後編



「ゴメンゴメン。…俺が十四郎に教えたんだもんね。じゃあ、ベッドに行こう」

拗ねる土方の肩を抱き、銀時はソファからベッドへ移動する。

実を言うと、土方はとっくに性的快感を知っていた。
秘密の逢瀬となると、どうしてもこのような宿で会うことが多くなる。
雰囲気のある宿で、時折触れるだけのキスをするくらいでは到底満足できず、銀時はすぐに深い口付けを教えた。
そして深い口付けを繰り返すうちに土方の身体に火が灯り
銀時は土方の一物を擦って初めての射精を促したのだ。
それからというもの、土方は銀時と会う度に一物を刺激されていて、土方自身もそれを望むようになっている。

(まさか十四郎がここまで快楽に弱いとはね。遅咲きの方がハマるとヤバいっていうのは本当なんだな…)

これも嬉しい誤算だったと、銀時は土方の服を脱がせながら思う。

(こんなことがバレたら、真選組の連中、土方を監禁してでも俺と会わせないようにするかもなァ。
まあ、そんなことしても忍び込んで土方と会うけどね。…でも、できれば一度繋がるまではバレずにいたいなァ)

今のところ土方を気持ちよくしているだけで、銀時自身は自己処理しかしていない。
土方に触れているのだって、事前に勃起や射精の仕組みを説明した上で土方の許可をもらって触っているのだ。

(ゆっくり教えるって約束したし…まだ十四郎とセックスするのは先だよな。
それに、十四郎がセックスしたいって思ってくれなきゃできないし…)

銀時は土方に挿入したいと思っているのだが、土方がそれを了承してくれるかどうかは分からない。
どうしても土方が嫌がるのなら、互いに触り合う関係で我慢しようと銀時は決めていた。

服を全て脱がせ終えると、銀時は少し離れて土方の身体を見る。

「もう勃ってる。…十四郎はエッチだね」
「仕方ないだろ…銀さんに触ってもらわねェとダメなんだから」
「俺にって…もしかして十四郎、自分でも触ってみた?」
「っ…」

真っ赤になって顔を背ける土方は、銀時の問いに「そうだ」と言っているようなものである。

「触ってみたんだ。…銀さんに会うまで、我慢できなかったの?」
「………」

土方の首が僅かに縦に振れる。

「そっか…」
「…ごめんなさい
「何で謝るの?」
「勝手に触っちゃったから…」
「十四郎…銀さんに会えない時は自分で触っていいんだよ」
「そうなのか?」
「うん。自慰とか一人エッチとか、呼び方は色々あるけど…自分で発散させるのも必要なことなんだよ」
「でも…俺、ちゃんとできなかった…」
「ちゃんとって…最後までイケなかったの?」
「ああ」

他人に触られる快感を先に覚えてしまった土方にとって、自分の手では刺激が足りなかったのだろう。

(俺に触られねェとイケない十四郎ってのも捨て難いけど…このままってワケにはいかねェよな)

頻繁に会って発散させられればよいが、互いに仕事を持っている身ではそうもいかない。

(それに…十四郎が疼く身体を持て余してるのを、真選組の連中に気付かれたらマズイ)

銀時は土方に自慰の仕方を教えようと決めた。

「十四郎、今日は自分で触ってみようか?」
「えっ、でも、俺だけじゃ…」
「だから教えてあげる。仕事で会えない時とか、自分でできなきゃ困るだろ?」
「…うん」

実際に我慢できなくて自分で触った時、銀時に触られるような快感が得られず達することができなかった。
その夜は結局、一晩中仕事をして下半身から気を逸らし続け、熱が引くまでひたすら我慢し続けたのだった。

「自分でできるようになりたい。銀さん、教えて」
「じゃあまず、前に自分でしたようにやってごらん」
「わ、分かった。…あっ、その時は服着てた」
「まあ、今日は俺がやり方をチェックするから脱いだままでいいよ」
「うん」

土方は仰向けになって膝を立て、遠慮がちに右手を伸ばして一物を握った。


「んっ…」
(十四郎は横になってするのかァ…。あ、いつも寝かせて俺が触ってるからだな…)

羞恥心と緊張でそろそろと動いていた手は、感じるほどに大胆になっていく。


「あっ、あっ、あっ…」
「…屯所でもそんな声、出してたの?」
「違っ…布団、かぶって、タオル、噛んでた…」
「そっか。今日は遠慮なく声、出していいよ」
「んっ…あっ、あっ!」


一物から先走りが溢れ、扱くたびに卑猥な水音を立てる。
土方は左手で枕の端をギュッと握ると、更に擦るスピードを上げた。


「あっ、あっ、あぁっ!」


けれどなかなか達することができない。
土方は潤む瞳で銀時を見つめる。


「ぁ…銀、さん、触、て…」
「…ダメだよ。十四郎が自分でするんでしょ?」
「も、ムリ…イキた…銀さんっ!」


涎を零す一物を握りしめ、銀時を求める土方は壮絶な色香を放っている。
今すぐ襲ってしまいたい衝動をグッと堪え、銀時は枕を掴んでいる土方の左手を握る。


「こっちの手も使って、上の方を触ってごらん。右手はそのまま…俺に触られてると思って…」
「ん…ああっ!ぎ、ぎん、さんっ!」


言われた通り、右手で竿を扱いたまま、左手で先端に触れると、土方の腰がビクビクと震えた。


「てっぺんの穴にね、指先をちょっと入れると気持ちいいよ」
「ん…ああっ!あ、ああっ!」


土方のモノがドクリと脈打つ。


「十四郎…もうすぐだね」
「あっ…銀さん!銀さんっ!…イ、ク……っあああ!!」


生まれて初めて、土方は自分の手で達した。

達した余韻でボーッとしている土方に銀時は口付けを落とす。

「お疲れ様」
「銀さん、ありがと…」
「十四郎が頑張ったからだよ」
「えへへ…」

銀時に褒められ、土方は無邪気に笑う。
先程までの艶めいた姿とのギャップに、銀時は我慢の限界を感じた。

「……ゴメン。ちょっと、厠に行ってくる」

自己処理をするために銀時は厠へ向かい、土方は身体を起こして枕元のティッシュで一物を拭いた。

*  *  *  *  *

銀時が厠から出ると、土方は裸のまま布団に包まっていた。
布団ごと土方を抱き寄せて、銀時は土方に口付ける。

「あの、銀さん…」
「ん?なぁに?」
「その…今日は、もう…終わり?」
「…十四郎はどうしたいの?」
「あの…今度は銀さんに、触ってほしぃ…」
「了解」

銀時は土方の顎に手を添えて正面を向かせると、深く唇を重ねた。



*  *  *  *  *



「十四郎…ちゃんと洗えた?」
「ああ。銀さんこそ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。俺は手だけだから」

土方がシャワーを終えた頃、銀時はもう帰る支度が整っていた。
ホテルに来たことは秘密なので、シャワーを浴びても石鹸は使わないことに決めている。
特に今日土方は「巡回に行く」と言って屯所を出たのだ。石鹸の香り付きで戻るわけにはいかない。

土方も身支度を終えると、二人揃って部屋を出る。

「十四郎…次はいつ会える?」
「火曜の夜なら…」
「じゃあ、前に行った居酒屋にしない?あそこ、二階が宿になってるから」
「分かった」

次に会う約束をして、銀時は正面入り口から、土方は来た時と同様に裏口から出た。

こうして今日も「秘密の逢瀬」は秘密のままに幕を閉じた。


(10.05.26)


えー…第一話(教えて銀さん)の純真無垢な十四郎を可愛いと言って下さった方々、申し訳ありませんm(__)m 十四郎はすっかり淫乱副長になってしまいました。

でもまだ、セックスは知らないんで安心して下さい(何を?)。それから、性の知識に疎いけどそれ以外には抜け目ない十四郎っていうのは、書いていてかなり楽しかったです。

沖田は完全に騙されているようですが、パン祭りから戻った山崎は真選組の頭脳の工作を見破れるでしょうかね?

次はレッスン3といきたいところですが、その前に時間を少し遡って「レッスン1.5」として純真無垢な十四郎が性に目覚めるまでを書きたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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