ぎんとトシと灯台下暗し
いつものホテルのいつものベッド。土方は全裸で仰向けて足を大きく開いている。その間には潤滑剤に塗れた恋人の手。すっかり慣れた行為であるはずなのに、その手つきはまるで初めての時のようであった。 「痛くない?」 「ああ」 手つきだけでなく態度そのものが恐る恐るといったところ。 「二本にしても平気?」 「ああ」 「……ちょっとだけ、前立腺押してもいい?」 「ああ」 「…………」 「ぎん?」 「あ……やっぱり、三本入ってからにするね」 「…………」 睦み合いだというのに、恋人の体へ触れるのを最小限に留めようとする銀時。正直過ぎる体の中心は繋がりたくて堪らないと膨れ上がっている。 そして土方のそれも負けず劣らず期待に膨らんで、加えて内部は誘い込むかのごとく蠕動していた。 「ぎん、もう触っていいから」 「大丈夫!まだ我慢できる!」 恐れているのは恋人に触れることではない。本音を言えばもっともっと触れたいけれど耐えている状態。触れ過ぎては最愛の人を苦しめてしまうから。 そんな労りの愛撫に土方の体は悲鳴を上げた。身を捩り、肩で息をして拳を握る――それでも疼きは止まるどころか増していく。 「俺が我慢できねぇ……触ってくれ」 「う……」 潤んだ瞳にねだられて、銀髪の男は硬直した。触れたいのは山々だが、そこは全身が敏感な土方の体の中でも最も感じる所。一度触れたら歯止めが効かなくなる可能性は高い。愛情表現であるセックスを用いて恋人を泣かせ、気絶するまで抱いてしまった愚かな自分。あっさり許してくれた懐の深い恋人に、もう二度とやり過ぎないと誓ったのだ。 「ごめんトシ。今触ると止められなくなるから……」 「それでもいい」 「ダメだ!それはしたくない!」 「ぎんっ」 反省と気遣いは充分に伝わって、それすらも快感に置き換わり土方は限界を覚える。体を起こすと戸惑う銀時を押し倒し、服を脱がせ、屹立したモノへ自ら腰を下ろすのだった。
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騙されて恋人に催淫剤を盛ってから一ヶ月、銀時は「泣かせないセックス」を貫いていた。優しくする加減が難しく、焦れた土方に主導権を渡すこともままあるけれど、土方が好き勝手する分には構わない。その方が寧ろ土方を満たすことができるとすら考えている。 しかし残念ながら己の欲を発散しきることはできずにいた。 「ハァ、ハァ、トシっ!」 一人の時間を見付けては、自分で自分を慰める日々。頭の中に思い描くは、涙を零しながら叫ぶように喘ぐ愛する人の姿。 「あ、んんっ!!」 吐き出して我に返れば毎回、自身の性癖を恨めしく思う。また泣き顔でヌいてしまった、これではいつまで経ってもドSをやめられないと自己嫌悪に陥っていた。 現実に満足できないがゆえ、妄想がそちらへ引っ張られていくのだとも気付かずに。
一方、この方面では銀時より少し長けている土方は、一人の時にナニをしているかなどお見通し。申し訳ないと感じつつも、打開策が浮かばず知らぬふりを続けていた。 このままでは何れ銀時に限界が来て暴走してしまう。 そうなれば自分に途轍もない負担を強いられるのは勿論のこと、己を制御できなかった銀時も酷く傷付く結果となる。それは避けたい。 互いが楽しめる交わりとは……銀時と交際を続ける中で幾度となく直面した課題に、今また取り組むこととなる土方であった。
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「すまない。遅くなった」 「ト、シ……」 ある日のデート。行きつけのホテルに仕事着のまま到着した土方。攘夷浪士が暴れているとの通報を受け、対処してからここへ来たのだ。遅刻を詫びるも銀時の反応は芳しくない。 「あの、何で制服……?」 「現場が近くだったから。……あ、結局ただの酔っ払いの喧嘩だったんだけどな」 「そう。お疲れ様」 とここで土方は、宿の浴衣を纏った銀時の股間の隆起に気付いた。 「待たせて悪かったな」 「気にしてねぇよ」 「それ」 「へ?あ、あれ?」 顎で示せば本人も知らぬ間に膨れていた様子。上着をハンガーに掛けながら、ソファーに座るよう指示を出した。 「あの、本当にさっきまでは全然……トシの顔見たからかな?」 「分かった分かった」 銀時の足の間に蹲り、下着をずらして一物を咥える。どくりどくりと脈打つそれは、「本体」の言葉とは裏腹に、刺激を待ち焦がれていたと語っているようだった。
「トシ、出そうっ!」 「んー」 「あ、もうダメっ……んんんっ!!」 口内に放出された粘液を、土方は全て飲み干した。視線を上げれば顔を赤くして息を乱す恋人の姿。少しは満足してくれたらしいと胸を撫で下ろす。 「トシ、今のどうやった?」 「は?」 「いつもより気持ち良かった」 「そうか?いつも通りだぞ」 欲求不満で敏感になっているせいだろう――本人には告げずに推察して、土方は銀時の隣に座り煙草に火を点けた。 「なあ、トシが嫌ならしないから教えて」 「何もしてねぇって。待たされた分、気持ちが高ぶったんだろ」 「じゃあ、トシを見るとドキドキするのも待ってたせい?」 「は?」 見れば銀時の下半身は穿き直した下着の中で回復している。ドキドキというよりムラムラではないのか…… 「いつものことだろ」 「いつもよりドキドキすんの」 熱い眼差しに見詰められ、土方は居心地の悪さを覚えた。 確かに今日の銀時はいつもと違う。単に溜まっているためだけでもなさそうだ。 「何つーか、今日のトシはいつもよりカッコイイ気がするなァ」 「はぁ?」 「あっ、トシはいつでもカッコイイよ?でも今日は特別カッコイイ!」 前のデートは四日前。こんな短期間で顔貌が変わるわけでもあるまいし何を言っているのだか。 「いつもは寧ろ可愛い感じなのに……そうか!服のせいだ!」 謎は全て解けたと銀時は両手を打ち鳴らす。土方はまだきょとんと首を傾げていた。 「仕事の時のトシはカッコイイもんねー」 「……制服だとカッコ良く見えんのか?」 「トシは何も着てなくてもカッコイ……いや、裸の時はやっぱり『可愛い』かな」 可愛いと褒められることも複雑だが、銀時の言う「可愛い」は「S性を刺激される」とほぼ同義だけにより複雑だ。一先ずそれは置いておき話を進めることにした。 「とにかく、いつもと違う格好で会ってるからドキドキすんだな?」 「多分ね」 「そうか……」 「トシ?」 試してみる価値はあるかもしれない――短くなった煙草を灰皿へ放り、土方は浴室へ向かった。
(15.11.29)
今回の話を書くにあたり、制服デートがなかったかシリーズ全編読み返しました。 後編は隊服プレイ……という程のものにはならない予定です。すみません。
追記:続きはこちら(18禁ですが直接飛びます)→★ |