「すまない銀時…。俺は…浮気をしてしまった」
「はぁ!?」

出張が終わり、二ヶ月ぶりに万事屋へやって来た土方は、俺の顔を見るなりそう言った。

「本当に申し訳ない。それから…今まで俺と付き合ってくれてありがとう」
「ちょ…ちょっと待てよ」

勝手に別れ話をして帰ろうとする土方を引き止め、とりあえず話を聞かせろと部屋へ上げた。


浮気をした土方さん(笑)


事務所の長イスに土方を座らせ、俺もその向かいに座って話を聞くことにした。

「…で、どういうこと?」
「すまない」
「いやだから、謝ってねェでどういうことなのか説明しろって」
「言い訳をするつもりはない」
「それは潔くていいとは思うけどよー…とりあえず話してみ?随分反省してるみてェだし
事と次第によっちゃあ、許してやらないこともないかもよ」
「いや…浮気をした時点でお前と付き合う資格はないんだ。そういう約束で付き合ったんだからな」
「そうだけどよー…」

確かに俺は、コイツと付き合うってことになった時「浮気は絶対許さねェ」みたいなことを言った。
その気持ちは今でも変わってねェけど…それでも話を聞きたいのは、クソ真面目なコイツが浮気した
なんて信じられねェから。なんか、已むに已まれぬ事情があったんじゃねェのか?

「いいから浮気に至った経緯を話せって。俺には知る権利があると思うんだけど?」
「わ、分かった。……出張で、長期間お前に会えなくて、だから…その、一度だけ…」
「…溜まったモン出すために風俗でも行ったのか?」

まあ…それだっていい気はしねェけど、生理現象なんだし仕方なかったと言えなくもないよな…。
そんな風に考えていたら土方から「そうじゃねェ」という言葉が返ってきた。

「風俗じゃねェの?だとすると、現地妻ってやつ?田舎の可愛い娘を食っちゃった?」

うーん…素人に手ェ出すってのは微妙だなァ…。でも、一度だけなら許してやってもいいよーな…

「そんなことするか」
「あれっ、違うの?風俗でも現地妻でもないとしたら…まさか男?男とヤったの?」
「ヤってねェよ」
「…もしかしてヤられた?それはマズイな…。俺が許すとか許さないとかいう以前に、攻めのお前が
ヤられちゃダメだろ…。いくらリバ有サイトでも、ここは土銀だよ?お前は常に攻めじゃなきゃ…」
「ヤられてもねェよ。…お前がいるのに、他のヤツとするわけないだろ」
「えっ?じゃあお前、何したの?」
「自分で…」
「自分で?えっ、なに?どういうこと?」
「だから、自分で触って…」

自分で触る?えっ?コイツ、なに言ってんの?

「あのさァ、俺は浮気した時のことを聞いてんだけど…」
「だから話してるじゃねェか…」
「今のところ『出張で俺に会えないからオナニーした』ってことしか聞いてねェけど?」
「おなっ…お前、よくそういうことを恥ずかしげもなく口に出来るな…」
「お前こそ何が恥ずかしいんだよ…。何もオナニー見せろって言ってるわけじゃないんだし…
ていうか、話が逸れたな…浮気だよ、浮気」
「だから今、話したじゃないか」
「だから今はオナっ……自己処理の報告しかされてねェって」

土方が恥ずかしがるから、何となくオナニーって言えなくなっちゃったじゃねェか…

「…で?誰かにそれを手伝ってもらったわけ?」
「ンなわけあるかっ!こういうことは、一人でヤるもんだろーが…」
「そうなんだけどさ…」
「と、いうわけだ。本当に申し訳なかった」
「いやいやいや…何が『というわけ』か分かんねェよ!結局お前、浮気の話してねェぞ」
「だから自分でヤったって言ってんだろーが!」
「はぁ〜!?お前、まさか浮気って右手の恋人か!?そんなんで別れようとしてんの?アホか…
ていうか二年以上付き合ってんのに、今までヤってなかったの?マジでアホじゃね?ププッ…」
「ヤったら浮気と見做すと言ったのはテメーじゃねェか」
「んん〜?俺、そんなこと言ったか?」
「言った!」

俺は昔のことを思い起こしてみた。

およそ二年前。俺は土方に告白された…



*  *  *  *  *



「そんなに言うなら付き合ってやってもいいけど〜…」
「ほ、本当か!?」
「でも…タダでは付き合えないっていうかァ…」

本当は俺も土方のことが前から好きだったけど、素直にそれを言うのは照れ臭くてそんなことを言った。
今後の付き合いを俺の優位に進めるためにも、始めが肝心だしね!

「俺にできることなら何でもする!」
「じゃあ…基本的にデート代はお前持ちね」
「それは当然だろ。…お前には扶養家族がいるからな」
「あっ、いいの?」
「他には何かあるか?」
「えっと…えーっと…」

何かって言われてもなァ…俺だって土方とお付き合いできるのは願ったり叶ったりなワケだし
そんなに条件ないんだよなァ…。でも付き合う条件が一つだけ、しかも金関係っていうのはちょっとなァ
金目当てみたいに思われても嫌だし…何かねェかなぁ…

「遠慮しないで言ってくれ」
「えーっと……う、浮気禁止…とか?」
「そんなことは当然だろ」
「浮気って言っても俺の浮気判定は厳しいからね?プロのおねーさんでもダメだから」
「お前がいるのに、そんなところに行くわけないだろ」
「おねーさんじゃなくてもダメだぞ。俺以外のヤツとしたら全て浮気と見做す!」
「分かった。お前以外とは絶対にしない」
「本番ナシならいいとか思うなよ?チ○コ触るだけでも、キスでも許さねェからな」
「分かってる」
「…俺も、お前以外とはしねェから」
「ああ…」
「じゃあ、これからヨロシク」
「よろしくな」



*  *  *  *  *



「えっと、思い出してみたんだけど…普通に浮気禁止って言っただけじゃね?」
「お前以外のヤツとしたら全て浮気だと言ったじゃねーか」
「…だから?」
「俺はお前じゃねェ」
「はい?」
「俺はお前じゃねェと言ってるんだ」
「それが何か?」
「俺はお前じゃねェんだから『お前以外のヤツ』じゃねーか」
「はぁぁ〜!?お前それ、マジで言ってんのか!?」
「お前が言い出したことだろーが」
「いやいや…ちょっと待てよ。それはナイわ…マジでナイわ…。オメーもう、真選組の頭脳っつー二つ名
なかったことにした方がいいんじゃね?自己処理が浮気なわけねーだろ。ハハハ…」
「………」

笑い飛ばす俺とは対照的に、土方は無言でこちらを見る。いつもよりほんの少しだけ上瞼が下げられた
その表情は、無表情なようでいて、まるで俺を蔑んでいるかのように見えた。

「な、何だよ…」
「銀時、テメーまさか…今まで浮気しまくってたんじゃねェだろーな…」
「ま、待てよ。浮気って自己処理のことか?それは浮気じゃねーって…」
「俺以外とはヤらねェと、確かにテメーも約束した」
「いやだからそれは…」
「テメーは俺じゃねェよな?」
「そ、そうだけど…」

土方はイスから立ち上がり、あくどい笑みを浮かべながらゆっくりと俺の方に近付いてくる。

「…で?テメーは俺以外とヤったのか?」
「………」

俺の右隣にドスンと腰を下ろし、俺の肩を抱いて土方は「どうなんだ?」と顔を覗き込んできた。
なにこれ?最初は、浮気した土方を俺が問い詰める感じだったよね?何で今、俺が問い詰められてんの?
…問い詰められるっつーか、辱められてる感じ?あれっ?俺、Sだよ。…ていうか、むしろドSだよ。
それなのに何で辱め受けてんの?違うだろ?こんなの誰も求めてねェよ!

「…答えられねェってことは、やっぱり浮気しやがったんだな?」
「だから…自分ですんのは、浮気じゃねェと思って…」
「…ヤったんだな?」
「……はい」
「一度や二度じゃねェな?」
「………はい」

くっそ〜〜〜!!何でこんなことになってんだよ!
せめてもの抵抗として顔を思いっ切り背けてやったら、土方がとんでもないことを言い出した。

「反省の態度が見えねェな…」
「は?えっ、ちょっ…離せっ!何すんだよ!」
「お仕置き」
「はぁぁぁ!?」

土方は俺を担ぎ上げて和室へ続く襖を開けた。


(10.11.18)


こんな所までですみません。18禁の後編はできるだけ早くアップしますので、少しだけお待ちくださいm(__)m

追記:後編アップしました。18禁です。注意書きに飛びます。