「銀時すまない!遅くなった」
「あ、うん……気にしないでいい、よ?」
銀時に遅刻を詫びる土方。
いつものようにホテル裏口で待ち合わせる約束をしていたが、直前に土方から万事屋へ電話が
入り、河原で待ち合わせをすることになった。銀時の身の安全を考えて、人目のある所では
なるべく会わないようにしていた土方が珍しいこともあるなと約束の場所へ向かった銀時で
あったが、現れた恋人の様子に笑顔を引き攣らせた。
「本当にごめんな」
「いや、それはいいんだけど……」
「出掛けにとっつぁんから連絡が入ってしまってな。いや〜、すまなかった!」
「近藤さん、民間人に仕事の話は……」
「恋人にくらいいいだろ?トシは真面目だなぁ〜」
「…………」
土方は何故か近藤と共に待ち合わせ場所へやって来たのだ。
「あの〜……」
「トシをよろしく頼むぞ!」
「えっと……」
「もう大丈夫だって……。悪ィな銀時。近藤さん、例の件からちょっと過保護になってて……」
「そういうことね」
漸く銀時は合点がいった。
少し前、土方は秘密裏にとある官僚に呼び出されて一服盛られるという目に遭ったのだ。
それから心配になった近藤が土方を警護し(もしかしたら沖田や山崎も交代で見ているかも
しれない)一人で出歩けなくなったのだろう。
カップル専用と銀時から教わったホテルに近藤と向かうわけにもいかず、待ち合わせ場所を
変更することになったのだ。
「じゃあ帰りは俺が屯所まで送るぜ」
「よく言った!それでこそトシが認めた男だ!」
「いいって……。屯所に出入りしてるとこを見られたら銀時が危ねェだろ」
「それで十四郎が護れるなら安いもんだよ!」
「良かったなァ、トシ!」
「良くねェよ……。帰りは駕籠(タクシー)で帰るから。それでいいだろ?」
実際に失態を演じてしまった手前強くは出られないが、それでも四六時中誰かに護られている
という状況は土方にとっていい迷惑だ。
何とか二人を納得させて近藤を仕事へ戻し、銀時とのデートが始まった。
銀さん教えてレッスン18
「ねぇ十四郎、今日も縛っていい?」
「ああ」
いつものようにホテルへ入り、ベッドの上に二人で座って銀時が問う。
それには直ぐに肯定の言葉が返された。
ドSを自称する銀時は勿論のこと、土方も常より感度が高まる拘束プレイは気に入っていた。
自分にM気質があるからだということまでは気付いていないようだが。
「じゃあ仰向け……いや、俯せがいいかな?」
土方の服を脱がせ、プレイ用の赤い縄を手に銀時は自問自答する。
この方面に知識も経験も乏しい土方は、大人しく銀時の「答え」を待っていた。
「よし、今日は俯せにしよう!」
「分かった」
俯せに寝た土方の両腕を背中側で垂直に曲げさせ、縄を掛けていく。
「痛くない?」
「ああ。でもよ……この体勢でセックスできるのか?」
「できるよー。こうやって……」
「うわっ……」
銀時は土方の尻を両手で挟み込み、真上に引き上げた。土方は枕に顔を埋(うず)め、
膝を付いて辛うじてバランスを取っている。
「もうちょい足開いて〜……そうそう、いい感じ」
「この格好、恥ずかしい……」
「色んなセックスを覚えるためだよ。頑張って」
「おう……」
自分好みのセックスを教えているにも拘わらず、土方の学びのためという大義名分を掲げる。
「じゃあ触るよ〜」
「あの……キスは?」
土方にとってセックスはキスから始まるもの。
「この体勢だとキツイから、キスは終わってからね」
「そういうこともあるのか……」
「そうだよ」
「ん……」
後孔の周辺に潤滑剤が垂らされ、土方はその冷たさに身じろいだ。潤滑剤は割れ目を通り、
双珠から裏筋を通過して、ぽたりとシーツへ落ちる。優しく撫でられたようなその刺激に
土方はまた一つ「ん……」と鼻に抜ける音を発した。
「指、入れるから力抜いててね」
「あの……俺は銀時に、何したら……?」
「何もしなくて大丈夫だよ」
「だが……」
確かにこの姿勢で銀時に奉仕することはできないが、全て任せてしまうのは悪い気がした。
セックスは二人でするものなのに……
「気持ち良くなっても体勢崩さないのが今日のお仕事。頑張ってね」
「んんっ!」
銀時の指が二本まとめて土方の内部に侵入する。
「んっ、ハァ……」
銀時しか知らない身体とはいえ、会う度に交わっていればもう慣れたもの。
二本の指は難なく飲み込まれていく。
「十四郎、痛くない?」
「ん、平気」
苦しい体勢ながら後孔に痛みなどはなかった。
銀時は指を根元まで入れ、また真っ直ぐ抜いていく。
「フー……ハァー……」
「もう一本増やしても大丈夫そう?」
「ああ」
幾度か出し入れを繰り返し指を三本に増やされた辺りで土方は、いつもと違うことに気付いた。
「大丈夫?」
「ああ」
「痛かったりキツかったりしたら遠慮なく言うんだよ」
「ああ」
土方の身体を気遣う言葉を掛けながら銀時は一定のリズムで内部を往復するだけに留まっており、
最も感じる箇所には決して触れようとしない。
最初のうちは体勢のせいで普段と違うのかとも思った。けれど掠りもしないというのは些か変だ。
もしや銀時が態とそこを避けているのでは……
不自由な体勢で土方は可能な限り後ろを振り返る。
「銀時……」
「ん?どっか痛い?」
胡散臭い笑顔を視界の端で捉えて、土方の中で疑惑は確信に変わった。
「何で前立腺、触らないんだ?」
「あれっ?触ってなかったっけ?」
「……分かっててやってんだろ」
「そんなことないよ〜。ついうっかり」
実際のところ分かっているのだが、そんなことを言えばヘソを曲げられてしまうことも
分かっているので分からないフリをして、ナカの指を曲げる。
「んんっ!」
「最近、忘れっぽくてさァ……漫画のキャラは年取らないって言うけど、色々あるよな〜」
「んあっ……あっ、あっ、あっ……」
焦らされていたところに今度は前立腺ばかりを攻め立てられて、土方は銀時の言葉に応える
ゆとりはなくなった。それも分かった上で銀時は話を続ける。
「十四郎は相変わらずピチピチだよね〜。ココもすっごく元気♪」
「ああぅっ!!……ひっ!あっ、あぁっ!」
銀時に一物を握られた瞬間、精液が噴出する。だが銀時はそのまま一物を激しく扱いた。
「あぁぁぁぁぁ……!」
「あ〜……元気な十四郎見てたら俺も元気になってきちゃった」
「あ……ぎ、とき……っ!」
銀時の硬くなった先端で臀部を擦られ、土方の奥は刺激を求めてきゅうと締まる。
「俺のチ〇コ、十四郎のお尻に入れていい?」
「いいっ!入れてっ!はやくっ……」
「はーい……」
「あぁっっっ!!」
挿入のはずみで土方は再び達し、銀時は吐き出された精液のぬめりを借りて土方のモノを
扱きつつ腰を振った。
「んんんーっ!!」
「ハァッ、気持ちいい……」
枕に突っ伏して快感を享受する土方。
鮮やかな赤い縄の食い込むその腕を撫でられ、土方の身体がぞくりと震えた。
「ここも気持ちいいの?」
「んっ、んっ……」
縄の上から撫でられるのに合わせて土方のナカは収縮し、拘束に興奮している様子の土方に
煽られる形で銀時のモノも一段と膨らんだ。
「は、あんっ!んっ……んぅっ!」
「十四郎っ……」
欲の赴くままに銀時は腰を突き入れ、土方の一物を扱く。
「んああぁぁぁぁ!!」
「くぅっ……!!」
二人はほぼ同時に精を吐き出した。
銀時は一物から手を離し、両腕を土方の腹に巻き付ける。
「十四郎、身体起こすよ?」
「ん……うぁっ!」
繋がったまま抱き起こされて、土方は銀時の上に腰を下ろした。
「この方が触りやすいな」
「あ、あぅっ!あっ、あっ……」
後ろ手に縛られているため無防備な土方の乳首を右手で、左手で一物を扱きつつ銀時は軽く
腰を揺すった。土方のモノは萎える間もなく滴を零し続けている。
「ひぁっ!んんっ……ああぁっ!!」
強すぎる刺激に土方の目尻からつっと涙が頬を伝う。
その瞬間、銀時は手を止めて土方を抱き締めた。
「……ぎ、銀時?」
「ごめん……やり過ぎたよな?」
「えっ、別に……」
「本当にごめんね」
銀時は人差し指で土方の涙を拭うと繋がりを解き、労るように土方をベッドへ横たえて
腕の縄も解いた。
「あのな、銀時……俺、嫌で泣いたわけじゃ……」
「気を遣わなくていいよ。やり過ぎた俺が悪いんだから」
「そんなこと……」
「縛るとつい興奮しちゃって……本当にごめん。暫く縛るのやめるよ」
縄目のついた土方の腕を摩りながら銀時は謝り続けるけれども、
「嫌だ」
「え……」
ハッキリと否定されて顔を上げた先には、酷く不満げな土方の顔。
「嫌だって……また縛っていいの?」
「つーか今だって解かなくてよかったのに……」
「で、でも、流石にさっきのはやり過ぎだったでしょ?」
「別に」
「だってさァ……」
「勝手に涙が出ただけで、銀時はやり過ぎてねェよ。後少しでイケそうだったし……」
土方は自身の股間を押さえて恨めしそうに銀時を見る。
「ああ、それは今から優しくイカせてあげるから安心して」
「縛ってた方が気持ち良かったのに……まさかこれもいつものイジワルか?」
「えぇっ!違う違う!俺は十四郎が苦しいと思って……」
「苦しくねぇよ」
「あの……本当にごめんね。まずはそれ、イカせてあげるから……」
「ん」
自由になった腕で銀時に抱き着いてキスをして、土方は今夜最後の吐精を迎えた。
* * * * *
二人でシャワーを浴びて一つの布団に入り、後は寝るだけとなってから銀時は土方に尋ねた。
「十四郎、今日の最後のあれさ……やっぱり、あそこで止めない方がよかった?」
「またその話か?もういいって。銀時は俺を思って止めてくれたんだろ?」
「そうなんだけどさ……今度、同じような状況になったら止めない方がいい?」
「そうだな」
「……あのままイッたら、意識トぶんじゃない?」
「んー……そうなると銀時に迷惑掛けることになるよな。身体拭いたりとか……」
「……き、気絶すること自体はいいの?」
「いいわけじゃねェけど……その直前が一番気持ちいいし……」
「マジでか!?」
「……銀時は違うのか?」
「あ、うん。俺は……もうちょい軽めのがいいな」
「そうか。ああいう風に沢山イクのは自分じゃできねェから、俺はこっちの方が好きなんだ」
「へ、へぇ〜……そっか……。一人じゃ無理だもんねぇ〜……ハハッ……」
銀時の笑顔はとてもぎこちない。
けれど明かりを落とした部屋で土方はそれに気付かず「縛ることもできねェし」と付け加える。
「そ、そうだよね〜……。十四郎、縛られんの好きだもんねぇ……」
「ああ」
「じ、じゃあ、次のデートの時はいっぱい縛っていっぱいイカせちゃおっかなぁ〜」
「おう。楽しみにしてるなっ」
「ハハハッ……じゃあ、おやすみ〜」
「おやすみ」
銀時は密かに溜息を吐いて目を閉じた。
拘束プレイなどという余計なことを土方に教えた過去の自分を恨みながら。
(12.04.16)
前々回、二人のSM具合をどうするかで悩んでいたわけですが、結局、自分が一番萌えるところで落ち着きました。つまり、銀さんはS寄りのノーマルで
十四郎は無自覚ドMです*^^* 銀さんは自分で言うほどSじゃありませんから、十四郎が泣くのを見て我に返りました。でも十四郎にとってはそこからが本番(笑)
一人エッチでは到底味わえない程の快楽責めをご所望でした。銀さん、一難去ってまた一難ですね^^; 頑張ってほしいと思います(他人事のように……)
前回やや暗めだった分、今回はラブラブに……とか言った気がしますが、あんまりラブラブにできませんでした。すみません。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
追記:続きを書きました。残念ながら(?)拘束プレイではありませんが……→★