おまけ(土方視点)
万事屋に好きだと告げたのは、俺の気持ちを知って欲しかったから……と言えば聞こえはいいが、
とどのつまり俺を意識させるのが目的だ。例え万事屋との仲が深まったとしても、何も知らないままだと
ただのダチ止まりになりかねない。そうならないために先手を打って告白する必要があった。
互いの距離が縮まってから告白なんつーのは、最初から恋愛対象になってる場合だけだ。そうでない
関係の場合、まずはこっちにその気があることを知ってもらわなきゃなんねェ。
万事屋からの答えは「女の方が好き」というものだった。……まあ、想定内だ。ここで諦めるヤツは
考えが甘ェ。そういう趣味のヤツを除いて、男が女を好きなのは当たり前だ。それにショックを受けるのは
おかしな話だ。むしろこれは俺が想定した中でもいい方の返事だと言える。
強がりじゃねーよ。いいか?最悪なのは「女がいい」でも「男がダメ」でもなく「お前がダメ」っつー返事だ。
これは万事屋の好みに俺が全く当て嵌らないって意味だ。だが万事屋は「女の方がいい」と言った。
つまり、俺と女を比べた場合、女の方が好みに合ってるってことだ。さっきと似ているようだが
比べる余地がある分マシなんだ。
そんなわけで俺は万事屋を口説けると判断し、行動を起こすことに決めた。
手始めに飲みに誘った。こういう時、男同士は便利だ。二人で飲みに行っても不自然じゃねェ。
まあ、それでも万事屋は多少警戒していたようだったが、俺がそういうつもりじゃねェと言えば
納得してくれた。ついでに「ダチがいねェ」と寂しい男を装い、「一人で飲む気分じゃねェ」と
万事屋の罪悪感を刺激してやれば完璧だ。優しい万事屋は可哀想な俺のために一緒にいてくれるっつー
構図が出来上がった。
作戦は思いの外上手くいった。万事屋の酒癖の悪さは分かっていたので俺は飲む量をセーブした。
俺が勧めるまでもなく万事屋は浴びるように酒を飲み、ロクに歩けなくなった。当然、支払いは俺だ。
これで家まで送ってやりゃ、恩を売ることになって次に繋げられると思った。
だが、万事屋の酒癖の悪さは俺の想像を超えていた。
「銀さんモテないから人肌に飢えてんのー。………何とかしてよ。ねぇ、土方くんってば〜……」
自分のことを好きだと言った相手に言うことか?今日の飲みはそういうつもりじゃねェとは言ったが
だからといって俺の想いが消えてるわけじゃねーのによ……
とりあえず、往来で話すことではないので万事屋を近くの路地に引っ張り込んだ。
「ヌいてやろうか?」
この時点ではまだ本気でヤるつもりはなかった。すっかり忘れちまってるようなので俺の想いを
再確認してもらう、そんな気持ちで言っただけだった。だが意外にも万事屋はノッてきて、自らナニを
出しただけでなく、口でヤるよう指示を出し、しかも一回じゃ終わらなかった。
二回出して万事屋はその場で寝ちまったから、担いで家まで送っていった。幸い、メガネもチャイナも
家にいた。これで、もし万事屋が忘れちまっても俺とコイツが一緒にいた証明ができる。
けれど万事屋は全部覚えていて、案の定「責任取って付き合う」と言い出した。
これはこれで望むところなのだが、こうもあっさり付き合えたのでは面白くない。だいたい、あっさり
くっ付くカップルってのは、あっさり別れる危険性も孕んでるもんだ。付き合う前に多少苦労した方が
「あれだけ苦労して築いた関係だから」と維持する気持ちも強まる。
だから断わった。
けれどそれで全てナシにされたのでは堪らないから、もう一度飲みに行く約束をした。
あそこまでできたんだ……万事屋にとって俺は、少なくとも身体の関係は築ける範疇に入っただろう。
これまで女しかいなかった所に入れたんだ。これはかなりの進展といえる。
* * * * *
二度目の飲みで万事屋から再び交際を申し込まれた。
この時点で本気だというのは確信できたのだが、俺は浮かれそうになる自分を戒め、もう一度断った。
今はまだ、万事屋が「付き合ってくれる」段階だ。折角なら対等な関係で付き合いたい。
そう思っていたら万事屋から「好きだ」と言われた。
これにはかなり心動かされた。ここでOKを出しても良かったのだが、万事屋から好かれるという状況が
楽しくてまだ信じていないことにしてみた。
万事屋は本気である証拠を見せると言って俺をホテルへ連れて来た。結局、身体が目当てなのかと
落胆したのも束の間、万事屋は俺に触れるだけだった。そこまでされると嬉しい半面、申し訳ない
気分になる。俺が先に惚れたのに、こんなにしてもらって……
そこからは俺も万事屋に触れた。
途中、万事屋が指を突っ込んで来たので上希望なんだと思っていたら、よく分かっていなかったらしい。
まあ、男相手の経験はねェみたいだし、それも仕方ねェか……
にしてもコイツ、ちょっと早くねェか?一度目に口でヤった時は酔ってたからだと思っていたが、
今回も入れた瞬間に……まあ、遅けりゃいいってもんでもねェし、別にいいんだけどよ……
* * * * *
そんなわけで、俺は万事屋と付き合うことになった。
俺の告白から始まった関係だけに、今後も俺の主導で進みそうだ。
(11.07.11)
銀←土だと切ない感じの話が多いように思うので、そうじゃない感じの、土方さんが積極的に口説く感じの話にしたかったんです。
でも銀さんは自分が口説かれたことに気付いていません。酔った勢いでやっちゃって、それが切欠で好きになったとしか思っていません。
まあ、どんな過程を経ようとも、くっ付けばこの二人はラブラブカップルになるってことですよ^^ ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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