<注意>第七百四訓(最終訓)ネタです。






ありがとう銀魂


「何せ俺達ゃ万事屋だ」

はい、カットー!
何処からともなく聞こえてきた終了の合図で万事屋一行は走るのをやめた。と、同時にその場にいた者が次々に拍手をし始める。
[お疲れ様でした]
たまの労いの言葉に銀時は「おう」と短く答えた。次いで新八、神楽も「お疲れ様」と。
「はいはい、オメーらもお疲れ様でした」
二度の最終回もどきを含む、十五年に渡る連載。登場人物達は穏やかな表情でラストシーンを迎えたのだった。
銀時が尋ねる。
「で、急用って本当にあんの?」
「何かあったような……まあ、万事屋に戻れば分かりますよ」
依頼内容は帳面につけてあると新八が言えば、銀時は何とも苦々しい顔付きに。自分達は万事屋からたまのいる所へ来たというのにまた戻るのか……その表情を静観していた神楽が新八の背を押した。
「社長と副社長がいれば充分アル。平社員は定時で帰るネ」
「何の用か思い出したの?」
「早く行くアル!」
神楽は万事屋と反対方向を一瞥する。そこで漸く新八も理解した。
「あー、そうだった! 思い出したよ神楽ちゃん。じゃあ銀さん、僕らはここで」
「いや……」
「付いてきても残業代は出ないヨ! だから帰るネ!」
わざとらしい程の帰宅命令。気遣いに気付き銀時は、頭を掻きながら後方にちらりと視線を送った。
「お先に失礼しまーす」
[どちらへ?]
銀時が一歩を踏み出したところ、その方角にたまが疑問を投げ掛ける。万事屋と逆向きに進むからには飲みにでも行くのかと、そのくらいに思い軽く聞いてみただけ。
なのに万事屋の三人はきょとんとした顔をしていた。
「たま、前のデータ飛んじまったのか?」
[動作が停止する以前のデータに破損は見られませんが……]
「だったら分かるだろ? 読者向きの家じゃなくて、ほら、あっちの……」
何故か声を潜めて後ろを指差す仕草でたまの回路も繋がった模様。
[土方様との愛の巣ですか]
「その呼び方やめてもらえる?」
何年も前から銀時は……いや、銀時と土方は、万事屋と真選組屯所の中間地点に部屋を借り、二人で生活していた。ふぅと息を吐き出して銀時は言う。
「最終回だし、ぶっちゃけちゃってもいいかなーって俺は言ったんだよ? でもアイツがさぁ、アプリ配信とはいえ一応少年ジャンプの雰囲気は守るべきとか何とか……分かるよ? 人気者の銀さんに実は将来を誓った人がいましたー何て言ったら大勢の人が悲しむのは」
[……そうですね]
変わりなく元気そうで良かったとたまは思い、そこで考えるのをやめた。だが反応が鈍くても、調子に乗った銀時は止まらない。
「皆の銀さんを独り占めしてたのがバレたらアイツの人気、がた落ちだろ? だから伏せたんだよ。俺には遠く及ばないとはいえアイツもそこそこ人気者だからね。その人気を手放したくなかったんだと思うなァ。まあ、忘れた頃に続編ってのが最近の漫画界の流行りだから、それを見越して隠しておくっつーのも少しはあると思う」
[はあ……]
「ただ、隠しきれたかっつーとそれもね? 仕方なくね? 愛し合ってるんだから。鋭い読者には悟られちゃってると思うよ。だったら公言してもいいだろ。よしっ、キャラブックの書き下ろしで……あーでも、世界中の銀さんファンにアイツが恨まれるのは可哀想か」
「何が可哀想なんだ?」
さっさと帰宅してくれないかと銀時以外の全員が念じていると、私服の着物姿で話題のアイツがご登場。銀時は相好を崩し、足取り軽やかに彼へと近付いた。
「出かけんの? 俺も行くー」
「いや、お前を迎えに来ただけだ。もう終わったんだろ?」
「終わったよ。会いたかった、んー……」
「んんっ!」
人目も憚らず銀時は恋人に抱き付き口付けをして、一瞬の戸惑いはあったものの土方もそれを受け入れる。会いたかったも何も、少し前にスナックのシーンで一緒だったではないかと周りの者達は心の中でツッコミを入れた。けれどもいつも通りだとそれ以上は触れず、各々の帰路へ着く。

すっかり二人の世界に入ってしまった恋人達は、土方が銀時の肩に、銀時が土方の腰に腕を回し、愛の巣へ向けて寄り添い歩いていた。
「なあ十四郎、今日は好きな所に痕付けていいだろ?」
「ああ。漸く読者の目を気にせず愛し合えるな、銀時」
「やったー! あ、マヨプレイでいいよ」
「生クリームプレイの方がいいんじゃねーか?」
「じゃあどっちも」
「望むところだ」

彼らの幸せな生活はこれからも続く。

(19.06.20)


あああああああ最終訓寂しいよ〜!!「最終」訓という言い方はより寂しくなるので七百四訓でいきます。実際に本編の冒頭も「第七百四訓」でしたしね。
寂しいですし悲しいです。でも最高でした!!!本当に良かった!全部良かった!みんな良かった!銀魂で良かった!!!
そんな気持ちを腐った方面に込めて、1年以上ぶりにサイト(倉庫)更新しました。
銀魂は初めて二次創作した作品でした。サイト作って本も作って色々な人と知り合えて、本当に幸せです。
これからも創作活動は続けていきますので、よろしくお願いします。



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