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中編
「おや旦那方お揃いで…何か御用ですかィ?」
屯所の玄関で三人を出迎えたのは一番隊隊長の沖田だった。
「よー沖田くん。トシいる?」
「トシ、ね…いますけど、デートのお誘いですかィ?」
「デートっつーか、ホテルでセッ…」
「そうです!デートなんです!」
慌てて新八が言葉を遮るが、鋭い沖田は気付いてしまったようで…
「旦那…土方さんの身体、随分お気に召したようですねィ」
「体っつーか、俺はトシのこと全部好きだけど?」
「でもヤりに行くんでしょう?」
「やるって何を?」
「何って…セックスに決まってるでしょう」
「ちょっと沖田さん!往来で昼間っからそんな話は…」
「いいからさっさとトッシー呼んでくるアル」
新八と神楽で話を変えようとするが、土方を苛める材料が手に入りそうな会話をドS王子が止めるはずもない。
「で、土方さんとのセックスは気持ち良かったですかィ?」
「ああ。俺セックスしたの初めてだったけど、めちゃくちゃ気持ち良かったぜ」
「…はじめて?」
「そう。トシにセックス教えてもらったんだ」
言っちゃった…新八と神楽はほぼ同時に頭を抱えた。
ニヤニヤと黒い笑みを浮かべている沖田は、銀時をからかう気満々に見える。
「へぇ〜、まさか旦那が童貞だったとはねィ」
「どーてーって何だ?」
「…セックスした経験のない野郎のことでさァ」
「そうか…じゃあ俺トシとするまで、どーてーだったよ」
「そうですか…」
沖田はからかっているつもりだが、銀時はあまり痛みを感じていないようだ。
これなら沖田もそのうち諦めるだろうと、新八と神楽は二人を見守ることにした。
だが沖田は別の方法で銀時を苛めてみることにする。
「ちなみに、土方さんは童貞じゃありやせんぜ?」
「そりゃあそうだろ。…俺とセックスしたんだし」
「違いやす。旦那とした時は土方さん、ネコだったんでしょう?」
「トシは人間だぞ?」
「そういうことじゃなくて…旦那が土方さんに突っ込んだんでしょう?」
「ああ、そうだよ」
「この場合、土方さんは処女じゃなくなったって言うんです」
「しょじょ?」
「ええ。…突っ込んだことのないヤツを童貞、突っ込まれたことのないヤツを処女って言うんでさァ」
「へぇ〜」
銀時は沖田の説明を感心しながら聞いていた。
「あっ、じゃあ俺はしょじょ?」
「いえ…旦那は土方さんに突っ込まれたいわけじゃないんでしょう?だったら処女とは言いやせん。
突っ込まれたいのにその経験のないヤツが処女なんでさァ。それ以外でセックス経験のない男は童貞ですぜ」
「ふぅーん。…沖田くんはどーてー?」
「…ノーコメントでさァ。で、話は戻りますが土方さんは童貞じゃありやせん。
つまり、突っ込んだことがあるってことですぜ。…ちなみに相手は女です」
「まあそうだろうな…。トシくらいモテるヤツなら、俺の前にお付き合いしてる人がいてもおかしくねェ。
…あっ、もしかしてトシがセックスしたのって沖田くんの姉ちゃ…」
「姉上を汚すんじゃねェ!」
銀時を睨みつけ、地を這うような声で沖田は言った。
「な、何だよ。そんなに怒ることねェじゃねーか…。
俺は沖田くん程付き合い長くないんだから、トシの好きな人ってそんくらいしか知らねェんだって」
「別に土方さんは、そこまで好きな人としたワケじゃありやせんぜ」
「えっ、どういうこと?」
「ちょっとお前、銀ちゃんに爛れた知識を植え付けるのはやめるネ!」
これ以上は危険だと感じた神楽が、すかさず沖田を止めにかかる。
「何でィ。俺は旦那に真実を教えてあげようとしているだけでィ」
「知らなくてもいいことだってあるでしょう?」
「俺、トシのことなら何でも知りたい…沖田くん、教えて」
「ほら、旦那がこう言ってるんだ。ガキはすっこんでろィ」
「銀ちゃん、コイツの言うことなんかデタラメに決まってるアル」
「それは聞いてから判断する」
「さすが旦那だ。…俺も全部知ってるワケじゃないんですがね、土方さんはあの通りモテるんで
昔っから言い寄ってくる女が沢山いたんです。そのうちの何人かとは身体の関係…セックスまでしてやす。
ただ、土方さんは別にその女が凄く好きだとかそういうんじゃなく、捌け口みたいなもんでした」
「捌け口?」
「ヤりたい気分になった時、たまたま言い寄って来た女を抱いていたんでさァ」
「トシが、そんなことを…」
銀時は明らかにショックを受けている。
沖田だって最初からここまでするつもりはなかった。
だが、銀時に悪気はなかったにせよ、姉のことを話題に出されて頭に血が上ってしまったのだ。
「銀さん、気にすることないですよ。沖田さんが言う通りじゃないかもしれませんし…」
「それに銀ちゃんと真剣にお付き合いしてることは間違いないネ」
「…トシに確認してくる」
「あっ、銀さん!」
「ちょっと待つアル!」
新八と神楽が止めるのも聞かず、銀時は屯所に入っていった。
「トシは好きでもないヤツとセックスしたのか!?」
「ぎん?」
副長室の襖を開けると同時に銀時は問い詰める。土方は何が何だか分からない。
「どうなんだよ。トシは好きでもないヤツと…」
「ぎ、ぎん?どうしたんだ一体…」
「すいません土方さん。銀さんちょっと沖田さんにからかわれて…」
後を追ってきた新八が銀時と土方の間に入る。
「…総悟が何て?」
「トシは好きでもない女とセックスしたって」
「ぎん…」
「なあ、本当なのか!?」
「………」
「トシ!」
土方はすっくと立ち上がり、銀時と正面から向かい合う。
「ぎん、付いて来い」
「何処行くんだよ!」
「…ガキには聞かせたくねェ」
それだけ言うと土方は無言で部屋を出た。
出る時に「心配するな」とでも言うように、新八と神楽の頭にポンと手を置いていった。
* * * * *
土方が銀時を連れてきたのは一軒の連れ込み宿。もちろん銀時は初めて入る場所である。
「何、ここ」
銀時はキョロキョロと室内を見回した。薄暗い室内に二人分の布団が敷かれている。
土方は布団の上に腰を下ろした。
「連れ込み宿だ」
「つれこみ?」
「平たく言えばセックスするための場所だ」
「そんな所があんのか…」
「…この前、泊まった所もそうだぞ」
「えっ、そうなのか!?」
「ああ…あの宿は内装も洒落ていて洋室もあるからラブホテルなんて言われてるが
ここは昔ながらの形態の宿だな」
「…そういうことに詳しいのって、やっぱり経験があるから?」
「経験がなくても知ってるヤツは知ってるが…俺は、経験があるから知ってる」
「そうか…」
銀時の表情はどんどん曇っていく。屯所で土方を問い詰めたようなパワーもなくなっているようだ。
「ぎん…俺はお前に謝らなきゃならねェ」
「謝る?」
「俺はお前に…セックスは一番好きなヤツとしかやっちゃいけねェと教えた。
でも俺は…総悟の言うように、大して好きでもない女とセックスしたことがある」
「………」
「すまない」
「トシは…俺のこともそんなに好きじゃないけど、セックスしたかったからしたのか?」
「それは違う!信じてもらえないかもしれねェが…俺は本気でお前のことが好きだ。
そもそも…抱かれたいと思ったのは、お前が初めてなんだ」
「はじ、めて?」
「ああ」
銀時は徐々に心の靄が晴れていくような気がした。
「抱かれるのは初めて?」
「そうだ。…あっ、抱かれるっつってもギュッてすることじゃないぞ」
「ははっ…もう分かってるって。トシは俺とセックスするまで『しょじょ』だったんだろ?」
「処女って…何処でそんなこと覚えたんだよ」
「沖田くんが言ってた。突っ込まれたいけど突っ込まれてないヤツのことをしょじょって言うんだって」
「総悟の野郎、余計なことを…」
「あれっ、何か間違ってた?」
「処女って言葉は女に使うんだよ…。でも、まあ、強ち間違いとも言えないか…」
「とにかく、俺のことが好きだから『しょじょ』じゃなくなったんだよね?」
「お、おう」
「そっか」
「本当にすまなかった」
土方は深々と頭を下げた。
「そ、そんなに謝らないでよ…」
「俺を許してくれるのか?」
「別に怒ってたわけじゃねェよ。ただ、もしトシが俺のこと好きじゃなかったら悲しいなと思って…」
「そんなわけねェだろ。俺が付き合ってくれと言って始まったんじゃねェか」
「うん、そうだったね。良かった…」
えへへ…と無邪気に笑う銀時を見て土方は安堵するとともに、今後はこれまで以上に真摯な態度で接しようと決めた。
(10.02.21)
思いがけずシリアス展開…でもこの後はいつも通りのエロ小説になります。18歳以上の方はどうぞ→★