「あのさ……今日は十四郎のこと、縛っていい?」
ある日のデート。いつも通りラブホテルへやって来た銀時は、部屋に入るなり土方に尋ねた。
「今日は牢屋の部屋じゃないぞ?」
土方は以前、牢屋のある部屋でごっこ遊び(銀時は監禁緊縛プレイのつもりだった)をしたことを
思い出して銀時に尋ね返す。
「牢屋プレイじゃなくてね、ちょっと縛るだけ。……ダメ?」
「別にいいけどよ……縛ってどうするんだ?」
「縛る以外は普通にセックスするんだよ。」
「普通に?」
「そう。でも、動きが制限される分、難しいセックスなんだよ。」
「……俺にできるのか?」
「大丈夫。ちゃんと教えてあげるから。ねっ、やってみない?」
「ああ。」
了承したものの未だ不安そうな土方の腰を抱いてベッドへ向かう銀時は、懐かしさを覚えていた。
(最近はすっかりノリノリだったからなァ……。こういう、少しおっかなびっくりの十四郎と
ヤるのは久しぶりだな。十四郎には悪いけど、ちょっと楽しいかも。)
近頃は発揮する機会がとんとなくなっていたS気質を、今日はいい具合に発揮できそうだと
銀時は意気揚々ベッドに乗り上げてベルトと帯を外した。
銀さん教えてレッスン16
「仰向けになって〜。」
ホテルのベッドの上。所在なさげに座る土方へ、銀時はニッコリ笑い横になるよう促した。
「……服は脱がなくていいのか?」
「うん。今日は脱がせてあげる。」
「分かった。」
言われたとおりに土方がベッドの中央で横になると、銀時は右手に先程外した自分の帯を持ち、
左手で土方の右手を取った。
「そっちもいい?」
「ああ。……銀時の帯で縛るのか?」
「そっ。」
土方に左手を挙げてもらい、銀時はその両手首を帯で一纏めにしてから頭上の柵に固定した。
「キツくない?」
「大丈夫だ。」
「……縄抜けしちゃダメだよ?」
「分かってるって。」
銀時が冗談めかして確認すると、土方も笑ってそれに応えた。
土方は仕事柄、拘束を解く方法を熟知している。以前の「牢屋ごっこ」ではその知識を活かして
簡単に銀時の拘束から抜け出して見せた。
その時の経験から、銀時はイメージプレイではなく単純に土方の動きを制限するだけにしたのだ。
拘束した土方を見下ろしながら、今回は上手くいきそうだと銀時は安堵していた。
「じゃあ、脱がせるよ。」
「おう。」
銀時の手が帯に触れると、土方は解き易いように自ら腰を浮かせた。
帯を外し、着流しを左右に開いたところで銀時は一旦手を留めて、また土方を見下ろした。
(絶景……)
銀時はごくりと生唾を飲み込んだ。肌を晒されてやや恥ずかしそうでもあり、初めての体験に
不安そうでもある土方は、銀時の嗜虐心を大いに煽ってくれる。
「銀時……?」
「あ、ああ……ごめんね。見惚れちゃってた。」
「何だよそれ……」
ぷいと顔を背けた土方の頬は更に赤くなっており、照れているだけだということが判る。
その可愛い反応に銀時の興奮は益々高まっていった。
「十四郎、だーい好き。」
「おっ、俺も……」
「えへへ〜……」
「んっ、んっ……」
控え目に肯定の返事をする土方の頬へ一度、正面を向かせて唇に一度、軽く口付けを落とせば、
二人の間を流れる空気は一気に甘くなった。
再び唇同士を合わせ、銀時は期待に薄く開いた口内へ舌を滑り込ませた。
「んっ、ふっ……ハァッ……んんっ!」
口付けをしたまま銀時は土方の下着を撫でていく。反応しはじめた一物が下着の上から擦られ、
土方の腰が震えた。
「銀時……もう一回、キス、してほしぃ……」
唇が離れた直後、遠慮がちになされたおねだりと、縛られていても敏感に反応する身体。
銀時の口元は緩みっぱなしであった。
「珍しいね、そんなこと言うの。」
「手、使えねェから……」
両手を頭上で固定されては、引き留めることも引き寄せることもできない。
だから言葉で伝えるしかないのだが、元々態度で示す方が得意な土方にとってそれは案外勇気の
いることだった。けれど銀時は全て分かった上で敢えて頬にチュッと口付けた。
「あっあの……口に……して。」
「あ、そっちだった?……はい。」
今度は唇に軽く触れるだけのキスをする。
「そうじゃなくて……ディープキスが、いい。」
「ああ、そっちか……」
「んっ……」
今気付いたというフリをして、銀時は深く口付ける。けれども、
「あ……」
土方が積極的に舌を絡め始めたと同時に口を離した。ちゅぱっと音を立てて離れていく銀時を
追うように土方の舌が口内から出て、そして残念そうに引っ込んだ。
(た、楽しい!十四郎、すげぇ不満そう……。そんな物欲しそうな目で見ないでよ……
もっと焦らしたくなっちゃうでしょ。)
「銀時……」
「ん〜?」
「なんか、イジワルしてるだろ。」
「えっ、え〜……そんなことないよ〜?」
バレた!?と内心で焦りながらも、一応は否定しておいた。
けれどそれくらいで誤魔化されてくれる土方ではなく、
「キスしたくねェなら、そう言えばいいだろ。」
ぷぅと頬を膨らませ、臍を曲げてしまった。銀時は慌てて謝る。
「ごっごめん!違うんだよ……キスが嫌なんじゃなくて、その……十四郎からおねだりされるのが
嬉しくて……」
「……ちゃんとしても、またしてほしくなるから……」
「そうだよね〜。ごめんね。今からちゃんとキスします!」
「うん。」
改めて土方に覆い被さり、より丁寧に唇を合わせて舌を絡ませた。
「んっ……」
深く口付けながら土方の髪を梳き、身体を確りと密着させる。すると布越しに、硬くなった一物も
重なった。銀時は土方の股間に自分のそれをぐりぐりと押し付けた。
「んぅっ……!」
銀時の動きに合わせて土方の身体はピクピクと震え、舌の動きが鈍くなってくる。
そこで銀時は口付けを解いた。
「ハァ……」
「そろそろパンツ、脱がせていい?」
「ん。銀時も……」
「うん。」
土方から下りた銀時は、先に自分の服を脱いで下着姿になってから土方の下着に手を掛けた。
下着のゴムを両手で引けば、そそり勃つモノが一旦引っ掛かってプルンと飛び出した。
身体を起こせない土方の顔を覗き込むようにして銀時が問う。
「手で触るのと口でするの、どっちがいい?」
「……く、口。」
「口でされるの、好き?」
「うん。」
頬を染める土方に鼻の下を伸ばしつつ銀時が足元へ移動しようとしたところ、土方に「あの……」と
呼び止められた。
「ん?」
「俺も、銀時にしちゃダメか?」
「ダメじゃないよ〜。シックスナイン、してくれるの?」
「それくらいしか、できないし……」
「手ェ使えないんだから無理にしなくてもいいんだよ。」
「それだと銀時にしてもらうばっかりで、ちゃんとしたセックスじゃないだろ。」
「そんなこともないんだけど……まあ、やってくれるのは嬉しいからお願いしよっかな。」
「おう。」
縛られていながら何とか「普通に」交わろうと頑張る土方に自然と笑みがこぼれる。銀時は下着を
脱いで土方の顔を跨いだ。
「これでいい?」
「もう少し下……あっ、その辺。んむっ……」
「じゃあ俺も……」
一物の先が無事に咥えられたのを確認してから、銀時も土方のモノを咥え込んだ。
「んっ、んぅっ!んっ……」
(おぉ……マジでいいな、拘束プレイ。)
口での愛撫とはいえ手を全く使えない状況でいつも通りとはいかず、土方の舌の動きは普段より
ぎこちなくなっていた。けれど、先に達してしまうことが悩みのタネであった銀時にとって、
緩い刺激はむしろ歓迎すべきもので、土方がコツを掴む前にイカせてしまおうと一気に攻め立てた。
「んあっ!あっ、んぐっ……あぁっ!」
強い刺激を受けて土方は更に口淫が困難になっていく。
そして、ほとんど何もできないうちに射精感は高まって、
「ああぁっ!!」
銀時の口内に精液を放った。
「ハァ、ハァ……やっぱ、難しいな……」
「縛られててこれだけできれば充分だよ。」
上手くできなかったと反省する土方を慰めて、銀時は身体ごと土方の足元へ移動し、後孔に触れた。
「今度はこっちで気持ち良くしてね。」
「あ、うん……」
銀時の指が土方のナカへ埋まっていく。
「……いつもより柔らかい。アレ、使ってるんだ?」
アレ、とは前回の逢瀬で買った張り型のこと。土方はこくりと頷く。
「じゃあ、もう一本増やしても平気かな?」
「はっ、あぁ……」
指が二本になり、土方は熱の篭る息を吐き出して感じ入った。銀時の指先はすぐに快楽点へ向かう。
「あ、あぁ!……あぁっ!」
「ナカも柔らかい……もう、入れていい?」
「いいっ。銀時、入れてっ!」
「いくよ!」
土方の拘束姿に昂ぶっていた銀時は、常より解れている内部に安心して早々と前戯を切り上げ、
挿入の体勢に入った。
土方の両足を抱え、カチカチに膨れ上がった一物をずんっと最奥まで捩込んだ。
「ああぁっ……!!」
「くぅっ!!」
「あっ、あっ、あっ……」
挿入の衝撃で二人共達し、そのまま二回戦へ突入した。
* * * * *
「ひぅっ、あっ、あっ……ああぁっ!!」
「……っ!!」
「ハァ、ハァッ……」
「フー……」
土方のナカで三回目の吐精を終え、土方が達したのを見届けてから銀時は一物をずるりと抜いた。
(うっ……すげぇエロい。)
両手首を縛られたまま肩で息をしている土方は、腹や胸、頬まで自身の精液に塗れていて
酷く煽情的に見えた。
交わりを終えたばかりだというのに銀時の喉が鳴る。
(いつもと同じ光景なんだけど、縛られてるせいかいつもよりエロく見えるな……。
これならまだまだいけそうだぜ。)
いつもならこの後「スイッチ」の入った土方に主導権が渡るのだが、今日は土方を満足させられ
そうだと銀時は手応えを感じていた。
「ハァ、ハァー、ハァー……」
(あ、あれ?)
ハァハァと荒い呼吸を繰り返していた土方は、呼吸が整うに従って虚ろな瞳が閉じられていった。
「とっ十四郎……?」
「あ、悪ぃ……寝ちまった。」
「別にいいんだけど……疲れた?」
「ちょっとな……」
「そっか……」
土方を拘束している帯を解きながら銀時は少し考えて言った。
「十四郎、今日はもう寝よっか?」
「えっ!でも、いつもはもっと……」
「そうなんだけど……疲れただろ?無理して沢山ヤることないって。」
「銀時はもっとしたいんだろ?俺なら平気だから……」
「えっ……や、まあ、確かにもうちょいヤりたいとは思ってたけどね……でも、十四郎に無理は
させたくないんだ。だから今日はもう寝ようよ。」
「銀時……ごめんな。俺は、前回もその前もお前が気絶するまでやらせたのに……」
「ああ、その件はもういいから。」
漸く自分の思い描いていた関係になれそうだと銀時が感じた矢先、忘れかけていた苦い経験を
掘り起こされ、そこは急いで軌道修正をかける。
「ところで、縛られた感想は?」
「うーん……手が使えないと、フェラチオもやりにくいって分かった。」
「そうだね。……他にはない?」
「他って言われてもなァ……あとは、全部銀時がやってくれたし……」
「いつもと違う感じはしなかった?」
「そういえば銀時のアレ、いつもよりデカくなってたな。」
「えっ……マジで?」
「ああ。銀時は気付かなかったのか?」
「ちょっと、そうかなぁって思ってたけど……」
拘束プレイに興奮していた自覚はあるが、まさかそれを指摘されるとは思わなかった。
尤も土方は、どうして銀時のモノが常より膨れていたのか分かっていないようではあるが。
「十四郎、よく分かったね。」
「中に入ってくれば、いつもと違うかどうかは分かるぜ。」
「そうなんだ……ハハッ、すごいね。」
「……普通は分かんねェもんなのか?」
「いや、どうだろ……。まあ兎に角、ちょっとした変化にも気付いてもらえるなんて嬉しいよ。」
「そうか?でも、何でデカくなってたんだ?」
「それは、えっと……十四郎が縛られてたから……」
「俺が縛られてると銀時のアレがデカくなるのか?」
「ていうか……その、いつもより興奮しちゃって……あっ、別に、いつも縛りたいとかそういう
わけじゃないんだけどね……ただ、いつもと違うから新鮮だったというか……」
セックスそのものをつい最近覚えたばかりの土方に、自分の性癖を説明するのは何となく躊躇われ、
銀時はしどろもどろに言葉を紡ぐ。
「もしかして……俺もいつもより気持ち良かったのって、縛られてたせいなのか?」
「ととと十四郎、今何つった?気持ち良かったって言った!?」
「あ、ああ……。俺はてっきり、銀時がいつもと違うことしたのかと思ってたんだが……」
「縛る以外は同じだよ。そっかぁ……十四郎も拘束に興奮してくれたんだ。」
「そう、なのか……?」
土方自身はまだよく分かっていないものの、この様子だと今後も拘束プレイはできそうだと銀時は
嬉しくなって土方に抱き付いた。
「ぎ、銀時?」
「十四郎、やっぱりもう一回シていい?……優しくするから。」
「銀時の好きにしていいぞ。」
「ありがと。」
土方の唇にチュッと口付け、銀時は味わうように丁寧に土方を抱いた。
(11.12.05)
というわけで、十四郎はちょっとMに目覚めました*^^* いや、元々その片鱗は見え隠れしてたので銀さんは夢中で色々教えたんですけどね。
でも覚えがよすぎて前回は銀さんが凹んでしまったので、今回はちょっといい思いができたみたいで良かったです。基本的に、銀さんはS寄りのノーマル、
土方さんは無自覚ドMくらいが好きなのですが(笑)、この二人がどうなるかは未定です。銀さんがS寄りで十四郎がM寄りなのは確定しましたが、どのくらい
寄るのかは考え中・・・・。多分、銀さんが頑張らなきゃいけない感じにはなると思います。何はともあれ、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。