男同士って・・・?伍


真選組屯所で節分パーティーが行われてから数日が経過したある日の万事屋。
神楽が寝静まったのを見計らい、銀時はいそいそと一本のビデオテープをデッキにセットした。
音が外に漏れないようヘッドホンをし、テレビのスイッチを入れて再生ボタンを押す。

(結野アナ似の凌辱モノ…ムラムラする時はこれに限るね。)

わくわくしながらビデオを見始めた銀時であったが、五分と経たないうちにテレビを消し、
テープとヘッドホンを持って寝室へ引き揚げてしまった。



(あ〜…全っ然、興奮しねェ!むしろ萎えた。やっぱ、そっくりさんじゃダメか…)

銀時は布団に入って目を閉じ、結野アナの姿を思い描く。
しかし…

(ダメだっ!ムラムラすんのにヌけねェ!!あ〜〜…何だよこれ…)
「銀ちゃん、うるさいアル!」
「あっ、悪ィ…」

熱の籠る身体を持て余し、銀時が布団の上をゴロゴロ転がっていると神楽が目を覚ましてしまう。
神楽に窘められ、銀時は仕方なく布団を被ってじっとしていることにした。

(あ〜…何でヌけねぇんだ?…ていうか、何でこんなにムラムラしてんだ?最後にヌいたのいつだっけ?
…アレだ。土方とヤった時…あれはマジでヨかった!人にシてもらうのが久々だっつーのもあるけど、
やっぱ男同士だからだよな…。コツが分かってんだよアイツ…)

銀時は土方と過ごした夜のことを思い出す。
自然と手が猛ったモノへ伸びていった。

「ハァ…んっ!(握られただけでも、すげぇヨかった…)」

布団の中で、握られたモノが硬くなっていく。
それから銀時は、漸く精を吐き出すことができた。



(やべェな…。あん時のが気持ちヨすぎて、俺の心の中の結野アナが霞んじまってんだ…。
俺がこんななのに、土方のヤツはきれいさっぱり忘れてやがるんだよな…。なんか、不公平じゃね?
よしっ!アイツにも思い出させて、俺にメロメロにさせてやろう!)


*  *  *  *  *


翌朝。銀時は事務所から沖田の携帯電話に電話を掛けた。

「もしもーし…沖田くん?銀さんだけど…」
『どうしたんです?こんな朝早く…またペットの猿でも逃げ出しましたか?』
「いや…ちょっと聞きたいことがあってさ…」
『何ですかィ?』
「土方の次の休みっていつ?」
『……はい?』
「だからー、お宅の副長さんの休みはいつかって聞いてんの。」
『そういうことは、本人に直接聞いたらどうですか?』
「だって俺、アイツのケータイ番号知らねェし…」
『あれま…一夜を共にした仲だってのに、そんなことも知らねェんですか。』
「いいじゃん別に…。で?何日?」
『明日でさァ。…因みに、今日も午後からは休みですぜ。』
「おっ、マジで?じゃあ今日行こうかな…。サンキュー、沖田くん。」
『いえいえ…』

受話器を置いた銀時は、今日の依頼を早目に終わらせて屯所へ行こうと考えていた。


*  *  *  *  *


「あれっ?」

午後三時頃、銀時が真選組屯所を訪れると、門の前で私服姿の土方が腕組みをして仁王立ちしていた。
土方は銀時をキッと睨み付ける。

「待ってたぜ、万事屋。」
「あー、沖田くんか…」

声にドスを利かせ敵意を剥き出しにしたにもかかわらず、銀時は相変わらず緩い態度のままで…
そのことが更に土方をイラつかせた。
土方は米神に青筋を浮かべて声を荒げる。

「総悟に何てこと言いやがんだテメー!」
「えっと…沖田くんは、何て?」
「…今日テメーがデートの誘いに来るから、風呂入って待ってろと…」
「はぁ!?俺、そんなこと言ってないから!」
「あ!?…チッ、総悟の野郎…」

またいつもの嫌がらせだったのか…銀時に対して向けられていた敵意が、今度は沖田へ向けられた。

「俺はただ、沖田くんにお前の休みがいつかって聞いただけだよ。」
「…何のために?」
「あん時のこと、思い出させるために。」
「は?」
「俺がお前んトコに泊まった日。」
「はぁ!?あ、あん時は互いに酔ってて…テメーも覚えてねェって言ってたじゃねーか!」
「そうだけど…」
「第一、覚えてねェもんをどうやって思い出すっつーんだよ!」
「それは……あれっ?」
「…おい!どーすんだって聞いてんだよ!」
「ちょ、ちょっと待ってね…」
「あ?」

土方との会話を打ち切り、銀時は腕組みをして考え込んでしまった。

(どうやってって…こないだのコトを再現する感じだよな?言っただけじゃ信じてもらえねェだろうし…
ってことは、沖田くんがコイツに言ったことも強ち嘘じゃないのか?でもここで「何があったか
教えてやるからラブホ行こうぜ」とか言ったら、またキレるだろうなァ…。うーん…どうすっかなァ…)

「よしっ!」
「お、おいっ…」

銀時は土方の手首を掴むと、何も告げずに歩き出した。

「万事屋てめっ…離せ!」
「いいから来い!」
「…んでテメーがキレてんだよ!」
「………」
「万事屋!」

ふざけんな、離せ、何処へ行くんだ―土方が何を言っても銀時は応えず、ズンズンと歩いていく。



「お、おい…冗談だろ?」

銀時は一軒の連れ込み宿に向かって黙々と進んでいった。
しかし、宿の入口手前で土方が全力で抵抗したため、二人は連れ込み宿の前で膠着状態に入った。

「何で俺がっ…」
「ねぇあれ、鬼の副長じゃない?」
「―っ!」

銀時に罵声を浴びせようとした土方の耳に、二人を遠巻きに見ていた市民の声が聞こえる。
このままでは、鬼の副長が昼間から男と宿の前で痴話喧嘩をしたなどと不名誉な噂が立ってしまう…
黙ってしまった土方に銀時はにっこりと微笑むと、わざと周囲に聞こえるような声で言った。

「心配しなくても宿代は銀さんが持ってあげるからね、多串くん。」
「は?お、おい、待て…」
「大丈夫、大丈夫。今日は仕事の後だから懐が温かいんだよ。安心して、多串くん。」
「おい!俺はそんなことを…」
「もー…多串くんは照れ屋なんだから。ほら、早く入るよ。」

周囲の目を気にして抵抗が弱まった土方を、銀時は強引に宿へと引き入れた。

*  *  *  *  *

「万事屋テメー!何のつもりだ!!」

部屋に入った途端、土方は我に返ったように銀時に食ってかかる。

「なんだよ…助けてあげたんだから、まずはお礼の一言くらいあっても…」
「あぁ!?」
「俺の機転のおかげで、お前の身元がバレずに済んだだろ?」
「そもそもテメーがこんな所に連れて来なきゃ、そんな心配する必要もなかったんだよ!」
「あー…そういうこと言っちゃうか…」
「ったりめーだ。…本当にお前、何しに来たんだよ…」
「だから、あん時のことをお前にも教えてやろうとだな…」
「…ここであの日のことを再現するつもりか?やっぱり総悟の言うことが正しかったじゃねーか…」
「違うって。…そういうことになるから黙って連れてきたのにさァ……あれっ?お前…」
「ンだよ…」

銀時に顔を覗きこまれ、土方はプイと横を向いた。

「もしかして…お前も思い出してる?」
「…ていうか、最初から忘れてなかった。」
「えっ!じゃあ何で覚えてねェなんて言ったんだよ。」
「なかったことにした方がいいと思ったからだ…互いのためにな。」
「それは、まあ…」
「だが、テメーが思い出しちまったならしらばっくれても無駄だろ。…つーわけだ。じゃあな。」
「ちょっと待って。」

用は済んだと部屋から出ようとした土方を、銀時が後ろから抱き付いて止める。

「覚えてんなら話が早ェ…。ヌいてくんない?」
「はぁ!?てめっ、なに言っ……」

土方が銀時の腕の中で身を捩り後ろを振り返ると、熱を孕んだ瞳とかち合い言葉に詰まる。
銀時はこちらを向いた土方を正面から抱き締め直し、肩口に顎を乗せて呟くように話し始めた。

「お前はさァ…モテるし、金もあるから相手なんか幾らでもいると思うけど…」
「ンなことねェよ…」
「俺はさァ…モテねぇし、金ねぇし、家にゃガキがいるから一人遊びですらままならねぇし…」
「そうかよ…」
「他人の手なんてマジでご無沙汰だったワケよ。しかも、野郎に触られた経験なんてなかったからね。
銀さん、こう見えてピュアだから。」
「………」

酔った勢いとはいえ、あそこまでしておいてピュアも何もないだろうと土方は思ったが、
自分も銀時のことをとやかく言える立場ではないと思い、黙っていることにした。

「そしたらさァ…めちゃくちゃ気持ちヨくて、思い出すだけでムラムラして、実際お前に触れたらもう…」
「!!」

銀時が腕に力を込めて身体を密着させると、土方にも銀時の昂ぶりが感じ取れた。

「だからヌいてくんない?…俺も、お前のヌくからさァ…」
「万事屋…」
「…ダメ?実は、こっそり付き合ってる人とかいたりする?」
「ンなもんいねェよ…。つーか、顔が売れちまってるせいでヘタなことできねェしな…」
「ってことは…俺もムリ?」
「いや…。テメーなら俺と関係したと公表したところで、得るもんなんざねェから都合がいい…」
「確かにね…。こんな状態、俺が一番有り得ねェと思ってるし…」
「それはお互い様だろ?互いに有り得ねェ野郎と有り得ねェコトして、有り得ねェ状態になってんだ…」

銀時の熱が着物越しに伝わり、土方のモノも徐々に昂ぶりを見せる。
土方の状況に気付いた銀時が顔を上げ、二人は正面から見詰めあう体勢になったものの、
気恥しくて二人ともすぐに視線を横に逸らせた。

「本当、有り得ねェよな…」
「そうだな…。なあ…ついでに一ついいか?」
「なに?」
「テメーの髪に触りてェんだが…」
「…別にいいけど?」
「そうか…」

土方は右手をそっと銀時の頭に乗せた。

「…俺の髪なんか触って楽しいか?お前のはサラサラで気持ちいいけど…」

銀時も右の手を土方の頭に乗せる。
そしてどちらからともなく相手の頭を引き寄せ、唇を合わせた。

唇は重なった瞬間に離れていく。

「それじゃあ…」
「ああ…」


二人はそのまま、布団へ雪崩れ込んだ。


(11.03.09)


第二部「自覚編」の始まりです。第二部も3〜4話くらいになると思います。これで18禁?と思われる内容ですみません^^;続きはちゃんと18禁になります。

早く続きを書きたいのですが、ホワイトデー小説の準備のため、また暫くお待たせしてしまいそうです。ホワイトデーが終わったらすぐ戻ってまいりますので、お待ち下さいませ。

それでは、ここまでお読みくださりありがとうございました。

追記:続き、書きました。