その日、銀時は吉原を訪れていた。晴太から渡したいものがあると言われたからである。

「はいこれ、いつもお世話になってるお礼」
「ンなもん気にしなくていいのによ……まあ、くれるってもんはもらうけど」

ありがとなと差し出された紙袋を受け取って、晴太の髪をくしゃりと撫でた。

「店の人気商品なんだ。よかったら使ってね」
「お前の店って……おもちゃ屋だろ?」
「大人のおもちゃ屋ね」
「ああそうそう……どうもな」

日輪の言葉には適当に返事をしてもう一度礼を述べる。実のところ、大人のおもちゃ屋と単なる
おもちゃ屋の違いを銀時は正しく理解していなかった。「大人」と付くからにはきっと、操作の
難しいゲームか何かが売っているのではないかと。
そのくらいに考えて銀時はもらった「おもちゃ」を持ち帰ると、新八達に見付からないよう押し
入れの奥に仕舞うのだった。



トシとぎんとおもちゃの使い方



「なあトシ、大人のおもちゃって知ってる?」
「あ?」

急に飛び出した単語に土方は間抜けな声を上げてしまう。
今日はデートの日。いつものように会ってすぐホテルに入った二人であったが、いつもと違って
すぐにセックスへ、とはならずソファに腰を下ろした直後に銀時が尋ねたのだ。

「あ〜、やっぱ知らないか……。トシ、おもちゃとか興味なさそうだもんな」
「そんなに詳しかねェが、そのおもちゃがどうしたって?」

まだ銀時の勘違いの可能性も捨てきれず、土方はとりあえず話を聞くことにした。

「知り合いに大人のおもちゃ屋って所で働いてるヤツがいて、ソイツにもらったんだよ。
けど使い方が分かんなくて……あ、これなんだけどね……」
「なっ!」

風呂敷包みから銀時が取り出したのは紛れもなく「大人のおもちゃ」であった。
ショッキングピンクで男性器を模したそれは、バイブと呼ばれているもの。

「それなら知ってる……」
「さすがトシ!で、どうやって遊ぶんだ?」
「いや……」

お前には必要ないと言おうとして思い留まる。銀時の知識を自分が制限してしまっていいものか。
用途を説明すれば使ってみたいとなるかもしれなくて、銀時の中にこんなものが入るのは嫌だ。
だが、自分と会えない期間が長いと性欲を持て余しているのも事実で、そこに付け込む輩が
出てこないとも限らない。ならば、こういったものを利用してでも……土方の決意は固まった。

「ぎん、それはナニの代わりに入れて使うものだ」
「ナニって……チンコ?」
「そうだ」
「これを、ケツの中に入れるのか?」
「ああ」
「な、何で?」
「ヤりたくてもセックスできねェ時だってあるだろ?」
「あー!」

漸く理解した銀時の声は明るい。

「これをマスターすれば、トシと会えない日も安心ってことだな!」
「まあ、そうだな……」
「よっしゃー!そんないいものがあったのか……すげェな大人のおもちゃ!トシ、教えてくれ。
このまま突っ込めばいいのか?」

いそいそとパッケージを開ける銀時を落ち着けと宥めつつ、土方は密かに息を吐いた。

「まずは指で慣らさねェと……」
「ああ、そっか」

ベッドに向かいながら流線模様の着流しを脱ぎ捨て、ズボンと下着は纏めて脱いで、
銀時は右手に潤滑剤を垂らす。

「トシ、こっちに……」
「ああ」

呼ばれて土方もベッドへ乗り上げ、枕を背にして座る銀時の横に腰を下ろした。

「慣らすまでは俺がやろうか?」
「ダメ。トシが触るとセックスしたくなるから」

ん、と短く息を詰め、銀時は二本の指を自らの体内へ。
使い方を教えるために仕方ないとは思うものの土方は、見てはいけないものを見ている気がして
視点を定めることができなかった。
そうこうしてる間に銀時は解し終えてまた土方を呼んだ。

「もう大丈夫そう」
「そしたらそれにゴムを……」

枕元に備え付けてあるコンドームを手渡され、銀時は首を傾げた。

「これも精液出るのか?」
「いや……」

コンドームは中出し防止のために装着するのだと教わった銀時。その他の用途は知りようもない。

「ゴム付けた方が衛生的だからな」
「なるほど〜」

色々な使い道があるものだと感心しつつ銀時はバイブにコンドームを被せた。その上からも
たっぷり潤滑剤を塗って、その先端を入口に宛がう。ふうと息を吐き、ショッキングピンクを
体内に押し込んでいった。

「あっ……」
「大丈夫か?」
「ん……ちょっと、冷たかっただけ」
「痛くはねェか?」
「平気。……トシのチンコより細いし」

その言葉通り銀時はずぶずぶとバイブを奥に進めていく。

「ハァ、すげ……奥まで、くる……」
「…………」

乱れていく銀時に土方の胸中は複雑であった。道具を使ってでも、満足に自己処理できるように
なるならばそれは悪いことではない。だがこれで求められることも減るかもしれないと思うと
寂しい気もした。

「トシ……ここの、スイッチ……なに?」
「あっああ、それはな……」

銀時の声で我に返った土方。今はともかく使用方法の説明をしなくてはと思い直す。
手元のスイッチを入れれば挿入している部分が動くのだと教えてやった。

「どれどれ……あっ!」

カチリとスイッチが鳴り、ウィンウィンとモーター音が響きだす。

「うあ……なに、これ……」
「大丈夫か?」
「何かすげぇ……ぐるぐる回ってる……」
「痛みがねェなら抜き差しして、イイ所に当ててみろよ」
「……トシが動くみてェに?」
「おう」

自分しか知らないのだから当然なのだが、こういう時にさらっと名前が出てくるのは非常に
嬉しく思える。たとえおもちゃが中に入っていても、銀時は「トシ」で感じてくれているのだと
実感できるから。


「あっ……ここ、ヤバイっ……」
「……イイのか?」
「いいっ!あっ……もう、出そうっ……」


銀時は左手で一物を握った。


「イケよ」
「あ、んっ……トシ、トシっ……!!」
「ぎんっ……」


己の名を呼び達する銀時に土方の喉が鳴る。今すぐ銀時を抱きたい――教えることを放棄したい
気持ちをぐっと堪えるように膝の上で拳に力を込めた。


「あっ、あっ、あっ……」


尚も動き続ける「おもちゃ」は銀時のモノに萎える隙を与えない。


「あっんんん……トシぃ……」
「ぎん、もう……」

スイッチを切れ、と言う前に銀時は動いたままのおもちゃを抜き去って、

「もう無理っっ!」
「んぶっ!」

土方に飛び付いた。反動で後ろに倒れた土方の唇にちゅうと吸い付く銀時。
放り出されたおもちゃは低い機械音を立てながら床へと転がった。

「セックスして!」
「ぎ、ん……」
「続きは家で頑張るから!お願い!」
「それはいいんだけどよ……」

自己処理で一度達したはずの銀時が何故これほど興奮しているのか分からない……戸惑う土方を
余所に、「いい」と言われたことで箍の外れた銀時は、土方の着物を捲って下着をずらし、
飛び出した一物の上へと腰を下ろす。


「あぁっ!……あっ!あっ!」
「っ……」


そして、戸惑いながらも流されて、間もなく土方も欲に全てを委ねるのだった。


*  *  *  *  *


「……で、何だったんだ?」
「何が?」

二回の交わりを終えて小休止中、土方が銀時に尋ねた。

「急にセックスしたくなっただろ?」
「急じゃねーよ。トシと会うとしたくなるし」
「……おもちゃは気持ち良くなかったのか?」
「気持ち良かったけど、セックスじゃねーからな」
「おっ俺とする方が、気持ち良いか?」
「うーん……」

そうだと即答されなかったことで僅かに凹みつつ、銀時の言葉を持つ。

「どっちも気持ち良いけど、チュウとかギュッてするとかはトシとしかできねーし」
「ぎん……」
「あれ?何驚いてんだ?」
「いっいや、何でもない……すまん」
「もしかしてトシ……セックスよりおもちゃが好きになったと思った?」
「や、その……」

咄嗟に上手い弁解ができず、結局もう一度「すまない」と謝った。

「酷ェなトシ……俺は、『トシと』セックスしてぇの。けど毎日する時間はないから、
仕方なくおもちゃで遊ぶんじゃねーか」
「そうだな……本当にすまなかった」

銀時に優しく口付けて、土方は愛しい存在を確りと抱きしめる。

「その……俺も、ぎんとセックスしてぇ」
「うん」

今度は深く口付けて、この日も二人は時間と体力の許す限り交わり続けるのだった。

(13.01.23)


一年以上ぶりのトシぎんシリーズでした。ここまで空けるつもりはなかったんですけどね……。この後、ぎんはムラムラした時に「おもちゃ遊び」をすることでしょう*^^*
その様子は次回……書かずに、次はまた別のお勉強にしようと思っています。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
  


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