後編
ホテルのソファに一人座って煙草を吹かしながら、土方は今朝の出来事を思い出していた。
急にできた休日。恋人に電話を掛ければ「待ってる」と返事があった。そこから部下達に
仕事の指示を出し、かぶき町へ向かおうとしたところでトッシーがやってきた。
「お久しぶりーち十四郎!」
「…………」
やってきたとは言ってもトッシーは実体のない存在。土方の頭の中で会話が展開される。
「何しに来た」
「お盆だから十四郎に会いに」
「悪ィけど今日はオタクのイベントにゃ付き合えねェぞ」
「違うナリよ」
銀時との約束に遅れるわけにはいかないと歩きながら話を聞く。
「拙者、恩返しに来たでござる。十四郎には色々迷惑掛けたのに立派なお墓まで建ててもらって……」
「あれは俺の自由のためにやっただけだ」
「まあそんなわけで恩返しするナリ」
「いらねー」
「これから坂田氏とデートでござるか?」
「ああ。だから出てくんじゃねーぞ」
「ならちょっと代わるナリ。坂田氏の本音を聞き出してあげよう」
「いらねェって。わざわざ言葉にしなくてもアイツの気持ちは分かってる」
「妄想乙」
「違ェよ!アイツは俺が寝てる時に……」
土方は銀時がいかに可愛いかをトッシーに語って聞かせた。
「……と、いうわけだからオメーの助けはいらねーよ」
「けど、言葉に出してくれたらより嬉しいとは思わないかい?」
「それは……」
「と、いうわけでちょっと代わるナリ」
「……ちょっとだけだぞ」
こうして土方はトッシーに意識を明け渡したのだった。
* * * * *
全く……トッシーのヤツ、俺の話を暴露しただけで銀時の本音は聞き出せていないではないか。
短くなった煙草を灰皿で揉み消して、土方は銀時の立て篭もる厠へ。
「銀時……」
「…………」
呼び掛けても銀時から返事はない。
けれども土方は予想通りと気にも留めず、扉に向かって話し掛けた。
「悪かった」
「…………」
「アイツが……俺はお前に愛されてないみたいなことを言うからつい……」
「……別に、愛してねーし」
内容はともかくとして、反応が返ってきたことに土方は口元を綻ばせる。
「俺が頼んだから、付き合ってくれてるんだよな」
「……まあ、ちょっとは好きだけど」
「ありがとな。……なあ、開けていいか?」
「……好きにすれば」
もう一度ありがとうと言ってノブを回すと、銀時は両手で着物の裾を握り、ばつが悪そうに
視線を彷徨わせながら立っていた。
土方は半身を厠へ入れて銀時の肩を抱き寄せる。銀時の手は自身の着物を掴んだまま、
視線は土方と逆を向いているものの、その腕から逃れようとはしていない。
土方が腕に力を込めれば、銀時はおずおずと一歩を踏み出した。
「ビールでも飲むか?」
「いらねぇ」
「じゃあ外に……」
「行かねぇ」
「テレビでも……」
「見ねぇ」
ソファとベッドの間で歩みを止めた銀時。土方が何を言っても拒否しかしない。
いつもの土方であれば軽くキレるところではあるが、今日に限っては、銀時の不機嫌が自分に
起因していることは明らかなのでぐっと堪えていた。
「銀時、ごめんな」
「…………」
相変わらず銀時の手は自分の着物を握っていて、しかし抱き締められるままに土方の腕の中へ
納まる。距離は近付いたけれど顔は見えなくなって、銀時は「あのさ……」と控えめに口を開く。
「きっ、気持ちイイコト、してくれたら……許してやっても、いいよ」
「フッ……分かった分かった」
土方と交わることが気持ち良くなかったことなどなくて、けれどこう言えばきっと、
恥ずかしさも吹っ飛んでしまうようなことをしてくれると思うから……全てを理解した上で
土方は銀時の唇に自身のそれをそっと重ねた。
「んっ……」
唇を触れ合わせる程度に正面から一回、顔をやや斜めに傾けて一回、逆に傾けて一回、
また正面に戻って一回……唇で唇を愛撫していくだけで銀時の呼吸は乱れ上唇と下唇が離れていく。
「んんっ……」
この頃になれば銀時の腕は土方に回り、二人はより離れ難くなる。
土方は唇が潰れる程強く押し当てて、銀時の中へ舌を伸ばした。
「んぅっ、ん……」
土方の舌で口内をまさぐられ、熱を帯びた銀時はぐりぐりと下半身を押し付け始める。
それが合図となって二人はベッドへ雪崩れ込んだ。
仰向けに寝た土方の帯を解きつつ銀時は言う。
「もう、入れさせろ……」
「……それ、俺が言うことだろ」
反論めいたことを言いながらも土方は四肢を投げ出し銀時の好きにさせている。
土方の着流しを左右に開き、下着を取り去るとそこには芯を持ち始めたばかりのモノ。
銀時は手の平に潤滑剤を垂らしてソレに触れた。
「お前が言うの待ってたら焦らしプレイみたくなるじゃねーか……デカくなるのが遅ェんだよ。
メンソールのせいでインポになりかけてんじゃねーの?」
「インポでもメンソールでもねーよ……」
敏感に反応してしまうことの照れ隠しだと分かってはいるが一応訂正のツッコミを入れておく。
ぬるぬるした手で扱かれて、土方のモノも真上を向いてそそり立った。
「こんなもんか」
よしっと土方のモノを見て頷いて、銀時は自分の服を脱いでいく。
一糸纏わぬ姿になり、ふうと息を吐きながら土方の上に腰を下ろしていった。
「ハァッ、あ、んんっ……」
気持ちいい……入口が広げられる感触に声が漏れる。
「あっ……ハァ、ハァ、ハァ……」
座りきってしまえば、身体の深いところまで土方が到達しているように感じて心地好い。
銀時は自身のモノを強く握った。
「くっ!んんっ……ハァッ……」
眉間に皺を寄せて目を固く閉じ、全身をひくひくと震わせている銀時の、一物を握る手に
自分の手を添えて、土方は言う。
「我慢しねェでイケよ」
「やだっ……」
「気持ち良くしてやる約束だろ?手、離せって」
「っ……」
銀時が恨めしそうに手の力を緩めると、土方はその手を外して銀時のモノを数回扱いた。
そして間もなく、土方の手は白濁液に塗れることとなる。
「……いつまで握ってんだ?」
達して一息吐くと、銀時は暗にもう触るなと訴える。
「もうダメなのか?」
「ダメ。ソコ触ったらまた俺の方が早くイッちまうじゃねーか」
「……気持ち良くしないと許してもらえねーんだろ?」
「そそっそれはもういい。こっからは普通にヤるから」
「そりゃどーも」
「んっ……」
土方の手が離れると銀時は結合部を軸にゆっくりと身体を回していった。
「んっ、ハァ、ハァ、ハァ……」
「お前、マジですげぇな……」
「な、にが……」
「こんなサービスっ……痛ェ痛ェ痛ェ痛ェ痛ェ!」
ほぼ後ろを向いていた銀時は思い切り入口を窄めて最後の一捻りを加えた。当然、土方には
激痛が走り慌てて銀時の腰を掴んで止めた。
「おいおい土方くん、何してんの?これじゃ回れねーよ?」
「アホかっ!ンな状態で回られたらナニが千切れちまうじゃねーか!!」
「あ、ごめーん……痛かったぁ?」
振り返って形だけ謝る銀時に悪びれた様子は見えない。
「なに臍曲げてんだ?」
「え〜……むしろ土方くんのご希望通りサービスしてあげただけですけどー?」
「サービス、つったこと怒ってんのか……」
「お前、俺がこれから四十八手上級編的にくるくる回ると思っただろ?」
「……違うのか?」
「向き変えただけだ、バーカ。AVの見過ぎなんだよ」
「いや、お前の方が見てると思う」
「るせェよ」
銀時は土方の足をペシリと叩いた。
「……なあ、その向きで動くのか?」
「おう」
「顔見てヤりてェんだけど」
「だめ」
「何で?」
「何でも」
土方からは見えないが、銀時の頬は朱に染まっていた。サービスだ何だと言い合っているうちは
忘れていられたものの、銀時には土方と面と向かえない理由があった。トッシーの介在により
明るみに出た土方に対する思い。それが恥ずかしくて居た堪れなくて、快楽に溺れてしまえば
何も考えずに済むからと土方に挑戦的なことを言った。
それなのに先程、土方にその台詞を反芻されて再び恥ずかしさに襲われたのだった。
そんなこととはつゆ知らず、けれどもまた何かに照れているのだろうということくらいは
容易に想像がついた土方であるから、それ以上に追及はしなかった。
土方は結合部につっと指を這わせる。
「これはこれで悪くないけどよ……」
「あっ、ん……」
「起きてもいいか?」
「んっ……好きにすれば」
突き放すように言いつつも、銀時は膝をシーツに、手を土方の膝に着いて、土方が上体を
起こしやすいように前傾姿勢をとってやる。
土方は腹筋運動の要領で体を起こすと銀時を聢りと抱き締めた。
「あっ……ん、んん……ひぁっ」
土方に後ろから抱き締められた体勢で胸の飾りを中心に撫でられ、耳朶を吸われる。
耳の中にふっと息を吹き掛けられれば、銀時の身体がピクンと跳ねた。
「あんっ……ハァッ……」
「銀時……」
「んっ……」
熱を帯びた声で名前を呼ばれて、それにも身動ぎながら銀時は肩に乗る土方の頭に右腕を回す。
「いいぜ……来いよ」
「銀時……」
振り向いた銀時と軽く唇を合わせてから、土方は銀時の身体を前に倒していく。
銀時の両手と両膝がシーツへついたのを確認し、本格的な律動が開始された。
「あっ、あっ、あっ……」
土方が動くたび、結合部はぐじゅぐじゅと潤滑剤が泡立ち、パンパンと肉のぶつかる音が上がる。
「あっ、あんっ、あんん……イイっ!そこ、もうっイクゥゥゥゥゥ!」
「イケよ。俺もっ……」
手元のシーツをぎゅっと掴み、迫りくる快感に備える銀時。
土方は更に激しく腰を打ち付けた。
「あん、あんっ、あんっ、あん……イク、イク、イク……あ、あああっ!!」
「くっ!!」
銀時はシーツの上に、土方は銀時の中に己の証を吐き出した。
* * * * *
「…………」
ホテルの浴衣に着替え、ベッドの中で身体を休めていた二人。土方は銀時を抱き寄せて目を
閉じていて、その顔をじっと見ながら銀時は上になった手を土方へ伸ばした。
「…………」
けれど伸ばした手は土方の体の上で浮いたまま。
指を曲げたり開いたり、親指と中指・薬指を付けて「きつね」を作ってみたり……我ながら
往生際が悪いと思う。密かにくっついていたことはもうバレたのだ。ここは開き直って堂々と
いけばいい。恋人同士が触れ合うことに何の躊躇いがあろうか……
とは思うもののそう簡単に切り替えられなくて、結局、土方の浴衣の皺になった部分を
軽く摘んで目を閉じた。
「プッ……」
程なくして聞こえた小さな破裂音に銀時は慌て手を離したが、より強い力で抱き寄せられてしまう。
「ははははは離せ!」
「ンな可愛いことされて離せるわけねーだろ」
「ななな何もしてねーよ、バーカバーカ!」
「分かった分かった。ほら、遠慮なく抱き着けよ」
「だだだだだから俺は別に……」
「いいからいいから……」
土方は銀時の手首を掴み、自分の背中に回した。
「……暑苦しいだろ、バーカ」
「クーラーついてるからいいじゃねーか」
「……まあ、いいけど」
土方の浴衣の背中心をきゅっと掴み、銀時は目を閉じた。
(12.09.04)
結局、ただのツンデレ銀さんの話になってしまった^^; トッシーらしさ(オタク部分)があまり書けなくて残念。
原作では成仏しましたが、管理人はトッシー大好きなのできっとまた出てくると思います。……そんなこと言って前回の土銀+トッシー書いてから
2年経ってますけどね^^; ここまでお読みくださりありがとうございました。
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