飲まなきゃ眠れぬ夜もある
突如かかってきた電話。会いたいと言われ、仕事だと断れば、深夜でも早朝でも短時間でもいいからと食い下がられて、承諾するしかなかった。 まだ日も暮れ始めたばかりの時分。夜更けに訪れるつもりだったのにと土方は、万事屋銀ちゃんの看板を見上げて眉間に皺を刻んだ。 どうやら銀時が手を回していたようで、新しい上司に早く上がれと言われてしまったのだ。多方面に顔が利くのも考えもの。土方十四郎という人物を説明する時、鬼の副長よりも坂田銀時の恋人という方が通じるのではないかと思ってしまうほど。何せ配属初日に「銀さんから噂は聞いてたでやんす」などと歓迎されたのだから。
気は進まないが行くしかない。一人でいる所を新しい同僚に見付かりでもしたら面倒だ――土方は観念して階段を上っていった。
「土方くぅん!」 「……よう」 足音で来訪を察したらしい銀時は主人の帰りを喜ぶ忠犬のごとく、扉が開くと同時に土方へ飛び付いた。こうして素直に出られると弱い。職場への根回しも純粋な愛ゆえなのかと許したくなってしまう。銀時が「早く会いたかった?」とでもからかってくれれば反論もできたのだけれど、あいにく今夜の銀時にそんな余裕は存在しなかった。 草履を脱ぐのも待たず手近な壁に土方を押し付け、ぶつかるように唇を合わせる。 「っ!」 ぴたりと身体を寄せて気付いた高ぶり。玄関でされては堪らないと身を捩り逃れんとする土方であったが、銀時からすれば口付けで始めたことを褒めてほしいくらい。本当はすぐにでも土方の下半身を曝け出して咥えたかった。 だから、 「おい!」 唇同士が一旦くっつけばキスはおしまい。即座にしゃがむ勢いで土方の黒い股引をずり下げ、軟らかな一物を根元まで咥え込んだ。 「やめろ!離せ!」 股間の銀髪天然パーマをぺしぺしと叩いてみるも止まる気配はない。「後ろ」にいかなかったことで見た目ほど切迫してはいないのだろうと、土間で最後までは至らないだろうと高を括り本気で抵抗しなかったのも一因であった。
「ハッ、ん……」 たっぷりと唾液を纏い、銀時の舌で、唇で愛撫される一物。硬く膨れたその表面を歯先で撫でれば、土方の腰が快感に震えた。 あと少しで待望の――喉の奥まで使い銀時は陰茎を吸い込んでいく。 「あ……くっ!!」 銀髪を掴み、吐き出されたものは自然に銀時の体内へ吸い込まれていった。 「ハァッ……」 「…………」 数回喉を鳴らしつつ動く気配のない銀時。それを不審がりながらも土方は自らの着物を整え、履物を脱いだ。続きは奥の部屋で――踵を返そうとした土方を双手刈。辛うじて受け身は取れたものの、どすんと廊下に倒されるのだった。 「何しやがる!」 「味が分かんなかったからもう一杯」 「はあ!?あ、てめっ……」 不穏な空気を感じ取ったがもう遅い。羽織も縞模様の着流しもそのままに、履いたばかりの服と下着を剥ぎ取られ、下半身は一糸纏わぬ状態に。 そして萎えたばかりのモノを再び咥えられてしまった。 「や、めっ……」 先よりも容易く上がる熱に反比例して土方は逃れようとする。外に近い場所でこれ以上のことはしたくない。したくはないが、このまましゃぶられ続けると確実にこれ以上のことをねだりたくなる。 「はっなせ……うあっ!」 しかし銀時も長年の付き合いで心得ていた。二本の指を挿入し、内側から射精を促していく。 「はぁっ!あっ、あっ……」 欲しがる前に与えられ、抗う気力はすっかり奪われてしまった。 屹立したモノから漏れ出る先走りを啜りながら、更に濃厚なものを求めて内部の指を蠢かす銀時。 「あぁっ!」 刺激に身体が動くたび、固い床に骨が当たった。だが既に、それを痛みと感じるゆとりはない。ただただ解放をせがんで指を締め付け腰を振るのみ。 「あ……う、ああっ!」 同じ轍は踏まぬと空いている手で根元を擦り、半ばまでを口に含みその時を待っていた。 「あっ、あ……で、る……ああぁっ!!」 口内に広がる愛する人の味。 「ん……はぁっ……」 全てを舐め取り存分に舌の上で堪能してから嚥下させてもらう。 「美味しい」 「そうかよ」 ぼんやりしている暇はない。色々と言ってやりたいこともあるが今度こそ続きは奥の部屋で――身体を起こそうとした土方の上に銀時がのしかかった。 「次はトコロテン食べさせてね」 「いい加減にしろ!」 「はいはい」 付き合いが長くなるのも考えもの。言っても無駄だと分かってしまう。それでも嫌だと突き放せば、 「頼むからっ」 「――っ!」 捨て犬のような瞳で懇願されて、受け入れたくなってしまう。 切羽詰まっているのは知っていた。それでも己が二度放出するまで耐えたのだからこのくらいは。そもそもここまでしたのだから続きをしても大した違いはないわけで…… 「ああっ!」 力の抜けた土方を膨れ上がった一物が貫く。 「ぐ……!あっ、あっ!」 「すげぇイイ……一回出させて」 「はあぁっ!!」 ぐりぐりと奥を抉られて土方は出さずに達し、銀時はそこへ欲の証を注ぎ込んだ。 「うぐっ……あ、はぁん!!」 目的を遂げるまで銀時は止まらない。律動を再開されればまた身体の内側で弾ける感覚。 「ナカイキモードに入っちゃった?」 「あうぅ!!」 浅い所を突かれた方が出しやすい。奥でイキ始めると止まらなくなる――土方の状況を正しく理解した上で、銀時のモノはずっぷり嵌まったまま深い所で動いていた。 「ひあぁっ!!」 「美味しいトコロテン、早く出ないかなァ……」 「あっ!くっ!」 出し方など熟知しているくせにと喚く気も失せていく。土方は自身の股間へ手を伸ばした。 「だぁめ」 「くぅっ!!」 しかし目標地点へ到達する前に阻まれてしまい、また内側だけでイカされる。 床に両手を押さえ付け、腰を揺らす銀時。 「触って出したらトコロテンにならないだろ」 「だ、たら……ああっ!!」 言葉と行動が矛盾している。快楽に霞む思考でもそのくらいは判断できた。 「あー……もうイキそう」 一緒にイクかと問われ、イカせてくれと冀う。一物がずるりと抜ければ土方の目の前で火花が散った。 「ああぁぁぁっ――!!」
* * * * *
「何なんだよ今日のは……」 「んー?」 湯舟に浸かり前髪を掻き上げて土方は銀時に凭れ掛かり息を吐いた。 今日の銀時はおかしい。ここのところ忙しかったし銀時は怪我をしていたしで碌に致せていなかったのは確かだが、今宵はやたらと精液に拘っている。最後も、土方の身体や顔に飛んだものを念入りに舐めていた。傷が癒えただけでは説明がつかない行為である。 「実は昨日、依頼が立て込んでてね……」 「いいことじゃねーか」 「でもメシ食う時間もなくて、仕方なく十秒チャージ的な……」 「それ以上言うな」 話のオチが読めて土方は頭を抱えた。こんなくだらない事情で己は呼び出されたのか。 辛い時、いつの間にか寄り添っているコイツのことだから、今回も事情を察して多少強引な手に出たのだろうと、ある意味で感謝すらしていたというのに。 「違うからな?話は最後まで聞けよ」 「……何だ?」 その直後、話を続けたことを後悔した。 「あれの喉越しってザーメンに似てねぐふっ!」 銀時の腹へ無言で肘を入れ、会話を強制的に打ち切る。 「何すんだ!」 「それはこっちの台詞だ!どこが『違うから』だよ!」 「違うんだよ!お前、俺がドロドロしたもん飲んでザーメン飲みたくなって電話したと思ってるだろ?違うからな」 「どう違うってんだ」 各種ゼリー飲料製造販売元への営業妨害も甚だしい。だがこうも違うと主張するからには、終いまで聞けば各社からの苦情を免れるのであろうか…… 「今『ザーメン飲ませて』なんて軽く言える状況じゃねェだろ?」 「そうだな」 「だから自分のもんで我慢しようとしたんだよ」 「は?」 「でも味がイマイチ……まあ、お前が舐めてるもんだと思えば興奮したけど」 「…………」 常々馬鹿だ馬鹿だと思っていたがここまでとは…… 「で、やっぱりお前じゃないとダメごふっ!」 再度肘鉄をお見舞いする。だがこの程度で懲りる男ではないことも分かっていた。 「いてて……そんなに照れるなよ。美味かったぜ」 「…………」 照れていないし、美味しいと褒められたところで嬉しくもない。なのに銀時は頼まれてもいない講評を始めた。 「トコロテンより断然、直搾りだな。いや、シチュエーションとしてはトコロテンが最高に美味いよ?けど味わうという観点でいくと直搾りに勝るものはねェんだよ。と、いうわけで……」 「あ?」 くるりと向きを変えられて、右足を担がれた。バランスを取ろうと浴槽に掴まれば左足も取られてしまい、局部を眼前に晒す体勢に。 浮力も借りて浮き上がる土方の腰。にんまり笑う銀時に腹が立った。 「潜望鏡〜」 「くっ」 四十八手だか何だか知らないが言う必要のない体位の名前まで告げて一物をぱくり。腰を沈めようとすれば指を突っ込まれて持ち上げられた。 この駄犬をしつけるには――何年も試行錯誤を繰り返してなお正解へ辿り着けぬ問いを、土方はまた脳裏に展開するのだった。
(15.03.19)
本編はシリアスなのに申し訳ない。土方さんのザーメンが大好きな銀さんが書きたかっただけです^^; まあでも、大概のことは原作でやってくれてるんで、二次創作は少年誌で書けないこと=エロ中心でもいいかなと思いまして。 ここまでお読み下さりありがとうございました。
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