夜のかぶき町。繁華街から一本奥に位置するラブホテルの一室。ダブルベッドに座りタバコを
吹かす土方と、その様子を横目で見ながら溜め息を吐く銀時。二人共、下半身は掛け布団に
覆われているものの服は着ていない。
「あ〜……今日もダメだったか……」
「別にいいじゃねーか」
土方なりに慰めてはみたけれど、銀時は「あ〜」と力の抜ける声を出してゴロゴロと寝返りを打つ 。
「……気持ち良くなかったのかよ」
「そういうわけじゃねーけど……でもなァ……」
「もう一回ヤってみるか?」
「よし、来いっ!」
「気合い入れたからってできるもんじゃねーぞ……」
呆れ気味に息を吐き、土方は銀時が動くのを待つ。だが銀時は布団を剥いで仰向けになっただけ。
「万事屋?」
「前からヤってよ。土方が下の時はそっちが多いし」
二人が身体を重ねる時、基本的に主導権は銀時にあった。
抱き合いたいという欲求は互いにあるものの、それを銀時の方がストレートに表現するため、
結果として銀時が挿入する時は正常位、挿入される時は騎乗位中心でことが進んでいた。
土方は了承の返事と共に身体を起こし、銀時に軽く口付けをする。
二人が気持ち良く抱き合えればいいと考えている土方にとって、どちらが「上」で
どんな体位かはさして問題ではなく、銀時に合わせるのも苦ではなかった。
「土方が最初にイッた時も前からだったよな?」
「そうだな」
「つーことは、正常位の方がイキやすい?」
「さあ……」
「さあってこたァねーだろ、経験者なんだからよー」
「……どんな体勢でも、気持ち良けりゃイク」
「そりゃそーだけど!他になんかコツとかねーの?俺だって充分気持ち良いんだよ」
「こつ…………」
「分かんねェか……」
「すまん」
「とりあえずヤろうぜ。数打ちゃ当たるかもしれねぇし」
「ああ」
指に潤滑油を塗して土方は銀時の後孔に指を二本挿入した。
やれるもんならやってみたい
銀時のやりたいこと……それは「後ろ」の刺激だけで射精すること。
充分に気持ち良いと感じているのにそれだけではイケない。
土方も初めはそうであったが、弾みで一度イッてからというもの、ほぼ毎回「後ろ」で
イケるようになった。そのことをネコ向きの身体だ何だとからかいつつ楽しんでいた銀時は、
いつの頃からか羨ましく思うようになっていた。
挿入されて達する土方は非常に気持ち良さそうで、それは挿入している時―「前」でイク時―の
比ではないように見える。
そのことを土方に聞けば、銀時を気遣かっているのか恥ずかしがっているのか定かではないが、
どちらもイクことには変わりないと返ってきた。けれどどう見ても「後ろ」の方が
気持ち良さそうだ。しかも、土方が知っていることを知らないというのも悔しい。
そのため銀時は身体を重ねる度に土方がどのように達するのかを観察し、「後ろ」でイこうと
試みているのだった。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
前立腺に触れられて喘ぐ銀時。
「もっと、激しく……」
「あまり思い詰めんなよ?」
そう言いながらも土方は指の動きを速めていった。
「あぁっ!いいっ!」
正直なところ、土方は誰でも後ろでイケるわけではないと思っている。
自分が抱かれるのに適した身体だと思われるのは不本意だが、この状態が男として正常だとは
到底思えないし、こんな「異常事態」を体験したい銀時の気持ちもよく分からなかった。
「あんっ!土方っ、もう、いれて……」
「ああ」
土方は己のモノにコンドームを装着し、銀時の足を抱えて挿入を始めた。
後ろでイキたがる気持ちは分からなくても銀時を好きだという思いには影響がなく、
むしろ積極的に自分を求めてくる銀時に愛しさが募っていった。
「あっ、んん……」
挿入の快感で銀時の身体がふるりと震える。
「こんなに気持ちいいのに……」
「余計なこと考えねェで感じてろ」
「んっ……」
伸ばされた両手に吸い寄せられ、土方は銀時と唇を合わせる。
そして、ゆっくりと腰を揺らし始めた。
* * * * *
暫く後。
「あっ、んんっ!くっ……」
「万事屋、もう……」
「まだっ……くぅっ!」
銀時のモノはパンパンに膨れ上がり、吐精を求めて痙攣していた。イクにイケない銀時が
可哀想になった土方は律動を止める。けれど銀時はまだ大丈夫だからと言うのみ。
「だが……」
「平気だから早く動けって。盛り上がってたのが落ち着いてきちまうだろ」
「……分かったよ」
「んんんっ……」
仕方なく律動を再開させた土方であったが、苦しげに喘ぐ銀時を見ているとやはりこれ以上の
刺激を与えても無駄ではないかと思えてくる。
「うくっ……あ、んんっ!」
銀時が諦めぬうちはと動き続ける土方は、早く楽にさせてやりたいと一物へ伸びそうになる手を
何とか押し止めていた。
「ひぅっ!や、ぁ、ごめ……も、むりっ……」
漸く銀時が限界を訴え、土方に扱かれて吐精した。
いつの間にか零れていた涙を手で拭い、銀時は今日も残念がりつつ眠りに就いたのだった。
* * * * *
「俺を縛ってくれ!」
別の日。一足先にベッドの上で裸になった銀時は土方の前へ両腕を差し出した。
まるで観念した犯罪者のようだと土方は思う。
「テメーと違って俺ァSMプレイにゃ興味ねぇよ」
「そうじゃなくて……」
銀時は縛られたい理由を説明した。
それは土方が初めて後ろでイッた時のこと……銀時は両手両足を縛り抵抗できなくした上で
前立腺ばかりを責め立てた。そして、イキたくて前を触ってほしいという土方の訴えを無視して
後ろに刺激を与え続けたところ、遂に土方は一物に触られることなく射精したのだ。
「つまり……あの時のお前と同じことをヤれと?」
「そう!」
土方は明白に嫌な顔をした。
「俺だって縛られんのは好きじゃねーよ。けど、もうそれしか道は……」
「お前の気持ちは分かった。だがその前に、俺も試したいことがある」
「なに?」
ここ数日、どうしたら銀時がイケるのかを土方なりに考えていた。
頑張る銀時の姿を見ているうちに「できない方が正常」などと早々に諦めた自分が
恥ずかしくなった。銀時の言うように、最初は土方もイキたくてイッたわけではない。
イカされただけなのだ。だったら銀時も……
「俺がヤるから、テメーは寝てりゃいい」
「……俺、我慢すんの苦手だぜ?イキたくなったら、勝手にチンコ触っちまうかも」
「それはできねェようにする」
「やっぱ縛るのか?」
「いや……いいから横になれよ」
「はいはい……オメーの作戦でダメだったら縛れよ?」
「ああ」
実は縛られたいんじゃないかと僅かに思いつつ、土方は銀時に口付けた。
「おっおい、何して……ん!」
キスが済むと土方は銀時の足元へ移動し、その一物をペろりと舐めた。
驚いた銀時が身体を起こすより早く土方は一物を根元まで啣え込む。
「ちょっ……そこじゃな……」
「うう(る)へー……」
「んんっ!」
久しぶりの感覚……銀時のモノは瞬く間に先走りを漏らし始めた。
そこを狙い、土方の指が後孔に埋められる。
「あぁっ!くっ……ぅん!」
とりあえずイッてから話が違うと土方に詰め寄ることにして、銀時は与えられる快感を享受した。
「ああっ!も、イキそ……!あっ、あっ……」
土方の髪を掴んで腰を振り、自ら高めていく。その間も土方の指は内部で蠢いていた。
「あっ!もうっ、イ……え?あっ、ああぁっ!!」
達する寸前に土方の口が離れ、銀時の精液が身体中に飛び散った。
それでも土方の指は止まらない。
「ひあぁぁぁぁっ!!何し、あぁっ!!やぁっ!!」
銀時のモノからは未だ白濁液が溢れ出ている。
「あああぁぁぁぁ……!!」
強過ぎる快楽に銀時の目尻から涙が零れた頃、漸く土方の手が止まった。
* * * * *
「……大丈夫か?」
洗面台で濡らして来たタオルで精液を拭ってやりながら土方が問う。
だが銀時は、ぐったりと四肢を投げ出したまま何も答えない。
「万事屋」
「…………何これ?」
「あ?」
やっと口を聞いたと思えば「何これ」。土方には意味が分からなかった。
「何なんだよ、これ」
「どれ?」
「何でこんなに疲れるんだよ!すっげぇ怠いんだけど!?」
「元気そうじゃねぇか……」
起き上がった銀時に水の入ったボトルを手渡し、土方は煙草に火を点けた。
「おいコラ……愛する銀さんをこんなにしといてその態度は何だ!」
「ちゃんと拭いてやっただろ……」
「違ェ!さっきのプレイだ!急にSに目覚めやがったか!?」
「訳分かんねェ……。希望通り後ろでイカせてやって何で怒られんだよ」
「後ろってお前なァ……ん?えっ、後ろ?」
思いがけない土方の言葉に銀時はピタリと動きを止めた。
「今……後ろでイク、つった?」
「気付いてなかったのか?」
「マジでか…………いやいや!イッてねーよ!フェラしたじゃねーか!」
「イク前に止めただろ」
「そうだったか……?」
激しい快楽であやふやになっていた記憶を銀時は辿っていく。
確かに、あと少しで達するという時に口が離れたし、挿入された指だけは動いていた。
だがそれは本当にあと少し……イキ始めていたと形容してもいいくらいで……
「やっぱり違ェよ。こんなの認めねェ」
「だが……何となく感覚は掴めただろ?」
「いや……めちゃくちゃ激しかったってことしか……つーか、まだ怠ィ!」
「後ろでイクとそうなるんだよ」
「そうやって諦めさせる作戦か?甘いな……」
「違ェよ……」
「お前みたいに気持ち良くイケるまで諦めねェからな!」
「はいはい……」
銀時は認めていないが土方としては成功したと思っている。
次にする時はもっと早くに一物への愛撫を止めてもイケるだろうと、手応えを感じていた。
土方は短くなった煙草の火を灰皿で消し、ベッドへ上がった。
「あの……まだ、怠くて……だから……」
途端しおらしくなった銀時の肩を抱き、土方はふっと笑う。
「今日はもうヤらねぇよ」
「でも……」
「いいから、寝ようぜ?」
「……どうも」
二人は横になって目を閉じた。
銀時の願いが銀時の思う形で叶うのは、あと少しだけ先のこと。
(12.06.23)
銀さんがなかなか後ろでイケないのは、土方さんがヘタレ優しいからなんじゃないかと妄想*^^* 今回は土方さんの方が受け体質でしたが、
これから、銀さんは徐々に開発されていって立派な受け体質になれると思います。……つまりは受け×受けです。私の書くリバは最終的に
そこに落ち着くことが多いような気がします。でも何度書いても萌えるんだから仕方ない。受け×受け最高!ユリリバひゃっほ〜!!
……でもきっと、受け同士ばっかり書いてると攻め同士っぽいものも書きたくなると思います^^;
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。