後編
「あっ、あっ、あっ……」
「ハァッ……」
ラブホのベッドの上。
全裸で横になった俺の上には、これまた全裸の土方が居て二人のチ〇コを纏めて扱いている。
ウチで一度ヌいてもらったのがあまりに気持ち良くて、俺はデートの度に土方をウチへ誘った。
けれど土方は毎回神楽を他所へ泊まらせるのを気にしていて、それならとホテルを利用するように
なった。当然ながら俺にそんな金はないので、ホテル代は土方持ちだ。
それで何故こんな体勢なのかというと……あれから何度か一緒にヌこうと試みてはいるんだが、
土方が上手すぎるからダメなんだ。
触られると気持ち良くて力が入らなくなる。だからもう、土方にお任せすることにした。
こうして一緒に扱けば一緒に気持ち良くなれるだろ。
ヤベっ……説明してるうちにイキそうに……
「あっ!土方……イクっ!」
「ああ。一緒にイこうぜ……」
「んっ!あっ!イク!イクっ!」
「っ……」
「ああぁっ!!」
「くっ!!」
俺と土方はほとんど同時にイッて、二人分の精液が俺の身体に飛び散った。
「ハァ〜……気持ち良かった」
「……どうも」
「なあ土方……俺のこと、抱いてみたいと思う?」
ベッドの上で胡坐をかき、精液をティッシュで拭きながら俺は、ここのところ考えていたことを
思いきって聞いてみた。
俺は、土方とだったら気持ちいいセックスができるんじゃないかと感じていた。
けれどそれは土方が抱く側限定だと思う。とにかく土方は触るのが上手い。とても気持ちいい。
テクニックもあるんだろうけど、それ以上に土方の性格というか気質というかが影響してるんだ。
持ち前のフォロー体質で、土方は自分より俺が気持ち良くなることを優先してくれている。
自分のムスコを放置プレイしてでも、俺がしてほしいことをしてくれるんだ。
そんな土方が抱く側なら―俺が気持ち良くなるのはもちろんだけど―オ○ニーの延長みたいな今より
突っ込める分、土方だって気持ち良くなれるはずだ。
そう思って聞いてみたんだけど、土方は眉間に皺を寄せている。
「何言ってんだよオメー……」
「やっぱ無理かー……」
土方は強くてカッコイイ銀さんに惚れたわけだから、抱かれたいんだよな……。
「いや、俺が無理とかじゃなく……プラトニックがいいんだろ?無理すんなよ」
「……それって、俺が『抱いて』って言ったら、抱いてくれるってこと?」
「いやだから……」
「どうなんだよ。俺で勃つ?俺に突っ込みたいと思う?」
「お前……本当にどうしたんだ?」
「土方が抱く側なら、二人で気持ち良くなれるはず」
「お前それ、本気で言ってんのか?」
「ああ。だって土方、触るの上手いし」
「…………」
え?何で黙るの?褒めたんだけどな……
……セックスが上手そうって、恋人に対して言うことじゃなかったかも。身体目当てっぽい……
「ぽい」っていうか、今までの俺の言動全て「そう」じゃねぇか?キスしたら気持ち良くて、
触られたら気持ち良くて、だからもっとしたいって……
どっちが抱くとか言う以前に、俺は土方の恋心を弄んでるんじゃないか?
「土方ごめん……。やっぱり俺、土方とは付き合えない」
「はぁ?」
気付いたからにはこの関係を続けていくわけにはいかない。土方とは今日でお別れだ。
「何だよ急に……。お前を抱かないからか?だからそれは……」
「違うんだ。土方が抱けても抱けなくても、そもそも俺はお前と付き合っちゃいけなかったんだ」
「何でだ?」
「お前の想いに、応えてやれないから」
「……俺が嫌いなったのか?」
「嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、土方が俺に抱く『好き』とは違うから」
「どう違うんだ?」
土方の口調はいつもと変わらないように聞こえる。だけどきっと物凄く怒っているに違いない。
純粋な恋心を踏み躙られたんだ……。
俺は土方の顔が見られなくて、俯きながら話を続けた。
「俺は、土方のこと……ダチとか、そういう感じで好きなだけで……」
「テメーはダチともキスしたり、ナニ扱いたりすんのか?」
「それはしたことねェよ。……でも、土方は上手いから……」
「……上手かったら誰にでも足開くのか?」
「そういうわけじゃ……。ていうか、ダチとはしねェから上手いかどうかなんて知らねェし……」
「じゃあ、ちょっとヤってみて上手かったら、最後までイクのか?」
「だから、ダチとはちょっとだってやらねーって……」
「なら何で俺とはヤったんだ?」
「だって、土方とは恋人だったわけだし……」
「……で、テメーの好きと俺の好きの何処が違うって?」
「へ?」
ここまで話してきたのに振り出しに戻る質問をされて、俺は思わず顔を上げた。
土方の表情は存外穏やかで……というより、ムカつくくらいニヤニヤ笑っている。
酷いことした俺が土方にイラつく資格はないのだがイラっとくる……
「テメー、ヒトの話聞いてたか?俺はお前のことをダチとしか思ってねーの!」
我ながらキツイ言い方だと思ったけれど、ニヤケ面にムカついたんだから仕方ない。
それなのに土方はニヤニヤしたまま……何だこいつ?ショックがデカすぎてMに目覚めたとか?
「だからな、土方……」
「オメーはダチとはキスしねェ。だからダチがキス上手いかどうかなんて知らねェし、
知る機会もねェから、当然それ以上のことも有り得ねェ……ってことだよな?」
「そうだよ」
何だ……分かってんじゃねーか。
「だが、俺とはキスも、それ以上のこともした。……それは、俺達が恋人同士だから」
「そうだけど……」
「つまりお前は、俺とそういうことがしたいんだろ?俺だってお前に惚れてるからしたいと思う」
「それは違うんだって。土方のは純粋にそうだけど、俺は身体目当て的な感じで……」
「お前、男とヤったことあるのか?」
「ねェよ」
「じゃあ何で、俺の身体が目当てになるんだ?」
「だからそれは土方が上手かったから……って、何度も言ってるだろ」
分かってねェな……土方はそう言って溜め息を吐いた。いや、分かってないのはお前だろ。
「そもそも何で、俺とそういうことをヤってみようと思ったんだ?」
「付き合ってるから」
「何で俺と付き合った?」
「それは……」
できれば言わずに済ませたかったけど、言わなきゃ分からなそうだな……
「お前、金持ってるし……何でも奢ってもらえると思って……」
「その理由だと、別に付き合わなくても奢ってもらえればいいんじゃねェのか?」
「そうだけど……」
「だったら、気のあるフリだけしておけば充分じゃねェか」
言われてみれば……。その方が振り向かせようとして色々ご機嫌取りに来たかも。
「まあ、その作戦を思い付かなかっただけだとしてもだな……お前、何で屯所に来た?」
「え……」
「奢られるのが目的ならデートに来ればいいだけだろ?なのにお前、ほぼ毎日来てるよな?」
「それは……」
「茶菓子も出さねェ、気持ちいいことなんて当然ヤらねェ……ただ顔見て帰るだけの時も
一度や二度じゃなかったよな?」
「そう、だね……」
「俺はそんな風に少しでもお前の顔が見られれば嬉しいと思えたし、金のことなんか関係なく
お前と一緒に過ごせるのが楽しいと思っている。お前は、奢られなきゃ俺と会う価値もねェし、
俺の機嫌を取るために仕方なく会いに来ていたのか?」
「そこまでは思ってねェよ。恋愛感情じゃねェけど、お前と一緒にいるのが楽しいのは確かだし……」
「一緒にいるのが楽しくて、キスもしてェし、それ以上もしてェと……そういうわけだな?」
「まあ……」
「現時点で、他にもそう思えるヤツがいるか?」
「いねェよ」
「俺一人なんだな?」
「ああ」
「それの何処が俺と違うんだ?」
「え?」
何言ってんのコイツ……。また振り出しに戻んの!?
「お前が俺に抱く想いってのは、俺限定なんだろ?」
「まあね」
「俺だってお前だけだ。……何が違う?」
「…………あれ?」
ちょっと待って……。訳分かんなくなってきた。
土方のことは好きか嫌いかで言うと「好き」だ。一緒にいると楽しい。暫く会わないと何だか
落ち着かない。早朝でも深夜でも挨拶するだけでも会えるなら会いに行きたい。キスもしたい。
セックスもしたい……
「おい、何とか言えよ万事屋。俺の好きとテメーの好きに何か違いがあんのか?」
「……ない、かも?」
「かも、じゃねェ。ないんだよ」
「いやいやいやいや、違うって!今はなんか同じっぽい感じだけど、最初は違ったんだって!」
「最初から違ってねェよ。俺はお前に惚れて好きだと言った。お前はそれを受け入れたんだ」
「でもそれは金が……」
「全く好きでもない野郎と、金のためだけに付き合うような男じゃねェだろ、テメーは」
「そう、だねぇ……」
「なら少しは俺のことをいいと思ったんだろ?そんで、実際付き合ってみて本格的に惚れたから
キスなんかもしたくなったんだろ?」
「そう、とも言えるよーな……」
「そうとしか言えねーよ」
「うわっ」
土方に押し倒された俺はバサッと掛け布団に包まれた。
「待て!まだ早いって!」
「テメーから誘っておいて……怖気付いたのか?」
「そうじゃなくて、まだ違う可能性も……」
「ねェよ」
「いやでも……」
「つーか、違っててもいいからヤらせろ」
「えぇっ!お前ってそんなキャラじゃねーだろ!」
「ベッドの上に惚れてるヤツが裸でいたら、ヤりたくなるに決まってんだろーが」
「ちょっ、待って!あっ、触るなって……あっ!」
触られて……チ○コだけじゃなく身体中の色んなところを触られて、舐められて、キスもして……
なんかもう、全部どうでもいいと思えるくらいに気持ち良くなって俺は、考えることを一時放棄した。
* * * * *
「うわぁ……マジで入ってる」
仰向けになった俺の足の間に土方がいて、俺のケツの中には土方の指が二本入ってる。
興味本位でちょっと身体を起こして指の入っている穴を見てみて若干引いた。
「お前、よくそんな所に突っ込めるな……」
「突っ込まれてるテメーが言うな」
「しかも、そんな所弄ってんのに萎えねェし……」
「テメーも弄られてんのに萎えねェだろ」
「そうだな……」
本当に、俺は何でケツの穴に指突っ込まれて萎えねェんだろうな。
むしろ、こんな所まで触れる土方に感謝?あー、何だろ……この、あったかい感じ……
すげぇエロいことしてんのに、癒されるような……
「ああっ!」
癒されていたところにとんでもない快感が襲ってきた。内側から生み出される、気持ちいけれど
逃げたくなるような快感。
「待っ……ストップ!ストーップ!!」
このままでは身体がどうにかなってしまいそうで、俺は土方に手首を掴み指を引っこ抜いた。
「今、なにした?」
「なにって、前立腺だろ?そんなに良かったか?」
「いいとかいうレベルじゃねェよ!お前、上手いにも程があるぞ!」
「そりゃどーも」
「違う違う。今のは褒めてねェ!上手すぎてダメだって言ってんだ!」
「さっきから思ってたんだがよ……俺が上手いんじゃなくて、テメーの感度がいいんじゃねェのか?」
「へっ……?」
「そういうわけで、ヤバイならそこは触らんねーから続きやるぞ」
「え、ちょ……」
マジでか……俺って感度良好なの?いやいや、きっとこれも土方のフォローで……って、
フォローになってねェェェ!!
まだ納得してねェのに土方はまた俺を寝かせて指を……今度は三本入れてきた。
「う〜……」
宣言通り土方は前立腺に触れず、また癒しタイムが訪れるかに思えたのだが……
「う、ぁ……」
「……キツイか?」
「いや、平気……」
ゆっくりやってるから痛くはねェんだけど、何かが足りない。
何か、つーか刺激が足りない……
「土方……さっきのトコ、ちょっとだけ触って」
「いいのか?」
「うん。……ああっ!」
軽く触られてるはずなのに身体が跳ねる。でも気持ちいい……これ、ヤバイな……
「ああっ!あっ、あっ、土方ぁ……」
「万事屋……」
「んうっ!!」
土方とキスをする。
ケツの中も口の中も土方の存在感いっぱいで、俺の中で土方が溶けてるような錯覚……
これが一つになるってやつか……
いや、違ぇよ!
俺は土方の肩を押して口付けを解いた。
「土方、入れて……」
「……大丈夫か?」
「うん。早く、ほしい……」
「万事屋っ!」
がばっと抱き着かれたから一気に挿入される覚悟も決めてたんだけど、土方はここでも俺を
気遣かってゆっくりゆっくり入ってきてくれた。
土方のチ〇コが全部入り改めて抱き合うと、本当に一つになってる気がした。
それがとても心地好くて、生まれてきて良かったと、生きてて良かったと、心の底からそう思った。
「万事屋、痛ェのか……?」
「え……?」
いつの間にか俺は泣いていた。慌てて離れようとする土方の背をぎゅっと引き寄せる。
「好き」
「よろ、ず……」
あれだけ分からなかったのが嘘みたいに、土方への想いが言葉となって溢れ出す。
「土方が好き。大好き。愛してる」
「お前……」
「愛してる。愛してる。愛してる……」
「ああ。俺もだ……」
この日、俺達は一つになったまま朝を迎えた。
俺の想いが育つまで、待っててくれてありがとう。
(12.02.03)
漸くラブラブになれました^^銀さんが 自覚してないだけで、最初からちゃんと好きだったんだと思います。銀さんは過酷な幼少時代を過ごし、その後戦争を経験し、
(松陽先生といた頃は穏やかに過ごしていたのでしょうが)恋愛どころじゃなかったために、恋愛感情がどういうものかよく分かっていないような気がします。
土方さんと出会ったことで、師弟愛や友情・仲間意識などとはまた違った愛があることを知る……というのは完全な腐目線ですが、だったらいいな^^
それから、お互いの想いが違うだ何だという辺り、全裸で話してるんだと思うとちょっと笑えます^^;
ここまでお読みくださりありがとうございました。感想などいただけると嬉しいです。
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