万事屋の突飛な発想には、正直ついていけないと思う時がある。
今日も屋台で飲んだところまではいつも通りだったのだが、宿へ着くなり「砧って知ってるか?」と
聞かれた。
砧〜きぬた〜
「は?」
何の脈絡もなく聞かれたため、何かの聞き違いかと思い俺は聞き返した。けれど万事屋からはやはり
「砧だよ。砧。」と同じ質問が返ってきた。
砧なら知っている。布を叩く台のことだろ?そう言ったら万事屋は「違う違う。四十八手の方。」と言った。
四十八手と聞いた瞬間、溜め息が出てしまったのは仕方のないことではないだろうか。
コイツがこういうことに積極的なのは今に始まったことではないが、だからといって何の前触れもなく
そんなことを言われれば溜め息の一つも吐きたくなるってもんだ。
それなのに万事屋はやたら楽しそうに四十八手の砧とやらの説明を始めた。
「砧っつーのはな?廓つなぎともいうんだけど……下のヤツがまんぐり返しの体勢になって、上のヤツは
後ろ向きに座る感じで合体するんだよ。図にするとこんな感じ→ 」
「…………」
何で小説に図が入ってるんだとかそんなことは置いておくとして(ここはそういうおかしな事が起こる
サイトだ)砧が何なのかは分かったが、こんなアクロバティックな体位を知っていたからなんなんだ?
「……で?」
「ヤってみようよ。」
「何でだよ。ていうかさっきの図、何気に女役の頭だけ黒いんだが……まさか俺が下か!?」
「そりゃあまあ、前回は俺が受けだったし……」
コイツ、敢えて自分が上の時を狙って変な体位を提案しやがったな?
「でもな、今回は上とか下とかじゃないんだよ。」
「どこがだ?明らかに上と下があるじゃねーか。」
「なあ土方、何か気付かねェ?」
「何が?」
「俺達、よく同じこと考えてるからさァ、土方もそうじゃねェかな〜と思ってたんだけど。」
「そうかよ。」
コイツの話にゃ「それ」や「あれ」が多くて要領を得ないことがままある。元々辛抱強い方ではない俺は
この会話を終わらせたくてイラついてきていた。もういいだろ、普通にヤれば……
けれど万事屋はまだこの話を続けるつもりらしい。
「俺はさァ、土方と付き合うようになって、セックスって気持ちいいんだな〜って……やっぱ『気持ち』が
あると違うんだな〜って、そんな風に思ってんだ。」
「そ、そうか。」
その件に関しちゃ、俺もまあ、同意見だな。なんだか顔が赤くなった気がするが、気のせいだろう。
もしくは、ここに来る前、飲んだせいだ。
……うむ。確実に酔っているようだ。万事屋がいつもより男前に見えてきた。もっと話を聞いていたい……
「抱いても抱かれてもマジ気持ちよくてさァ……これが同時にできたら最高にイイんじゃねェかと
常々考えていたんだよ!お前に突っ込みつつ突っ込まれる方法はねェもんかと……。だってさァ、マジで
気持ちいいじゃん。突っ込んだ時はチ○コがぎゅ〜って絞られる感じで、突っ込まれた時の前立腺は……」
……うむ。やはり気のせいだったようだ。ここに来る時にあった仄かな酔いも完全に醒めた。
コイツのせいでな!くそっ……コイツなんかにちょっとばかしときめいた俺がバカだった!!
「で、それを可能にするのが砧なんだよ!」
「……何が?」
岩礁に打ち付ける波飛沫をバックに背負うが如く、ハッキリと言い切った万事屋であったが、
俺はというと後半の話をほとんど聞いていなかった。
「何がって聞いてなかったのか!?ひどい!土方くん、愛が足りない!!」
「あーはいはい、悪かったよ。……で?」
「だからァ、突っ込みながら突っ込むって話!」
「それで?」
「砧ならできると思わねェ?」
「は?」
「想像してみろよ。お前が下で、俺が突っ込むとする……」
「やっぱり俺が下なんじゃねーか。」
「まあ待てって。俺が突っ込んだ時、お前のチ○コの先には何がある?」
「……俺の顔。」
「あっ、そっちじゃなくて、チ○コの根元っつーか、袋には何が当たってる?」
「……お前の、尻?」
「そう!!……なっ?」
「は?」
「だからー!お前のチ○コと俺のケツが当たってんの!……つまり?」
「俺もお前に突っ込める、と?」
「ピンポーン!大正解〜!!いや〜、やっと分かってくれたか。」
やれやれと万事屋は腕で額の汗を拭う仕草をする。別に汗なんかかいてねェのに。
ていうか、やれやれなのはこっちの方だ。ここまで来んのにどんだけ時間かけてんだよ……
変にクイズ形式なんぞにしねェで、ちゃっちゃと説明すりゃよかったんだ。
うんざりしている俺とは対照的に、万事屋は相変わらずやる気に満ちていた。
ったく、それを仕事に活かせよな……。この前メガネが今月も給料もらえないってぼやいてたぞ。
「さあヤろうか、土方くん。」
「却下。」
無駄に瞳を煌めかせ、俺の両肩に手を置いた万事屋を即行で拒否する。
「えー!何でよー!」
「ンなもん机上の空論だ。できるワケねーだろ。」
「それはヤってみなきゃ分かんねーだろ!」
「例えできたとして、何が楽しいんだよ。」
「土方は突っ込みながら突っ込まれたくねェ?ていうか、実はどっちか片方の方が好きとか?」
「どっちが好きとかじゃなく、体勢の問題だ。」
「体勢?」
俺の言っていることが全く分かっていないらしく、万事屋は首を傾げる。
「いいか?万が一、双方向挿入が可能だったとしてもだ……ンな無理な体勢で繋がって楽しいと思うか?
相手のことも碌に見えねェし、触れねェし……」
「うーん……」
「そんなら俺は、普通に交代してヤった方がいい。」
「……言われてみれば、つまんねェかも。」
「だろ?だったら今日も……」
「いや〜、でも意外。土方くんって見られると興奮するタイプだったのね。」
「バッ!!」
さっきまで残念そうな顔してた万事屋が急にニヤケ面になったと思ったらこうだ。
本当にコイツは……
「そういう意味じゃねェよ!」
「またまたァ〜。今日から、受けても攻めても、お前のことジ〜っと見ててやるからなっ。」
「いらねぇ!見んな!!」
「あっ、そんなら目隠しプレイとかよくねぇ?よしっ、今日はそれでいこう!」
「はあぁ!?」
早速、自分の帯を外して俺の顔に巻こうとする万事屋と、それを阻止しようとする俺。
万事屋の突飛な発想には正直ついていけないと思う時が……本当によくある。
(11.08.04)
大分前から書こうと思っていて何となくタイミングが合わず、先送りになっていたリバで四十八手ネタでした。日記を確認したら1月18日の記事に四十八手ネタを書きたい云々と
書いてありました^^; 突っ込みながら突っ込む方法を常に考えているのは管理人です。普通に攻受交代してエッチするものいいんですけど、どうせならリバならではのエッチって
無いものかと……。それを追求して、いつもユリリバに落ち着いてしまうのでたまにはちょっと違った感じにしたいなァと思ったら、かなり銀土寄りになりました。こっち方面に
銀さんが積極的なのはどのCPにも共通してますけどね^^ ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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