中編
刺激が止んだことで、土方は口を開けて酸素を取り込むことができるようになった。深い呼吸を繰り返し
徐々に脳内がクリアになっていくと、自分のしたことに顔色が蒼ざめてくる。
「お、俺…銀さんの口に…」
「ああ、気にしなくていいよ」
「そんな、だって…」
土方の瞳にみるみる涙が溜まってくる。
「泣かないで…大丈夫だから。俺ね、十四郎の精液飲んでみたかったの」
「そんなの、嘘だ…」
「嘘じゃないよ。十四郎と一つになれるって言うか、十四郎が俺の一部になったみたいで嬉しい」
「…そういうもんなのか?」
「人それぞれじゃない?とにかく、俺は飲みたかったんだから十四郎が気にすることないんだよ」
「……よく分かんねェ」
「それでいいよ。俺には俺の、十四郎には十四郎なりの『好き』があるんだから。ところでさァ…
もう満足できた?」
「えっ…」
「一回イッたし、もう大丈夫?」
「………」
銀時を見詰める土方の目は何かを訴えかけるようであった。
「足りなそうだね…」
「だって…」
「いつもはもっといっぱいイッてるもんねー。じゃあ、出ようか」
「ああ…」
外の様子を伺いながら二人が厠を後にすると、丁度映画の上映が終わったのか廊下に人が溢れていた。
二人は人の波に乗って外へ出た。
「…まだ、ついてきてるね」
「そうだな…」
映画館を出ると再び尾行が始まった。
(十四郎、かなり目が潤んでるけど…気付かれねェよな?いくらなんでも、映画館でヤったとは
思わねェだろ…。そうだ!映画見て泣いたことにすればいい!アクション映画だった気がするけど
十四郎だったらどこかしらで感動したと思う!)
「なぁ、銀さん…」
銀時が色々と言い訳を考えていると、土方が銀時の着流しの袖をクイと引いた。
「なに?」
「二手に分かれねェか?」
「どういうこと?」
「俺達が別々に動いたらアイツらも分かれるかもしれねェ」
「そっか。そしたら撒くのも簡単になるかもね」
「じゃあ、次の路地で左右に分かれて…」
「二番の宿に合流でいい?」
「ああ」
普段から逢瀬の場所を秘密にしている二人は、よく行く所に番号をふっている。この方法を提案したのは
土方だった。隊士達に内緒でデートの約束をするのに便利だと思っていたが、こんな時にも使えるのだと
銀時は感心していた。
「「あっ!」」
銀時と土方を見張っていた二人は思わず声を上げた。
「副長と旦那が別々に…」
「アイツら、気付いてやがったな…山崎、お前は土方さんを追え!」
「えっ、いいんですか?」
「旦那がどう出るかは未知数だ。そして尾行はお前の方が上手い。だったらお前が確実に土方さんに
ついていれば例え俺が旦那を見失っても…」
「旦那は絶対に副長と合流しますもんね。ありがとうございます。絶対に副長を尾行します!」
「俺もできる限りやってみるぜィ」
「それじゃあ」
こうして沖田は銀時を、山崎は土方を追った。
(俺の方には沖田くんか…)
銀時は振り返らずに気配でそう感じ取り、足早に入り組んだ路地を通っていく。
(地の利はこっちにあるし、ちょっと遠回りすれば宿に行けるな…)
そんな風に軽く考えていた銀時であったが、意外に沖田はしぶとく、気付けば全力で路地を掛け抜ける
羽目になっていた。
「ハァ、ハァ…(しつこいなァ沖田くん…。普段緩い感じでも流石は武装警察。…このままでもいつかは
振り切れると思うけど、それじゃあ宿に行くのが遅くなっちまう……そうだ!)」
「…あっ!」
銀時が角を曲がるのを確認し、それに続いた沖田であったが、そこに銀時の姿はなかった。
沖田は山崎と連絡を取るために携帯電話を取り出す。そこには一通のメールが届いており
それを読んだ沖田は「チッ…」と舌打って携帯電話を懐へしまった。
「こんなところで何してるんだィ?」
「おわっ!」
背後から声を掛けられ、銀時は思わず声を上げた。声を掛けたのは銀時が忍び込んだ家の主人。
銀時は慌てて垣根の隙間から沖田を確認すると、もう行ってしまったようで胸を撫で下ろす。
「いきなり声かけんなよ…ビックリするだろ」
「ここは俺ん家の裏庭なんだけど…。銀さんこそいきなり入ってきてどうした?」
「あ、いや、ちょっと邪魔させて…」
「はは〜ん…借金取りに追われてるな?」
「まあ、そんなとこ…おっ、そろそろいいかな?じゃあ、行くわ」
「ちゃんと働いて借金返済するんだぞー」
「はいはーい」
銀時は家主に手を振り、待ち合わせの宿へと向かった。
(結構時間食っちまったな…。沖田くんでここまで苦戦したんだから、十四郎の方はもっと大変
だろうなァ。ジミーはそっちのプロだし…多分まだ十四郎はその辺歩き回ってるかもなァ…)
そう思って宿へ行くと、受付で「お連れ様がお待ちです」と言われた。「連れ」が来た時間を尋ねると
二人が分かれてまもなくここへ来たと判った。
部屋に入ると土方は備え付けの浴衣を着て寛いでいた。
「よっ」
「遅かったな…総悟はかなり粘ったみたいだな」
「あ、うん。十四郎は流石だね。ジミーの方が大変そうなのに…どうやって撒いたの?」
「撒いたっつーか…一発殴って仕事に戻れっつっただけだ」
「ハハハ…なるほど」
沖田が銀時を見失った際に確認したメールは、山崎からの戦線離脱報告だったのである。
「総悟だと言っても聞かねェから、山崎がこっちに来てくれて助かった」
「そっか…。俺はジミーだと撒くのが難しいと思ってたから、沖田くん相手で良かったかも」
「アイツら、まだまだ甘いな」
「そうだね」
それから銀時は走って汗をかいたからとシャワーを浴びた。銀時は土方と同じ備え付けの浴衣を着て
ベッドの上に座っている土方を押し倒して覆い被さった。
「十四郎〜〜♪」
「銀さん…重い♪」
「もっと重くしてやる〜…えいっ!」
土方を抱き締める腕に力を込めると、土方は「重い」と言いつつ銀時の背に腕を回す。
声を上げて笑いながらぎゅうぎゅうと抱き合う二人の表情はとても楽しげで、年齢よりも幼く見えた。
けれど身体の中心だけは大人の反応を示していた。
「アハハ……ハァ…ハッ…あ…ぁ…」
二人の昂ぶり同士が合わさり、徐々に笑い声に吐息が混じり、そして喘ぎに変わっていく。
「あっ、ん…」
「十四郎…」
「ぎん、さん…んんっ」
土方は名前を呼ばれ、快感で閉じていた目を開けた。すると情欲に染まった銀時と目が合い、その瞳に
吸い込まれるように再び目を閉じ、自ら銀時を引き寄せて唇を重ねる。
銀時の口内に舌を入れ、自分の舌と銀時の舌を絡めながら腰を揺らして快感を追っていく。
「んっ、んっ、んっ…」
(本当…一度スイッチ入るとエロいよなァ…)
自分の首に回っている土方の腕を外して口付けを解くと、土方は明らかにムッとした表情をする。
銀時はそれほどまでに自分を求めてくれていることが嬉しくて、土方の額にチュッと口付けた。
「そんな顔しなくてもちゃんとするから」
「だって…」
「これ以上やるとパンツぐちゃぐちゃになっちゃうよ?脱いで直接触ろうよ」
そう言って銀時が一旦身体を起こして下着を脱ぐと、土方も「分かった」と言って下着を脱ぎ
二人はもう一度抱き合った。
「あっ…あんっ!」
「ハァー…気持ちイイ…」
互いの腹筋の間で剥き出しになった二本のモノを擦り合せると、二つの先端から雫が溢れ出す。
銀時は少し腰を浮かせて二本を一緒に握り、上下に扱いた。
「あっ…あぁっ!ああっ!」
「は、あ…」
銀時の手が動くたび、先走りが卑猥な水音を立てる。
「ああっ…ぎ、ぎんさんっ!」
「…イキそう?」
「んっ…イクっ!」
「俺も…。一緒に、ね?」
一物を擦る銀時の手が射精を促すように一段と速く動く。
「あっ…銀さん!ぎん、さんっ!!」
「とうしろ…イクよ?」
「んっ…ぁ……ああっ!!」
「…くっ!!」
ほとんど同時に二人は達し、互いの身体や浴衣に精液が飛び散った。
* * * * *
「あの、銀さん…」
吐き出した精液をティッシュで拭い、並んで横になって暫くすると土方が遠慮がちに銀時を呼んだ。
それだけで土方が何を言いたいのか察した銀時はにっこり笑って言う。
「…もう一回してもいい?」
「い、けど…あの…俺、ふぇらちおが、ぃぃ…」
頬を染めて本日覚えたばかりの単語を口にする土方を、銀時は笑顔で抱き締める。
「嬉しいなぁ〜。かなり恥ずかしがってたから、もうさせてくれないかと思った」
「そんなことは…」
「気持ちよかった?」
「うん。だから…」
「もちろんいいよ」
「あっ、違っ…」
土方の足元に移動しようとした銀時を土方が止めた。
「十四郎?」
「あ、あの…俺…銀さんに、したい…」
「へっ…?」
銀時は土方の口から出た言葉が信じられなくてポカンと口を開けて土方を見詰めた。銀時が黙ったのを
拒否と受け取った土方は慌てて「ごめんなさい」と謝った。
「なんで謝るの?」
「…俺がするのは、ダメなんだろ?だから銀さん黙って…」
「ダメじゃないよ〜。ごめんごめん…嬉しすぎて言葉が出てこなかっただけ」
「…本当に?」
「本当だよ。十四郎がしたいって思ってくれて本当に嬉しい!」
「じゃあ…いいのか?」
「もちろんだよ」
銀時はいそいそと着物の前を開き、胡坐を崩したような格好で座った。
「銀さんの…もう、勃ってる…」
「そりゃあ、十四郎のお口でしてもらえるのが嬉しいからね」
「そっか…」
土方は嬉しそうにはにかみ、銀時の前に座った。
(10.11.12)
続きは本格的な(?)お口のレッスンです(もちろん18禁ですが直接飛びます)→★