一番隊隊長から副長へ素敵な素敵なプレゼント(笑)

※前半部分は土銀版とまったく同じです

 

 

 

「ふ、副長…お、おはようございます」

「おう」

 

土方は寝巻き姿のまま屯所の洗面所へ向かって歩いていた。今日は非番のため、昨夜は遅くまで仕事を片付けていた。全てが終わったのは日付が変わった頃だった。寝不足なんていつものことだが、それにしても今日は頭が重い。重いというか、左右から締め付けられているような気がする。

疲れが溜まっているのか…そんな事を思いながら洗面所へたどり着いた土方は、鏡に映る自分の姿を見て愕然とした。

 

 

 

「なんだコレはァァァァ!!」

 

  

 

鏡の中には頭の上から黒い三角形の耳をはやした自分が映っている。信じられないといった面持ちで頭の上を触ると、確かにフワフワとした毛の感触があった。いつの間にか、カチューシャ型の猫耳を装着させられていたようだ。どうせ総悟の仕業に決まっているが、そのことに気付かない自分もどうかしている。ここまで来る間に何人の部下に見られただろうか…いっそ死んでしまいたい。

 

 

 

「土方さん、おはようございやす。あれっ、新しい耳が生えたんですかィ?」

「総悟てめー、白々しいマネを…ん?いててっ!お、おい、コレ外れねーぞ!!」

「そりゃあそうでしょう。新しい耳が生えたんですからねィ」

「違ェだろっ!どう見てもくっ付いてるだけだろーがっ!!外せ!今すぐ外せ!」

「一度生えた耳はそう簡単には取れやせんぜ」

「だから生えたんじゃなくてテメーがくっ付けたんだろーが!」

「何の証拠があってそんなこと言うんですかィ?」

「こんなふざけたコトすんのはテメーしかいねェだろっ!!」

「そうやって証拠もねェのに善良な部下を疑うたァ…副長失格だぜ。死ね土方コノヤロー」

「テメーが善良だったことなんざ、ただの一度もねーだろ!…何でもいいからさっさと外せ」

「強く引っ張れば取れるんじゃねーですかィ」

「髪が大量に抜けんだろーが…接着剤の中和剤とか持ってんだろ?さっさと出せや」

「何をそんなに急いでるんでィ。今日は非番なんだから、のんびり日向ぼっこでもすればいいでしょう…ネコらしく」

「あと少しで出かけんだよ!だからさっさと外せっつってんだろ」

「旦那のところですかィ?」

「あ、ああ…」

「赤くなってんじゃねェよ…気持ち悪ィ」

「何か言ったか?」

「別に…じゃあ早く準備して行かねェと。まだ着替えてもねーだろィ」

「だからその前にコレを…」

「じゃあ、俺は午前の見回りに行ってきやす」

「お、おい、待て!総悟!総悟!!」

 

 

土方の制止をかわし、沖田は屯所を出て行ってしまった。

 

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

 

「あっ、土方さんいらっしゃい」

「おう…これ、土産だ」

「いつもありがとうございます」

 

万事屋の呼び鈴を押すと、メガネの従業員が出てきて土方を迎え入れる。土方は彼に土産の入った箱を渡すと一緒に中へ入っていく。

 

 

「銀さーん、土方さん来ましたよー」

「おーう、いらっしゃーい。…あれっ?お土産持ってきてくれたの?」

ソファに寝そべり、ジャンプ読んでいた銀時は身を起こして土方を出迎える。

 

 

「ああ…水羊羹だ」

「うっわ、マジ?サンキュー土方♪」

「お、おう」

銀時が抱きしめると、土方は真っ赤になって俯いた。

 

 

「…ん?何でオメー笠なんてかぶってんだ?」

「今日はかなり日差しが強かったからな」

「日差しィ!?神楽じゃあるめーし…」

「るせーな。何でもいいだろ!」

「まあ確かに、土方くんの白い肌を守るには笠くらい必要だよな。…新八ィもらった水羊羹持ってこい!あと、土方くんに麦茶!」

「はいはい」

 

 

 

「…なあ、いつまで笠かぶってんだよ」

「べ、別にいいだろ…」

「なんだ?…頭に何かできたのか?」

「ち、違ェよ!」

「じゃあ笠とってみせてよ」

「き、今日は笠の気分なんだ!」

「何だよ笠の気分って…」

「わっ…ちょっ…やめっ!」

「大丈夫、大丈夫。痛くしないからねー」

「なっ…痛くってなんだよ!」

「まあまあ」

「あっ!」

 

一瞬の隙をついて銀時は土方の笠を奪い取った。だが土方は両手で頭を覆い、必死で猫耳を隠している。

 

  

 

「往生際が悪ィな…ほらっ、手ェどけろって」

「っるせー!笠返せ!」

「ほら、ここにあっから取りにくれば?」

 

笠は手を伸ばせばすぐ届く位置に置かれている。だが、手を伸ばせば頭上の耳が見えてしまう。土方は頭を抱えたまま動けないでいた。ちなみに二人のやりとりを横目で見ながら、新八は土方からもらった水羊羹を食べていた。

 

 

 

「何かよー、そこまでされっと絶対に見たくなるな。…観念して手ェどけろって」

「やだっ!絶対ェに見せねー!」

「ちょっと。ちょっとだけでいいから。ちらっとだけ!」

「いーやーだー!」

「みーせーろー!」

「いーやーだー!」

「みーせーろー!」

いやだ!みせろ!…こんなやりとりが三十分ほど続き…ついに土方が折れた。

 

 

 

 

「分かった。見せる。見せるけど…笑うなよ?」

「分かった…新八、オメーも笑うんじゃねーぞ?」

「あっ、はい」

 

新八はハッキリ言って、土方の頭がどうなっていようと別にいいじゃないかと思っていたが、銀時に言われたのでとりあえず返事をした。

土方はそろそろと両手を下ろし、頭上の猫耳を顕わにさせた。

 

 

 

 

「ひ、土方さ…」

「お、めー…ど、どう…ね、ねこ…み…」

全身をフルフルと震わせながら銀時が言葉をつむぐ。新八もあまりのことに言葉を発せなくなっているようだった。

 

 

 

「総悟にやられた。…引っ張っても取れねーんだ」

「取れね、て…ね、ねこ…」

「…だから見せたくなかったんだよ」

「かっ…可愛い!すげー似合ってるよ!!うん。いやー、正直俺にはこういう萌え系?みたいなの、よく分かんねーと思ってたんだけどよ…いいなソレ!いいよ!沖田くん、ぐっじょぶ!」

 

堰を切ったように銀時が捲くし立てるのを、土方は唖然とした表情で聞いていた。

隣にいる新八も銀時のハイテンションについていけない様子だ。

 

 

「か、可愛いってなんだ!バカにすんじゃねェェ!!」

「うわーっ!怒った顔もまた可愛いなー!…なあ、ちょっと鳴いてみてくんない?にゃんって」

「誰が言うか!…帰る!笠返せ!」

「そんなこと言うなよー。可愛い、猫耳副長さん♪」

「返せって!」

「いいじゃねーか…せっかく来たんだし…メシ、食ってけよ」

「るせー、帰る!」

「まーまー、どうせそんなナリじゃ、屯所でメシ食ってねーんだろ?今作ってやっから、待ってろよ!」

 

銀時は楽しそうに台所へ向かい、土方は仕方なくソファに座り直した。そして新八は「僕…買い物に行ってきますね」と言って出て行ってしまった。

 

  

 

「簡単なモンでいいだろ?」

「ああ、悪ィな…」

銀時は台所から出てくると持っていた丼を土方の前に置く。丼の中にはいっぱいの白飯。そしてマヨネーズのチューブを隣に置いた。

 

「本当は削り節とかかけたかったんだけど…」

「んなマネしたらたたっ斬るからな!」

「分かってるって!なあ…食べさせてやろうか?」

「ああ!?」

「猫ちゃん…はい、あーん…」

銀時は丼を抱えて、土方に食べさせようとする。

 

「……帰る!」

土方は笠をかぶり、本格的に帰り支度を始めた。

 

「待てって!悪かった!もうしません!…な?腹減ってんだろ?」

マヨネーズを見つめていると、ぐぅっと土方の腹が鳴った。

 

「…食ったら帰るからな!」

「はいはい。どーぞご自由にー」

土方は白飯が見えなくなるまでマヨネーズをかけ、土方スペシャル丼をたいらげた。

 

 

 

 

 

結局その日土方は、夕方まで万事屋で過ごした。もちろん笠はかぶったままで。可愛いを連発する銀時に居心地の悪さは感じるものの、いつもに増して優しい銀時に「たまにはいいか」とも思っていた。

 

 

(09.09.29)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

photo by にゃんだふるきゃっつ

やっと銀土で猫耳副長が書けました!淫乱猫耳にはならなかったけど満足です!…あっ、でもやっぱり猫耳エロも書きたい(笑)。そのうちリベンジ…

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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