後編
「お待たせ〜」
「おう」
入浴を済ませた銀時は和室の襖を開けた。そこには二組の布団が並べて敷いてあり、先に入浴を済ませた土方は
その上にゴロリと横になって携帯電話を弄っていた。おそらく仕事のメールでもしているのだろう。
銀時が隣に横になって土方の腰に腕を回すと、土方はパタンと携帯電話を閉じた。
「もういいの?」
「ああ…」
「そっか。じゃあ、シよっか?」
「……」
「あ、あれっ?どうしたの?」
甘くなりかけた空気を突き破って、土方の冷やかな視線が突き刺さり銀時は慌てる。
(な、何で睨んでんの?まさか俺が風呂場で思い付いた名前を呼んでもらう作戦がバレたのか?)
「ナニ企んでやがる…」
「た、企むって?」
「ヤる前からテメーがニヤニヤしてる時は、大抵ロクでもねェことを考えてる時だ」
「ロクでもねェって…まあ、確かに今日はちょっと趣向を変えてヤってみようとか思ってるけどね?」
「またかよ…」
(よ、良かったー。バレたわけじゃねーのか…)
「マンネリ解消になっていいんじゃねェ?」
「普通にヤればいいじゃねェか…」
「今日は簡単だから。道具使ったり、お前に恥ずかしいカッコさせたり、言わせたりするんじゃねーから、な?」
「…何すんだよ?」
「名付けて『デキてない設定エッチ』!」
「………おやすみなさい」
やはりロクでもないことを考えてやがった―土方は布団を頭から被って寝る体勢になった。
「ちょっ、ちょっと待って!銀さんの話を聞いてよ!」
「…何だよ」
土方は布団から顔だけ出して面倒臭そうに応える。
「だからね?デキてない設定エッチっつーのは、昔を思い出してヤるっつーか…」
「ああ、そうかよ…」
「ほらっ、俺たち今でこそこんなにラブラブで仲良しだけど…」
「誰がラブラブだ…」
「だから俺たち。…でも、出会った頃はケンカばっかだっただろ?」
「まあ、そうだな…」
「今日はそんなケンカしてた頃、付き合う前の俺たちに戻ったつもりでエッチを…」
「ちょっと待て。何で付き合う前の俺たちがヤるんだよ…」
「あー…そこは考えてなかったなー。うーん…じゃあ、銀さんが何かと衝突するお前を犯すっつー設定でよろしく」
「よろしくじゃねェよ!誰もやるとは言ってねーだろ!」
「お前はいつも通りでいいから。普段から恥ずかしがって『待て』とか『やめろ』とかばっかだし。
…あっ、でも俺のこと名前で呼ぶの禁止な?」
「はっ?」
「デキてない設定なんだから、俺のことは昔みたいに『万事屋』って呼んでね」
「わ、分かった…」
いつの間にか銀時のプレイを受け入れることになってしまっている。
うまく言い包められたことに土方自身、気付いてはいなかった。
銀時は土方が包まっていた布団を剥ぐと、仰向けにして覆い被さり唇を合わせた。
「…何で抵抗しないの?」
「はぁ?」
「俺たち付き合ってないんだよ?それなのに押し倒されてキスされたんだよ?抵抗しなきゃ!」
「あ、ああ…」
万事屋やめろ―つぶやくように言って土方は顔を背けた。
これまで銀時がしてきた提案(縛ったり、女装させたり、一人でヤってるところを見せたり…)に
比べれば恥ずかしさはないものの、面倒臭いと感じていた。
「やめない」
「んっ…んんっ、んぅっ!」
銀時は土方の顎を掴み、強引に正面を向かせると再び唇を重ねた。今度は先ほどよりも深く口付け
舌を捻じ込んできた。土方は銀時の舌に翻弄されそうになるも、慌てて口を閉じて銀時の舌に噛み付いた。
「いってェ…」
「あっ…」
「まあ、ディープキスすりゃそうなるよな。じゃあキスはこんぐらいでいいや」
顔を顰める銀時にやり過ぎたかと不安になった土方だったが、銀時は当然の反応だと言って気にする様子もない。
それどころかさっさと土方の帯を解きにかかった。
「あっ、やめ…」
「へー…結構肌、白いんだな」
抵抗しなきゃ―土方がそう思った頃には既に帯が解かれていた。
銀時は土方の腕を一つに纏めて頭上で押さえ付け、もう一方の手で着流しの袷を開く。
「み、見るな…」
「男同士だし、見るくれェいいだろ?」
「手、離せ…」
「自分で抜けてみれば?」
「くそっ…あっ!」
「ナニ、ここ感じんの?」
土方が両腕に力を籠めようとした瞬間、銀時の指が胸の突起を弾いた。そこを刺激されると土方の力は抜けてしまう。
「へぇー、鬼の副長さんは乳首が弱いんだー」
「よろずや…やめ、ろっ!触ん、なっ!…あぁっ!」
突起を弾く指はそのままに、銀時はもう片方の突起に吸いつくと土方から艶のある声が上がった。
ペロペロと舐められながらもう一方をコリコリと刺激され、土方は下半身が重くなるのを感じた。
「やっ…あっ、やめっ…あぁっ!」
「おいおい、もう勃ってんじゃねェか…。銀さんに乳首吸われて気持よかった?」
「んなワケあるかっ!」
「じゃあ何で勃ってんでしょーね?」
「くっ…ああっ!」
下着越しに土方のモノに触れただけで、土方の身体はビクンと跳ねた。
「すっげェ敏感…これでも気持ちよくないって言うの?」
「きもち、よく、ねぇっ!」
「あっそ…じゃあこれならどうかな?」
「え?あっ…やめっ!……あぅっ!」
腕が自由になったと思った直後、銀時は土方の下着を抜き取って一物を咥え込んだ。
急所を咥えられていることで、両手が自由になったとしても大した抵抗はできない。
銀時の手際の良さに、土方は翻弄されるばかりであった。
「ああっ!…やめっ!よ、ずや…離せっ!」
「こーんなにダラダラ零して…ここでやめたら困るの副長さんだよ?」
「や、めっ…ああっ!ああっ!」
しゃべるために口を離しても手は竿を上下に扱き続けている。土方の一物からは先走りが溢れ出していた。
銀時は根元を手で扱きながら、括れを舐め、先端の孔を舌先で刺激し、じゅるじゅると先走りを啜った。
「もっ…やめっ!あぁっ…離、せ!…だ、ダメ…あっ、あっ、っあああ!!」
チュウッときつめに吸い上げられて土方は銀時の口内に射精した。
銀時はそれをゴクリと飲み込むと、土方を裏返して腹の下に枕を二つ重ねて置いた。
達した余韻で朦朧としている土方は、状況の変化についていけない。
「な、にを…」
「もしかしてまだバージン?ゴリラとかドS王子とかとはそういう関係じゃねェの?」
フルフルと土方は首を振る。
「そっか…じゃあ、副長さんのハジメテ、銀さんがもらうよ」
「うっ…あっ!」
銀時は指を一本土方のナカに挿入すると軽く前後に揺すった。
「あっ、あっ…あぁっ!」
「ハジメテなんでしょ?そんなに感じちゃダメだろ?」
「…んなこと、あっ!言ったって…あぅっ!」
初めて設定だろうがデキてない設定だろうが、既に何度も銀時を受け入れている身体は容易に快感を拾い上げる。
そして快感は徐々に土方から思考能力を奪っていった。
「もう二本楽に動く…鬼の副長さんはお尻で感じる変態副長だったんだー」
「やっ!あぁ…ぎ、ときっ…もうっ!」
「だから万事屋って呼ばなきゃダメだって…」
「よ、ずやっ…もっ…むり!…早くっ…ああっ!」
銀時は埋めていた二本の指を引き抜くと、うつ伏せている土方の腰を持ち上げ
自身を取り出してゆっくりと挿入していく。
「あっ…ああっ!…ああっ!」
「ケツにチ○コ突っ込まれて随分良さそうだな…」
「あ、ぁあ…ああっ!」
「…全部、入ったぜ?分かるか?」
「ぅあ…あぁ…」
指よりも長く太いモノが身体の奥深くに侵入しているのを感じ、土方は無意識のうちに腰を揺らしていた。
「自分から腰振っちゃって…そんなにコレでナカかき混ぜて欲しいの?」
「ぁ…あっ……ぁあ…」
「じゃあ、お望み通りかき混ぜてやるよ」
「ぁ、ああっ!ああっ!」
銀時が律動を開始すると、土方の声は一際高くなる。
「ああっ!…はぁっ!ああっ!」
「…銀さんのチ○コ気持ちイイ?」
「あっ、もち…イイっ!…ああっ!」
「はっ…マジですげェな」
「ああんっ!ぎん…よ、ろずやっ…もっ、イクっ!」
いつものように名前を呼びそうになり一瞬我に帰った土方は「万事屋」と呼び直す。
そんな土方の様子に銀時は、作戦成功を確信した。
「ああ?イキたきゃ、イケよ…」
「あっ、ああっ…はあっ!」
「おらっ、ここがイイんだろ?」
「はぁっ!あっ…ろずや、イク、イク…っあああ!!」
「…くっ…うっ!」
前立腺を突かれ土方はあっけなく達した。銀時もその時の締め付けに堪えることなく吐精した。
* * * * *
「いやぁー、どうよ?デキてない設定エッチ…」
簡単に後始末をした二人は一つの布団に入っている。銀時は着衣のままコトに及んだため
現在も寝間着代わりの甚平を着ているが、土方はまだ衣服を身に付けていない。
「…普通にヤる方がいい」
「またまた〜、かなりノリノリだったじゃねェか。『ああん、万事屋…イクっ!』とか言ってよー」
「………」
「これから万事屋って呼ばれる度に今夜のお前、思い出しそうなんだけど…」
「二度と呼ばねェから安心しろ…」
「え〜、またヤろうぜ?万事屋って呼ぶお前とヤると、犯してるみたいで燃えるんですけど…」
「この変態野郎…」
「お前だって楽しんでただろ?銀時って呼びそうになってわざわざ言い直してたし…」
「…っるせェ!今後、おめーのことは銀時以外で呼ばねェからな!」
「ちェー、分かったよ…」
残念そうに応えると銀時は土方の寝間着を取りに布団を出た。
デキてない設定エッチ作戦―またの名を、万事屋呼びで恥ずかしい思い出を作り銀時呼びの方がいいと錯覚させる作戦―は
成功のうちに幕を閉じたのであった。
(09.11.13)
しょーもない作戦ですみませんでした(^^;。前編と後編でカラーが違い過ぎますね。プレイとしての万事屋呼びならありなんじゃないかと思ったところからできた話です。
これで土方さんは元に戻りました(笑)。今後、徐々に真選組メンバーの前でも銀時呼びができるようになっていくんだと思います。 ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
ブラウザを閉じてお戻りください