残ったのは眼鏡だけ
かぶき町にあるラブホテル。土方は恋人の銀時とその一室にいた。
「今日はこれ着てヤろうよ」
持っていた風呂敷包みの中から胡散臭い笑顔と共に差し出されたスーツと白衣。先程、一緒に
入浴したにもかかわらず手を出してこなかったのはこれがヤりたかったからか……
「道理で荷物が多いと……」
「あ、いいの?」
意外にすんなり受け入れられて銀時は面食らってしまう。何で着なきゃなんねぇんだ、普通に
ヤればいいだろうなんて反対されるものだとばかり。そこをあの手この手で頷かせるところから
プレイは始まっているのだ。
土方はといえば、これまで銀時の趣向により様々なプレイに付き合わされてきて、不本意ながら
免疫がついてきていた。そのため今夜の衣装くらいなら着てもいいかと思ったのだった。
「着なくていいなら着ねーよ」
「いやいや着て下さい。着てくれてありがとう」
ヤる気があるならそれもよしと銀時はもう一つ、今宵の重要アイテムを手渡した。
「着替えたらこれ掛けてね」
「あ?」
受け取ったのは伊達眼鏡。そして今、銀時は自分の衣装らしい詰め襟の学生服をいそいそと
広げているから、何がしたいのか土方にも分かった。
「そう、今日は逆3Zプレイだ!」
「はいはい……」
もう何もツッコむまいとスーツの上から白衣を羽織る土方。「逆3Zとか言うな」等のツッコミを
期待していた銀時としては些か物足りないけれど、ヤれるのならいいかと着替えていった。
放課後の教室で先生と二人きり――という設定でベッドの上に座る二人。
「土方先生」は土方と同い年、「坂田くん」は十七歳と決めて、ここから先はアドリブのみ。
初めに動いたのは坂田くん。
「土方先生……エッチの仕方、教えて下さい」
「教え子に手を出すわけにはいかねェな」
最終的にヤることはヤるのだが、まずは先生らしくお断り。
「手を出されるならいいですか?」
「どうだろうな……」
「お願いです!俺、先生のこと好きなんです!」
「仕方ねぇな……一回だけだぞ」
あくまでも本題は生徒と先生の交わりだから、現実だったら起こり得る葛藤や困惑は殆ど無視。
ありがとう先生――坂田くんが満面の笑みで飛び付いて、土方先生はベッドにどさり。
ここからは土方先生の家という設定。
「あの……俺……初めてなんだ……」
「分かった。任せとけ」
下から坂田くんを引き寄せて土方先生は唇を合わせる。後頭部に手を添えてしっかりと。
力を緩めて浮き上がったところを舌で辿り、唇の隙間に割って入る。
「んっ……」
舌先で歯列をなぞりながら、久しぶりだなと土方は思う。普段は基本的に銀時から与えられるのを
待つのみ。特段不満はなかったけれど、こういう機会があると己がいかに受け身であったか思い
知らされる。受ける側とはいえ情けないと思う反面、そのような交わりに慣らされていることを
悔しくも思う。
だからちょっぴり意地悪したくなって、背中に回していた手を背骨に沿って下ろしてみた。
尾てい骨辺りへ到達したところで俄に唇が離れる。
銀時が体を起こしたのだ。
「せっ先生……?」
「どうした?」
素知らぬふりして尻たぶを揉んでやれば、みるみるうちに銀時の額に冷や汗が滲んでくる。
「あああああのさ……」
「お前は何もしなくていいぞ。先生が全部してやるからな」
SMプレイに誘う時の銀時の表情を想起して同じように微笑んでみる。相手を安心させようと
し過ぎて逆に不安にさせるような偽笑顔。銀時は更に焦燥を募らせた。
「おおお教え子には手を出さないんですよね?」
「そうだったか?最近、物忘れが酷くてな……」
「せっ先生はまだまだピチピチだから覚えてますよね?おお俺を男にして下さい!」
「ああ、そうだったそうだった……」
「あっ……」
わざとらしく今思い出したふりをして尻の手を前に回し、すっかり萎縮してしまった股間を
服の上から握る。
「そんな……いきなり……」
「ここの準備が出来なけりゃ、何もヤれねェだろ?」
「そ、ですね……」
次第に硬くなっていく手の平の感触に土方の喉が鳴る。思えば銀時が快感に悶える姿など初めて
見たと言っても過言ではない。自分の上で腰を振る際には非常に気持ち良さそうにしているけれど
それとはまた異なる状況。
土方の手によって、無駄によく回る口が大人しくなる程に感じている――普段、土方の快楽を
引き出そうと必死になる銀時の気持ちが少し分かった気がした。
「ここ、しゃぶってやろうか?」
「マジでか!あ……お願いしまーす」
頼み込んで漸くやってくれるようなことを進んでやってくれると聞き、銀時は折角の衣装を全て
脱ぎ捨てて胡座をかく。
「俺、先生の裸が見たいです」
こんな風に下手に出られると弱いのだろうか――仕方ねェなと言いつつ土方は服を、しかも銀時の
正面で脱いでいった。時折視線を交わせながら露わになる肌に、今度は銀時が喉を鳴らす。
「先生……」
「もう少し我慢な」
先走りの漏れはじめたモノを眼鏡越しの視界の端に捉えつつ、最後の一枚は後ろを向いて脱いだ。
既に勃ち上がった自身を隠すように身を屈め、土方は銀時のモノを咥え込む。
「ハァッ……先生のお口、気持ちいいっ……」
喉の奥まで使って一物全体を刺激して、溢れた雫は余すことなく飲み干した。
「こういうの……慣れてるんですか?」
「は(さ)あな」
「……これからは、俺だけですよね?」
「んー……」
ちゅぱっと音を立てて一物を口から出し、土方先生は坂田くんの顔を覗き込む。
「それはこの後のお前次第だな」
「俺、初めてなんですけど」
「経験はなくても知識はあるだろ?近頃のガキはませてるからな」
「先生に教わりたくて何も知りませーん」
「ったく……次からは予習してこいよ?」
「はーい」
いつの間にか「一回だけ」という設定が忘れられているけれど気にしない気にしない。
備え付けのコンドームの袋を破り、実際には何もかも知っている銀時のモノへ被せようとした
ところ、その手首を掴まれた。
「何だ?」
「ここは『先生の部屋』だからゴムは備え付けてないと思いまーす」
「用意周到な先生はいつでも持ってるんだよ」
「淫乱教師か!あ、あのう……できればナマで……」
「先生の言うことは聞くもんだぞ」
「ううっ……」
いまさら未経験設定を後悔しても遅い。いつもなら着けなくていいものまで装着させられ、
その上から潤滑剤が塗された。こうなれば道は一つ……
「先生!」
「何だ?」
授業中よろしく右手を上げて発言。
「俺、最初は正常位からって決めてました!」
「何も知らないんじゃなかったのかよ……」
「正常位は知ってます!」
「分かった分かった……」
自分が動ける体勢を取れば土方先生の乱れる様を楽める。それに正常位であれば……
「じゃあ、ここに……」
「うはっ!」
膝を折り曲げて脚を開き、両腕をその間に通して二本の人差し指で入口を左右に広げた土方。
やはり正常位にして正解だった……この体勢で「初めて」を導くとなれば当然こうなる。
銀時は鼻を押さえつつ土方に飛び付いた。
「いっただっきまーす!」
「待てっ!いきなり入れんな!」
「ローション塗ったから大丈夫大丈夫」
自分で決めたはずの設定も忘れ、銀時は土方の手元、後孔へ熱り勃つモノを挿入する。
そしてすぐに律動を始めた。
「あっ、やめ……待っ……!」
「こうされんのがイイんでしょ?」
「や、あぁっ!」
ここからはいつもどおり。
銀時から与えられて与えられて与えられて、土方は声が枯れるまで喘ぎ続けるのだった。
(13.06.09)
イメクラする二人が書きたかったんです^^ しかも、原作設定でパラレル設定のイメクラを。銀土でイメクラというと土方さんに恥ずかしい服装させるのが目的だったりしますが、
今回は敢えて土方さんにも受け入れやすい設定にしてみました。最終的には恥ずかしい目に遭っちゃうんですけどね^^;
ここまでお読みいただきありがとうございました。