※この話は第二百七十六訓を元にした話です。
何とかメシにはありつけたものの…一体いつまでこんな姿でいなきゃなんねェんだよ。
立ちションってそんなに悪いことか?ちょっとくらいイイじゃねェか…そんくらいしか使い道ねェんだよチクショー!
それもこれもあのマヨラーのせいだ!アイツが俺の息子の出番を失くしたのが悪ィんだ!
それを神様かなんかが見てて「使わねェならいらなくね?」みたいな感じで、ことあるごとに銀さんの銀さんを
狩ろうとしてやがるんだぜ、きっと。
くそー、俺は負けねェぞ!二十ン年間共に過ごしてきたコイツを絶対ェに守ってみせる!
土方さんの秘密を目撃!
「お前…昼間の猫じゃねェか」
「に゛ゃっ(げっ、土方)!」
「どうしたんだ?マヨネーズが足りなかったのか?」
「にゃがが(足りないもなにも、あんなモン食ってねェよ)!」
「そうかそうか…じゃあ俺と一緒に来い」
「うにゃがー(離せー)!」
土方は俺を抱えて屯所まで連れてきちまった。そのまま副長室まで来ると俺を畳に下ろした。
とりあえず今日の寝床は確保されたからいいか…ん?何だこの皿?ま、まさか…
…あー、やっぱりマヨネーズだよ。だから食わねェって!ナニ、その満ち足りた顔?
よしっ食っていいぞ、じゃねーよ!テメーの許可なんか待ってねェんだよ!
だいたい、猫がマヨなんか食うわけ…ってカブト虫もマヨで捕まえられるとか思ってるヤツに何言ってもムダか。
俺は黙って目の前の皿を通り過ぎ、部屋の隅で丸くなった。
アホは無視して寝よう…そう思っていたら土方がまた俺を抱きかかえた。
「お前…腹へってねェのか?」
「あにゃ(へってたとしてもマヨは食わねェよ)」
「そうだったのか…まあ、チビだからあんだけ食えば問題ねェか」
「にゃごろ(だから食ってねェって)」
「にしても汚れてんな…よし、風呂に行くか」
「にゃな(眠ィんだよ…)」
話の通じねェ土方は、制服から着流しに着替えると俺を連れて風呂場へいった。
…ったく、猫になってもコイツに振り回されなきゃなんねェのかよ。
「あっ、副長。お疲れ様です」
「なんだ山崎…お前も風呂か?」
「はい。それはそうと…その猫、どうしたんですか?」
「外回り中に懐かれてな…」
「にゃあっ(懐いてねェよ)」
「そうですか…それで、一緒に入るんですか?」
「ああ、かなり汚れてっからな。…湯船には入れねェし、隅の方で洗えば問題ねェだろ?」
「そうですね」
土方は俺を脱衣所に下ろすと、ジミーと勝手なことを話しながら服を脱いでいった。
全裸になって腰にタオルを巻いて…って、猫目線だと丸見えだな。
おーおー相変わらずご立派ですな…アレのせいで俺の息子はよー…うおっ!いきなり持ち上げんなよ!
…土方は俺を洗面器に入れると風呂場の扉を開けた。
へー、結構広いんだな…市民の税金使って贅沢しやがって!
ん?何だ?ムサいヤロー共が副長副長言いながら群がってきた。可愛いっスねって俺のことォ!?
こんなブサイクなのに?ブサカワイイってやつか?あっ、ヤメロ!ゴツイ手で触んなよ。
「ふーっ(気易く触んじゃねェ)!」
「この猫、副長にだけ懐いてるんですね」
「そうか?昼間マヨをやったのが良かったのか…」
「えっ!マヨネーズ食べるんですか?」
「にゃにゃがっ(マヨなんか食ってねェって言ってんだろ)!」
「おう。俺が懐からマヨを取り出したら走って寄ってきてよー」
「ながにゃっ(欲しくて走ったんじゃねェよ)!」
「へェー、変わった猫もいるもんですね」
「にゃぎー(ジミーまで信じるなよ)」
土方は洗面器にぬるま湯を入れ、その中で俺をバシャバシャ洗った。
あっ、コラ、んなトコ触んじゃねェよ!このスケベ野郎!やっ、ホントにやめっ…これ以上は、ヤバい…。
…お、終わった、のか?良かったー。この姿で発情しちまったらシャレになんねェからな。
「そういえば…このコの名前は決めたんですか?」
「名前?そうだなぁ……マヨってのはどうだ?」
「マ、マヨ…ですか?」
「ああ、コイツの好物だからな!お前もマヨがいいだろ?」
「なにゃにゃっ(っざけんな!絶対ェいやだ)!」
「なんだか…嫌がってません?」
「そうか?」
「にゃーにーな(いーやーだー)!」
「もっと普通の名前がいいんですよ。白猫だから、シロとか…」
「シロか…でもよ、コイツ、白っつーより銀色だぞ?ほらっ」
俺を洗面器から掬い上げると、土方はジミーの目の前に差し出す。
「へー、珍しい毛色ですね」
「キレイなもんだろ?…じゃあ、ギンにすっか?」
「にゃう(それなら、まあいっか)」
こうして俺はギンとして土方の世話になることになったのだが…まさか、あんなモノを目撃することになるとはな。
(09.09.15)
本誌の猫銀さんの魅力にやられた小説第三弾は土銀です。これから先はちょっとアレなので注意書きに飛びます→後編