この前のあれは失敗だった。せっかく万事屋と恋人になれたってのに、変な意地を張ったせいで最後まで
できなかった。別に身体が目当てで付き合ったわけじゃねェが、互いに好き合っていて、しかも宿にまで
行っておいてこの体たらくは何だ?…アイツが上を希望してると最初から分かっていたら譲る気だった。
…嘘じゃねェよ。アイツがどっちでもいいと言っていたから、俺は上になろうと思った。それなのに
アイツも初回は上希望で、だからじゃんけんで決めることになったのに…数えるのもバカらしいくらいの
あいこの連続に、もう下でいいと言いたくなったが、それを言ったら負けだという思いもあり…
結局、どっちもヤらないなんて結果になった。

まあ、繋がらなくともアイツと触れ合えれば満足はできる。ただ、互いに望んでヤらないわけじゃねェし
アイツとも次は最後までヤると約束した。…その「次」ってのがおそらく今日だ。
これからアイツと会う。
何となく初回は上がいいんだが…この間のを一回目と捉えれば今日は二度目と言えなくもない…よしっ。
今日は俺が下になってやろう!



似た者同士の「下」争い



その日の夜、仕事を終えた銀時と土方は待ち合わせをして居酒屋へ向かった。
店に入り、店主に軽く挨拶をするとどちらからともなくカウンター席へ進み、並んで座る。

「いらっしゃい。何にします?」
「えーっとねー…」
「そうだな…」
「「とりあえず熱燗」」
「………」
「………」

同時に同じものを注文した二人に店主は「息ピッタリだな。」と笑う。二人は何となく気恥しくなった。
この関係をひた隠しにするつもりはないが、だからといって自ら触れまわる気もない。そのため店主には
ただの飲み友達だということにしておきたいのだ。

「熱燗二つね…他には?」
「「…枝豆。」」
「………」
「………」
「「それと、玉子焼き。」」
「ハハッ…本当に息がピッタリじゃないか。」
「………」
「………」

その後は交代で注文するというルールを設け、息の合ったところを(見せたくもないのに)披露するのは
終わりになった。


*  *  *  *  *


「「なあ、この後…」」
「………」
「………」

居酒屋を出て暫く夜道を歩いていくと、また二人同時に話を切り出す。

「「何だよ…」」
「………」
「………」
「「お前から…」」
「………」
「………」

同時に同じことを言っては黙り、再び話し出そうとすると相手も同じタイミングで同じことを話し出す。
二人は道の真ん中で向かい合い、睨み合いと見詰め合いの中間くらいの感じで視線を交わらせる。
銀時はスゥと息を吸って気持ちを仕切り直す。口に出すとまた土方とハモりそうだからと、右手で近くの
ラブホテルを指差すと、土方も同時に左手の親指で同じ方向を指差していた。

フッと表情を緩ませ、二人はホテルへと歩を進めるのだった。



*  *  *  *  *



「土方、今日こそはっ!」
「分かってる…。そういう約束だっただろ?」

二人は意思疎通ができたことに満足してニッと口角を上げ、ベッドの縁に座る。既に入浴を終えた二人は
揃いの浴衣を着ている。銀時が土方の首に腕を回し、土方は銀時の背に腕を回して互いを引き寄せ唇を
合わせた。まずは軽く触れ合せるように…一旦離れて角度を変え、もう一度触れるような口付けを…
再び角度を戻してもう一度…。幾度も幾度も口先だけが触れる口付けを繰り返す。

そのうち土方の手が銀時の帯に、銀時の手が土方の帯にかかり、二人は相手の帯を解く。抜き取った帯は
床の上に放り投げ、襟元に手を入れて肩から浴衣を落とす。―その間も口付けは続いていた。

「ハァ…」
「んっ…」

下着一枚になった二人は確りと抱き合いながらベッドに横になり、これまでより深く唇を合わせる。
横向きに寝て脚を絡めて下半身まで密着させると、互いに熱を持ち始めているのに気付いた。

「「今日は…」」
「………」
「なに?」
「その…俺が、下で…」

口付けの合間にまたしても同時に話し出して止まる。銀時に促され、土方は遠慮がちに口を開いたが、
土方の申し出に銀時は目を丸くした。

「何言ってんだよ、土方…。こないだ上がいいって言ってたじゃん。」
「でも、お前も上で…」
「そうだけどさ…。俺、今日は最後までヤるって約束したから、下になるつもりで来たの。」
「俺だって、そのつもりで…」
「そうだったんだ…ありがと。でも今日は俺が下でいいって。」
「いや、俺が下で…」
「…実を言うと俺、風呂場で後ろ慣らしてきたから『下でいい』っていうより下『が』いいんだよね…」
「お、俺も、その……シた…」

俯き加減で視線を彷徨わせながら土方は言う。

「いやいや…別にそんなところで銀さんと張り合わなくていいんだよ?だいたいオメー、そんなんする
キャラじゃねぇだろ?」
「…キャラ、とかは分かんねェけど……したのは事実だ。」
「マジで〜?嘘吐いたって触ればすぐ分かるぞ…」
「あっ!」

銀時は土方の腰に回していた腕で下着をずらして後孔に触れた。

「…あれっ?マジで解れてる?」
「だから…あっ…そう、言って…」

入口が柔らかくなっているのを確認した銀時は、土方の内部に指先を侵入させた。
第一関節くらいまでを抜き差ししても後孔に何の抵抗もなく、土方の言葉が真実であると判る。

「うーん…マジでやったみてぇだな…。すげぇな…お前はこういうこと、恥ずかしがってやらねェのかと
思ってた。意外と積極的なのか?…それとも、俺のために頑張ってくれたの?」
「あっ、あっ、あっ…」

土方は縋るように銀時の肩を掴んで感じ入っており、返事をすることができなかった。
確認のためだけに触れたつもりだった銀時は慌てて手を後ろから離す。

「ちょっ…ナニ勝手に後ろで気持ちよくなってんの!」
「テメーが触るからじゃねーか!…もう分かっただろ。今日は俺が下で…」
「だめ!俺が下!」
「ふざけんな!ここまでヤったんだからテメーが上だろ!」
「俺は何もしてねぇよ!」
「てめー…指まで突っ込んでおいてよくそんなことが言えんな…」
「あれは確認作業だから!別にエロい感じじゃないから!」
「明らかにエロい感じで触っただろーが!」
「違いますぅ。銀さんは確認しただけなのに、土方くんが勝手にあんあん言い出したんですぅ。」
「万事屋てめー…人を淫乱みたいに言いやがって…」
「大丈夫。土方くんが触ってくれたら、俺もあんあん言うから。」

銀時は瞳を煌めかせて顔の横で親指をグッと立てた。

「全然大丈夫じゃねーよ!いいから続きをしやがれ!」
「やだ〜!今日は俺が下なの〜!」
「…駄々捏ねたって可愛くねーよ。」
「土方テメー…自分の方が可愛くて受けに向いてるとか思ってるな?」
「そういう意味じゃねーよ!…ハァー、結局また決まらねェな…。どーすんだ、おい…」
「…じゃんけん?」
「…で、決まると思うか?」
「と、とりあえずやってみようぜ。」
「…分かった。」
「じゃーんけーん…」


二人は力なく拳を振り上げじゃんけんをした。結果は二人ともチョキ。次は二人ともパー。
あいこが五回続いたところで「あいこでしょ」の掛け声がなくなり、十回続いたところで溜息とともに
じゃんけん勝負は決着を待たずに終了となった。


「やっぱり決まらねーな…」
「そだね。…とりあえず、この前みたいに本番なしでヤる?」
「………」
「何だよ!不満そうに…銀さんだって本番ヤるつもりで来たんだよ?でもさァ、どっちがどっちヤるか
決まらないんじゃ仕方ねーだろ。」
「それは、分かってるけどよ…」
「なに?」
「さっき…てめーが、触ったから…その…」
「あー…後ろ疼いてんの?」
「………」

土方は真っ赤になって口を開閉させたが、結局何も言えずに俯いてしまった。

「いいよ…後ろ触っても。」
「あ、ああ…」
「ていうか土方も触れよ?俺だって慣らしたんだし…」
「分かった…」


二人は横になったまま下着を脱ぎ、先程よりも身体を密着させて抱き合い、腕を相手の後ろに回す。


「んっ…」
「はぁ…土方…もっ、入れて。大丈夫、だから…」
「ああ。」


土方は入口の皺をなぞっていた中指にクッと力を入れ、ゆっくりと銀時の内部に侵入する。
銀時も同じように土方のナカへ指を埋め込んでいった。


「あぁ…気持ちイイ…。土方…もっと…」
「んあっ!」


手本を示すかのように銀時は土方のナカの指を奥まで進め、抜き差ししながらぐりぐりと内壁を押す。
土方は銀時の指で喘ぎながらも同じように銀時のナカを刺激した。土方の指先が銀時の快楽点に触れる。


「あぁっ、そこ…すげぇ、いい…」
「こう、か…?」
「ああっ!」


体内で土方の指が蠢くたび、銀時は身体をビクビクと跳ねさせる。銀時のモノは硬く勃ち上がり
二人の腹の間で雫を零し始めていた。


「ハァッ……ひじかたは、ここ…?」
「ああっ!」
「…ここだね?」


銀時の指が土方の快楽点を探し当てると、土方のモノからも雫が漏れる。


「あぁっ!あっ…ああっ!!」
「ひじかた…俺にも、ちょーだい…」
「んっ!」


快感によって朦朧とする意識の中で土方は、銀時に請われるままに指を動かした。


「ああっ!…ひ、ひじかたっ!」
「…ろずやっ!」
「「ああっ!!」」


互いに相手のナカの指を二本に増やして更に快楽点を捏ねていく。


「ああっ!!はぁ…ああっ!」
「んあっ!あっ、あっ…ああっ!!」


銀時は小刻みに腰を揺らし、自分のモノを土方の腹筋に擦り付ける。すると自動的に土方のモノも銀時の
腹筋に擦られることになり、背筋をゾクゾクと快感が這い上がるのを土方は感じた。


「はあっ!!…じかたっ、も、イキそ…」
「…っれも…イ、ク…っ!」


二人で激しくナカを掻き回しながら、銀時は土方の腰に脚を絡めて身体を揺する。
土方は空いている腕で銀時の頭を引き寄せ、唇を合わせた。


「んむっ…んんっ!んーっ!!」
「んん…んぅっ!…んんっ!!」

「「…んんーっ!!」」


二人の腹の間で一物が同時に弾けた。


(10.12.05)


似た者同士「下」バージョンです。上下とは関係ありませんが、居酒屋のシーンを書くのが結構楽しかったです。

そして、ここで終わりにしてもよかったのですが、受け同士の絡みが大好きなので二回戦に突入です^^; 後編アップまで暫くお待ちくださいませ。

追記:後編書きました。18禁ですが直接飛びます。