夫そうか?」
「いいから、早く…」
「分かった…じゃあ、入れるぞ」
「うん…あっ、あ、あ、あ…」


意外とすんなり土方のモノは挿入できた。あー、すげェ気持ちイイ…。
入っている感覚に浸っていると、土方は腰を揺すり始めた。


「あっ、はぁ…あっ、あっ…」
「…やべェな。全然もたねェ…」
「んっ、ねこ、だからな…あっ!いい、ぜ…イケ、よ…」
「はっ…悪ィな。…くっ!!」
「あ、あぁ…」


土方が俺のナカでイッたのを感じる。あー、なんか、幸せかも…。
……なっ!?


「ぎゃああああああ!!」

急に鋭い痛みを感じて、俺は土方を思いっきり殴り飛ばした。土方は数メートル吹っ飛んで木に激突する。

「うごぉぉぉっ!!……なっ何しやがる、銀時!」
「るせェ!!テメーこそ何しやがった!けっけつ、ケツに激痛が…痛ェよコノヤロー!!」
「はぁぁぁ!?俺は何も……って、まさか…」

土方は自分の下半身を見つめ、自慢の御子息を手(前足)で触りだした。ま、まさか…

「お、おい土方…」
「…すまない銀時。俺のせいだ…」
「えっ、まさか…マジで?」
「ああ…。トゲが生えてやがる」
「うわぁ……あっ、俺のにも生えてる」

よくよく見たら、俺の息子もトゲトゲしてた。…突っ込まねェから関係ないけどなっ!
…って拗ねてる場合じゃねェよ!このままじゃもう土方とできねェじゃねーか。そんなの嫌だ!
早く、早く人間に戻りてェ!!



*  *  *  *  *



一瞬、目の前が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間俺は首だけ出して地面に埋まっていた。
隣には土方の…いつもの人間の土方の頭がある。…戻ったんだ!!良かったァ!!でもよ…

「……ねェ、なんでこんな戻り方なの?」
「知るか。戻れたんだからいいじゃねーか」
「……ねェ、なんか臭くね?」
「テメーが小便したからだろ?」
「違ェよ!これマヨネーズだろーが!テメーのぶっかけたマヨネーズが悪臭放ってんだよ!」

何とか地面の中から脱出したものの、マヨ臭は簡単にとれそうもない。このまま帰ると新八達に文句言われるな。
仕方なく俺は、家へ帰る前に土方と近くのラブホへ行くことにした。

…風呂に入るためだからな?別に、トゲがなくなった土方とヤるのが目的じゃねェからな?
土方とちゃんと抱き合いたいとか思ってねェから、俺。
まあ、もしかしたら一発くらいヤるかもしれねェけど…それはラブホに入ったから仕方なくだ。
それと、ちゃんとトゲなしに戻ったかの確認、みたいな…。

「どうした銀時…早く行くぞ」
「お、おう」
「そういやぁ、何で元に戻ったんだろうな?」
「さあな。何でもいいじゃねーか、戻ったんだから」
「それもそうだな」


考えても分からないものは分からないので、俺達はラブホに向かった。



後日、ヅラとセットで再び猫化した俺は、猫化の本当の理由を知ることになる。
墓荒らしの祟りではなく、かぶき町野良王ホウイチの救い手として俺達が選ばれたのだ。

土方と一緒の時は発情しちまって、それどころじゃなかったもんな…。
すまねェホウイチ、助けるのが遅くなっちまって。


(10.01.25)

photo by にゃんだふるきゃっつ


すいまっせーん!!アニメ見て銀猫萌えが再発したんです。ぴょこぴょこ動く銀猫が可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて…土猫と交尾させちゃいました^^;

あの可愛さじゃ発情するのも無理ないかと…。本当にすいまっせーん!!でも、黒猫が出て来た時「もしかして土方さん!?」ってなった方も多いのでは?私もそうでした。

最初の土猫のセリフは、アニメツアー2005で中井さんがちゃとらん星人やった時の声で読んでいただければ良いかと思います。ここまでお読み下さりありがとうございました。

 

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