※第五百五十七訓の五年後妄想です。 ※劇場版(万事屋よ永遠なれ)ネタを少し含みます。 ※近妙、沖神要素も少しあります。 ※中編からは18禁になります。
真選組が幕府を離れ、万事屋が宇宙へ発って五年。江戸は漸く平穏を取り戻していた。銀時はもちろんのこと、脱獄囚扱いであった松平・近藤・桂の罪も不問に付され、勢力を拡大した真選組はそのまま全国の警察組織として再編成された。 そして超遠距離恋愛を続けていた恋人同士――土方と銀時――は仲間達の計らいと、成長した神楽と一つ屋根の下で暮らすのは問題があるだろうという銀時の希望により、万事屋と真選組屯所のちょうど中間辺りに家を借りて寝食を共にする、超近距離恋愛をするに至るのだった。
五年後の同棲生活
人肌恋しい秋の夕暮れ。依頼を終えた銀時は屯所への道のりを足早に歩いていく。今日の晩飯は何にしようか、マヨネーズの在庫は充分だったかと思い巡らしながら。 勝手知ったる様で屯所の門を潜れば、バドミントンラケットを持つ山崎に出迎えられた。五年前より僅かに伸びた髪を後ろで括っている他は全く変わらぬ印象の彼。再会を果たした際、お前だけ時が止まっているのかと冷やかせば、髪型すら変わっていない旦那には言われたくないとキツめのツッコミをくれたものだ。 「副長ですか?」 「まあな」 近くまで来たから一緒に帰ろうと思って――かつてなら「部下に示しがつかない」とどやされかねない台詞で上がらせてもらう。今や真選組は、士道に背けば切腹を言い渡される物騒な組織ではない。平和な国の警察らしく、規律も穏やかになっていた。 尤も、軟弱な行動を取れば鬼副長のお叱りを受けるのは変わりないが。 だから、 「やあハニー、仕事姿もキレイだね」 「あぁ?」 砕ける加減を誤れば容易に鬼が顔を出す。素早く剣先を喉元に突き付けて一睨み。V字の前髪を二つに分けて眉間が顕わになった今、その迫力は以前にも増して。一方で色気も存分に増したとは口に出せる状況ではないけれど。 案内してきた山崎は巻き添えを恐れて早々に退散していた。 「すいません。副長さんの仕事が終わるまで大人しくしてるんで、待たせていただいてもよろしいでしょうか」 「……好きにしろ」 本気で斬るつもりなどなかった刀を鞘へ納め、土方は客人に背を向け筆を走らせる。それが先刻までよりも速いことに気付けるのは本人だけ。
「失礼しまーす」 山崎から銀時の訪問を聞いたのだろう、開け放したままの襖から沖田が入って来た。声の調子から自分に用ではないと悟り土方は見向きもしない。 肩甲骨辺りまである長い髪を高い位置で一つに結っている沖田。すっかり大人の仲間入りをしたその顔付きが眩しく感じられるのは己が歳を取ったせいか…… 「いつになったらこの雄豚を寿退職させてくれるんですか」 「時代は共働きだよ沖田くん。それにしても相変わらずサラサラヘアーだね」 天然パーマには羨ましい限りと頭を掻く銀時。 「隊服には合わないんで切ろうかとも思ってるんですがね……」 思わせ振りに言って土方の後ろ姿へ舌打ちを一つ。 「昔の誰かさんと同じだと思われんのも癪なもんで」 「ハハハ……」 真選組結成当初、髪の長かった土方は洋装の制服に合わせて短くしたらしい。当時の土方と今の沖田が同じ年頃なだけに、ともすれば意識していると見なされてしまうのだ。 「俺が目指すのは抜刀術を極めた伝説の侍であって、マヨネーズバカじゃありません」 「うんうん。頬に十字傷があれば完璧だったのにね」 「ここに居ましたか隊長」 ふとそこへ、銀時にとっては名も知らぬ隊士が沖田を訪ねて来た。 「何でィ」 「松平長官からお電話です」 「いないと言ってくれ」 いつも言っているだろうと疲れた表情を見せる沖田。ですが、と部下は続ける。 「十分置きに掛かってきてまして、居留守を使うのも限界です」 「面倒臭ェ……」 このところ沖田はしばしば飲みに誘われていて、それが嫌になり携帯電話は着信拒否にした。すると松平は屯所へ連絡を入れてくるようになったのだ。 業務連絡ではなくとも上司の話、聞かなくてはなるまいと沖田は渋々立ち上がる。 「総悟」 ここまで敢えて部外者を決め込んでいた土方が呼び止めた。 「チャイナを紹介してやりゃあ、とっつぁんも諦めるぜ」 「…………」 松平が局長も副長も飛び越えて一番隊隊長を誘うのは縁談のために他ならない。ゆえに相手がいるのだと示してやれば済むことだと「先輩」からの助言。 それにはむっと唇を尖らせて、しかし言い返さずに部屋を出て行く沖田であった。 人口密度が下がり、遠ざかる足音が静けさを助長する。筆を置く音がやけにはっきり聞こえた。 「仕事、終わった?」 伺うように這って進み、距離を縮める銀時。それには柔らかな笑みが返される。 「お疲れ様。冷えてきたし、今夜は鍋でどう?」 「いいな」 書類を片付け始めた土方はもう同棲相手の顔になっていた。だがここで調子に乗って腰でも抱こうものなら「仕事場でふざけるな」と一蹴されるため、銀時は見詰めるだけで耐えている。 ここからのデレが凄いんだ。仕事中の「ツン」も五年前に比べたら大分丸くなったけれど、それにも増して二人きりの時の「デレ」ときたらもう……めくるめく同棲生活に鼻を膨らませ、三十路を過ぎても可愛い恋人と共に二人の愛の巣へと帰るのだった。
(15.10.16)
「さらば真選組」してもきっと幸せな未来が待っていると信じています。今回はそんな幸せな未来の妄想です。 そして五年後といえばデコ方さんですよね*^^* 続きも頑張って書きますのでお待ちくださいませ。
追記:続きはこちら(注意書きに飛びます)→★ |