大雨の中、独り佇む銀さんを見つけた土方さんは…

  

 

 

うおーっ!いきなり降ってきやがった!屯所まで走って5分ってとこだが

これは一旦雨宿りした方がよさそうだな。…あの宿の軒先に邪魔させてもらうか。

 

…あー、結構濡れちまったな。中のシャツはそうでもねーが、上着と髪が冷てェな。

いやー、それにしてもスゲー雨だな、コレ。こんな雨じゃ傘持ってたとしても役に立たねーな。

靄がかかったみてーに真っ白で、ちょっと先も見えやしねー。

 

…ん?あそこだけ、さらに白いよーな…アレ、人か?でも動いてねェよな?じゃあ電柱かなんかか?

 

…いや、アレは…

 

 

 

「銀時!」

 

 

 

俺が声をかけると、雨の中にいた人影――坂田銀時はゆっくり俺の方を向いた。

だがその瞳はいつものようにやる気のない様子でもなく、どこかぼんやりと遠くを見ているようだった。

 

 

 

「お前、何でこんな所に突っ立ってんだよ!」

「……」

「…と、とりあえず雨宿りだな」

 

 

 

俺は黙ったまま動かない銀時の手を引いて、さっきまで居た軒先…ではなく、その宿の中に入った。

 

 

 

 

 *  *  *  *  *

 

 

 

 

「ったく…オメーいつからあそこにいた?びしょ濡れじゃねーか。

ホラ、とりあえず濡れた服脱いで、コレ着とけ」

 

宿のタオルと浴衣を銀時の傍に置くが、相変わらずアイツは動かねェ。

仕方なく俺が脱がせてやることにする。水を吸って重くなった着物を脱がせ

軽く絞ってエアコンの吹き出し口近くに掛ける。そうすれば、ここを出る頃には幾らかマシになってるだろ。

そんなことをしているウチに、銀時の瞳に少しずつ光が戻ってきた。

  

 

 

「ひ…土、方?」

「おっ、ようやく口きいたな」

「ここは…どこだ?」

「宿だ、宿」

「えっ?な、何で…」

「覚えてねーのか?土砂降りの中でボーっと突っ立ってたんだ。声かけても返事ねェし」

「…そう、だったのか?」

「そうだ。で、様子のおかしいオメーを放っておくわけにもいかねーから、こうしてだな…」

「そっか…世話かけちまったな」

「…何かあったのか?」

「あ…いや、その…」

「まあ、言いたくねーなら無理に聞かねェよ。それより、せっかく入ったんだからよ…」

「…仕事は?」

「雨宿りしてくぐれェ問題ねーだろ」

「…雨宿りねェ?」

「んだ、ヤりたくねーのか?」

「いんや…じゃあオテヤワラカニー」

「それはどうかな?」

「はははっ……なあ、土方…」

「なんだ?」

「…悪ィな

「あ?なんだって?」

「い、いや、何でもねー。…さっさとシよーぜ」

「ああ」 

 

 

 

本当は聞こえていた。銀時が消え入りそうな小さな声で謝るのを。だが聞こえないフリをした。

アイツが色んなモンを背負っているのは何となく分かる。具体的に何があったかは知らねェが

たまにはこうしてアイツの荷を軽くしてやりてェと思うのは俺の自己満足に過ぎない。

だからアイツは謝る必要なんかねーんだ。今日は、俺が満足するまで離さねーからな。

とりあえず…オメーがいつもの軽口叩けるようになるまではな。

 

 

(09.08.31)

photo byLOVE JUNKIE

お気付きの方もいらっしゃるとは思いますが、以前銀土で同じ設定の小説を書きました。あれを書いたときに、やっぱり雨と言えば銀さんだよな!と思っていつか書きたいと思ってました。

雨と銀さんのシリアスな組み合わせって好きです。私が書くとシリアスになりきれませんが。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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