※少しだけですが、第三百五十訓(ラブチョリス編)ネタです。








「これは何かな?土方くん。」
「………」

目の前に広げられた写真の数々を前に土方は盛大な溜息を吐いた。



ひじちょりす



「人の部屋、勝手に漁るんじゃねーよ。」

ここは真選組屯所の土方の私室。土方の留守中にここを訪れてしまった銀時は、暇潰しにと家探しの
ようなことをしていた。すると押し入れ下段の奥に怪しげに置かれた無地の段ボール箱を発見し、
好奇心に抗わずそれを開けた。そこに入っていたのは……

「全部俺の写真なんですけどー。」
「そうだな。」

秘蔵のコレクションを見付けられて慌てると思いきや、むしろ常より低いテンションに銀時は肩透かしを
食らったような気分になる。

「そりゃあさァ、俺達お付き合いしてるわけだし?写真の一つや二つ持ってたっていいけどよー……
段ボールいっぱいって、ありすぎじゃね?しかも撮られた覚えのないもんばっか……盗撮?キモッ!」
「アホかっ……何で俺がこそこそテメーの写真なんざ撮らなきゃなんねェんだよ。これは押収品だ。」
「……押収品?おいおい……恥ずかしいからってテメーの罪を他人に擦り付けちゃいけねーよ。」
「お前、本当に撮られた覚えがないのか?例えばこれ……」

そう言って土方が示したのは湯船に浸かっている銀時の写真。

「これ、いつも行くラブホだろ?いつの間に撮ったの?」
「だから俺じゃねェって。……これを見ろ。」

土方はまた別の写真を指し示す。今度はシャワーを浴びている銀時の写真。

「ホントさぁ……俺の裸なんて撮って何が楽しいわけ?いつも見てんじゃん。」
「俺じゃねェよ!ほら、ここ!ここに写ってんの、俺だろ?」

画面の端に見切れてはいるが、その写真には確かに銀時以外の男の腕が写り込んでいた。

「ん〜……腕だけじゃ何とも……」
「テメーは他の野郎とこんな場所へ来た記憶があんのか?あ!?」
「ウソウソ……じゃあこれ、誰が撮ったんだよ。押収品って言ってたけど……あ、もしかして……」

銀時は、気付けば常に自分の近くにいる一人の女性に思い至る。

「さっちゃん……?」
「漸く分かったか、アホ。」
「え、ウソ……マジでこれ、全部アイツが?」
「ああ。」
「この……白いぬるぬる塗れのも?」

恐る恐る銀時が持ち上げたのは、どう見ても事後の自分の写真。

「ああ。よく見せびらかしに来るんでな……つい先日、家宅捜索に入って押収してやった。」
「あの……なんか色々衝撃的過ぎてついていけないんですけど。とりあえずお前ら、仲良いの?」
「いいわけあるか!あの女、俺とお前がデキてんのを放置プレイの一環だとかぬかしやがって……」
「あー…それは何度言っても無駄だから。」
「しかも、俺達の愛の営みを隠し撮りして『この前はなかなかいい銀さんが撮れた』とか言って……」
「マジでか……」
「最初は取り合わなかったんだが、お前のあられもない姿を見られるのに我慢できなくなってな。」
「そんで、全部押収したってわけ?」
「……残念ながら、完全に押収しきれた自信はねェ。」
「まあ、またすぐに増えるだろうしね……。ところで土方くん、何で処分しないのかな?」
「事情を聞きたいもんがいくつかあってな。」

土方は段ボール箱の中から封筒を取り出した。

「何それ……手紙?」
「いや、写真だ。テメーに聞こうと思って寄り分けておいた。……これ、いつ撮られたか分かるか?」

そこに写っていたのは全裸で立っている銀時。写真を見た銀時の額から一筋の汗が流れた。

「俺ァこの場所に見覚えがねェんだが……」
「そ、そりゃあ俺だって一人でサウナくらい行くさ。」
「ほ〜……じゃあ、背後に写ってる巨大モニターみたいなのは何だ?」
「で、でかいテレビがあるサウナだったんだよ。」
「台の上に乗っているようだが?」
「お、お立ち台付きサウナ?」
「ンなわけあるかァァァァ!!近藤さんと総悟から聞いて裏は取れてんだよ!テメー、ゲームの大会に
参加して公衆の面前で全裸を晒したそうじゃねーか……」
「チッ……なんだよ。知ってたんなら最初からそう言えよな……」

焦って損したと、銀時は途端にいつもの態度に戻る。

「言いたいことはそれだけか、テメー……」
「どうせ全部ゴリラ達に聞いて知ってんだろ。新八のために恋愛ゲームの大会に出て、俺がピン子に
愛してるって言って、いつの間にか俺のピン子が美女になったと思ったら店長になって、店長昇天させたら
また美女ピン子になって……」
「テメー、恋愛ゲームなんてやってたのか……」
「あ、あれ?その辺のことも聞いてたんじゃないの?」
「俺が聞いたのはゲームの大会でテメーが脱いだってことだけだ。」
「あ、そうなんだ……」

開き直り過ぎたと今更後悔しても時すでに遅し。

「よりにもよって女と恋愛するゲームだァ?その女に愛を囁いた上、店長昇天ってどういうことだコラァ!」
「い、いや……昇天つってもあれだよ?別にイヤラシイ意味じゃなくてね……ていうか所詮ただの
ゲームだから!画面をペンでピコピコしてただけだから!」
「そのゲームにどっぷりハマって全裸になったんだろ?」
「そ、それは、参加者の熱気で会場が異常な暑さになってだな……」
「……女がいいのかよ。」
「違っ……」

急に土方の声が弱々しくなり項垂れる。

「例えゲームのキャラクターでも……女の方がいいのかよ。」
「別にそういうんじゃなくて、本当に、ただ、ゲームしてただけだから……」

ごめんな―小さな声で謝って銀時は土方の頭をポンポンと軽く叩いた。

「銀時!」
「うおっ!」

バッと顔を上げた土方は力いっぱい銀時を抱き締める。
銀時は土方の背に腕を回し、子どもをあやすようにまたポンポンと軽く叩いた。


面倒なこともあるけどやっぱ現実の方がいいな―心からそう感じた銀時であった。


(11.07.09)


ラブチョリス編は色々萌え所満載で本誌掲載時にも日記の感想で色々叫んだ記憶がありますが、単行本描き下ろし部分(145ページ以降)に更に萌えて

遂には小説にしちゃいました^^ 新八に呆れられるほどゲームにハマり、近藤さんと沖田にまで恥ずかしい姿を見られたわけですから、これは絶対

土方さんに伝わってるなと(笑)。そう考えるのが自然の流れ、ですよね?でもやっぱり銀さんにはピン子より土方さんですよね?

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

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