※第三百三十六訓の続きを管理人が妄想した話になります。大丈夫な方のみお進みください。












































ウソだ…一年の終わりにそんな…こんなのってねェよ…。折角…折角アニメ再開が決まったのに…きっと
来週から、よりぬき銀魂さんの放送前に「この番組は昨年収録したものです」とか出るよ…。俺ァもう
少年漫画のアニメに出ていい存在じゃねーからな…。四月からのアニメ銀魂枠は、真選組血風録とかに
変わっちゃうんだ…。すまん新八、神楽…真選組の番組じゃ、お前らの出番まで減っちまうな…。
神楽は沖田くんのライバル役とかで活躍してくれ。新八は………ジミーの地味な友達役とか…
とにかく俺はこの世界から消えなきゃなんねェ…



年明けがこんなんだったらいいかも?



夜のかぶき町を銀時は当てもなく彷徨い歩く。そこへ偶然通りかかったのは、黒い着物に咥え煙草の土方。
土方は苦々しい表情になりながらも、知り合いなのだからと仕方なく銀時に声を掛けた。

「よう…」
「これはこれは、主人公の土方さんじゃありませんか…」
「何だそりゃ…嫌味か?主人公はテメーだろ…」
「俺はもう、ジャンプで主役やる資格がねェんだ…」
「あ?何言ってんだテメー…酔ってんのか?忘年会シーズンだからって、あんま飲み過ぎんなよ?
酒は飲んでも飲まれるなって言うだろ?」
「あああああ〜!!」

銀時は叫び声を上げながらその場に崩れ落ちた。あまりの急変ぶりに土方は驚いたものの
涙を流し始めた銀時を放っておくわけにもいかず、隣にしゃがみ込んでポンと肩に手を置く。

「何かあったのか?」
「全然覚えてねェんだけど…ぐすっ…K点越えちまったみてぇで…」
「は?K点?…何のことだ?」
「飲んでも飲まれるなって…うぅっ…新八に、言われたのに…」
「だから何のことだよ!」
「あああああああ〜!!」

意味も分からず泣き喚く銀時に土方は短く溜息を吐く。
土方は立ち上がり、袖を抜いている方の二の腕を掴んで銀時を引き上げた。

「おら立て!何があったか知らねェが、こんな所じゃ通行の妨げになる。」
「…俺なんかもう、いるだけで邪魔な存在ですよねー…」
「ンなこと言ってねェだろーが!…ったく面倒くせェな…。おい、もうメシは食ったか?」
「今日は、何も…」
「財布でも落としたか?」
「ぐすっ…」
「あー、泣くな!言いたくねーなら言わなくていいから…付いてこい!」

土方は銀時の腕を掴んだまま道を進んでいった。

*  *  *  *  *

「おら、好きなもん頼め。」
「えっ…」

土方は銀時を個室のある食事処へ連れてきた。話を聞き出そうと思ったわけではなく、情緒不安定な銀時には
狭い空間の方が落ち着くのではないかと思ってこの店を選んだ。けれど銀時は品書きを差し出されても
戸惑うばかりで何も注文しようとしない。

「ンだよ…いつもの図々しさはどこ行った?」
「いや、あの…何で?」
「メシまだなんだろ?俺もまだだから付き合え…」
「で、でも俺…」
「俺が誘ったんだから奢ってやる。…だから好きなもん頼め。」
「………」

銀時は黙って俯いた。

「おいっ…」
「こんな俺にも優しくしてくれるなんて、さすが主人公…」
「またそれかよ…」
「でも…俺なんかに関わるとロクなことにならねーよ?」
「あ?何を今更…今までテメーと関わって、いいことなんざ一つもなかっただろーが。」
「まあ、そうなんだけど…でも、今回はマジで…」
「チッ…じゃあ黙って座ってろ。」

土方は店員を呼び、品書きを指差しながら注文をした。



「えっ…」

暫くして出てきた料理に銀時は目を見開いた。ご飯とみそ汁、焼き魚と煮物…そして、クリームあんみつ。
土方はあんみつの器を銀時の前に置くよう店員に言った。
銀時は顔を俯けたまま、目だけで上を向いて土方の方を見る。

「あ、あの…」
「間違えて注文しちまったけど…オメーそういうの好きだろ?食え。」
「…間違えたんなら、交換してもらえばいいだろ…」
「メシの量が意外と多かったから、俺はこれだけで充分だ。」
「…そもそも、何と間違えたんだよ…」

土方が本当に間違えてあんみつを頼んだとは思っていないが、素直に「ありがとう」と受け取る気にもなれず
銀時はつい意地悪な質問をしてしまう。土方は少し考えて言った。

「…上に乗ってんのが、マヨネーズだと思った。」
「プッ…何だよソレ。『クリームあんみつ』って書いてあんじゃん。クリームあんみつの『クリーム』は
アイスクリームまたはソフトクリームの『クリーム』。…この店はソフトクリームだな。」
「るせェな…。メニューの写真だとちょっと黄色かったからマヨネーズだと思ったんだよ!いいから食え!」
「はいはい…」

土方のボケ(?)に少し心が軽くなった気がして、銀時はソフトクリームをスプーンで掬って口へ入れる。
冷たい甘さが口いっぱいに広がり、また少し心が軽くなった気がした。

「土方…ありがとな…」
「ンだよ、気持ち悪ィ…。俺ァただ、いらねーもんをやっただけだ。」
「そうだね…」


その後はほとんど会話らしい会話もせず、二人とも黙々と食事をした。


*  *  *  *  *


「あ、あの…これから何処へ?」
「あ?テメーの家に決まってんだろ。」

食事処を出て無言で歩き出した土方に銀時が尋ねると、思わぬ答えが返って来た。

「また道端で叫ばれたら迷惑だからな…家まで送り届けてやる。」
「えっ…(マズイ…新八と神楽に合わせる顔がなくて帰ってないのに…この時間だともう新八は帰ったか?
…もしかして、怒ったお妙に万事屋辞めろとか言われてるかもなぁ…。だとすると神楽も一緒に…)」

黙ってしまった銀時の手首を掴み、土方は万事屋に向かってズンズンと歩いていく。

「ちょっ…ストップ!今帰るのはちょっと…」
「自分の家に帰るのにタイミング計る必要なんかねーだろ…」
「い、いやでも…ちょっ…離せって!」

銀時はブンブンと腕を振るが土方の手は離れず、引き摺られるようにして万事屋へ近付いていく。

(くっそー…何で振り払えねェんだ!俺の方が土方より強いはずなのに!………はっ!まさかコイツには
もう主役としての力が備わってるのか?主役の土方が、不祥事起こすような俺に負けるわけないもんな…
だとしたら抵抗するだけ無駄だ。せめて、新八達が家にいないことを願おう…)

そんな銀時の願いが通じたのか、万事屋には誰もいなかった。

「あ、じゃあ、この辺で…」
「いや…ちゃんと中に入るまで見届ける。」
「お、おい…」

万事屋へ続く階段の手前で土方に別れを告げたが、土方は勝手に階段を上っていく。
銀時は仕方なくその後に付いて階段を上り、玄関の扉を開けた。

「ほら、もうちゃんと家に入るから…」
「…中、誰もいねェのか?」

土方は玄関から室内を覗き込む。部屋の明かりは一つもついておらず、寝ている人の気配もない。

「…いねェみたいだな。多分、新八の家に行ってんだろ…。俺が遅くなる時は、よくそうしてるし…」
「そうか…。それなら上がらせてもらう。」
「えっ、ちょっ…」

呆然としている銀時を残し、土方は草履を脱いで室内に入っていく。それを見た銀時は慌ててブーツを脱ぎ
廊下と事務所の明かりをつけた。


「土方オメー、なんかキャラ違わねェ?どうしたんだよ一体…」
「あ?いきなり路上で泣き喚いたテメーに『どうした』なんざ言われたかねーな…」
「うっ…そうですね…」
「とにかく今日はもう寝ろ。…俺は一服したら帰るからよ。」
「もしかして…心配してくれてんの?」
「誰がンな気色悪ィことするかよ…。煙草が吸いたいだけだ。…この辺は、路上喫煙禁止だからな。」

土方は事務所の長イスに座って煙草に火を付けた。

(コイツって、案外いいヤツだったんだな…)

理由も分からないのに、落ち込んでいる自分のそばにいてくれる。慰めの言葉もなくただそこにいるだけ。
その押し付けがましくない土方の優しさを銀時は心地よいと思うようになっていた。

「あのさ…今日、泊まってかねェ?」
「あ?」
「…送ってくれたお礼に、明日、朝メシ作るからさ…」
「……なら、そうさせてもらう。」

土方は懐から携帯電話を取り出し、近藤へ外泊の旨を伝えた。


*  *  *  *  *


それから間もなく、万事屋の和室に二組の布団を敷いて二人は横になり、目を閉じた。

目を閉じてから少しして銀時は目を開け、意を決して土方に尋ねる。

「土方…そっちの布団に行ってもいい?」
「………」

土方の返事がなく、銀時は慌てて弁明する。

「その…寒い、からさァ…ウチ、暖房ねェし…」
「勝手にしろ…」

そう言いながら土方は枕を布団の端にずらして銀時の入るスペースを開けた。
銀時は起き上がり、枕を持って土方の隣に潜り込む。

「ありがと…」
「あったけぇな…」
「うん…」


相手の出方を伺うようにゆっくりと土方の腕が銀時に伸び、銀時の腕も土方に伸び、二人は唇を合わせた。



*  *  *  *  *



翌朝。銀時と土方の眠る和室を覗く二人の影があった。

「ど、どうしよう神楽ちゃん…。まさか銀さんが土方さんとこんな事になるなんて…。アニメ再開に向けて
気を引き締めてもらうためにって、僕らが皆に頼んで銀さんを騙したから…」
「気にすることないネ。銀ちゃんの自業自得ヨ。だいたい、記憶失くすまで飲んだ銀ちゃんが悪いアル。
このまま放っておけば本当にいつか不祥事起こしかねないネ。だから私達は泣く泣く…」
「そうなんだけど、薬が効き過ぎちゃったね…。銀さんは自暴自棄になってこんな事を…これじゃあ本当に
不祥事だよ。どうしよう…」
「分かってないアルな、新八…。この二人は元々好き合ってたアルヨ。」

神楽は溜息交じりにそう言った。

「えぇっ!そんな素振り、全然なかったじゃない!」
「本当にこれっぽっちも好きじゃなかったら、こんな状況になるはずないネ。」
「だからそれは、銀さんが余りのショックで誰でもいいから縋りたくなって…」
「じゃあマヨラーは何ネ?例え銀ちゃんがそうでも、マヨラーにその気がなければこうはならないアル。」
「そ、そうか…」
「それに、ちゃんとお付き合いすればこの状況も問題ないアル。」
「…じゃあ、予定通り?」
「おうネ。」

新八と神楽は静かに玄関へ戻り、一旦外へ出て呼び鈴を鳴らす。

ピンポーン

その音でまず土方が目覚めた。

ピンポーン

土方は隣に寝ている銀時の肩を掴んで揺する。

「おい…誰か来てるぞ。」
「ん〜…?あっ…お、おはよう…」

一夜にして急激な変化を遂げた土方との関係に、銀時は目を合わせることができなかった。
それを察した土方は、布団の端に移動して少しだけ銀時との距離を空ける。呼び鈴はまだ鳴り続けていた。

「とりあえず出て来いよ。」
「そ、そうだね…。えーっと、服は…」

現在二人は何も身に付けていない。銀時が辺りを見回すも、昨夜脱いだはずの寝巻きが見当たらなかった。

「布団の中だろ…」
「あっ、ちょっ…」

土方が掛け布団を纏って立ち上がると、二人分の服がしわしわになって出てきた。

「いきなり立つなよ!俺ら、裸なんだぞ!」
「あ?男同士で、しかもあそこまでして何を今更恥ずかしがるんだ?」
「そうだけど…ていうか、お前はちゃっかり布団着てるし!」
「…寒いから。」
「絶ェウソだ!お前、モザイク付いたことねーだろ?たまにはモザイクになれ!」
「意味分かんねーよ!いいからさっさと服着て玄関に行け!」
「あっ、そうだった…」

二人が他愛もない言い合いをしている間も呼び鈴はずっと鳴り続き、扉を叩く音も混じった。
銀時は寝巻きの作務衣を着ると玄関へ向かう。土方も銀時から借りている作務衣を着た。



「はあああああああ〜!?」


銀時が玄関を開けると、そこには新八と「ドッキリ大成功」のプラカードを持った神楽、そして一昨日の
「不祥事」の関係者達―スナックお登勢の三人、柳生家の面々、お妙、さっちゃん、月詠、長谷川。
新八から全てウソだったと聞かされた銀時は大声を上げ、その後脱力して膝から崩れ落ちた。

こうして、忘年会に端を発した不祥事ドッキリにより、銀時と土方は恋人同士になった。


(10.12.26)

photo by NEO HIMEISM


336訓の展開に色んな意味で衝撃を受けまして、年明け発売のWJを待てず勝手に続きを書いてしまいました。この日、万事屋に集まったメンバーによって

二人の関係は一気に広まることになりますね^^ エロシーンはカットしてすみません。多分、最後までヤってないんじゃないかと思います…擦りっこくらいで。

予定外に本誌ネタを書くことになりましたが、こうやって新たなネタが生み出されるのは幸せなことだと思います。原作者様、ありがとうございます!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

 

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