後編


挿入直後に射精してしまうことなど想定の範囲内。程なくして十四郎の中で回復した銀時は、もう一方の足も抱え上げた。
床との接地面を奪われて酷く不安定になった十四郎は、思わず後孔へ力が入る。
「ちゃんと支えてるから大丈夫だよ」
梁の強度も調査済み。思い切って内部を抉った。
「あぁっ!」
「う……」
快感と落下防止のために十四郎の下半身が銀時へ絡み付く。すけすけランジェリーを着て縛られて吊られて――見ただけで完勃ちものの光景に内部の締め付けまで加わっては勝ち目が薄い。恋人が達する前に二度目の発射は避けたい銀時。こんな時は前立腺を突きながら十四郎のモノを扱くのが定石であるけれど、
「ハァ、気持ちいい……」
「あ、くぅっ!」
生憎と今は両手が塞がっている。かといって、そのために片足を解放しては吊るしの魅力が半減してしまう。折角だから初めての浮遊感を楽しんでほしい。
「あ、銀時……」
「とうし、ろっ!」
顔も声も体も、間違いなく十四郎は感じている。例え先に果てたとしても気まずいのは己だけ。十四郎は寧ろ、自分の中で気持ち良くなったと喜んでくれる。ならば腹を括るしかない。
「あっ、あっ、あっ!」
「んんっ!!」
銀時は高速で腰を突き入れ、愛する人を揺さぶった。可能な限り我慢をするから満足してもらえますようにと祈りながら。


「くっ、あ……十四郎っ!!」
「ふあっ!!」
銀時が二回目の吐精を果たしたのとほぼ同時、奇跡的に十四郎も絶頂を迎えた。射精は伴わないそれであったけれども。
息を整えつつ抱えた片足をそっと下ろし、小さな布に納まりきらない膨らみに触れれば、そこは瞬く間に弾けた。
「お疲れ様」
もう片方の足も着地させ、銀時は一歩下がって恋人の姿を改めて眺める。
両手は深紅の縄で括られて頭上へ。達した余韻に浸る恍惚とした表情の下は寸足らずの女性用下着。無防備な後ろからは己の吐き出した体液が内腿を伝い始めている。
「ぎん、とき……」
「ほっ解くね。疲れただろ?」
このままもう一度貫きたくなるような絶景。けれど挿入したら最後、また覚悟を決める必要が出て来るのは明らか。
すなわち、十四郎より早くイッてしまう覚悟を。
相手に早漏を蔑む概念がないとは言え、長年蓄積された恥の文化はそうそう消えない。銀時は渋々恋人の拘束を解いていった。
「あ……」
一方、久しぶりに腕を下ろせた十四郎は、銀時の心中も知らず少し不満げに、それでも垂れ流れる愛しい人の感触に酔いしれていた。
前も腰回りも、見下ろしても確かにパンツを履いている。なのに後ろだけは外気を直に感じる不思議な感覚。酷く淫らな格好をしていて、且つそれは最愛の人が望んだもので――
「銀時……」
熱い息に乗せてその名を呼べば、呼ばれた方はやや苦笑い。「水でも飲む?」「少し休憩しようか」などと、その意図に気付かないふり。
しかし十四郎も譲れない。
「銀時は、疲れた?」
「そうでもないけど……」
否定しつつも十四郎が歩み寄ると銀時は後退る。けれど狭いホテルの部屋、すぐさまベッドで退路を絶たれてしまった。
ふくらはぎの裏を寝具の側面に減り込ませながらも、何とか倒れまいと最後の悪あがきをする銀時。その両肩に手を置き、十四郎は抱き着くように身を寄せて右膝のみベッドへ乗り上げた。
「銀時は、横になってるだけでいいから」
「あの……」
「もう一回、セックスしよ?」
「……はい」
自分がさせたとはいえ、こんな魅力的な姿で可愛く誘われては断れるわけがない。銀時は促されるままに体を横たえるのだった。

「んっ……」
まずはキスから。
教わった通りに唇を合わせ舌を滑り込ませる十四郎。銀時の反応する所を念入りに辿れば、忽ち腹の下で硬いモノが膨らんだ。
それに気を良くして口内の舌は首筋を通り胸元へ下りる。
「ハァ」
胸の飾りをペろりと舐めて、反対側は指先で円を描くように。己はここで性器に次ぐ快感を得られるのだけれど、銀時の様子を見るにまだまだ。かつて、もっと上手くなりたいと教えを請うてみたものの、充分に気持ちいいとはぐらかされてしまった。
「くっ……」
尤も、銀時はここでも乱されてなるものかと堪えているだけで、本当に十四郎のテクニックは申し分ないのだけれど。
その証拠に、
「とっ十四郎、もう入れさせて」
乳首責めで一物は膨れ上がっている。十四郎が体を起こせば、血管の浮き出たモノは反り返り先走りを漏らしていた。
「フェラチオしてもいい?」
「え……」
愛らしい捕食者に一瞬、背筋が凍る。上の口と下の口、少なくとも二回はイカされるのか……
「ダメか?」
「……別にいいけど」
だが次の瞬間、今から合体したとしてもどうせ、十四郎がイクまでに二回はイッてしまうかと思い直して了承した。
「銀時の……熱くて硬い」
「うっ!!」
瞳を輝かせて陰茎を握る可愛い恋人。咥えられる前の発射だけは辛うじて我慢できた。
……つまり、咥えられた瞬間に発射してしまった。
「んっ、ハァ……いっぱい出た」
「そ、そうね」
白濁液を喜びのうちに飲み込んで、ゆるやかに一物を扱いていく。完璧にツボを把握されており、銀時に休んでいる暇は与えられなかった。


「あっ、あんっ!気持ちいいっ!!」
「は、あ……うぐっ!!」
仰向けに寝た銀時の上で跳ね、思いのまま快楽を享受する十四郎。先の交わりで自身が注いだ湿り気と絶妙な締め付けで、銀時はあれよあれよという間に陥落寸前まで追い込まれていった。
そんな銀時の頬を十四郎の右手が柔らかく撫でる。
「我慢、しないで」
「でもっ……」
話す間も腰は動いていて、銀時の視界はぼやけてきた。
イッてしまいたい。だがイッても十四郎は止まらない。きっと、俺が気を失うまでやめてくれない。それは嫌だ。
しかし、我慢に我慢を重ねている現状も辛い。目は霞み、快感が指先まで広がっていく。こうなったら十四郎にも協力してもらわねば……
「十四郎っ、もうダメ!一緒にイキたい!!」
「ああ、分かった」
十四郎は跳ねるのを止め、下着の中へ手を入れて自らを握った。
これで何とかなる――銀時が体の力を抜くと、
「ああぁっ!!」
「んっ……!」
内側から爆発したような衝撃と共にびゅくびゅくと精が放出される。その勢いに体を震わせながら十四郎は一物を擦り続けた。
「あ、銀時ィ!!」
頬を濡らす生暖かい粘液に安堵し、目を閉じる銀時。薄れゆく意識の中、羞恥プレイも程々にしようと心に決めたのだった。傍らで十四郎が、「女物を纏うと恥ずかしいけど気持ちいい」と学習してしまったことなど知るよしもなく。

教えることは教わることより遥かに難しい。

(15.07.22)


銀さんよりも土方さんの方がセクシー下着の魅力に取りつかれたようですw
これからも、なんだかんだでこの二人はラブラブエロエロなお付き合いを続けていくと思います。
ここまでお読み下さりありがとうございました!



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