「よう」
「へいらっしゃ…あっ、これは副長さん。この辺りでなにか事件でも?」
「いや…この前は迷惑かけちまったからな。詫びも兼ねて買い物に…」
「そんな気にしないで下さいよ」
「親父の方こそ気にすんな…。ん?こ、これは…」
「珍しいでしょう?天人が来るようになってからはこういう珍しいものも入ってくるようになって…」
「これ…まだ生きてんのか?」
「ええ。…なんでしたら今さばきましょうか?」
「いや…このままもらえるか?」
「へい、毎度あり」

土方は発泡スチロールの箱に水と「商品」を入れてもらい、屯所へ戻っていった。



ちんすこうって美味しいよね



「山崎ー」
「はいはい…って、えぇ!どうしたんですか、その荷物!」

駕籠(タクシー)で屯所に戻った土方は、トランクから荷物を下ろしながら山崎を呼んだ。
呼ばれてやってきた山崎はその荷物の多さに驚く。

「俺の部屋に運ぶの、手伝え」
「はぁ…」

言われるままに山崎はタクシーから下ろされた荷物を土方の部屋へ運んだ。



「一体、何なんですか?水槽なんか買ってきて…金魚でも飼うんですか?」
「まあそんなところだ」
「副長…ツマミ買いに出たんじゃなかったんですか?」
「そしたら魚屋でコイツを見付けて…まだ生きてたから飼おうと思って、必要なモン揃えてきた」
「必要なモンって…あ、あの…水槽とポンプは分かるんですけど…それは…」
「ああ…コイツは粘度の高い海水で棲息してるんだと。だから地球の水じゃサラッとしすぎてて…」
「それで…ローションなんですか?」
「ああ」

水槽などと共に土方が買ってきたのは業務用ローション。

「この水とローションを一対二の割合で混ぜると丁度いいんだとよ」
「へ、へぇ…世の中には不思議な生物がいるんですね…」
「本当だよな…」

土方は山崎に説明しながらテキパキと水槽に砂利を敷き詰めて、買ってきた水(海水らしい)と
ローションを水槽に入れ、そして最後に発泡スチロールの蓋を開けた。
そこにいたのは死腐土星の特産物―チコン貝。非常に高級な食材ではあるが、地球人の男性器に似た
形状から、スライスでもしていない限り食べる気にはなれない代物である。

「ふふふ副長、これを飼うんですか!?」
「別にいいだろ…俺が世話するんだし」
「そうですけど…でも、これ、見た目がちょっと…」
「安心しろ。コイツは光を嫌うらしいから水槽ごと押し入れに入れておく」
「それなら、まあ…。でも、なんだって急に飼う気になったんですか?」
「こないだ迷惑かけた魚屋にいたんだ。店で一番高いもんだったから迷惑料代わりに買った。
でも、これを食う気にはれなねェから…」
「ああ、そういうことでしたか。それなら、頑張ってお世話してくださいね」
「ああ」

二人で水槽を押し入れの下段に入れ、山崎は土方の部屋を後にした。
山崎が出ていった後、土方は部屋の明かりを消してそっと押し入れを開け、水槽をのぞき込む。

(かなり高かったが…無理して買って良かった。コイツだけは食用にできねェよ…)

実は土方がこの貝を手に入れた本当の理由は、先程山崎に言ったこととは別にあるのだが
土方は誰にもそのことを言うつもりはなかった。


*  *  *  *  *


それから一ヶ月。土方は毎日せっせと貝の世話をしていた。
始めは貝の見た目から気味悪がっていた隊士達も、真剣に生き物の世話をする土方を見ているうちに
微笑ましいとさえ思うようになっていた。

しかしここに、それを良く思わない男が一人。
珍妙な貝の世話のせいで土方と会う時間を削られた恋人―坂田銀時―である。
昼間は何とかデートに誘えるものの、暗くなると夜行性の貝と対面できる貴重な時間だからと言って
屯所に戻ってしまう。そんな調子でこの一ヶ月、恋人ならではの時間が全く持てずにいた。

いい加減、我慢の限界が来た銀時は屯所まで土方を訪ねてきた。

「土方ァ…」
「今、コイツのメシの時間だから後で…」

土方は身を屈めて押し入れの中にある水槽の蓋を開けた。

「てめぇ…恋人がわざわざ来てやったってのになんだよ!そんなにソイツが大事か!?」
「あのなぁ…コイツは俺が食いもんやらなきゃ餓死しちまうんだぞ」
「ていうかそれ自体が食いもんだろーが!」
「コイツは食わねェ!俺がずっと世話するんだ!」
「じゃあその貝は食わねェからよー…俺を食えよ。もしくは、お前を食わせろよ」
「は?」

エサやりが終わり、土方は漸く銀時の方を向く。

「は?じゃねーよ!もう一ヶ月だぞ!何で俺、貝のせいで禁欲生活しなきゃなんねェんだよ!」
「そうか…コイツがここへ来て、もう一ヶ月になるのか…」

土方は慈しみの籠った目で水槽を見詰めた。

「またそっち!?おめー、どんだけチ○コ貝に入れ込んでんの!?」
「チ○コじゃねェ…チコン貝だ!」
「どっちでもいいよ!なぁ土方…ホテル行こうぜ?」
「…今から?」
「おう。イイ感じの時間だしさ、どっかで一杯ひっかけてから…」
「そうか!もう、日は落ちたのか!」
「おう、だから…えっ?」

土方は部屋の明かりを消すと押し入れから水槽を引き出した。
うつ伏せになって首を持ち上げ、肘を着いて両手で顎を支えながら正面から水槽を見詰める。

「あ、あのー…土方くん?」
「日が落ちると漸くコイツを外に出せるんだ…」
「外っつっても、水槽には入ったままじゃ…ていうか、いつも暗くなるとそうやって眺めてんの?」
「まあな」
「…飽きない?」
「飽きねェな…」

土方はホゥと息を吐き、うっとりとした表情で貝を見続けている。
あまりの入れ込みように怒る気も失せた銀時は、隣で同じように横になり貝を観察することにした。

「うーん…あんまり動かねェし、なんでそんなに楽しいの?」
「形…」
「形?」
「ああ。この形が気に入って買ったんだ…」

土方は貝に視線を向けたまま銀時の問いに答える。

「えっ、そうなの?でも形って、どう見てもチ○コなんですけど…」
「そうだな…」
「なに?お前って、チ○コ眺めて楽しむ趣味とかあったの?」
「あるわけねェだろ…」
「ですよねー…じゃあ何で?」
「さぁな…」

クスクスと楽しそうに笑いながら土方は貝を見詰め続ける。

「なに?何なの?コイツになんか秘密でもあんの?」
「そうだな…お前なら、分かるかもな…」
「え?マジで?うーん…………ダメだ。チ○コにしか見えねェ!」
「それで…あってる」
「チ○コで正解?やっぱりチ○コ眺めて楽しいの?」
「違ェって言ってんだろ…。なあ銀時…」
「んー?」
「お前がコイツの秘密に気付けたら、ホテル行ってもいいぞ」
「マジで?…あれっ?てことは、当たらなかったら今日もなしってこと!?そんなのやだ!」
「だったら頑張れよ」
「頑張るからヒント!ヒントちょーだい!」

銀時は土方の上に圧し掛かった。

「重い…」
「ヒント〜」
「ケツに硬いモンが当たってウザい…」
「仕方ないだろ!一ヶ月禁欲させられた挙句、お前がチ○コみたいな貝楽しそうに眺めてんだから!」
「…分かってんじゃねーか」
「へっ?やっぱりチ○コ見るのが…」
「何度言えば分かるんだよ…」

土方は大袈裟に溜息を吐く。

「じゃあなに?チ○コ見るのが好きじゃないなら、何でそんな貝をエロイ顔でずっと見てんのさ!
そんなエロイ視線貝に向けるんだったら俺に向けてよー。貝より本物の方がいいだろー!
ほら銀さんの今勃ってるから、大きさといい形といい、その貝とほとんど一緒ですよー」
「………」

土方は首を捻って自分の背中に乗っている銀時を見詰める。

「な、何だよ…」
「いや…やっぱり分かってんじゃねーかと…」
「そうか!お前、チ○コ見るのが好きなんじゃなくて、勃起したチ○コ見るのが…痛っ!」

土方は銀時の頬を思い切り抓った。

「痛い痛い痛い痛い!」
「ケッ…当然の報いだ」
「だって似てんじゃん!この貝、勃った時の俺のチ○コにそっくりじゃん!」
「そうだな…」
「そうだなって!…あれ?そうだな?え?それでいいの?ウソ…マジで?なぁ!」
「…ちゃんと文章で喋れや」
「え、マジで?マジでそうなの?ねぇ、ねぇ!」

銀時は身を乗り出して土方の顔を覗き込む。土方の頬は先程よりも若干赤く染まっていた。

「だからちゃんと喋れって…」
「えっと…その貝が、俺のに似てるから…とか?」
「………」
「あ、あれ?違っ…!」

銀時の頬に土方の唇が軽く触れた。

「違わねーよ」
「マジでか…」
「ああ…。魚屋でコイツ見付けて、そのうち誰かに食われるのかと思ったら、なんか嫌で…」
「それで、お持ち帰りして育ててるうちに本物より良くなったわけ?」
「アホか…本物あってのコイツだろ?まあ、眺めてるだけでそれなりに満足して、そういう気分に
ならなかったのは確かだが…」
「やっぱりコイツの方がいいんだ…」

拗ねたように唇を突き出す銀時にふっと笑いかけて土方は身体の向きを変える。
うつ伏せた状態から身体を起こして銀時と向き合い、銀時の背中に腕を回して畳の上に倒れ込む。
銀時が土方に覆い被さるような体勢になり、銀時が土方の身体の変化に気付いた。

「土方…勃ってる」
「本物の方がいいからだろ?」
「そっか…」
「見事正解したし…ホテル行くか?」
「行く!」
「上と下、どっちがいい?」
「両方!一ヶ月も我慢させられて一回だけで終われるか!今日は寝かせないからな!」
「上等だ、こら」


二人は起き上がって水槽を押し入れにしまうと、足早にホテル街へ向かっていった。


(10.11.07)


土銀、銀土とチコン貝ネタを書いて、やはりリバでも書きたくなりました^^ そして土銀も銀土も土方さん似のチコン貝が出てきたので今回は銀さん似のチコン貝です。

土方さんは銀さんほど積極的じゃないので、銀さん似のチコン貝を挿入しようとかは思いませんでした。ただ眺めてるだけで勝手にヤった気になってました(笑)。

…はい、充分変態ですね(笑)。土方さんを変態にできたので満足です^^ それからタイトルですが、ちんすこう関連の方に怒られないようにしようと考えた結果…

なんだかアレな感じになってしまいました^^; いや、普通に解釈して下さればいいんですよ!ちんすこうは美味しいお菓子です!それだけです!

…必死になればなるほど怪しい^^; ここで終わらせればいいのに「おまけ」でホテルの二人を書きました。18禁です。注意書きに飛びます。