※前編でも言いましたが、真選組→土の土方さん総受け気味です。
※土方さん、騙されやすいがゆえに色んな人とキスの経験ありです。
大丈夫と思われた方だけどうぞ。
後編
「…ここが、らぶホテル?」
「そう。ほら、看板に『ご宿泊』と『ご休憩』って書いてあるだろ?」
「本当だ…。知らなかったぜ…」
感心した様子でホテルの看板を眺める土方の手を引き、銀時は中に入った。
「すげェ、色んな部屋があるんだな…」
受付に部屋の写真がパネルになって並んでおり、土方はそれを物珍しげに見ている。
「どの部屋がいい?」
「うーん…俺、初めてでよく分かんねェから、銀時が選んでくれ」
「分かった。じゃあ…」
折角なのでマニアックな部屋に入ってみたい気もしたが、さすがにラブホ初体験でそれは可哀想だと思い
一番シンプルな部屋を選んだ。
尚もパネルを見ている土方を残し、銀時は休憩の手続きを済ませる。
「なあなあ、牢屋みたいな部屋があったぞ?」
「あー…まあ、色んな部屋があんのよ」
「ホテルなのに?あんな部屋じゃ休めねェだろ…」
「それはおいおいね。とりあえず、今日はシンプルな部屋にしたから」
銀時の後を付いていきながらも、土方は珍しそうにキョロキョロと辺りを見回していた。
そして目的の部屋まで来ると銀時が扉を開け、土方を先に中へ入れる。
「おー!ベッドがデケェ!」
部屋のほとんどを占領しているベッドに、土方は目を輝かせる。
「すげェな!」
「いや、別に普通だと思うけど…」
「そうなのか?このベッド、三人くらい寝られるんじゃねェか?」
「あー、そうかもね」
「…そっちは風呂か?」
「あ、うん」
土方は浴室へ続くドアを開け、また「おお!」と感嘆の声を漏らす。
「風呂場が広い!」
「あー…風呂場は普通のホテルより広いかもね」
二人で入ることを想定して作られた浴室は、シティホテル等のそれよりは確かに広い。
「これなら近藤さんも余裕で入れそうだな」
「えっ?」
「近藤さんは体がデカイだろ?ホテルの風呂だと足が伸ばせないってぼやいてたんだ…。
よしっ、今度ここに連れてきてやっ「ストーップ!!」
近藤をラブホテルに誘われては堪らないと、銀時は慌てて待ったをかける。
「ダメダメダメダメ…ゴリラとなんか、絶対に来ちゃダメェェェ!」
「何でだよ…」
「ここに来ていいのは恋人同士だけなの!」
「…恋人だけ?」
「そう。カップル専用だから『ラブ』ホテル!」
「そうだったのか…。じゃあ、近藤さんとは来れねェな」
「うん。十四郎とここに入れるのは俺だけだよ」
「分かった」
他の男とラブホテルに入るのを無事に阻止できて銀時は胸を撫で下ろす。
そしていよいよ本題を切り出すことにした。
「それでね…ここはカップルしかできないことをするためのホテルなんだよ」
「カップルしかできねェこと?」
「そう。それは…セックスだ!」
「せっ…」
「というわけで、セックスしよう。十四郎は上がいい?下がいい?できれば俺、上がいいんだけど…」
銀時はやるか否かではなく上か下かを尋ねた。
ここまで来て「やらない」という選択肢を与えるつもりはないのだ。
土方は「うーん」とひとしきり考えてから言った。
「上とか下って何のことだ?」
「役割のことだよ。上と下、攻めと受け…」
「…攻めの反対は守りだろ?」
「いや、そーじゃなくて…男役と女役って言えば分かるか?」
「…女装するのか?」
「違うって!…もしかして十四郎、男同士のヤり方、知らない?」
「…何のやり方だ?」
「セックスに決まってんだろ」
「あっ、そうだ。その、せっくすって何だ?」
「………へっ?」
ここまで饒舌に語っていた銀時の言葉がピタリと止まった。
その様子に土方は、何か変なことを言っただろうかと首を傾げている。
「あ、あの…セックス、知らない?」
「ああ」
「男同士だから分からない、とかじゃなく?」
「何が?」
「だからセックス。…聞いたことない?」
「初めて聞いた」
「マジで?本当のこと言っていいんだよ?銀さん、過去には拘らないから」
土方が恋人の前で無垢なフリをしている可能性もあると、銀時は懐の深さをアピールする。
けれど土方は本当に何も知らないようで…
「嘘なんか吐いてねェ。…本当に知らないんだ」
「ほ、本当に本当?」
「本当に本当」
「本当に本当に本当?」
「本当に本当に本当」
「本当に本当に…」
「ああ、もう!知らねェって言ってんだろ!悪かったな!」
「ごごごごめん!そんなつもりじゃ…」
「るせェ!俺のこと、バカにしてんだろ…」
「そんなことない!ほら、十四郎って頭いいから何でも知ってると思ってたんだ。
知らないことは悪いことじゃねェよな。俺が教えてあげるから機嫌直して、ねっ?」
「教えくれるのか?」
「もちろん。優しく教えてあげるよ(優しくというか、やらしくだけどね)」
下心は隠したまま、銀時は土方の肩を抱いてベッドへと連れて行った。
ベッドの上に向かい合って座り、銀時はコホンと咳払いをする。
「えー、ではこれから、セックスの仕方を教えまーす」
「よろしくお願いします。銀さん」
「銀さんんんんん!?」
「…俺が呼ぶと変か?お前には教わることが多そうだから丁寧に呼んでみたんだが…」
「あ、いや…好きに呼んでいいよ」
「そうか?じゃあ、銀さんにする」
「お、おう(やばい…最初に銀時って呼ばれた時もヤバかったけど、これは更に…
何かもう、色んなトコから色んなモンが出そう…)」
心の中で銀時が悶えていると、待ち惚けさせられている土方がクイクイと銀時の着物の裾を引いた。
「銀さん、教えて」
「あ、うん…」
真っ直ぐな瞳で見つめられ、銀時はいたいけな子どもを騙しているような気分になる。
(違う違う!これは十四郎のためなんだ。このまま何も知らずにいると、酷い目に遭うかもしれねェからな)
今まさに自分が酷いことをしようとしているというのを棚に上げて、銀時は土方のためという大義名分を掲げる。
「えっと、まずは服を……いや、その前にキスだな。…キスは知ってる?」
「ああ」
「そっか。…もしかして、誰かとキスしたことある?」
「ああ」
「!?」
聞かなきゃよかったと銀時は後悔した。セックスの存在すら知らない土方にキスの経験があるなんて…
まっさらな土方を自分色に染めるのだと勝手に計画していた銀時は、少なからずショックを受けていた。
だが、これ以上追究するのは止めようと思う一方で、好奇心がむくむくと湧いてくる。
「あの…何人くらいとキスしたの?」
「うーん…わざわざ数えてねェけど、百は超えてないと思う」
「百ぅぅぅ!?ななな何で!?何でそんな沢山とキスしてんの!?」
「…そんなに驚くことか?」
「驚くだろ!多過ぎるって!」
「そんだけ隊士がいるんだから当然だろ」
「…隊士?まさか、キスの相手って真選組の連中?」
「ああ」
さも当然といった表情で土方は頷く。銀時は何が何だか分からなかった。
「あ、あのさァ…どういう状況でキスしたの?」
「危険な任務から帰った時なんかに『よくやった』みたいな意味で」
「はぁ?それって…例えば、近藤もそんな時にキスすんの?」
「いや。俺は口下手だから、変に労いの言葉を掛けるより態度で示した方がいいって…」
「それ…誰が言ったの?」
「確か、総悟…だったと思う」
「へぇ〜、沖田くんかァ」
銀時の腹の中で黒い影が渦巻き始めたのに土方は全く気付かない。
「言い出しっぺってことは、沖田くんとキスしたこともあんだよなァ?」
「あるぞ」
「ふぅ〜ん。…最初にキスしたのも沖田くん?」
「いや…多分、山崎だったような…。大分前のことだからハッキリとは覚えてねェけど」
「あっそー…ジミーがねェ…。そんで?頑張ったヤツら全員にキスしてんの?」
「真選組も隊士が増えてるから、口にキスするのは一日三人までって総悟が決めたんだ」
「…口に?他の所にキスする時もあるの?」
「ああ。頑張ったヤツにはギュってして、もっと頑張ったヤツには頬にキス。そんで…」
「その日のトップスリーには口にキスってわけ?」
「ああ」
悪びれることなくキスの話をする土方は、事の重要性を全く理解していないように見える。
恋敵が多いことは覚悟していたが、まさか真選組全体が敵だったとは銀時も予想できなかった。
そして、その真選組に対して銀時は怒りがふつふつと沸いてきた。
(何も知らないのをいいことに、アイツら十四郎の唇を奪いやがって!)
「十四郎…これからはもう、真選組のヤツらにキスなんかしちゃダメだよ」
「何でだ?」
「本来こういうことは恋人同士でするもんなんだ」
「そうなのか?…あっ、そういえば所帯を持ってるヤツらにはキスしたことねェな」
「あっ、全員としたことあるワケじゃないのね」
邪な想いを抱いている男だらけの屯所に、土方を帰すわけにはいかないと思っていたところだった。
だが、それなりに安全な男もいるようなので、銀時は少し安心した。
「それなら分かるだろ?相手がいるヤツはその相手とキスするから十四郎とはしなかったんだよ」
「そうだったのか…」
「だから十四郎も、俺と恋人同士になったんだから俺以外とキスしちゃダメだよ」
「分かった。教えてくれてありがとう、銀さん」
「っ!!」
土方はにっこり微笑んで銀時の首に腕を回し、チュッと口付ける。
それがあまりに自然だったため銀時は、土方が如何に多くの経験を積んできたかを悟り
喜ぶより前に、これまで土方と唇を重ねてきた男達への怒りが増大した。
そんな銀時の腹の内など知りもしない土方は、また銀時の着物の裾を引いた。
「銀さん、どうしたんだ?」
「あ、ああ…ゴメンね。何でもないよ。えっと…もう、俺以外とキスしない?」
「しないぞ」
「そっか…。じゃあ、ちゃんと分かってくれた十四郎にご褒美」
「ん?」
銀時は土方の後頭部に手を添え、そっと唇を重ねた。
そしてそのまま土方の着物を脱がそうとしてピタリと手を止め、唇を離した。
(これで俺がこのままヤっちまったらアイツらと同じじゃねェか…。
俺はアイツらと違って正真正銘本物の恋人なんだ。だったらこんな、騙すようなことしちゃいけねェ)
銀時は土方は強く抱き締めた。
「十四郎…今日はこれで終わりにしよう」
「終わり?まだ、せっくすが何か教わってないぞ」
「それはまた今度。いっぺんに覚えなくてもいいよ。俺達、これからずっと一緒なんだから」
「すまん…俺が何も知らないから、教えるのが大変なんだよな」
「そういうことじゃないよ。ただ、こういうことは時間をかけて覚えた方がいいんだ」
「…そうなのか?」
「うん。その方がきっと、いい関係を築けると思うから」
「分かった。少しずつ、でも銀さんに教わったことは全部覚える」
「俺も、どうやって十四郎に教えればいいか真面目に考えるね」
「ありがとう」
土方はまた銀時に口付ける。
すぐに離れていこうとする土方を銀時は抱き留め、二人は長い時間唇を合わせていた。
二人の関係は今、始まったばかり。
(10.05.22)
というわけで、日記で痛々しい妄想を繰り広げているMロメロパーク派生小説第二弾です^^; 背景はメロの柄です。三代目メロが十四郎、四代目メロが銀さんなので
「銀さん」「十四郎」と呼び合う二人を書きたくて…土方さんが銀さんを「さん」付けするのはどういう状況だろうと考えたところ、結局ぎんトシシリーズと逆の設定になりました。
そして、今まで何となくは書いたことがありましたが、きちんと書いたことがなかった総受けも盛り込んでみました。総受けといっても銀さん以外はキス止まりですよ。
自分では書きませんが土方さん受けなら結構何でもいけます^^もちろん、銀土がダントツ一番で好きですけどね。 ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
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