後編
「なに、ここ…」
部屋に入った銀時は玄関で立ち尽くしてしまった。
いつもは部屋の八割方をベッドで占領され、残りのスペースにテレビやギリギリ二人で座れるソファが
所狭しと配置されている部屋。しかし、今いる部屋は玄関を入ると襖があり、そこを開けると座卓と
座イスの置かれた和室になっていた。
銀時はキョロキョロと辺りを見回しながら部屋に上がった。
「な?いつもと大分違うだろ?」
「うん…。こんな部屋があるなんて知らなかった。…こっちは何だろ?」
障子の先にもう一間あり、そこに二人用の布団が敷かれていた。
「こんなデカい布団あるんだなぁ〜…」
「そうだな。」
「こっちは…」
「風呂だ。」
「お〜…」
座卓の部屋に戻り、左側にある引き戸を開けると洗面台と脱衣所になっていた。
「トシ…ここ来たことあんの?」
「いや…。受付の横に部屋の写真があったじゃねーか。」
「ああ、あれね…。いつも値段しか見てなかった。」
銀時は恥ずかしそうに笑って浴室の扉を開けた。
タイル張りの浴室の壁には、赤いビーチマットが立て掛けられている。
「なあトシ…何でビーチマットがあるんだ?流石にこれが浮かべられるほど広くはねェよな。」
「あれは風呂場でヤる時、布団代わりにするんだよ。」
「やるって…セックスだよな?」
「ああ。」
「風呂場でセックスしていいの?」
「ああ。」
「へぇ〜…」
これまで布団の上でしか致したことのなかった銀時にとって、それはとても魅力的に感じた。
「やりたい!ねぇトシ…」
「ああ、いいぞ。」
「やったぁ!」
銀時に笑顔が戻り、土方も嬉しくなってくる。
「それで?どうすればいい?」
「とりあえず普通にシャワー浴びてからだな。」
「はーい。」
すっかり気分を持ち直したようで、銀時は鼻歌交じりに服を脱いで浴室へ入った。
「ぎん、そこに座れ。」
二人で簡単にシャワーを浴びると、土方は銀時を浴槽の縁に座らせた。
素直に座ったものの、どうして座らされたのかは分からない。
「…トシ?マットは?」
「その前に一回ヌいてやる。…じゃないと辛ぇだろ?」
「あ、うん…」
銀時のモノは映画館にいた時から仄かに熱を帯びていた。それが、これから浴室で行うことへの期待で
更に膨らんでいる。土方は銀時の足元に座り、右手で銀時のモノをそっと握って上下に動かした。
「ハァッ…んっ、あっ…」
土方の手が触れるとすぐ、先端から滴が溢れ出す。
「あっ…トシ、気持ちいっ…」
「じゃあ、もっとしてやる。」
扱くスピードが上がると、銀時は両手で浴槽を掴み身体を支えて快感に浸る。
「あっ、はっ…んんっ!」
「…イキそうか?」
「うんっ。トシ…出そう…!」
「分かった。」
土方は銀時の鈴口に左手の指を掛けた。
「ああっ!!」
銀時の精液が土方の両手を汚した。
「フーッ…トシ、ありがとう。」
「…治まったか?」
「うん。…風呂場ですると、すぐに洗えて便利だね。」
「そうだな。」
土方は銀時の下半身と自身の手をシャワーの湯で流した。
「それで…マットはいつ使うんだ?」
「お前がまだヤれそうなら今からでも…」
「じゃあ、今から使おう!」
「無理しなくていいんだぞ?まだ時間はあるんだし、いったん休憩してからでも…」
「大丈夫!俺、トシがいれば一晩中でもできる自信あるから!」
「それじゃあ俺がもたねェよ…」
グッと体の横で拳を握る銀時に土方は溜息を洩らす。
「分かってるって。トシは受ける方で負担が大きいから、沢山したらダメなんだろ?」
「あ、ああ…」
「ちゃんと覚えてるから安心して。でも俺の方は気を遣わなくていいからね。」
「そうか…」
それから二人でビーチマットを洗い場に敷き、潤滑剤と避妊具を浴室に持ち込んで準備が完了した。
「これからどうすればいい?」
「布団でヤるのと特に違いはねぇよ。」
「分かった。…じゃあ、寝てくれる?」
「ああ。」
土方がマットの上に寝転がって脚を開く。
「チンコ勃ってる…。トシもセックスしたくなった?」
「まあ…」
勃ち上がり始めた土方のモノを嬉しそうに見ている銀時には、土方を辱める気などない。
それは分かっているつもりなのだが、ストレートに聞かれるとどうしても恥ずかしさを感じてしまう。
土方は頬を染め、銀時から視線を逸らした。
銀時が潤滑剤を塗した手で土方の窄まりに触れる。
「んっ…」
「おっと…」
土方の身体がピクンと反応すると、それに合わせてマットが揺れる。布団よりも不安定なマットは
少しの動きで大きく弾み、銀時は僅かにバランスを崩した。
「悪ィぎん…大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ポヨポヨして楽しい。…えいっ!」
「うぁっ!」
銀時の指が土方の内部へ挿入された。先程よりも大きく土方の身体が跳ね、マットが弾む。
「んんっ…」
「俺が手ェ動かさなくても、トシがビクビクするだけで揺れるなっ。」
「…いちいち言うなっ。」
「褒めてるのに…照れ屋なんだから。」
「…っああ!」
否定しようとしても、ナカに指を埋め込まれた状態では碌に話すことができない。
そうこうしているうちにナカは解され、指に代わり銀時の熱い昂ぶりが入ってきた。
「ああぅ…!」
「おー…すげぇ弾む。それにトシの身体、ピンクで可愛い…」
「ぎん、だって…赤くなってんだろ…」
浴室内の熱が二人を薄紅色に染めていた。
土方は銀時の首に腕を回して引き寄せる。
「んっ…」
土方に求められるまま唇を合わせ、銀時はゆっくり腰を揺らす。
「んふっ、んっ…んぅっ!」
マットの弾力に合わせ、腰のストロークが大きくなる。外れてしまいそうになる唇を繋ぎ止めようと
土方は縋り付くように銀時を抱き締めた。
「んうっ…んっ…はぁっ!」
激しく弾むマットに唇が外れても二人は確りと抱き合って快感を貪る。
「あっ、ハァッ…あぁんっ!」
「トシの声、響いてる…」
「んんっ……くっ…ああっ!」
浴室内に反響する自らの喘ぎにも煽られ、土方は声を抑えられなくなる。
「あっ…はぁんっ!」
「トシっ…俺、もうダメ!」
「ああぁっ!!」
射精感の高まった銀時は更に激しく腰を打ち付ける。
「あっ、あっ…ああぁっ!!」
「トシぃ…っ!!」
激しい快楽が与えられ土方は堪らず吐精し、銀時もその直後に達した。
「あー、気持ち良かった。風呂場って声が響くから、トシの可愛い声が色んなトコから聞こえて楽しいね。」
「…暑ィ。」
銀時の感想には取り合わず、土方はマットの上を這ってシャワーコックを捻る。
水に近い温度でシャワーを出し、逆上せそうなほど火照った身体を冷ましていく。
すると銀時はシャワーを持つ土方の手に自分の手を重ね、二人で一緒になって水を浴びた。
* * * * *
浴室から出た二人はホテルの浴衣を着て、冷蔵庫にあったミネラルウォーターを一気に流し込んだ。
一息吐くと、銀時は漸くここへ来た目的を思い出す。
「そういえばさァ…ホテルで映画観るって言ってなかったっけ?」
「…今から観るか?」
「観る!…でもどうやって?DVDでも借りて来んの?」
この部屋にはDVDデッキも備え付けられていた。
「それでもいいけどよ…」
土方はテレビの横にある番組表を一枚抜き取って銀時に渡す。
「…シネマチャンネル?」
「この宿は普通のテレビ以外に、幾つかの別チャンネルが見られるようになってんだよ。」
「スカイなんとかテレビってやつ?」
「俺も詳しくはねぇが…多分、そうじゃねぇか?」
「へぇ〜…じゃあ、観てみようよ。」
「おう。」
土方がテレビのスイッチを入れ、銀時がリモコンを操作して番組表に載っているチャンネル番号を押す。
「ぎん…今やってんのは何だ?」
「えっとね……となりのペドロえぼりゅーしょん、だって。」
「そういやぁ、実写版になったとか聞いたことがあるな…」
「この、ムキムキのイケメンがペドロ?アニメと全然違うじゃん。」
「ハハッ、本当だな…」
二人はテレビの前に座イスを並べて座った。
暫く辛口の批評をしつつ観ていた二人であったが、ふと、銀時が別の番組表の存在に気付く。
「なあ…シネマチャンネル以外にもあるんじゃね?」
「あ、いや、それは…」
土方が止める前に銀時は残りの番組表を手にしてしまう。
「トシ、トシ!こっちはAVチャンネルだって!」
「………」
そのチャンネルの存在を知っていて敢えて無視していた土方は、密かに溜息を吐く。
「これってAVがずっとやってんだよな?」
「…多分。」
絶対にそうであることは分かっているものの、土方は無意味に悪足掻きをせずにはいられなかった。
以前、銀時が長谷川から借りたAVを一緒に見る羽目になったことがあり、知識不足の銀時に内容を
解説したり、同じように攻められたりと、非常に恥ずかしい目に遭った。
今はあの時よりも土方を労わるようになってくれたとは言え、そもそもこういったものを銀時と見ること
自体が土方にとっては恥ずかしいことで、できれば避けて通りたいのだ。
けれど銀時にとっては、知識を得るための重要な「教材」に触れるチャンスであった。
「ペドロよりこっちの方が面白そうじゃねェ?」
「いや…俺はペドロがいい。」
「じゃあ、ペドロ終わったらこっちな?」
「…い、色んなデートをしねェとダメなんだろ?AVは、前に一緒に見たじゃねーか…」
「あ、そっかぁ…。ちぇー…残念。」
すまない、ぎん―土方は心の中だけで謝って、面白くもない映画を銀時と見続けた。
それから二人は出前で夕食を済ませ、今度は布団の上で交わり、抱き合って眠りに就いた。
「トシ…だーい好き。」
「俺もだ、ぎん…」
深い愛情で結ばれた二人は既に「本物」だと銀時が理解するのは、ほんの少しだけ先の話。
(11.05.17)
ぎんトシ第一部が終わった時(一年前)、「第二部があるなら、お付き合いの方法をトシが優しく教えてあげてほしい」というコメントをいただきまして
今回デートの話にしたのですが、結局ホテルメインになってしまいました^^; ぎんもトシも悪くありません。私がエロいから悪いんです。これの続きがあるか
どうかは分かりませんが、機会がありましたらまたよろしくお願いいたします。それでは、ここまでお読みくださりありがとうございました。
追記:4年振りに続きを書きました→★
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