中編


ラブストーリーは突然に……建設会社の手伝いを依頼されて屋根の修繕中、向こうから来る
土方くんを発見!多分もうすぐこの下を通るから、そのタイミングで資材の一つでも落として
謝りついでに声をかけようと決心。
イケダヤのこと覚えてるかな?テロリストと決め付けていきなり斬りかかるなんて酷いじゃねーか、
とか言っていいかな?でも巷で鬼とか呼ばれてる怖い人だから、文句みたいなのは言わない方が
いいかな?資材落としたお詫びに格安で依頼受けますとかって名刺を渡し、俺の名前を知って
もらう形がいいかな?
……よしっ、イケダヤには触れない作戦でいこう!

「おーい兄ちゃん、危ないよ」

お詫びをするくらいだから瓦一枚じゃ物足りないと思い、木材を一束落としてみた。
尻餅つく程のオーバーアクションで避けつつ、テンション上げて言えとツッコミも忘れない
土方くんの前でヘルメットを外し謝罪……

「てめーは……池田屋の時の……!」

あ、覚えててくれたんだ……でもこの反応は何かヤバイ気がする。テロリスト疑惑は解消されてる
はずだけど、銀髪がどうとかってこの驚きようは、あまり良くない理由で俺を探してたっぽい?
……ここはしらばっくれよう!

多串くんと間違えたふりをして、丁度いいところで屋根の上から呼ばれたので仕事に戻る。
運命の出会いやり直しはもうちょい後か……

と思ってたのに多串くん……じゃなかった、土方くん上がってきちゃったんですけどォォォォ!
爆弾処理とか言ってるし、やっぱり俺のこと覚えてるんだよな?なら俺も覚えてなきゃ悪いよな?

「あ……お前あん時の……」

今思い出したと匂わせてやれば、土方くんがあれ以来、俺のことを気にかけてくれてたって!
己の危険を顧みず爆弾から自分達を守ってくれて感謝してると、そういうわけだな?もしかして
俺を真選組にスカウトしたくて探してたとか?近藤さんを負かしたこの俺を……ん?

「近藤さん?」
「女とり合った仲なんだろ」

手にした刀を俺に向かって放り投げながら土方くんが発した言葉にサッと血の気が引く。
まさか……まさか……「近藤さん」ってあのストーカーゴリラぁぁぁぁぁ!?ゴリラに「さん」
付けって、アイツ、土方くんの先輩か何かですか!?かなり慕ってる感じですか!?
まさか付き合っ……てはいないか。ゴリラはお妙のストーカーだもんな。
……つーか俺、お妙の男ってことになってるじゃねーかァァァァァ!違うんだ土方くん!
俺とお妙は……つーかこの刀は一体……

「!!」

答える変わりに土方くんは腰の刀を抜いて斬りかかってきた。手にした刀で反射的に受けたが
後ろに吹っ飛ばされる。見かけによらず荒っぽい太刀筋じゃねェか――などと余裕ぶって力量を
計ってみたものの俺は焦っていた。今、土方くんの中で最悪な俺の印象を、少しでも良くしたい。
真選組が、「近藤さん」がいかに大事かを土方くんが説いている。つまりこれはその大事なものを
護るための決闘ってわけだ。おざなりに茶化して有耶無耶にすることもできなくはなさそうだが、
更に俺の株が下がるのは確実。受けて立つしかない。
相手は革靴で俺は地下足袋でここは屋根の上。地の利は俺にあるし勝てるとは思う。

だが土方くんを斬るのは嫌だ。

何でこれから好きになる予定の子を傷付けなきゃなんねーんだ。俺Sだけどこういう傷付け方は
全く興奮しねぇよ。どうすっかな……

「刃物プラプラふり回すんじゃねェェ!!」

完璧に戦闘モードの土方くんを蹴り倒す。これで、落ちそうになったところを助けておしま……

「!!」

転がり様に土方くんは俺の左肩をざっくり。で、また後ろに吹っ飛ばされた。
向こう側で作業していたハゲも異変に気付き始める。ここは警察でも呼んでもらって強制終了……
あ、土方くんが警察でしたね。世も末だって言われてなに笑ってんの?どうだ参ったか、みたいな
顔しちゃって……可愛いじゃないの。

左肩を押さえ、痛みに耐えるふりをしつつ作戦を練り直す。――実際、痛いんだけど大袈裟にって
ことな。一太刀入れて優勢になったんだから、構えもしない俺を襲ってはこないはずと踏んで。
そもそもこの肩のだって俺の蹴りに対する反撃だ。その前のは受けるか避けるかできる程度に
加減したのかもしれない。

こうなりゃ土方くんの剣を使えなくするしかねェか……無傷で奪えりゃ一番だが、そう簡単には
いかねェだろーな。

刀を抜き、構えたところへ土方くんが突っ込んでくる。やや柄の悪さはあるものの、土方くんは
武士道が服を着て……いや、武士道っつー着物を纏って生きてるようなヤツだった。
その着物は脱がせらんねェよ。

左肩に掛けた手拭いを囮に剣をかわし、土方くんの横に回る。潔く覚悟を決めて逃げようとしない
土方くんの刀目掛けて刀を振り下ろした。

「はァい、終了ォ」

決着の仕方に納得いかない様子の土方くんに背を向けて、裏にいるハゲに通院を告げて戦えない
アピール。まさか、どちらかが死ぬまでやるとか言わねぇよな?

情けをご飯にかけてさらりといただき、俺は俺の武士道を、大事な人は傷付けないというルールを
貫かせてもらった。

どうか少しでも、俺がかっこよく見えてますように。


*  *  *  *  *


万事屋が三人になって最初の春。色々あって真選組と花見をすることになった俺達。
土方くんの私服姿を肴に飲む酒は殊の外美味く、気付けば自動販売機に頭を突っ込んで寝ていた。
しかもその上には同じく酔っ寝ている土方くん。周りに人はいない――完璧な据え膳状態。
やはり俺達は結ばれる運命にあったようだ。

出来るだけそっと土方くんを自動販売機から下ろし、背中に担ぐ。

「やま、ざき……?」
「!!」

数歩進んだところで土方くんが目を覚ます……といっても半分以上夢心地。俺に負ぶわれてると
分かっていない。
ヤマザキって誰だ?土方くんのお世話係か何か?……ああ、あのミントンしてた地味なヤツか。

「おいやまざき……」

土方くんは勝手に「ヤマザキ」だと決め付けて身を委ねている。
何?この子、鬼の副長じゃなかったの?それともヤマザキ限定で甘えん坊なの?
ぼんやりとしか顔を思い出せないような男でも、嫉妬の火は点る。……だが今、俺であることを
告げたら大人しく負ぶわせてはくれないだろう。土方くんが気付くまではこのまま……

「どこいくんら?」

舌足らずな喋り方が可愛いんですけどォォォォォ!!もうここで襲っていいかな?
いやダメだ。……誰だ今、いいともーって言ったヤツ!ダメなんだよ!俺は今、ヤマザキなの!

「どこに行きたい?」
「ねむい……」
「じゃあ、お布団あるトコ行く?」
「いく。はやくしろ」
「はーい」

俺の返事を聞く前に土方くんはまた夢の中へ。フフッフー……合意は取り付けたぞ。
いやいやちゃんと寝かせてあげるよ。まあ、寝る前にナニかするかもしれないけどそれは…………
だからダメだって!俺は土方くんと真面目にお付き合いしたいんだから、誰かも分からない状態で
ハジメテを迎えたって意味がない。
一応ホテルには連れて行くけれど、あんなことやこんなことは酔いが覚めてから。

人ひとり背負って歩けば嫌でも目立つ。土方くんの素性がバレないとも限らないから、なるべく
人通りを避けて、口の固い知り合いが経営しているホテルへ向かった。


*  *  *  *  *


「ひじかたくーん」
「…………」
「おーきーてー」
「…………」

安宿の一室。照明は枕元の行灯だけ。二人用の布団の中央に土方くんを寝かせて帯を緩める。
言っとくけど、苦しくないようにだからね?「まだ」何もする気はないから。

でも、

橙色の薄明かりをふんわり浴びる土方くんは何とも扇情的だ。酒で上気した頬とはだけた胸元に
喉が鳴る。あ〜〜〜むしゃぶりつきてェェェェェェ!!

「ひじかたくーん」
「…………」
「起きてよ〜」
「…………」

肩を揺らせば土方くんの眉間に皺が刻まれる。もう少し……
何時おっぱじまってもいいように、俺は既にトランクス一枚。お気に入りのイチゴパンツ選んだ
昨夜の俺、よくやった!

「起きろっ」
「っ……」

額をぺしりと叩くと僅かに声が漏れた!あー……この感じもエロいなァ。もう、我慢できないん
だけど……
俺の股間では見事にイチゴが3Dになっていた。

「ふっ」
「んぅっ!」

耳に息を吹きかけてやれば、土方くんは色っぽい声を上げて目を開ける。
半分くらいまではゆっくりと。焦点が定まって、俺の顔を認識できてからは一気にカッと。

「なっ!」

如何にもな布団の上。一緒にいる男はパンツ一丁となればナニかあったと思うのは当然のこと。
慌てて起き上がった土方くんは、痛みを感じたのか眉を顰めて頭を押さえた。

「急に動くから……水飲むか?」

返事を待たずに冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して、コップに注いで渡してやる。
訝しげに受け取ったコップと俺を交互に見て、恐る恐ると形容するのがピッタリなほど僅かに
その水を口に含んだ。
予想外の事態に焦る土方くん――動揺を悟られまいと、必死に無表情を維持してる様が可愛くて
仕方ない。もうガバッといっていいかな?……いやまだ早い。だから、いいともーじゃねェよ!
土方くんの許可をもらってからでないとダメなんだよ。

「ここ、何処だ?」
「ラブホ」
「……それは、分かってる」

けど改めて聞きたくはなかったって顔してるな。それは相手が俺だから?それとも野郎だから?

「俺達、酔い潰れたんで置き去りにされたんだよ」
「…………」

睨みつけるように俺の表情を観察して真偽を計りつつ、土方くんは自分の記憶を辿っている。
だけど何も思い出せないようだ。「ヤマザキ」に負ぶわれていた記憶もないらしい。

「俺の方が先に目覚めて、土方くん見付けて……そのままってわけにもいかねェから、近くの
ホテルに連れて来たってわけ」
「そっそうか……」
「と、いうわけでー……」

ただ寝ていただけかと安心している土方くんの足を跨ぎ、殆ど口を付けていないコップを奪って
飲み干して、ここからが本題。

「気持ちいいコト、しない?」
「はぁ!?あ……」

漸く土方くんが3Dのイチゴに気付く。一瞬、怯えたような顔をして、だけどすぐにいつもの
勝ち気な土方くんに戻る。逃げたら負けだとか思ってるんだろ?分かりやすいなァ……いつでも
真っ直ぐな土方くんに愛しさが募る。絶対ェものにしてやる!

膝で立ち、土方くんの首の後ろで手を組んで距離を詰める。

「鬼の副長さんじゃ、女の子は怖がって近寄らねェだろ?」
「っ……」

着物の裾を割って下着の上から股間を撫でれば土方くんが息を飲む。困惑、警戒、狼狽、驚愕……
様々な感情が見て取れるがその中に嫌悪はない。
いけると確信した俺は土方くんの唇に自分のそれを押し当てた。

(13.08.17)


「3D」以外、映画関係なく、ただの銀→土な話になってきました。続きは18禁となります。アップまで少々お待ち下さいませ。

追記:続きはこちら(注意書きに飛びます)