(1)拍手ありがとうございまーす。
銀:えー、ネタが浮かびそうもないので今回もお題サイト様の力を借りることにしました。
土:いきなりかよ……。まあいい。何てお題なんだ?
銀:えっと……「変態なセリフで10のお題」だ。
土:おいおい、大丈夫なのか?拍手お礼文は原則、全年齢対象だろ?
銀:まあ、大丈夫じゃね?実際のお題を見てみようぜ。
変態なセリフで10のお題 配布元:Abandon様
● 「今どんな下着履いてるの?」
● 「やべぇ、色んなものが出そう」
● 「な、舐めてもいいかな?」
● 「……幾ら出せばいい?」
● 「身体の一部が興奮してますが何か」
● 「ありのままの姿を見せてくれ!」
● 「変態に変態と言われる筋合いはない!」
● 「触ってくれないか」
● 「いい、それいい! 凄くいい!!」
● 「はぁはぁはぁ……」
土:……ダメそうじゃねぇか?
銀:うーん……まっ、ヤバそうだったら止めればいいよ。ちなみにお題が十個もあるんで、
今回の拍手では前半の五個まで小説にするらしいよ。
土:まあ、一気に十話も読むのは大変だからな……
銀:一応、それぞれの話は独立してるみたいだけどね。
土:そうか……
銀:はいはーい、じゃあ次から始まり始まり〜。多少言い回しが変わっても大目に見てね。
(2)
「あっれ〜?絶対ここだと思ったんだけどなァ……」
ある朝、新八が出勤すると銀時は自身の寝室で探し物をしていた。
<今どんな下着履いてるの?>
敷いてあった布団を持ち上げて振り、首を傾げながらも窓の縁に布団を掛けて干す。
「手伝いましょうか?」
「おう。……あっいいや。その代わり洗濯物干しといて。さっき洗濯機止まってたから。」
「はーい。」
普段なら、布団干しも洗濯機を回すことも自分でやらないのに珍しいこともあるものだと
そこまで考えて新八は、昨夜恋人が来ると言われたことを思い出した。基本的に掃除・洗濯は
新八の役割のようになってしまっているが、銀時の恋人―真選組副長の土方十四郎―が来た
翌朝のみ、銀時は率先して寝具の洗濯や和室の掃除をしてくれる。
その辺は未成年に気を遣っているのだった。
「なあ新八、そっちに俺のパンツなかった?ほら、この前買ったケーキ柄の……」
新八があらかた洗濯物を干し終えた頃、銀時が物干し場に現れた。どうやら下着を探していたらしい。
「ありませんでしたよ。」
「シーツと一緒に洗っちまったんじゃなかったか……」
「……土方さんに貸したんじゃないんですか?」
「は?いやいや、いくら付き合ってるからってパンツ共有とかナイからね。」
「洗濯機に土方さんのパンツ入ってたんでてっきり……」
「へ?」
「あれ、土方さんのですよね?」
新八の指差す方向には、グレーのボクサーパンツが角ハンガーに干されてはためいていた。
「えっ……何で土方のパンツがここに?」
「知りませんよ。洗濯機回したの銀さんでしょ?」
「いや……俺はシーツとか寝間着とかを放り込んで……」
「僕、ウチに着替えを置くことになったんだと思ってました。」
「そういう話したこともあったけど、アイツが遠慮するから別に……あれぇ?」
訳が分からないと銀時は首を捻る。
「ここにないなら、土方さんの荷物に紛れちゃったんじゃないですか?」
「あー、そうかも。電話してみるか……」
銀時は電話機へ向かった。
「もしもーし、銀さんでーす。」
『おう、どうした?』
「お前の荷物にさァ、俺のパンツ入ってなかった?」
『は?ねェよ、ンなもん。』
「マジで?もう一回見てみてよ。」
『もう一回も何も、帰ってすぐ風呂敷の中身全部出したが、入ってなかったぞ。』
「マジでか……」
『……パンツ、ねぇのか?』
「そうなんだよ。布団の下にもなくてさァ……あー、買ったばっかだったのに……」
『……お前、今どんなパンツ履いてる?』
「あ?バカにすんなよ?テメーで履いてましたってオチはねぇから。履こうとしたら見当たらなくて
探してんだよ。」
『そうか……』
「……ていうか、お前こそ今どんなパンツ履いてる?」
『あ?それこそ有り得ねェだろ……』
「いやいや、一応確認してみ?だってウチにお前のパンツあったもん。」
『は?…………』
「おーい、土方くん?どんなパンツですかー?」
『……今度会う時、新しいパンツ買ってやる。』
「どーも。」
<終>
(3)
はいっ、
穴埋m後書きコーナーです。
今、穴埋めって言いかけたよな?
銀:細かいことは気にしない。
土:細かくねェよ……。つーか、年齢制限は大丈夫そうだな。
銀:そうだね。
銀:……というわけで土方くん?どんなパンツ履いてたの(笑)?
土:るせェよ!誰にでも一度や二度、失敗することはある。
銀:プププッ……ひとのパンツ履いてて気付かないなんて鈍いねェ。
土:だから黙れ!寝惚けてたんだよ!
銀:プププププ……
土:次いくぞ、次!!
(4)
ある秋の夜のこと。
「今日は俺が奢ってやるからな!」
安くて美味い、庶民の味方のような居酒屋で、銀時は仕事の都合で遅れてきた土方に会うなり
こう言った。
<やべぇ、色んなものが出そう>
珍しいこともあるものだと土方は品書きを開きながら問う。
「大口の依頼でもあったのか?」
「いや〜、凄かったよ!全財産の三百円がジャンジャンバリバリと五万円に……」
「パチンコかよ!つーか、全財産三百円て!」
「でも今は五万あるから!」
土方は大きな溜息を吐いた。毎度のことながら、銀時の生活ぶりには呆れるばかりだ。
「今日は割り勘でいいから残りは貯金しとけ。」
「なに言ってんの?江戸で宵越しの金持つ奴は死刑って法律あんの知らねェの?」
「ンな法律ねェよ……」
「何だよ!銀さんの酒が飲めないってのか?」
「もう酔ってやがるな……」
土方は再び溜息を吐き、とりあえず言うことを聞いておこうと適当に注文した。
* * * * *
二時間後。土方が来る前から飲んでいた銀時は座卓に突っ伏していた。
「おい銀時……寝るなら帰って寝ろよ。」
「今日は朝まで飲むんら〜……」
「そんな状態でなに言ってやがる……。帰るぞ。」
土方が立ち上がり銀時の腕を取ろうとすると、その前に銀時が土方の着物の裾を掴んだ。
「俺を捨てるのか〜?裏切り者ぉ。」
「違ぇ!店を出るって言ってんだよ!」
尤もな説明も酔っ払いには通用しないようで、
「薄情者ぉ〜……俺と一生一緒にいるって約束したじゃねーかぁ〜。」
銀時は土方を詰り続ける。
「森の小さな教会でさぁ……赤青黄色のてんとう虫が、チュウしたじゃねーか……」
「最終的にてんとう虫がキスした話になってんぞ……。ていうか、そんな約束してねェし……」
「あぁ?」
こういう時でも否定の言葉だけはちゃんと聞こえているらしく、銀時は血走った真っ赤な目で
土方を睨み上げた。
「てめー……俺とは遊びだったってのか?」
「ち、違ぇよ……そういう意味じゃねェって。」
「ふざけんなよ!ちょっとモテると思って……俺はなぁ、お前とだったら長生きすんのも
悪くねぇなって思ってたのに……んだよチキショー!!」
「違うって言ってんだろ!……親父、勘定ここに置くぜ!!」
「ハハッ……お幸せに〜。」
店員や他の客の拍手と口笛に見送られて、土方は非常に居た堪れない心地で銀時を担ぎ店を出た。
* * * * *
「ったく、この酔っ払いが!」
「んー……」
手近な宿に入った土方は、酔い潰れた銀時をベッドの上に転がして漸く一服できた。
一人でソファに座り、返事のない銀時に悪態を吐いてタバコの煙を吐き出す。
落ち着いてくると、店での銀時のセリフを反芻する余裕ができ、恥ずかしさが込み上げてくる。
(あれがコイツの本音だとでも言うのかよ……。まっ、どうせ覚えてねェんだろうな……。)
今まで聞いたこともないようなセリフだっただけに、酔った勢いであることは明らかだった。
そうして暫くの間ゆっくりとタバコを吹かし、一本吸い終わる頃に銀時は目を覚ました。
のろのろと体を起こし、薄っすらと開けた目で周囲を確認し、最後に土方を見る。
「…………」
「……大丈夫か?」
「何でここにいんの?」
「は?」
「ホテルなんかに連れ込みやがって……カラダ目当てか!ヤれれば誰でもいいのかよ!!」
「…………」
まだ続いていたのかと溜息を吐きつつ「テメーが寝てたから連れてきた」と土方は一応説明する。
「寝込みを襲うなんて、サイテーだぞ!」
「襲ってねーよ!あのなァ銀時……俺が半端な覚悟でテメーと付き合うわけねェじゃねーか。」
ほとんど素面の土方にとって、かなり照れ臭いことではあったが、伝えなければ収拾がつかないと
踏んで本音を語ることにした。
「俺は、お前さえよければずっと一緒にいてェって思ってる。」
「……本当か?」
「ああ。」
「よしっ……じゃあ、誓いのチュウ、しようぜ。」
「分かった。」
土方はベッドに歩み寄り、銀時の唇に自分のそれを優しく触れさせた。その瞬間、
「う゛っ……」
銀時は口元を押さえて眉間に皺を寄せた。
「銀時!?」
「やべぇ……今ので妊娠したかも……」
「アホか!吐きそうなんだろ?今、厠に連れてってやるから我慢しろよ!」
「ち、げぇって……。口からタマゴ的なもんが出てきそうなんだよ……」
「それ、店で食ったおでんの玉子だから!ていうか、それ以外の色んなもんも出るから!!」
土方は急いで銀時を厠へ運び、銀時は便器の中に色々なものを排出した。
<終>
(5)
吐くまで飲むなよな……
いや〜、久々に大勝ちしたからつい……
土:ていうか、お題二個目にして大分言い回しがズレたな……
銀:一応、最初でも断わっといたから大丈夫だよ。多分。
土:多分かよ……。それと、いくら酔ってたからって「妊娠」とか言うなよ。
銀:ちょっとした冗談だろ……。このくらいなら年齢制限なくて平気だって。
土:問題はそっちじゃねェ。拍手文のもう一つの原則「攻受不明」に抵触するんだよ。
妊娠なんつったら、テメーが受けみたいに聞こえるだろ。
銀:そう?男同士なんだし、どっちが孕んでもよくね?
土:いや……孕むとしたら受けだろ。
銀:いやいや……このサイトなら、攻めが孕む話だってそのうち……
土:そんな話、誰が読むんだよ……
銀:誰も望んでなくたって、天邪鬼な管理人なら「敢えて逆に……」とかやりそうだぜ。
土:かもな……。まあ、流石に今回の拍手文ではやらねェと思うから、次に行くか?
銀:おう。
(6)
赤や黄色に色付く葉が風に舞う季節。散歩の途中、銀時は露店商の男に呼び止められた。
「やあ、そこのお兄さん、マヨネーズ好きそうな顔してるね。ちょっと寄ってかない?」
「あ?」
<な、舐めてもいいかな?>
銀時は思い切り顔を顰め、声を掛けた男の顎を掴み至近距離で睨み付けた。
「てんめ〜……俺があんな瞳孔ガン開きのヤニ臭ェ野郎と似てるってのか?」
「いひゃい、いひゃい、いひゃい!」
物凄い握力で顎を掴まれた露店商はまともに喋ることもできない。銀時は舌打ち一つして
仕方なく手を離した。
「何なんですかいきなり!瞳孔とかヤニとか意味不明なことで怒って……暴力反対!」
「るせェ!マヨネーズ好きそうなんて言われて喜べるか!」
「ちょっとしたセールストークじゃないですか……。私、マヨネーズ売りなんですよ。」
「あ?マヨネーズ売りなんて聞いたことねェよ。」
「この星ではまだ珍しいかもしれませんがね、今やマヨネーズは全宇宙で最も優れた調味料との
呼び声が高いと言っても過言ではないと近い将来言われるのではないかという論文が発表される
のではないかと業界で専ら噂されているのではないかと私は思ってるんですよ。」
「お前が思ってるだけかいィィィ!!」
やはりマヨラーに碌なヤツはいないと銀時が散歩に戻ろうとした時、露店商は「試食だけでも
していって」と畳みかけた。試食―無料―と聞いて銀時の足が止まる。
「まあ、試食くらいならしてやってもいいけど……」
「ありがとうございます!本日オススメするのはこちらの商品!」
露店商が仰々しく取り出したのは何の変哲もないチューブ入りのマヨネーズ。
「どうです?この色ツヤ!輝き!」
「いや……その辺で売ってんのと大して違「うでしょ!?」
銀時の言葉を遮り、男はそのマヨネーズがいかに素晴らしいかを語り始めた。
「これは全宇宙で六万羽しかいない雌鶏の卵から……」
「意外と多いな、おい。……ていうか、説明はいいからとりあえず食わせろ。まさかマヨネーズ
しかないんじゃねェだろうな?マヨネーズだけならいらねェぞ。」
「まあまあお兄さん、慌てない慌てない。」
その後も男は流れるように商品の魅力を語り、銀時はそれを全て聞き流していた。
「……というわけで、最高級の一本!お兄さんには特別に特別価格でご提供しましょう!」
「今、特別って二回言ったよね?」
「それくらい特別なんです!この希少なマヨネーズがなんと五千円!!」
「誰が買うか!!」
銀時は男の頭を平手で叩いた。するとそこへ、
「おい、何してやがる。」
「あ?」
着流し姿の土方が通りかかった。
「何だテメー……マヨネーズの臭いに釣られてやって来たんですかコノヤロー。」
「あ?ワケの分かんねェことを……。テメー今、その男に暴力振るってたな?……ん?露店か?」
「お兄さん、マヨネーズ好きでしょう?」
「なっ何!分かるのか!?」
「勿論です。私は宇宙を股にかけるマヨネーズ売りですから。」
「マヨネーズ売りだと!?」
「いや……俺のセリフ聞いてたら、何となくお前がマヨ好きだって分かるだろ。」
銀時の尤もなツッコミも「マヨネーズ売り」という言葉に感激している土方には聞こえていない。
「そんな尊い職業がこの世に存在したとは!お目にかかれて光栄です!!」
「いえいえ……こちらこそ、お兄さんのようなマヨネーズ愛好家に出会えて嬉しいですよ。」
本格的に商売の体勢に入った男と、瞳を煌めかせて男を見る土方を銀時は半開きの目で
頭を掻きながら眺めていた。
「……というわけで、最高級のこの一本を、特別な特別価格で五千円!!」
「これが、特別なマヨネーズ……」
説明を聞き終えた土方は両手でマヨネーズチューブを持ち上げた。
「そうです!色ツヤが全然違うでしょう!?」
「……舐めてもいいか?」
「どうぞどうぞ。」
男は試食用の別のチューブを取り出し、小皿に絞って土方に渡した。
小皿に出されたマヨネーズを暫く見詰めてから土方は、それをペロリと舐めた。
「どうです!?」
「……これはマヨネーズじゃねェな。」
「そうでしょう!?マヨネーズの常識を超えた逸品!!」
「いや。」
鋭い眼光に射抜かれて、男はピシリと固まった。
「マジノモト食品製マヨネーズ『風』ドレッシング、カロリー五分の一。標準小売価格は一本
二百九十八円。」
「え゛っ……」
「安く仕入れた物を幾らで売ろうが勝手だが、マヨネーズを名乗るためには厳格な基準がある。
それを満たさないものをマヨネーズとして売るのは立派な犯罪行為だ。」
「ななな何を言ってるんですか!?これは歴としたマヨネーズ……」
「それを今から調べてやる。……まあ、間違いはないがな。」
「何の権限があってそんな……」
「あ?」
土方は懐から警察手帳を取り出し開いて見せた。
「こういう権限だ。マヨネーズ侮辱罪は管轄外だが、警官としてこんな大罪を見逃すわけには
いかないからな。」
マヨネーズ侮辱罪なんて存在しねェよと銀時は思ったが、騙していたのは確かなようなので
成り行きを見守っていた。
程なくしてパトカーが到着し、露店商の男は連行されていった。
<終>
(7)
はいっ、恒例の後書きコーナーでーす。
俺のマヨネーズに対する深い造詣が市民を救った素晴らしい話だったな……
銀:まさか、救われた市民って俺のこと?
土:当然だろ。マヨネーズ詐欺に遭うところだったじゃねーか。
銀:どこが!?全く買う気なかったんだけど?
土:気にするな。悪いのは騙した露店商であって、騙されたお前じゃない。
銀:だから騙されてねェって!!
土:はいはい……。ところでさっきの話、一箇所誤変換があったぞ。
銀:マジで?
土:ああ。お前のセリフで「マヨネーズのにおい」というフレーズがあったと思うが、
「におい」が「臭い」と変換されていた。正しくは「匂い」だ。
銀:いや……「臭い」で合ってるよ。
土:何!?テメーもマヨネーズ侮辱罪で逮捕してやろうか?
銀:だからそんな罪はねェよ!!ていうかさァ……この話の俺らってデキてんの?
土:ンなもん読めば分か……んねェな。
銀:だろ?まあ、どっちでもいいか。
土:次はさっきの話の続きみたいだから、それを読めば分かるかもな。
銀:じゃあ、次いってみよ〜。
土:おう。
(8)
アツアツのあんまんを頬張りながら歩く銀時は、通りがかりの店で信じられない物を発見した。
輸入食品を扱う店にあったのは円柱型の瓶に入ったマヨネーズ。……値段は五千円。
(五千円のマヨ……本当にあるんだな。)
以前、銀時は五千円のマヨネーズを売る露店商に出会った。勿論そんな物を買うつもりはなかった
のだが、偶々通りかかった土方によって商売自体が違法だと判り、その露店商は逮捕された。
そんなちょっとした「事件」の発端となった五千円のマヨネーズ。そんなものを売っている店が
他にも存在したとは驚きであった。
だからといって買う気はないが、どんなものかだけでも見てみようと銀時は残りのあんまんを
急いで口の中に放り込んで入店した。
(瓶に入ってるだけで、ただのマヨネーズに見えるけどなァ……)
値札には「宇宙マヨネーズ」の文字。けれど何が違うのか銀時には分からなかった。
「お兄さん、ひょっとして婚約マヨネーズをお探しですかな?」
「婚約マヨネーズって何だよ。聞いたことねーよ。」
どこかで会ったことがあるような店員に声を掛けられ、銀時はとりあえずツッコミを入れた。
「そのマヨネーズに目をつけるとはお目が高い。それは宇宙雌鶏の卵を使い、宇宙サラダ油と
宇宙酢を絶妙な比率で配合しているマヨネーズなんだよ。」
「……それって凄いの?」
「輸入品のマヨネーズは我が国独自の基準に外れる物も多いのだが、これはバッチリ当てはまり
且つ、いつものマヨネーズと食べ比べても全く変わらぬ美味しさなんだ。」
「それなら、国産の方が安くていいんじゃねぇの?」
「……はっ!!」
「今気付いたのかよ……」
「どうりで売れないわけだ……」
例え、何か特別な味だったとしても、所詮マヨネーズはマヨネーズ。五千円も払う者などいない
のではないかと思ったが、それは黙っていることにした。
「あの……半額にするんで、買ってもらえんかね?」
「半額でも高ぇよ。……ん?待てよ……」
銀時の脳裏に浮かんだのはマヨネーズに異常な拘りがあり、それなりに収入もある人物。
「そのマヨネーズ、買いそうなヤツ知ってるぜ。」
「ほ、本当に!?」
「紹介料として売り上げの半分くれるってんなら、紹介してやってもいいぜ。」
「どうせ半額にしようとしてたんだ……。五千円で売れたらその半分、お兄さんに差し上げよう。」
「商談成立。」
<……幾ら出せばいい?&身体の一部が興奮してますが何か>
「よっ。」
「……何しに来やがった。」
銀時が向かったのはもちろん真選組の屯所。
気安く互いの家(兼職場)を行き来する関係ではないだけに、訪問された土方は眉間に深く皺を刻む。
銀時を副長室まで案内した平隊士も、どやされるのではないかと震えていた。
そんな案内係に「大丈夫だから」と目配せして去らせると、銀時はもう一度「よう」と挨拶をして
部屋の中に入った。
「勝手に入るんじゃねェ。」
「まあまあ……今日はいい情報持ってきたんだ。」
「いらねェ。」
「ちょっ……とりあえずどんな情報か聞くだろフツー。」
「テメーの持ってくる情報なんざ、碌でもねェに決まってる。」
えらい嫌われようだと思ったが、普段が普段なだけに分からないでもないなと銀時は大人の対応を
続けた。
「まあ聞けって……宇宙マヨネーズって知ってるか?」
「…………」
相変わらず土方はこちらを見向きもしないが、パソコンのキーを打つ手がぴたりと止まった。
「どう?知ってる?」
「……テメーが何故その名を知っている?」
土方が漸く銀時に顔を向けたことで、上手くいきそうだと銀時も手応えを感じる。
「万事屋なんで色々とね……。やっぱ、地球産とは違うのか?」
「宇宙産の材料を用いながら、地球のマヨネーズと遜色ない味に仕上がった奇跡の逸品だと聞いている。」
「ふうん……」
こう言うと優れたものに聞こえる……物は言いようだなと銀時は思った。
「聞いてるってことは、食ったことないんだよな?」
「ああ。そうそう出回る品ではないからな。」
確かに、五千円もするマヨネーズを輸入しようとする者など、あの店主のように抜けたところが
ない限り、そうはいないだろう。
この場でそんなことを言えば激昂されるのは明らかなので言わないが。
「……お前、何か知ってるのか?」
「知らなきゃこんな所に来るかよ。」
「……幾らだ?」
「五千円。」
「よしっ。」
土方は財布から五千円札を取り出して銀時に差し出した。
「……俺に、買いに行けと?」
「違ぇ。情報料だ。……五千円出せば教えてくれんだろ?」
「あーそっちね……いや、五千円は宇宙マヨネーズの値段。」
「何?そんなに安いのか!?」
「や、安い?」
「異星で作られた奇跡のマヨネーズだから、手が届かないほど高価なものだとばかり……」
「そうなんだ……」
「で、情報科は幾らだ?」
「えっと……」
マヨネーズ販売の仲介料で儲けようとしていた銀時は、情報料まで考えていなかった。
「まっ、五千円でいいよ。」
「そうか。」
「因みに今って時間あるか?」
「すぐに行けるような場所なのか?」
「ああ。……つーか俺、その店から歩きでここ来たんだし。」
「そうか!この江戸にそんな素晴らしい店があったとは……万事屋、案内してくれ!」
「はいよ〜。」
隊士達が不思議がる中、土方はとても楽しげな表情で銀時と外出していった。
* * * * *
「こっこれが噂の宇宙マヨネーズ……」
「そーでーす。」
銀時に連れられて輸入食材の店を訪れた土方は、瓶詰マヨネーズを目にして息を飲んだ。
「空輸のストレスからマヨネーズを守るため、敢えて固い容器に詰めているのか……素晴らしい!」
何やら勝手に解釈して感激している土方に銀時は「早く買え」と急かす。
(この分だと二、三個は買いそうだな。へへっ……情報料と合わせたら一万以上の儲けだな。)
そんな銀時の予想は間もなく打ち砕かれることとなる。
「万事屋、これを一箱運んでくれるか?」
「……へっ?ひ、一箱ォォォ!?」
「なんだ?」
「マジで!?マジで一箱も買うのか!?一箱つったら十二個入りで、一個五千円が十二個だから、
えーっと……」
「計算はいいから早くレジまで運べ。もたもたしてたら売り切れちまうだろ!」
全く売れなくて店主に泣きつかれたから慌てなくても大丈夫であるが、それ以上に銀時が
気になったのは、小間使いのような扱いをされていることだった。
「何で俺が命令されなきゃなんねェんだよ。ほしけりゃテメーで運べ。」
「俺は無理だ。身体の一部がコーフンしていて持てる状態じゃねェ。」
「は?宇宙マヨネーズ見て手が震えてんの?」
「何か文句でもあんのか?」
「ププッ……まあ、運んでやるよ。」
宇宙マヨネーズで震えが止まらなくなるなんて、本当にコイツはマヨネーズバカだなと思いながら
銀時は宇宙マヨネーズ一箱をレジまで運んだ。
「よう。」
「おや、先程のお兄さん……」
「コイツがこれ買うってよ。」
顎で土方を指すと、レジに居た店主は嬉しそうに口元を緩めた。
「そうかそうか……お兄さんがこれを買って下さるか。」
「ジジイ、約束は覚えてるな?」
「もちろん。それにしても……婚約マヨネーズのお相手が男だったとは驚きだが、なかなかに
イケメンだねぇ。」
「は?……いやいやいや、違うからね!コイツはただのマヨネーズバカだから!」
店主の盛大な勘違いを銀時は全力で否定した。
「おい万事屋、お前、婚約マヨネーズがほしかったのか?」
「違ェよ。つーか、オメー婚約マヨネーズで通じんの?」
「そうか……お前が俺をそういう風に見ているとは気付かなかったな。」
「……はい?」
「すまんな。これから真剣に考えてみるから、返事は暫く待ってくれ。」
「へ、返事?」
「とりあえずこの後、茶でも飲みに行くか?」
「あ、あの……土方くん?」
「……ジイさん、これは配達してもらえるか?」
「はいよ。」
「じゃあ行くぞ、万事屋……じゃねぇ、銀時。」
「はあぁぁぁぁ!?」
土方は支払いを済ませると出口に向かって歩きだす。
銀時が追い掛けて何度も誤解だと言ったが照れ隠しと取られてしまい、結局その日は土方と二人で
茶屋に行くハメになった。
どうせ、宇宙マヨネーズの興奮で正常な判断ができなくなっているのだ。冷静になれば「考える」
などといった選択肢すらなくなるはずだ。
そう考えていた銀時であったが、後日、宇宙マヨネーズ一箱が花束と共に万事屋に届くこととなる。
こうして、マヨネーズが縁で結ばれた二人は、末永く幸せに暮らしましたとさ。
<終>
(9)
ハァ〜……とても感動的な話だったな!
どこが!?最後いきなり昔話風にしやがって!「幸せに暮らしましたとさ」じゃねーよ!!
土:何を言う!宇宙マヨネーズに秘められたお前の愛に俺が応える、いい話だっただろ。
銀:お前、ちゃんと読んだ!?俺はただ、バカ高いマヨネーズの売り上げに貢献しただけなの!
土:だから、お前が俺に婚約マヨネーズをねだる話……
銀:ちっがぁぁぁう!!だいたい、婚約マヨネーズって何だよ!知らねェよそんなん!!
テメーは自分で食うために大量にマヨネーズ買っただけだろ!?
土:最後にテメーの家にも同じもんを送っただろ?花束付きで。
銀:あれか!?あれが婚約マヨなのか!?ただの嫌がらせだ!それなら砂糖一箱送ってこいや!!
土:仕方ねェな……今度、甘いもん奢ってやるよ。
銀:えっ……あ、そう?ならいいんだけどさ……
土:綺麗にまとまったところで、今回の拍手お礼文はこれにてお終いだ。
銀:まとまったか……?まぁ、今九回目だからこれでお終いなのは確かだけどよ……
土:何だ?まだ、婚約マヨネーズのことを引き摺っているのか?
銀:もうそれは諦めた……。ただ、今回挑戦したお題五つのうち三つがマヨ絡みって……
土:できればあとの二つもマヨネーズと絡めたかったな……くっ!
銀:違ぇよ!逆だ逆!こうなったら……この次の拍手お礼文はマヨネーズ抜きでいくぜっ!
土:そんなことをしたら、拍手して下さった方に失礼だろ!
銀:いや……マヨネーズ塗れのお礼の方が失礼だと思う。
土:何ィ!ここへ来て下さる方々の半数は俺のファン、つまりはマヨネーズのファンだ!
銀:オメーのファンであっても、マヨネーズのファンではないって。
土:そんなことは……
銀:あー、分かった分かった。そこまで言うなら皆さんに聞いてみようじゃねーか。
土:……拍手コメントに、次回はマヨネーズ有りか無しかを尋ねるのか?
銀:そう。そんで、その結果を管理人に伝えれば、皆さんの希望通りになるって寸法だ。
土:敢えて、結果とは逆のことをやるかもしれないけどな。
銀:あ゛っ……そうだった。じゃあ、意見を聞いても無駄か……
土:と、いうわけで……ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました!
銀:感想などいただけると嬉しいですって管理人が言ってました〜。
(10)
☆ありがとうございました☆
次回のお礼文更新日は全くの未定です。
今年中に出来たらいいな、くらいに思っております。
それでは、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
(12.01.03)
最後に「今年(2011年)中に出来たらいいな」と書いたのですが、次は年明けになってしまいました。「切ない15の恋物語」のお題でもやっていますが、
お題の捻くれ解釈は楽しいです^^ そして、「次回もマヨネーズ多めで」という拍手コメントもいただいたのですが、次(二十四代目拍手)はマヨ無しに
なってしまいました。敢えて、ではないです。思い付いた話がマヨネーズ関係じゃなかったんです。すみません。
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