白青赤+黒

万事屋の台所には、プラスチックのコップ3つにそれぞれ歯ブラシがさして置いてある。
コップと歯ブラシの色は対応していて3つとも違う、白と赤と青だ。
銀時曰く、台所が洗面所代わりだから歯ブラシをおいている、色で誰の物であるか一目でわかるようになっているとのこと。
使っているところを見ていると、どうやら白は銀時、赤は神楽、青は新八らしい。イメージカラー通りというか、確かに間違えにくい。
一度、俺が万事屋に泊まった時(ただ泊まっただけだ)、新八が申し訳なさそうに旅館などにある使い捨て歯ブラシを渡してきた。そういや泊まるってわかってたんだからコンビニとかで買ってくればよかったな、と思い「悪いな」とひとこと詫び、クリーム色をした歯ブラシを使わせてもらった。使い捨て歯ブラシだから、次の日、万事屋を出る時にごみ箱へ捨てた。

その次に万事屋へ訪れたのは2週間後だ。玄関のチャイムを鳴らし待機していると、いつもはそんなことはないのに今日は3人分の足音が聞こえる。土産を楽しみにしているのか?この前食べてみたいと言っていた和菓子を買ってきたけどこれで大丈夫か?少し心配ながら待っていると戸が開けられた。
「おかえり」
……おかえり?いらっしゃいじゃなくて?
何て返すべきか迷っていると、神楽は口をへの字に曲げて「最近の子は挨拶もできないアルか。『おかえり』と言われたら『ただいま』ヨ。『いってらっしゃい』と言われたら『いってきます』ヨ。挨拶できない奴は坂田家に入れてやらないネ」
「入れてやらない」ってのは物理的な意味でなのか。
新八は微笑んでるし、銀時はニヤニヤしている。これは誰も助けてはくれないだろう。
「……ただいま」
「良い子アル。入るヨロシ」
お前は俺の母ちゃんか、そうツッコミたいのを我慢して手土産を渡した。
そのまま職場兼居間の部屋へと進もうとしたら3人に阻まれた。
「帰ってきたら手洗いうがいです」
新八が指さす方向は洗面所でもある台所だ。
そこに何があるのかはわからないが、俺を台所に向かわせたいらしい。上から黒板消しでも降ってくるのではと用心しながら台所へと向かう。
慎重に、一歩足を踏み入れる。特に何も起こらない。
「早く手洗いうがいするヨロシ」
俺の後ろにぴったり貼りついているこいつらは何をしたいのかさせたいのか……手洗いうがいをさせたいのか。
流し台の前に立ち水道を捻る。石鹸を手に取り手を洗った。
「うがいもですよ」
手洗いうがい習慣なのか?
手をお椀の形にして水を溜める。それを口へ持って行こうとしたら、神楽に頭をはたかれた。
痛え、そして俺の顔はびしゃびしゃだ。
「何すんだよ!」
振り返り怒鳴ると、手を腰に当て「コップ!」と怒られた。
「……どこにあんだよ」
この家の者ではない俺が使っていいコップはどれだ、という意味で問うた。
すると、待ってましたと言わんばかりの笑みで神楽が指をさした。
「これアル!」
神楽が示した場所は白・赤・青のプラスチックコップが置いてある。それは知っている。が、黒いプラスチックコップと歯ブラシは知らない。
「マヨラの歯ブラシとコップも仲間入りネ。これからはそれでうがいして歯磨きするヨロシ」
「この前、使い捨ての歯ブラシ使わせちゃったじゃないですか。やっぱり土方さんのもあった方がいいてことになって揃えたんです。黒か緑で迷ったんですけど、銀さんが白ですし黒にしました」
「土方くんはこれからそれを使うように」
三者三様、いろんな表情が俺に向く。
どんな顔して何て言えばいいのか。
そんな葛藤を察したのか、銀時はふっと笑い肩をすくめながら、
「ちゃんとうがいしてからこっち来いよ」と居間の方へと移動した。
2人もそれについていく。
塗れて冷たかったはずの顔が熱い。
黒いプラスチックコップを手に取り、うがいをした。

おわり


しらじらのシイヤ様より、ブログ開設記念フリーSSです。こうして土方さんは名実ともに坂田家の一員となっていくのですね*^^*

コップと歯ブラシの次はタオルかな?シーツかな?そのうちタンスの一段が土方さん専用になtたりして……等々、妄想が膨らむ話です。

フリーの言葉に甘えて持ち帰らせていただきました^^ シイヤ様、ありがとうございました!!

 

(13.06.30)

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