後編


「……バックはどうだった?」

達して繋がりを解き、二人はベッドに並んで横になる。銀時は片腕で頭を支え、
土方の髪を撫でながら聞いた。

「うーん……悪くはねェけど、俺はいつもの方が好きだ。」
「何で?」
「銀時が見えないから。」
「十四郎……」
「なあ、次はいつものがいい。」
「そうだね。次はいつものね。……あっ『いつもの』は正常位って言うんだよ。」
「正常位か……」
「そっ。」

穏やかな笑顔で互いを見詰める二人。
だが何か噛み合っていない気がして銀時が口を開く。

「十四郎、何か言いたいことある?」
「別にねェよ。銀時こそどうしたんだ?」
「どうって……?」
「次は正常位でセックスするんじゃないのか?」
「……もしかして、次って今?」
「違うのか?」
「あ、えっと、俺は、次に会う時って意味かと……」
「今日は正常位やっちゃダメなのか?一日一個?」
「そんな決まりはないよ〜。俺が『次』を勘違いしただけ。」
「じゃあ正常位しよう。」
「うん。」

銀時は土方に覆い被さり、深く口付けた。



*  *  *  *  *



「あっ、あっ、あっ……」
「―っ!」

自分で好きだと言っただけのことはあるのか、正常位で挿入すると土方のナカが先程よりも
複雑に蠕動した。このままでは先に達してしまうと銀時は土方の一物に手を伸ばしかけて止めた。
そして……


「十四郎、自分で触ってみてよ。」


土方の右手を一物に誘導し、自慰行為のようなことをさせることにした。


「あっ、あっ、あっ、あっ……」
「そうそう。……普段、自分でヤってるように触って。」
「んんっ!」


土方の右手が高速で上下し、ナカもビクビクと痙攣を始める。銀時はそこへ熱い欲の塊を
何度も何度も打ち込んだ。


「くぅっ!!」
「ああぁっ!!」


身体の奥に銀時の精が放出されたのを感じ、土方も達した。



*  *  *  *  *



行為を終えた二人は抱き合いながら呼吸を整える。

「フ〜……確かに、十四郎の顔が見えるからいいね。」
「あ、ああ……」
「十四郎?」

希望が叶ったはずなのに土方の表情はどこか浮かない。

「疲れた?それとも、どっか痛い?」
「あ、いや、そんなことは……」
「でも、元気ないじゃない。どうしたの?」
「べ、別に、何でもねェよ。」
「……俺ね、十四郎のことなら何でも知りたいの。十四郎、教えて。」

乞うように言われ、土方は漸く口を開く気になった。

「あのな……別に、それがダメだってわけじゃなくて、むしろ、当然だと思うんだが……」
「何のこと?」

未だ迷いがあるのか、土方の話は要領を得ない。
銀時は優しく土方を抱き寄せて、話しやすくなるよう努める。

「銀時は、あまり、俺に触りたくねェんだろうなって……」
「何で!?今だってほら、めっちゃ触ってるよ?」

意外な言葉に驚き、銀時は抱き締めていた腕を動かして頭や肩、背中などを撫で回す。

「そ、そういう所はそうだけど……」
「どこか触ってないトコあった?……あっ、乳首?」
「い、いや、その……」
「十四郎、教えて。俺、十四郎の身体で触りたくないトコなんてねェから!」

土方と正面で向かい合う銀時の瞳は真剣そのものであった。土方はそれに気圧されながら、
遠慮がちに話し始める。

「えっと……ナニ、とか、後ろ、とか……」
「チンコとお尻?」
「あ、ああ。」
「何でそう思ったの?むしろ、積極的に触りたい箇所だけど。」
「無理しなくていい。あんな汚ェ所、触ってもらうのは悪いと常々思ってたんだ。」
「汚くない!全っっっっ然、汚くないから!……ねぇ、どうしてそんな風に思ったの?」
「自分で、触れって言うから……」
「それ、いつの話?」
「今日。」
「ん〜……?」

そんな心にもないことを言っただろうかと銀時は記憶を辿る。

「もしかして……正常位でヤった時のこと?」
「フェラチオしてる時も……」
「あー、はいはい。なるほどね……。あれは違うって。そういう意味じゃないよ。十四郎が
触るところを見たかっただけ。」
「何で?」
「何でって……」

恋人の自慰行為を眺めて性的興奮を覚えるなどということが、土方にはおそらく理解できないと
思われて、銀時は尤もらしい理由を捻り出す。

「どうやって触ったら十四郎が気持ちいいのか知るためだよ。十四郎の触り方を見て、
次は俺が同じように触ろうと思ってたんだ。」
「そっか……。次は触ってくれるんだ。」
「勿論だよ〜。……あっ、次っていつだと思ってる?」
「今からだろ?」
「……せ、正解。」

一片の穢れもない貌で「今から」と言われれば、拒否することなどできない。

「そういえば十四郎、最近、一人で触ってないでしょ?」
「ああ。」

以前は身体が疼く前にと定期的に発散させていた土方であったが、ここのところしていない。
精液の濃さや後孔の硬さでそれを感じった銀時は理由を聞いてみた。

「何で?」
「前に言っただろ。……セックスしたくなるって。」
「指じゃイケない?」
「そんなことねェけど、でも、セックスしたくなるから。」
「一人でするより、俺とセックスするのが好き?」
「ああ。」
「そっかァ……」
「銀時は?」
「勿論好きだよ。」
「良かった。」

チュッと音を立てて口付けてから、銀時は土方の足元へ移動した。


*  *  *  *  *


「はぁんっ!あっ、あんんっ!」


ベッドの上、仰向けになり膝を曲げて脚を開いて、一物を口で、ナカを三本の指で刺激され
身悶える土方。右手で枕の端を、左手でシーツを掴み、強い快感を享受している。


「んんっ!ぎ、ときっ、イキそう……!」
「んー……」
「ああぁぁ……!!」


内と外から強い刺激を受け、土方は銀時の口内に射精した。



「ハァー、ハァー……」
「お疲れ様。」
「えっ?」
「えっ?」

忙しなく呼吸する土方に労いの言葉を掛けたら疑問で返され、銀時は更に疑問で返してしまう。

「銀時って、たまに話聞いてねェよな。」
「えっと……」
「触ったらセックスしたくなるって言ったじゃねーか。」
「それは聞いたよ。でも……今からセックスしたいの?」
「だからそう言ってるじゃねーか。銀時が触ってくれたんだぞ。」
「そっそうだね……。えっと、じゃあ、今度は十四郎が上になってみようか。」
「上?」
「対面座位って言ってね、俺の上に十四郎が座る体勢だよ。」

一晩に三回は流石に疲れる。しかも、後の二回は求められてしたもの―銀時にとっては想定外の
こと―であったから、ペース配分もできていない。だから銀時は自分が少し楽できる体位を
提案したのだった。

「銀時の上に座るって……こうか?」

土方は銀時の脚を跨ぎ、膝の辺りに腰を下ろす。

「本番はこの上に座るんだけど……このままじゃ入れられないから一緒に触ろう。」

銀時は萎えた状態の自分のモノと、先程イッたにも拘わらず勃ったままの土方のモノを重ねて擦る。
そうして自分のモノが勃ちあがったところで手を止め、土方を一旦立たせて一物を挿入しながら
座らせていった。


「ハ、あんっ……」
「ヨさそうだね。」
「んっ。奥に、当たってる……」
「十四郎、動ける?」
「動くって……?」
「腰を上げたり下げたりして動いてごらん。十四郎が上なんだから。」
「やってみる。……んっ、はぁっ……」


言われた通り土方は腰を浮かせて銀時のモノを途中まで抜き、再び根元まで沈める。
初めてのことに恐る恐るといった感じで動いた土方であったが、座りきる頃には身体を震わせ
甘い息を吐くようになった。


「ハァ、ハァ……」
「う、あ……」


身体の奥深くを貫かれる感覚に囚われた土方は、孔の入口をきゅうきゅうと収縮させる。
それが銀時にえもいわれぬ快感を与えていた。


「とっ十四郎……っ!」
「銀、時……今、動くからな。」
「ううう動かなくていっ……うあっ!」


銀時の肩に手を置いて、土方は上下運動を開始する。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
「うっ、あっ!と、とーしろ……くぅっ!」
「銀時……こーすると、いい?」
「ああっ!!」


入口を締めたり緩めたりしながら抜き差しされて、銀時は堪らず射精した。


「ハァ……銀時の、ビクビクいってる……」
「と、しろ……」
「銀時、キスしたい。」
「う、ん……」

土方の手が銀時の頬に添えられ、口付けが落とされる。


「んっ、んっ、んん!?」


チュッチュと何度も口付けながら土方の腰が揺れ始め、銀時は慌てて唇を離す。


「ハッ!と、十四郎!?」
「銀時の、また大っきくなったァ……」
「いいいやああああの……」


これ以上はマズイ。そもそも、さっきだってマズかったのに動いちゃうから……そんな銀時の
困惑など「スイッチ」の入ってしまった土方に気付けるはずもなく、


「あぁんっ!あっ、はぁっ!」
「〜〜っ!!」


自分も銀時も気持ち良くなるため、銀時の上で跳ねていた。
銀時の身体に過ぎた快感が襲う。


「あぁ!あぁ!んっ……あぁっ!」
「くっ……あっ!ハッ……っ!」


このままではまた一方的にイカされかねないと危機感を覚え、銀時は土方の一物を握り扱いた。


「あぁっ!あぁっ!ああっ!」
「んんんんっ!!」


固く目を閉じてせり上がる射精感を必死で堪え、イカせることだけを考えて一物を擦っていく。
感じるに従い、土方の腰の動きは小さくなっていったが、ナカの蠢きは増してしまう。


「あっ、ぎんときっ!お願いっ、動いてぇ!!」
「こ、こう?」
「ひあぁぁ……っ!」


銀時が下から腰を突き上げると、土方は悲鳴めいた喘ぎを上げる。その時、内壁がぎゅるりと銀時の
一物を締め付けた。


「も、ダメだっ!……ああっ!!」
「ハァッ、銀時の、ぬるぬる……あっ、ああっ!!」


自分が達した後も土方のモノを擦り続け、銀時は何とか土方をイカせることができた。



*  *  *  *  *



「ハァ〜……やっぱり正常位がいいな。」

銀時の上へ折り重なるようにしてベッドへ沈んだ土方は、しみじみとそう漏らす。

「そ、そう?かなり気持ち良さそうだったけど?」
「気持ちはいいけど、銀時が動く方がいい。」
「そ、そうなんだ……」
「あっ、でも、銀時はすっげェ感じてたよな?」
「え、えっとぉ……」
「それは俺も嬉しかったから、またやろうな。」
「ここっ今度、会った時にね!今日はもう遅いから、寝よう!」
「それもそうだな……。」
「では、おやすみ〜。」
「銀時、寝る前に風呂入らなきゃ。」
「俺、朝入るからいいよ。十四郎どーぞ。」
「じゃあ入ってくる。」
「行ってらっしゃ〜い……」


土方は枕元に置いてあったタオルを腰に巻いて浴室へ向かった。浴室の扉が閉まる音を聞いた瞬間、
銀時は事切れたように枕へ突っ伏し、それから朝まで眠り続けるのだった。


(11.09.07)


十四郎はバックに引き続き、対面座位を覚えました^^ そして、レッスン14にして遂に銀さんから「教えて」って言わせましたよ(笑)。それから今回、エロの分量が

多かった(というかエロしかなかった)ので、前中後編に分けた方が読みやすかったかなと、反省。かなりの成長を遂げた十四郎ですが、「思ってたのと違う」と

感じてらっしゃる方も若干(?)いるのではないかと思います。すみません。これ、予定通りなんです^^;以前連載していたぎんトシシリーズや、

逆CPのトシぎんシリーズを読んでいた方は予想がついていたのかなと思っているのですがどうでしょう?次くらいで、漸く真選組の出番がある予定です。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

追記:続きを書きました。

 

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