体は何でも知っている


高杉らとの合流を目指す快援隊の船の中、坂本、陸奥、桂、万斉、新八が円になっていた。
「白夜叉は?」
「部屋で寝てます。もし出て来たら定春が合図をくれるんで大丈夫です」
万斉の問いに新八が答える。
「日に日に篭る時間が増えていく……手を打たねばならんな」
陸奥の提案には全員が頷いた。
アキバでの潜伏期から始まった銀時の症状は重くなるばかり。最早当人だけでは解決できないところまで来ているとの判断に到った彼ら。そしてこの中で最も解決の可能性のある桂へ視線が集まった。
代表して坂本が尋ねる。
「ヅラ、連絡は取れるがか?」
「ヅラじゃない桂だ。連絡手段はあるがあの男に直接というわけでは……」
「それでもええ。とにかく頼むぜよ」
「仕方ないな」
「よろしくお願いします」
銀時を思い新八が頭を下げて、桂は懐から通信機を取り出すのだった。


それから二日後、銀時を乗せた船は小さな星に着陸する。ここに高杉がいるのかと顔を引き締めた銀時へ、坂本はまだ途中だと説明してやった。
「長旅には休憩も必要じゃ」
「あっそ……じゃあ俺は寝る」
薄らと染まる頬に気付かぬフリをしてやって、部屋に戻る銀時の背中へ声を掛ける。
「わしらは買い出しば行ってくる。留守を頼むぜよ」
「甘い物あったらよろしくー」
背中越しに手を振って、銀時は自室の布団に潜り込んだ。自分だけが一人部屋を与えられ、気遣われているのは明らか。こんなことをしている場合ではない。きちんと分かっているのに体がついていかなかった。

程なくして銀時はノックの音で頭を上げる。誰だと扉へ問えば、「俺だ」と答えになっていない返事。
「オレオレ詐欺は間に合って――」
気怠い体を引きずってドアを開けた銀時は、いるはずのない男の存在に息を飲んだ。
「よう」
「なん、で……」
その相手とは目下遠距離恋愛中の土方十四郎。見慣れた濃い色の着流しに羽織を重ね、そこに立つ男の顔は酷く懐かしいものに感じた。
「今の幕府に不満があるヤツの中には地球から出たヤツもいる。そいつらと会っていたんだが、偶然メガネを見掛けてな」
「そう……」
もちろん土方の話は嘘。桂から近藤を経由して銀時の状況を聞き、単身ここまで飛んで来たのだ。
銀時も今ひとつ納得できないでいたものの、体の求めに従ってこれを好機と捉えることにする。土方を部屋へ招き入れ、足を払って布団へ押し倒した。
「銀時!?」
「ヤらせろ」
荒い息遣いで土方の下着をずらし一物を取り出すと、うっとりとした表情で間髪入れずそれに舌を這わせだす。
確かにこれは危険な状態――来て正解だったと土方は、仰向けたまま自らの帯をほどいてやった。
「あ、んっ、う……」
与える側にもかかわらず恍惚と喘ぎながら一物を育てていく銀時。意思に反して脳内をずっと支配していた恋人の味を、匂いを、感触を余すところなく堪能したい。只管その感情に突き動かされていた。

勃ち上がりきったモノを根元まで咥え込み、先走りを啜りつつ先端方向へ唇を滑らせる。
「うっ……んんっ!!」
限界を超えて高まった内部の疼きが、銀時の服の中で白濁液を放出させた。
「土方ァ……」
そそり立つ熱棒に口付けて、甘美な声でその持ち主の名前を呼ぶ。くしゃりと撫でられた銀髪に、引きかけた欲が復活。
下半身に纏うものを素早く脱ぎ捨てて、今度は下の口で陰茎を飲み込んでいった。
「はああっ!!」
土方自身を全て体内に納めると全身に電気が流れたような感覚がする。体を仰け反らせて銀時は出さずに達した。そして、
「あっ!土方、もっと……」
余韻に苛まれ、思うように動けぬ助けを愛する人に求める。下から腰を突き上げられて、独りでは生み出せぬ快楽に浸っていった。
「ああ!イイっ!土方っ、土方ァァァァ!!」
銀時の精をその身に受け土方は、繋がったまま強引に体を起こすと己の足の間に可愛い恋人を横たえさせる。期待に開く瞼へ軽くキスをして、銀時の両足を抱えた。
「あああぁぁ――!!」
こうなるとなすがまま。揺すぶられ引き摺り出される快感に身悶ええる銀時。けれどもそれを拒む気などなかった。寧ろ望ましい状況ですらある。
「土方のチ、コ……気持ちいいっ!!またイクぅぅぅぅ!!」

*  *  *  *  *

「…………」
銀時が目を覚ますと、すぐ横に座った男が煙草を吹かしていた。
いつもの光景。
しかし、いつも通りでは駄目なのだ。枕に突っ伏し腹の底から息を吐く。
「あ〜……」
「ヤり過ぎたな、すまん」
「……別に」
土方が謝る必要はない。冷静になって漸く分かる。おそらくコイツは……
「俺がこんなだから呼ばれたんだろ?」
「……ああ」
次から次へと沸き上がる性欲を発散させる役目を負って来たに違いない。
「ごめん。大変な時だってのに、くだらねェことに付き合わせちまって」
「惚れた相手とヤるのはくだらなくねェよ」
「そうだけど……でも、今はそんな場合じゃねェだろ!マジで空気読めよ俺の体ァァァァァ!!」
ぼすんぼすんと枕に当たる銀時は自分自身に言い聞かせているよう。弾力のある髪でポンポンと手を弾ませて、
「仕方ねェよ。色々あって全然ヤれないまま離れたからな」
会えても肌を重ねられる事態ではなく今日まで来たせいだとフォローする。枕を抱えたままちらりと横を伺って、再び銀時は息を吐いた。
「お前が江戸を発つ前の晩、ホテルに行ったよな?」
「ああ」
「でもお互い何となくヤる気分じゃなくてキスもしないで朝になった」
「ああ」
「それに何の不満もなかったんだよ。なのに一人になった途端ケツの奥がうずうず……マジで何なんだよォォォ!!」
「だがこれでもう平気だろ?」
「平気じゃねェ」
「おい」
土方とて銀時と共にいたい。しかし未来のために今は我慢の時なのだ。江戸に残ると言っていた男が宇宙に出る程、銀時にとっても退っ引きならない事情があるはずなのに。
「俺の体はお前じゃねェと制御できねェ。だから、制御不能になる前に全部片付けてやらァ」
「……そうだな」
未だ起き上がれぬ男の瞳は、しかし確実に先を見据えている。二人は暫し無言で見つめ合い、再会を誓ってそれぞれの戦いへと戻っていった。

(15.10.02)


本誌で真選組が「さらば」してしまい寂しい限りですが、こうして話と話の間にこっそり逢引きしていると妄想して平静を保っています。
……「さらば」前の設定で妄想をするのも楽しいですけれどね。そして大好きなんです襲い受けに襲われ攻め!似たようなエロばかりですみません^^;
ここまでお読み下さりありがとうございました。



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