おまけ
山崎がいなくなった後の夜の万事屋。
交代で入浴した銀時と土方は再び事務所のソファに並んで座っていた。
けれど先程までと異なり、二人とも膝に手を置いて背筋をピンと伸ばして座っている。
緊張で張り詰めた空気の中、高速で鳴り続ける心臓に負けないようスゥと息を吸い込み土方が言った。
「あ、あのっ…どど、どっちから、その…」
「あっ…えっと…あの………土方から…」
「えぇっ!…さ、坂田からじゃ…ねぇの、か?」
「だ、だって…この前、俺からだったし…」
「…その前は、俺からだった…」
「うーんと……じゃあ、じゃんけんにしない?」
「じゃんけん?いいな!すげーいいアイデアだ!」
「そ、そうかな?」
順序を決める際、じゃんけんは割と一般的に使われる手段であるが、土方には銀時の提案が
かなり良く聞こえるようである。そして銀時もまた、土方に褒められて満更でもない様子であった。
「ああ…これから毎回じゃんけんで決めてもいいと思う」
「そ、そう?」
「…あっ!毎回って言っても、その…別に、会うたびにしたいってわけじゃ…えっと…」
「分かってる。土方と俺がしたくなった時に、だよね?」
「お、おう…」
「じゃあ…」
「せーの…」
「「じゃーんけーん…ポン」」
土方がグーを出し、銀時がチョキを出した。じゃんけんの結果に、土方の心臓が一際大きく鳴る。
「…土方から、だね」
「お、おぅ…」
「えっと…ここで、いい?」
「え?」
「布団敷いたし…和室、行く?」
「ふふふふ布団!?」
「…あっ!ちちち違う!そういう意味じゃなくて…もうすぐ寝るから、和室がいいかと思っただけで…
別に、ふっ布団の上で、そそそそんなこと、したいとかじゃ…」
「さっ坂田が、したいなら…ふふ布団でも、いいいいいぞ…」
「ほほほ本当に違うから!こここここで…」
「じじじじゃあ…こっここで…」
「うっうん…」
銀時は固く目を閉じ、上体をひねって土方の方を向いた。
土方の手が銀時の肩に触れると銀時の肩がビクンと跳ね、それに驚いた土方は一旦銀時と距離をとる。
それから一度深呼吸して体勢を整え、今度は先程よりもそっと銀時の肩に手を置いた。
自身も固く目を閉じてやや顔を傾け、目を開けていた時にちょっとだけ見た銀時の唇の位置目指して
少しずつ少しずつ距離を縮めていく。
その距離およそ一センチ―銀時の体温を感じるくらいまで来たところで、元々ゆっくりだった速度を
更に緩め、傍から見ると制止しているようにしか見えないような速度で近付いていく。
「っ!!」
僅かに突き出した唇の先端が何かに触れ、土方はバッと元の位置まで体を戻す。
ゼーハーとまるで全力疾走直後のような荒い呼吸を幾度も繰り返し、漸く土方の呼吸が整ってきた頃
銀時も心の準備ができたのか、小声で土方の名を呼んだ。
「お、おう…」
土方は少し前に銀時がしたのと同様に、目を閉じて上体を銀時の方へ向けた。
そうして再び長い時間を掛けて、銀時の唇の先端に土方の唇の先端が触れ、一瞬で離れた。
ほんの刹那―触れたというより掠ったといった方が正しいような口付け。
それでも二人にとっては、互いの愛を確かめ合えた、大切な大切な行為。
(10.11.03)
リバはじゃんけんで役割を決めていたらいいと思うのですが、この二人は当サイトのリバの中でダントツに温いリバなのでキスの順序で精一杯です^^
でも二人はこれで幸せなんです。それが一番重要ですよね。この後はまた手を繋いで和室へ行き、手を繋いだまま寝るんだと思います。
二年目に突入した純情シリーズ、これからもよろしくお願いします。 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
追記:企画部屋に純情な二人の年賀状ネタアップしました。よろしければどうぞ。→★
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