後編


銀時の下着を脱がせて己の羽織の上に放り、土方はもう一度唇を重ねた。勃ち上がり濡れるモノが体に挟まり刺激され、銀時の喘ぎは二人の口内を充たす。

「ハァ……うっ!」

唇が離れると一物を握り込まれ、銀時の腰が戦慄いた。手の中で脈打つモノにうっとりと息を吐き、土方はそのぬめりを舐め取っていく。
その時、閉じかけていた銀時の目が、カッと見開かれた。

「ンな汚ェとこ――あぁっ!」

恋人への気遣いは快感に先を越されて言葉にならない。自ら出したもので濡れていた一物が、今や愛する人の唾液に塗れている現実に、銀時は身震いする程の快楽を覚えた。

「くっ……もう、ダメだっっっ!!」

情けないと思いながらも感じてしまうのを止められず、銀時は土方の口の中へ欲の証を注ぎ込んだ。
土方は吸い出した粘液を左の指へ絡めて下着をずらし、それで自らの秘所を湿らせていく。上体を屈め、銀時の一物に絡むモノを舐め浄めながら。

「そんな……したら、また……」
「んっ……」

新たな刺激に降参するかのごとく目の上に腕を乗せ、肩で息する銀時には、土方の動きを見るゆとりなど皆無。だから触れてくる舌が手が先よりたどたどしいのは、達したばかりの自分への配慮だと信じていた。触れられぬ手がナニをしているかなんて、考えもしなかったのだ。


「そろそろ、いいか……?」

長イスの横で帯を解き下着を脱いで、土方は熱い情欲の宿る瞳で銀時を見下ろしている。その中心で聳え勃つ土方自身を朧げに捉え、銀時は今更この部屋の寒さを感じ始めた。
覚悟を決めたはずだけれど、現物を目にすると揺らいでしまう。アレをアレにアレすることなど本当に可能なのだろうか――

すっかり己の役割を誤認している銀時。土方が懐から取り出したゴムを一物に被せられても、家具を汚さないためだと解釈するのだった。

「あのっ」

黙っていては恐怖が増幅していくのみ。体勢はそのままに土方と視線を合わせてみるも、眼球が定位置に収まってくれない。どうしたと顔を覗き込まれたけれど、瞳は独りでに明後日の方へ行ってしまう。
仕方なしに銀時は背凭れに向かって言葉を発した。

「俺、そっちは初めてで……だから……」
「えっ?」

口調だけでも驚かれたのだと分かる。爛れていそうとはよく言われるものの、まさか「後ろ」の経験まで当然あると思われていたとは心外であった。
そんな気持ちを(表面的にだが)察した土方はすまないと謝って、

「なら、逆にするか?」

銀時の割れ目をつっと辿る。銀時は思わずひゅっと息を飲んでしまうが直ぐさま虚勢を張った。

「大丈夫!何事も経験だ」
「でもよ……」
「土方くんならいいと思ってたから!本当に!!」
「そうか?」
「あ、でも初めてなんで……優しくして?」
「おまっ――」
「えっ?はっ?」

訳も分からずがばりと抱き着かれ、銀時の腕は空中で所在なげに浮遊する。腹で感じる土方の熱に不安と恐怖、そして僅かではあるが確実に喜びを覚えた。

「ンな可愛いこと言うんじゃねーよ。加減できなくなる」
「お、お手柔らかにぃ」
「分かってる。分かってはいるが……くそっ」

耳朶を食む土方の息が荒い。それを感じて銀時の胸も次第に熱くなってきた。

「あ……」

吐息の刺激を受けて自然と声が出る。

「銀時っ」

絞り出すような切羽詰まる声で名前を呼ばれた。土方が体を起こし、いよいよだと悟る。
下半身を直視することはできなかった。予防接種を受ける子どものように局部から目を逸らし、体は俎上の魚のように動かず、来たる時に備えるしかなかった。

だから不意打ちもいいところ。

「んっ……」
「ほへ?」

鼻から抜けた声と、ゴム越しに伝わった一物の包まれる感触。まさかと首を起こせば、熱り立つモノと袋の向こう側、みるみる飲み込まれていく己のムスコがあった。

「は?へ?な、何で?」
「やっぱり後ろに欲しかったか?」
「う、後ろ?あれ?そっちって、おふ!」

混乱を極める「本体」の意思などお構いなしに、「分身」はもう結合の快感を拾い始める。
土方に両肩を押され、銀時の頭は再びイスへ戻った。

「こっちも充分良さそうじゃねーか」
「あ、う……」
「今日は寝てるだけでいい。気持ち良くしてやるからな」
「土方……」

暗に初めての体験であることを気遣い、慈しむように目を細めた土方に魅入ること数秒。ハッと我に返った銀時は、即刻訂正を試みた。

「違――あっ……ああぁっ!!」

だが残念なことに、分身の力が勝っていたらしい。土方が腰を浮かせてまた沈む間に、びゅくびゅくと白濁液を噴出させた。

こうなると本体の行動は大幅に制限されてしまう。呼吸を整え、立て直さなければ誤りを正すこともできない。

「ハッ、ハッ、ハッ……」
「敏感過ぎだろ……ヤベェな。加減できる気がしねェ」
「え……あ!?はうぅぅぅぅぅっ!」

不穏な台詞が聞こえた直後、内部が締まり、揺すられ、萎みかけていたモノは回復させられた。それから先程、瞬く間にイカされたあの上下運動を数回。

「あぁぁぁぁ……!!」

今は無理――考えることを放棄して銀時は、与えられるままに喘いだ。

「んうっ!」

両手で顔を挟まれて唇をぺろり。勿論その間も一物を含んだ腰は揺れている。

「あぁ、う……あっ!」
「銀時……気持ちいいか?」
「いいっ!ひじかたの……なか、サイコー!」
「そりゃ良かった」
「あ……またイっ……ああぁっ!!」

うねる内部に堪らず、土方の背へ腕を回し、着物に縋り達した銀時。その耳にふっと息を吹き掛けられて身動げば、

「もっともっと気持ち良くなれよ」

背筋が凍り付く一言とともに蠢きだした内壁。

「うあっ……もう、やめ……」
「テメーの化け物じみた体力ならまだまだ序の口だろ?」

勃ちっぱなしじゃねェかと、萎えさせてくれない張本人が言うものだから始末に負えない。何よりこれでは、事が済んだ後で誤解を解こうにも全くもって説得力がない。どうにか一矢報いなくては――銀時の手が土方のモノに伸びた。

「んっ……俺も、気持ち良くしてくれるのか?」
「あ、くうっ!」

依然として余裕の笑みで腰を振る土方。銀時は必死で手を動かすも、明らかにもらう方が多かった。

「銀時……一緒にイクか?」
「ん!んっ!」

優しく添えられた手に力強く頷いて、その感触にも達してしまいそうになるのを必死で堪える。ただ握るのみになっている銀時の手ごと、土方は己の一物を扱いた。

「ハァッ……銀時っ……!」
「ううっ、あ……んんっ!!」

己の下で乱れる恋人を満ち足りた表情で見下ろして、土方は腰を振りつつ手を動かしていく。

「ああっ!!」

限界が訪れたのは銀時が先。

「もっ……ムリっっっっっ!!」
「っ――!」

反動で手に力が入ってしまい、土方が顔を顰める結果に。
けれどこれも銀時が感じた所以だと思えば耐えられた。否、寧ろ快感ですらある。

「くっ!!」

土方の精は銀時の顔まで飛び散った。


*  *  *  *  *


「銀さん、いい加減起きて下さい!」
「ん〜……?」

何の依頼もない朝。銀時はいつも通り新八に叩き起こされた。大きく欠伸をしながら首筋を掻けば、二日酔いでも寝過ぎでもない体の怠さを感じる。昨日は何をしたのだったか……

「着替えもしないで寝て……またツケで飲んでたんですか?」
「あーっ!!」

小言をBGMに記憶を辿った銀時はやっとのことで思い出した。昨夜は記念すべき初デートの日。約束したわけではないけれど、恋人が探しに来てくれてデートができた日。

そして、

「何なんですか!いきなり大声出して……」
「あ、こっちの話」

衝撃の初エッチ記念日にもなってしまった。

いつ眠ったのかは不明。というより、何度もイカされて意識を飛ばしたのだと容易に想像がつく。
途中で目覚め、寝惚けた状態で服を着直し、精液を拭いて布団に入った……のでなければ土方がしてくれたのであろう。
そうであるなら、大事なことを言いそびれてしまった。

――俺、そっちは初めてで……

あの時言った「そっち」が「そっち」でないことを説明しなくては。昨晩の反応では本当に初めてだったのだと勘違いされかねない。交際相手へ過去を詳細に語る必要性はないものの、一般的な経験値があることくらいは言ってもいいはず。
尤も、土方と比べたら初心者であることは確実であるけれど。

突っ込む方、タチのことを一部で「攻め」と表現するらしいが、自身も攻めに分類し得るのか大いに疑問が湧くところ。前夜の限りでは自分が攻めている場面など一つもなかったのだから。

「ハァー……」
「飲み過ぎは体に毒ですよ。お金だってかかるし」
「わーってる」

くわァと欠伸をしてのっそり起き上がる。ふらつく足を残り酒のせいにして居間へ出ると、件の長イスに神楽が寝そべっていて非常に申し訳ない気分になった。

「おはよう。昨日、トッシー来たアルか?」
「え……」

何故それを……ナニか痕跡でもあったのだろうか。自分は全て放置で寝入ってしまったが、土方が片付けてくれたとばかり思っていた。

「部屋がヤニ臭いネ」
「あー……そう。うん、来たよ」

その程度のことかと密かに胸を撫で下ろす。
己を寝かせて一服してから帰ったのか、同衾して帰る前に一服したのかは分からないけれど、言われてみればそこはかとなく煙草の匂いがする。

「え?デートだったんですか?」
「早く私達にも紹介しろヨ」
「アイツの仕事が早く終わったらな」

深呼吸して恋人の香りを体内へ取り込めば、ずくりと重くなる下半身。着流しの裾でそれを隠しつつ、銀時は厠へ急いだ。

早く次の約束を取り付けよう。もう、声を聞くだけじゃ満足できそうもないから。

息を吸えば鼻の奥にまだ煙草の匂いが残っている気がする。付き合って初めて知った土方の熱を思い出し、銀時は己の高ぶりを握るのだった。

(15.01.15)


最近、攻めを喘がせるのがマイブームです^^; 喘ぐ銀さん(攻め)、楽しんでいただけましたら幸いです。
この話はここで一旦終わりますが、そのうち続きを書くと思います。次話ではもう少し土方さんも喘がせたいな……。
ここまでお読み下さりありがとうございました。




メニューへ戻る