隊服プレイの話


ある夜、万事屋の脱衣所で溜息を吐く男が一人。この家の主・坂田銀時の恋人で、鬼の副長こと土方十四郎である。
非番前夜に会うのはいつものこと。今日は自宅に誘われたから、この日の仕事を終えて深夜近くに訪れたのだ。
「風呂入って来いよ。着替えは用意しておくから」
夜中の訪問も嫌な顔一つせず出迎えて、甲斐甲斐しく世話を焼く姿にもっと警戒しておくべきだったと後悔しても後の祭り。バスタオルや下着とともに準備された真選組平隊士の制服に、渋々袖を通す土方であった。


「遅いぞ土方くん」
「…………」
そこに座りたまえと普段より偉ぶって長椅子を指す銀時は、土方が風呂場で脱いだ隊服に身を包み、事務机に凭れ掛かっていた。
今日は上司と部下という役割らしい。
銀時が時折始めるこういった遊びは嫌いじゃない。自分用の衣装の出所は不明だが、着心地からして新品のようだ。ならば多少汚れても構わないか……などとこれからのめくるめく時間を思い描きながら、土方は一先ず腰を下ろした。
「何でしょうか坂田副長?」
伺うように呼んでみれば「うむ」と満足げな相槌。
「頑張ってるキミに、ご褒美をあげよう」
「ご褒美、ですか?」
「そう。何がいい?」
「マヨネー……ズ!?」
土方の顔面目がけ、筆立てが投げ付けられた。
「バカかお前は? ああバカでしたね。マヨネーズバカっ!」
「冗談だって」
いつもの調子で罵る可愛い恋人にくすりと笑みを零し、土方は己を指さす右手をそっと両手で握る。
「坂田副長が欲しいです」
「――っ!」
色気を多分に含んだ瞳に見詰められ、銀時は息を飲んだ。たった一言で甘い空気を作り出す色男。狡いと思いつつも、毎度毎度その手に乗せられてしまう自分もバカなのだから仕方がない。
芝居、再開。
「俺が欲しいの?」
「はい」
「じゃあ、特別にあげちゃう。皆には内緒だよ?」
「ありがとうございます」
ゆっくりと立ち上がり「副長」と目線を合わせて土方は、腰を抱き寄せ、こめかみから後頭部へ天然パーマの中で右手を滑らせる。そしてうっとりと閉じていく瞼に吸い寄せられるように距離を詰め、唇を重ねた。
銀時の腕が肩に回り積極的に舌を絡めてくる。呼吸の合間に鼻から抜ける控えめな喘ぎが、土方の気分を高揚させた。
「んっ、ハァ……土方くん、キス上手いね」
「どうも」
上着の隙間から手を入れ、再び口付けを落としてベストの上から背中をまさぐれば、自ら袖を抜いて邪魔な衣をばさり。
このまま全裸に剥きたいところだが、コスチュームを全て脱がせるのはご法度。ふんわり組み立てられているはずの銀時のシナリオから外れると、そこで終幕となりかねない。折角できた甘美な雰囲気を壊してなるものか!
土方はベストからスカーフの端を引き出し、結び目だけを解いて首筋をぺろりと舐めてみた。
「はぁ……」
「ここに、痕を付けてもいいですか?」
「内緒だって言ったでしょ」
「隠れますよ」
首に掛かるスカーフをもう一度巻く仕草をする「部下」の男。それには私服を着た時に見えるからだめなのだと返って来た。
「普段がはだけ過ぎなんです」
口先に人差し指の腹を押し当て、その指を顎の先から喉へするりと下ろす。更に指は下方へ進み、開衿シャツの合わせからベストへ乗り上げた。
「この辺りまで開けているでしょう? 誘っているんですか?」
「そんな目で見てるの、土方くんくらいだよ」
「どうだか」
黒衣に包まれた胸板を撫でてやれば、ふ、と甘い息を漏らす。
設定はどうであれ土方を受け入れ慣れている体。服越しの接触であっても、容易にその先を想起させてくれた。
「んっ……」
「ここですか?」
乳首の付近で三本の指が円を描く。反対側も同時にされると下腹部に血流が集中していった。
じわじわと高められるもどかしさに焦れ、銀時は土方の首の後ろで手を組んでみる。もう押し倒しても構わないと目で訴えて。
誘惑された男はしかし、それに取り合うことなく言った。
「もうこんなに硬くして」
「んっ!」
股間の膨らみへそっと手を置き羞恥心を刺激する。その仕返しとばかりに銀時の手が土方のそこへ伸びた。
「土方くんも硬くしちゃって」
「俺の本気はこんなもんじゃないですよ」
「銀さんだってまだまだいけますー」
「はいはい」
いい加減に流して土方は両手で背筋を辿った。上から下へ撫で下ろし、最後に尻たぶをむにり。
「にゃっ!」
「ハハッ……可愛いですね」
「ぅるさい!」
思わず飛び出た間抜けな声をからかわれ、Sを自認する男の頬が朱に染まる。その間にも無遠慮に臀部を揉まれていた。
「土方、くん……尻フェチ?」
「アンタ限定で」
「ハッ……悪趣味」
「お互い様」
「あっ!」
土方の膝が銀時の張り詰めた中心を圧迫し、暗に後ろで感じていることを示してやる。
部屋の主は忌ま忌ましげに客人を見上げた。
「んっ、んっ、んっ……」
肉を掴んだまま左右に引かれ、服の中で割れ目が拡張する。自動的にその後は想像されて、銀時の内から疼きが湧いた。
「土方くん……もう、入れていいよ」
「いいんですか?」
「うん」
恋人の足の間に自らの右足を差し込み、抱き着いて体を擦り寄せる銀時。熱烈な態度に土方の喉が鳴った。
ズボンの縫い目を食い込ませるようになぞり、入口となる箇所を力強く押し上げる。
「あっ!」
「ここに、俺のこれを入れるんですよね?」
銀時の左手を自分の熱い下半身へと導き、これからの行為をはっきりと自覚させてやる。服の上からでも分かるほど、孔はきゅうと収縮した。
「あっ、んん!」
「良さそうですね」
「も、脱がせ……はうっ!」
これで充分ではないかとぐりぐり窄まりを刺激すれば、銀時の目尻に涙が溜まる。
「ふ……うっ、んう!」
早く早くと祈りながら銀時は左手を揺らめかした。だがそれにより、奥深くへの衝動がいっそう明確になってしまう。この熱くて硬いモノで内側を暴かれ突かれたい衝動が。
その時、土方の指が小刻みに揺れだした。
「それ、やっ……!」
しがみつき止めようとするも振動は止まない――それは、瞼の堤防が決壊するのと同時に起こった。
「ふぐうぅっっっっ!!」
肩口に唇を押し付けて絶頂に達する銀時。開放感とともに来る不快な湿り気に眉を潜めた。

「借り物を汚すなよ」
「はぁぁぁぁぁ!?」
最後の瞬間まで脱がせなかったお前が悪い。しっとり湿った「衣装」を持ち主へ投げつけて返し、銀時は下着姿で風呂場へ足を向けた。
「おっおい、続きは?」
「命令が聞けないクソ野郎はお引き取りくださーい」
交接が叶わぬどころか帰宅まで言い渡されて、後を追いつつ謝罪し続ける土方。

調子に乗った「部下」の今宵の寝床は「上司」の気分次第。

(17.03.04)


久しぶりの土銀はエロバカップル話でした。本番までできたかどうかはご想像にお任せします。
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